情勢の特徴 - 2004年10月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 民間調査機関の帝国データバンクが発表した全国企業倒産集計によると、04年度上半期(4〜9月)の建設業者の倒産(負債1000万円以上)は2080件で、前年同期比21.1%減となった。負債総額は5135億円。上半期としては3年連続して前年同期を下回り、倒産は落ち着く傾向にある。上半期の主な倒産は東証2部上場の中堅ゼネコン、環境建設(東京都、4月に破産)、建築工事の佐藤秀(東京都、6月に民事再生法)、上下水道工事などの浅野工事(東京都、5月に特別清算)、設備工事の東北エンタープライズ(福島県、5月に民事再生法)など。
● 建設経済研究所は04、05年度の建設投資見通しを発表した。04年度の建設投資額は、前回予想と同じ51兆9400億円(03年度比3.5%減)。景気回復により民間非住宅建築は好調だが、政府建設投資の減少分を完全に補うには至らず、建設投資の縮小傾向は当分続きそうだ。05年度の建設投資の内訳は、政府建設投資が04年度見通し比4.2%減の19兆5200億円、民間住宅投資が同1.7%減の17兆6300億円、民間非住宅建築投資が同1.0%増の 13兆7700億円と見込む。政府建設投資の20兆円割れは名目で85年度と同水準。実質では76年度の実績に近い。住宅着工戸数は同1.1減の 115.2万戸を予測する。民間非住宅建設投資については、土木のマイナス基調が依然続くものの、非住宅建築は増加を維持するとの予測を立てている

行政の動向

● 国土交通省や福島県が発注するプレストレスト・コンクリート(PC)製の橋梁工事で談合を繰り返していたとして、公正取引委員会は15日、独禁法違反(不当な取引制限)で三井住友建設(東京都新宿区)、ピーエス三菱(中央区)、オリエンタル建設(千代田区)など23社に対し、談合行為をやめるよう排除勧告した。公取委によると、三井住友建設などは2000年4月以降、国交省の関東、近畿両地方整備局と福島県発注のPC 製橋梁工事の入札で、受注価格の低落を防ぐために事前に落札会社を決めるなどしていた。両地方整備局発注分では、各社がそれぞれ「関東PCクラブ」などと称する受注調整組織を形成。三井住友建設など大手数社が幹事として受注会社を決めるなどしていた。
● 岩手県発注の建設工事で談合を繰り返していた疑いが強まったとして、公正取引委員会は26日、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで宮城建設(久慈市)、菱和建設(盛岡市)など県内の建設業者約30社と岩手県建設業協会(同市)に立ち入り検査した。各社は岩手県が発注する学校や病院などの建築・土木工事の競争入札で、受注価格の低落を防ぐため、事前の話し合いなどで落札者や入札価格を決めていた疑いが持たれている。
● 23日に最大震度6強を3回観測した「新潟中越地震」は、新幹線の脱線や高速道路の亀裂、家屋の倒壊といった甚大な被害をもたらし、地震の怖さと、災害に対する脆弱な国土の実態をあらためて露呈する結果となった。地震による死者は20人を超え、負傷者は2100人以上。余震が続く中、電気、ガス、水道などのライフラインは麻痺(まひ)し、約9万7800人が避難所で不安な夜を過ごしている。

労働関係の動向

● 公的年金保険料の納付期限が25年に達せず、老後に年金を受け取れない「無年金者」となる可能性のある人が79万人程度に上ることが、社会保険庁のまとめで分かった。納めた保険料が払い損になるうえ、老後の生活設計に大きな影響を及ぼす恐れがある。年金受給が始まる65歳以上は、最大で40万7千人が年金を受け取れない可能性がある。
● 国土交通省は、同省直轄工事のうち港湾空港関係を除いた2003年度の労働災害事故発生状況をまとめた。事故の発生は 8地方整備局合計で340件で、死亡者数は13人、負傷者数は301人だった。労働災害事故発生状況は、02年度に比べ、発生件数は74件(27.8% 増)、負傷者数は39人(14.8%増)それぞれ増えたが、死亡者数は9人(40.9%減)減った。
● 厚生労働省は鉄筋工事と型枠工事業の職業能力評価基準を策定した。評価基準と労働者の能力を照らし合わせることで労働者の能力水準を担当業務ごとにレベル1〜4に分類することができる。職業能力評価基準は、職務を遂行する際に求められる能力や知識を業務ごとにまとめたもの。評価基準に盛り込まれた事項と、労働者の能力を比較することで、「鉄筋加工作業」などに携わる労働者の能力水準をレベル1(最低)からレベル4(最高)の4つに分類することができる。例えば、鉄筋工事業では、「配筋図・加工帳の作成」「鉄筋加工業」「組立段取り管理」などを行っている労働者の能力を 4段階に分類することが可能。型枠工事業については、「型枠施工計画の作成」「材料加工」「解体・搬出管理」などを手掛けている労働者の能力を見極められる。能力水準については、担当業務ごとに異なるが、主に▽レベル1=担当者として必要な能力を保持▽レベル2=グループなどの中心メンバーとして、自主的な判断・改善・提案を遂行する能力を保持▽レベル3=管理運営計画などを作成し、利益創出に貢献できる能力を保持▽レベル4=高次元の判断・意思決定が可能で、企業利益を先導・創造する能力を保持――の4つに分類している。
● 総務省が発表した労働力調査によると、9月の完全失業率(季節調整値)は前月を0.2ポイント下回る4.6%となり、ほぼ各階層で低下した。しかし、24 歳以下の男性では同0.5ポイント上昇の11.2%となり、大幅に悪化している。完全失業者数は309万人で、1年前(前年同月)より37万人減となり、 16ヵ月連続で減少した。

資本の動向

● 日本建設業団体連合会(平島治会長)は、今後5-7年の中期的課題と展望をまとめた、『日建連中期ビジョン 再生から発展へ』を公表した。日建連会員企業に対し供給過剰の中で今後、業界横並び・保護政策依存体質では市場から脱落、そのために各企業の自助努力と経営強化が必要とした。そのうえで、中期的には、真に総合力に優れた企業だけが市場で勝ち残る時代になるとし、再編・淘汰から優勝劣敗への流れを鮮明に打ち出している。

その他の動向