情勢の特徴 - 2004年7月前半
● 経済産業省が6月30日に公表した、4−6月の中小企業景況調査(速報)によると、業況判断DI(景況感を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」とした割合を差し引いた指数)が、前期(1−3月)比較で全産業がマイナス1.6ポイントマイナス幅が拡大しマイナス 24.9となったのに対し、建設業は0.3ポイント改善し23.6となった。ところが、来期(7−9月)見通しは、全産業で4−6月期から3.8ポイント改善のほか、製造業、卸売業、小売業、サービス業など建設業を除く業種がすべて改善予想するなかで、建設業だけが唯一3.9ポイント悪化しマイナス幅が拡大するとしている。建設業では、大手企業を中心に加盟する日本建設業団体連合会の受注実績が5月累計(4−5月)で国内計が前年同期補遺3.7%増と受注額で回復の兆しが見え始めている。ただ、中小建設業の場合、公共工事への依存度が高く、その公共工事自体が国、地方自治体で予算縮小傾向にあることが、今後の中小建設業の景況感悪化につながっていると見られている。今後も、好調な消費や堅調に推格を見せる住宅着工など景気動向を占う各種指標が上向き基調になる中で、公共工事市場縮小の影響で中小建設業だけがさらに厳しい局面に立たされる可能性が高いと言えそうだ。
● 建設経済研究所は5日、2005年度の建設投資見通しを明らかにした。前年度比は2.2%減の50兆8000億円で、97年度から9年連続で減少すると見込んでいる。05年度の政府建設投資は前年度比4.2%減の19兆5200億円を予測し、85年度以来20年ぶりに20兆円を割り込む。民間住宅投資は1.7%減で、とくに大きな需要拡大要因が見受けられず、徐々に減少していくと予測しているが、民間非住宅投資は土木投資の下げ幅拡大によって全体で0.1%増の横ばいで推移すると見込んでいる。
● 政府の2004年度中小企業向け契約目標率が、03年度の45.3%を0.4ポイント上回る45.7%となる公算が大きくなっている。比率目体は前年度を上回ったものの、官公需市場は予算縮小傾向が続いており、契約金額は減少することば確実だ。近年は、地域経済低迷、地元中小企業疲弊と公共工事予算縮小が続いていることもあって、契約目標率も01年度45.1%、02年度45.2%、03年度45.3%とこの3年間は毎年度0.1ポイントずつ上昇していた。今年度の契約目標率は、03年度目標率45.3%を0.4ポイント上回る45.7%に設定する見込みだ。
● 経営再建中のUFJホールディングスは14日、三菱東京フィナンシャル・グループに対し、経営統合を正式に申し入れた。三菱東京側もこの申し入れに「直ちに前向きに検討していく」としており、統合変渉は週内にも基本合意する見込み。統合が実現すれば総資産約190兆円、世界でも最大規模の銀行グループが誕生する。これにより国内の巨大銀行系列は、みずほ、三井住友を合わせ三つに再編され、寡占状態はいっそう強まる。 UFJは2004年3月期決算への金融庁検査で、大口融資先の貸倒引当金積み増しを求められ4000億円超の赤字に転落。6月には資料隠ぺい行為の責任などを問われ、同庁から四件もの業務改善命令を受け首脳陣が辞任。こうした中、自力再建は難しいとの判断から、三菱東京との統合の動きが浮上した。
● 東京都が出資する第三セクターの業績低迷が続いている。2004年3月期決算は、都心のビルの建設ラッシュによる「2003年問題」の影響で臨海副都心で経営するオフィスビルか減収になったほか、鉄道関連の多摩都市モノレール(立川市)が債務超過に陥った。都によると、3セクの累積損失合計は前の年度末から118億円増えて1815億円に達した。98年に事業統合した東京テレポートセンター(江東区)、竹芝地域開発(同)、東京臨海副都心建設(同)の3社の2004年3月期の総売上高は前の期比3%減少。「東京テレコムセンター」など複数のオフィスビルで情報通信会社などテナントが都心に移転を計画。入居率を確保するため賃料を下げたとみられる。東京ファッションタウン(東京・江東)は売上高は横ばいだったが、減価償却費と支払い利息負担が大きく、19億円の赤字(前期は20億円の赤字)だった。三セクが経営する鉄道は乗客数こそ伸びているが、初期投資負担の大きさから経営状況は依然厳しい。多摩都市モノレール(立川市)の03年度決済決算は19億の最終赤字(前年度は26億円の赤字)で4億円強の債務超過に陥った。東京臨海高速鉄道(江東区)は64億円の最終赤字(同62億円の赤字)だった。
● 国土交通省は、予算価格の上限拘束性の問題に対応するため、新たな発注方式「技術提案対話型入札方式」を導入する。入札参加者に技術提案書と見積書を事前に提出させ、ヒアリング(対話)した上で、優れた技術提案を選定。その技術提案をもとに積算し、予定価格を決める。これにより、従来の標準工法による積算額よりも予定価格が高くなる可能性があり、業界が求める「技術提案への対価」に応える考えだ。同省はこの方式を中国地方整備局が9日に公示した「国道2号岡山市内立体高架橋工事」(岡山市青江地内、新保地内)に適用する。
● 厚生労働省が毎月勤労統計調査の5月分結果(速報値、事業所規模5人以上)によると、基本賃金は12カ月連続で低下し、一般(パート以外)労働者は78カ月連続で減少する一方、パート労働者は増加、残業は23カ月達観で増加している実態がわかった。小泉内閣発足の2001年4月と比較すると、基本賃金にあたる所定内給与(基本給・諸手当)は1万4523円減少。常用労働者数(2カ月間で労働日18日未満の人を除く)は55万5000人減少した。内訳は一般労働者が 227万人滅、パート労働者は176万5千人増。5月の所定内給与は前年同月比1.3%減。残業代などを加えた現金給与総額は同0.8%減少し27万 4972円だった。
● 大成ロテック(三嶋希之社長)は、農業土木を含む農業生産全般に事業領域を拡充するため、アグリテック(本社・東京都港区、笹井一男社長)に資本参加し、連結子会社としてグループ傘下に収めた。大成ロテックは、アグリテックがもつ農業基盤整備やバイオマスなどの保有技術を生かした事業開拓を進めるとともに、全国の営業網を生かしたアグリテックへの営業支援も進める。両社の技術力による相乗効果で農業生産分野全般に事業の幅を広げる方針だ。
● 住宅各社が土地付き戸建て分譲事業を拡大する。大和ハウス工業など大手が今年度の供給戸数を前年度より一割程度増やすほか、中堅も大都市近郊で分譲を加速する。住宅取得にかかわる生前贈与の非課税枠拡大や住宅ローン減税の適用期限延長を背景に、20−30歳代の一次取得者層の購入意欲が高まっていることに対応する。大和ハウスは今年度の土地仕入れ枠を前年度より四割増の約1200億円に設定、受注高も同14%増の 430億円に引き上げることを狙う。 積水ハウスは今年度、前年度比5%増の870億円の受注高を目指す。ミサワホームはグループ全体で、今年度の受注戸数全体に占める戸建て分譲の比率を2001年度比8ポイント高い31%にする計画。都心部では20区画以下の“ミニ分譲”を始める。中堅メーカーも 2000万-3000万円台の低価格物件を中心に事業を拡大する。主に、「団塊ジュニア」と呼ばれる30歳前後の購入層を狙う。
● 帝国データバンクが14日発表した主要建設業者93社の有利子負債調杏(連結ベース)によると、03年度の93社合計の有利子負債額は5兆2183億円で、前年度比24.7%減(1兆7081億円の域少)と大幅に減少した。99年既には有利子負債額が10兆円を超えていたが、金融支援などを受けた企業も多く、4年間でほぼ半減した。有利子負債の内訳では長短期借入金合計が4兆5162億円(前年度比26.3%減)、社債・転換社債が5259億円(1.3%減)、CP(コマーシャルペーパー)が1100億円(32.3%減)、割引手形が661億円(36.9%減)で、社債を除く他の債務は大幅に減少した。減少額の大きい企業では、03年10月に不動産部門を分離し、金融支援を受けた熊谷組が4517億円減らしトップ。次いでハザマ(2578億円)、東急建設(1866億円)、鴻池組(945億円)三井住友建設(821億円)の順となった。減少幅が500億円以上が10 社、同100億円以上が22社あり、多くのゼネコンが有利子負債の圧縮を懸命に進めていることがうかがえる。