情勢の特徴 - 2004年8月後半
● 2004年(平成16年)7月度の全国建設業の倒産は328件、負債総額は712億6,800万円となった。件数は、前月比で6.0%、前年同月比では29.4%の減少となり、300件台は9ヵ月目に至っている。負債額では、前月比28.0%、前年同月比では 29.4%の減少となり、当月平均負債額は2億1,700万円。規模別で見ると、資本金階層別では1億円以上が2件、1千万円以上〜1億円未満174件、 1千万円未満(個人企業含)が152件となった。
● 国土交通省は、2005年度予算の概算要求をまとめた。一般会計は前年度当初予算比16%増の7兆8629億円となっている。このうち、一般公共事業費は国費ベースで12%増の6兆7785億円、事業費ベースで4%増の19兆4352億円。官庁営繕費と地域基盤整備推進費、都市再生プロジェクト事業推進費などを加えた公共投資関係国費は7兆2141億円で17%増となった。重点的に推進する事業としては、3大都市圏環状退路の整備に2137億円(国費ベースで前年度比20%増)、新幹線の既着工区間整備に772億円(12%増)、スーパー中枢港湾プロジェクトの推進に364億円(59%増)、羽田空港再拡張事業など大都市圏拠点空港の整備に1048億円(19%増)をそれぞれ配分した。
● 羽田空港に新滑走路を建設する再拡張事業の入札で、三菱重工業など造船業界が参加を断念した。応札するのは埋め立てを主体とする工法を推す鹿島など建設会社を中心とした15社からなる共同企業体(JV)のみとなった。造船業界は浮体構造物「メガフロート」工法での受注を目指していたが入札条件を満たせなかった。事業費は推定6000億円程度。単一発注としては過去最大の公共事業が競合なしで決まる異例の展開となった。
● 国土交通省は、ストック重視の住宅政策への転換を一層進めるため、2005年度から公営住宅に対する制度の見直しや、市場を活用した中古住宅の流通促進策など盛り込んだ改革要綱の作成に着手する。作成した要綱に基づいた施策を展開するため、必要な部分については法改正も視野に入れている。改革要綱作成に向けた具体的改善点は、公的な直接供給重視から市場を重視した施策へ展開する考えだ。
● 国土交通省はこのほど平成15年度の住宅・建築物の耐震化の進捗状況をまとめた。このうち学校や病院、ホテル、百貨店等の特定建築物で昭和56年以前に建てられたものは18万3564棟であるが、15年度までに耐震診断が行われた4万3219棟のうち耐震性が確認されたもの1万8948棟、耐震改修が行われたのが9783棟となっている。これにより、耐震化率は16%となったが、実はまだ72%の建築物が診断も行われていないという状態であり、特に都市部の建築物の早急な耐震化対策が求められる。一方、戸建住宅については、地方公共団体による耐震診断、耐震改修に対する補助、融資等の制度により促進が図られることになるが、これが年々、都道府県ばかりでなく、市区町村でも広がりつつある。平成16年現在、戸建住宅に対する耐震診断の支援事業は全国で612件。
● 国土交通省は、コンプライアンス(法令順守)に取り組んでいる企業を発注の際に優遇する方策を検討する。2005年度予算概算要求に盛り込んだもので、建設業のコンプライアンス活動の実態を調査するとともに、その評価の在り方も検討する。不良・不適格業者を排除することがねらいで、このほか、下請代金支払状況などの実態調査や低価格調査のデータベース化、経営事項審査の虚偽防止対策にも着手する。一部の地方自治体では、発注の際にCSRを考慮しており、千代田区では、工事の入札参加資格の格付で、@高齢者または障害者を雇用しているAISO認証を取得しているB男女共同参画社会の実現に貢献している――などの条件を満たした場合、それぞれにつき総合点数を5%加算している。
● 国営諌早湾土地改良事業(諌早湾干拓事業)が有明海の環境悪化をもたらし漁業被害を与えたとして、その工事の中止を求めた「よみがえれ有明訴訟」で26日、佐賀地裁(榎下義康裁判長)は、因果関係を認め、「農水省は工事を続けてはならない」との仮処分決定をくだした。榎下裁判長は、同事業が潮受け堤防閉め切りなどによって有明線の環境悪化、漁業被害の発生に寄与していることを認め、漁業被害の程度も深刻だと判断し、損害を避けるためには事業全体を再検討し、必要に応じた修正を施すことが肝要だとのべ、工事の差し止めを命じた。
● 国土交通省は来年度、大規模地震の発生に備え、住宅などの建築物の耐震化や津波対策などを強化する。耐震診断や耐震改修に関する各種補助制度を一元化し、建築物の耐震化を推進するとともに、05年度税制改正要望に耐震改修工事に関する特例措置などを盛り込み、税制面からも耐震化を促す。地震時の避難路の確保策として橋りょうの耐震補強などで国費の割合を引き上げるほか、農林水産省と共同で津波危機管理対策事業を新たに展開する。文部科学省なども学校施設の耐震化を05年度概算要求に盛り込んでおり、耐震改修などが今後急増しそうだ。
● 厚生労働省は、労働者派遣法で禁止している建設業の労働者派遣を解禁する方向で、具体的な検討に着手する。港湾労働者派遣者制度をモデルに、技能労働者を常用雇用する専門工事業者間で派遣できるようにする。労働者派遣法に例外規定を設け、建設雇用改善法の大幅改正で対応する見通し。労働政策審議会職業安定分科会で検討し、早ければ次期通常国会に改正法案を提出する。
● 総務省が27日発表した労働力調査「4-6月平均詳細結果」によると、正規職員・社員は前年同期比12万人減る 3433万人、パートや派遣など非正規の職員・社員は同71万人増加し1554万人となった。非正規の割合は31.2%で、同1.1ポイント上昇している。就業者のうち過去1年間に離職を経験した転職者(325万人)は、25?34歳がもっとも多く98万人だった。転職で収入が減った人は39.4%、増えた人は33.2%で、減った人が多くなっている。完全失業者を失業期間別にみると、「3ヵ月未満」が121万人で最も多く、次いで「1年以上」が105 万人だった。非労働力人口(仕事についておらず求職活動をしていない人)のうち、就業希望者は551万人で、前年同期比25万人増加した。求職活動をしていない理由では、「適当な仕事がありそうにない」人が190万人で、うち「仕事があればすぐつける」人は71万人、「過去1年間に求職活動をしたことがある」人は47万人だった。
● 国土交通省は、公共事業労務費調査の新たな実施方法として、▽各職種の経験年数▽各職種の資格取得状況▽複数職種の兼務状況――の3点の調査を、補足調査として実施することも決めた。資格取得状況などの補足調査は3年ぶりの実施。労務費調査実施方法の改善に向けた基礎資料に役立てるのが狙いだ。