情勢の特徴 - 2004年6月前半
● 2001年度の公共事業費(行政投資額・実績ベース)は、国と地方をあわせて38兆4492億円(前年度比7.1%減)となり、40兆円を割り込んだことが、総務省が7日発表した01年度の行政投資実績で明らかになった。一方、国立社会保障・人口問題研究所の調査(昨年12月発表)によると、同年度の社会保障費(国・地方合計の公費負担分)は26兆6922億円だった。国と地方の公共事業費は依然として社会保障費を上回っており、財政の「逆立ち」状態が続いていることが分かる。01年度の公共事業費を事業主体別でみると、国(公団等を含む)が前年度比8.1%減の9兆 5942億円。都道府県が同8.5%減の12兆5763億円、市町村が同5.4%減の16兆2786億円だった。財政危機 事業別の構成比は、道路が対前年度比で6.2ポイント減の28.5%と突出。第二位のダム建設などの国土保全は同8.9ポイント減の9.6%でした。逆に空港は同9.5ポイント増の 0.7%となっている。
● 自民党の整備新幹線建設促進特別委員会(小里貞利委員長)は2日、整備新幹線未着工区間のうち、北海道新幹線の新青森〜新函館、北陸新幹線の富山〜金沢車両基地(石川県松任市)、長崎新幹線の武雄温泉〜諌早の3区間を2005年度同時帰着工することで合意した。 同特別委が集約した整備新幹線の見直し内容は、東北新幹線の八戸〜新青森を早期に完成させるとし、北海道新幹線の新青森〜新函館は所要の認可手続きを経て05 年度当初に着工する。北陸新斡緑は、長野〜金沢車両基地をフル規格で整備し、未着工区間の富山〜石動と金沢〜金沢車両基地は、必要な認可手続きを経て05 年度初めに着工することにした。
● 日本道路公団(JH)など道路関係4公団を2005年度中に民営化するための関連4法案が2日、参院本会議での与党の賛成多数で成立した。4公団を6つの会社に民営化するとともに、新設の独立行政法人が4公団の債務計約40兆円昇45年以内に返済することなどが柱となっている。 同法案は、JHを3社に分割し、首都高速道路公団、阪神高速道路公団、本州四国連絡橋公団を現行の事業範囲のまま民営化する。高速道路の建設・管理、料金徴収を手がける6社の新しい特殊会社を設ける。新たに設立する独立行政法人「日本高速道路保有・債務返済機構」が道路資産と債務を受け継ぎ、債務約40兆円衰45年以内に返済する。
● 都道府県、政令市が実施しているダンピング(過度な安値受注)対策の状況(3月末現在)が明らかになった。都道府県、政令市ともに「工事内訳書の提出・活用」「監理技術者の専任制確認」を実施済み、または2004年度の実施を見込んでいるところが多いものの、全体的に対策の実施割合は低いことが分かった。とくに「市町村との情報交換」 「受注者側の技術者の増員」 「前払金の縮減」は未実施のところが多く、「前払金の縮減」はすべての政令市が実施していない状況にある。都道府県、政令市の傾向はほぼ同様で、ダンピング受注への対応として「工事内訳書の提出・活用」を実施済みまたは04年度に実施を見込んでいる都道府県、政令市は9割を超えた。 適正な施工体制を確保するための「監理技術者の専任制確認」も実施済み、または04年度に実施を見込んでいる都道府県が9割、政令市が8割を超え、両施策の浸透が伺われる。
● 国士交通省は9日、「建設産業構造改善推進プログラム2004」をまとめた。不良・不適格業者排除の徹底を筆頭に 5つのテーマを掲げ、公正・透明で競争性の高い市場をめざすことを明確に打ち出した。プログラムは、2004-06年度の3ヵ年計画で、テーマは@不良・不適格業者排除の徹底A入札契約適正化の徹底B建設生産システムの合理化推進C生産性の向上と経営革新の推進D優秀な人材の確保・育成と安全対策などの推進――の5つで、これらを柱に13課題38事業をまとめた。
● 国土交通省がまとめた04年度建設投資見通しによると、投資総額は前年度比3.6%減の51.9兆円となる)民間投資は8年ぶりに増加に転じるが、政府投資が2ケタ減少するのが影響する。ピークだった92年度(84・8兆円)の約62%に縮小し、85年度以前の水準に落ち込む。 減少率が大きいのは政府系項目で、非住宅が15・9%減、公共土木、住宅も2ケタ減少である。反対に民間非住宅が2年連続増加、民間系の住宅、土木も微増予想となっている。
● 残業したのに割増賃金を支払わない、いわゆるサービス残業で、2003年に労働基準監督署が事業所に是正指導した件数が約1万8500件と、過去30年で最多だったことが 9日、厚生労働省の調査で分かった。全国の労基署は昨年、12万1031事業所を対象に定期監督を実施。このうち時間外労働や深夜、休日労働の割増賃金支払いを定めた労働基準法違反があったとして、是正指導したのは1万8511件だった。この中には全従業員の3分の2に当たる約1万2000人がサービス残業の対象となり、未払い賃金約65億円を支払った中部電力のケースなどがあった。
● 建設産業専門団体連合会(山崎善弘会長)は、「建設技能労働者の賃金のあり方に関する調査」をまとめた。会員団体に対するアンケートの結果、職長と一般労働者との賃金格差は全体の27%で認められたものの、作業主任者資格の有無による賃金格差は約2.1%にとどまり、職位に応じた一定の賃金格差はあるが、資格の有無による格差は少ないことが明らかになった。現場通勤費の本人負担については、通勤費の一部または全額を本人負担としている会社が14−34%あり、労働者の雇用区分によって異なるものの、おおむね2、3割の会社が経費の一部またはすべてを本人負担としていることが分かった。
● 政府は8日の閣議で、2004年版の「高齢社会白書」を決定した。65歳以上の高齢者人口は、2003年10月1日現在で2431万人(前年比2.9%増)。このうち男性は1026万人で、初めて1000万人を超えた。100歳以上の人口も同年9月現在で2万人を突破し、この5年間で倍増した。 総人口に占める高齢者の割合(高齢化率)は前年比0.5ポイント増の19%。高齢者人口は2020年まで増え続けた後はほぼ横ばいになるが、総人口が減少に転じるため、高齢化率は上昇を続け、2050年には35.7%に達すると見込んでいる。
● 大手・準大手ゼネコン各社の05年3月期は、工事採算の改善が表と進む見通しだ。日刊建設工業新聞社の調べによると、売り上げに計上する工事の採算を示す完成工事総利益(粗利益)率が前期実績を上回ると予想するゼネコンは、調査対象19社のうち13社に上った。民間建築市場で利益が見込めない工事の受注を回避するなど、選別受注を徹底してきたことで不採算工事が減少するのが主な要因だ。利益率が上向いているのは、建築工事の採算改善によるところが大きい。土木、建築ともに利益率を改善させた企業が多かったが、05年3月期は土木が総じて横ばいで推移するものの、建築での改善傾向が一段と顕著になる見通し。
● 一人の女催が生涯に産む子どもの平均数(合計特殊出生率)が、2003年は1.29に低下したことが10日、厚生労働省のまとめで分かった。02年の1.32を下回り過去最低を更新、戦後初めて1.3を割り込んだ。政府の予測を上回るスピードで少子化が進んでおり、今国会で成立したばかりの年金改革法の前提に早くも狂いが生じた格好。