情勢の特徴 - 2004年12月後半
● 日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を表す業況判断指数(DI)は大企業製造業で前回の9月調査に比べ4ポイント悪化し、プラス22となった。悪化は7.4半期(1年9ヵ月)ぶり。景気のけん引役だった情報技術(IT)関連産業などで生産や輸出が鈍化した。ただ、大企業非製造業や中小企業の景況感は横ばいかやや改善。日本経済は踊り場に差し掛かりながらもなお底堅さを維持する姿が鮮明になった。
● 自民、公明両党は15日、2005年度税制改正大綱を決定した。所得税と個人住民税の税額の一定割合を差し引く定率減税を05年度に半減。中古住宅のローン減税拡充や人材投資減税を創設するが、実際に定率減税の縮小が始まる06年の年換算では1兆6000億円規模の負担増になる。定率減税により所得税は06年1月、個人住民税は06年6月から実質増税になる。個人住民税は年間所得が125万円以下の65歳以上の高齢者に適用する非課税措置を06年度から3年間で段階的に廃止。就労期間が一年に満たないフリーターなどからの徴収を徹底し、企業に給与支払報告書の提出を義務づける。07年度をメドに消費税を含む税体系を抜本的に改革する方針を明記。
● 財務省は、2005年度の財政投融資計画を今年度比16%減の17兆2000億円程度とする方針を固めた。5年連続の2けた減少で、20兆円を下回るのは1981年度以来24年ぶり。民間基準の財務諸表をもとに対象事業を重点化し、特殊・独立法人、地方向けとも抑制する。来年度計画では特殊・独立法人向けは今年度比4%減の11兆3000億円程度とする。政府系金融機関では、国民生活金融公庫を今年度比2000億円程 2兆5000億円程度とするほか、公営企業金融公庫向けなども抑制。事業系では民営化する日本道路公団向けが約2兆円。直接融資からの原則撤退を決めた住宅金融公庫向けも1000億円程度とするなど軒並み減少する。地方向けは約5兆9000億円と今年度計画比で3割減る。
● 関西国際空港に2本目の滑走路を造るムダ遣いの2期事業について、2005年度予算編成の閣僚折衝で、07年供用開始を目指して進めることで合意した。2期事業は総額1兆4000億円を超す巨大計画。合意したのは、4000億円をこえる施設関連整備費のうち滑走路など当面必要となる事業費を600億円とし、うち05年度予算に300億円(国費200億円)を計上している。
● 政府は閣議で、05年度予算の政府案を決定した。一般会計の総額は82兆1829億円(04年度当初比0.l%増)で、政策的経費である一般歳出は47兆2829億円(同0.7%減)と、国・地方税財政の三位一体改革に伴う約1兆3000億円の補助金削減などで3年ぶりに減少した。歳入面では、税収が景気回復による自然増と定率減税の縮小で4年ぶりの増加となる。公共事業費は同3.6%減の7兆5310億円。ただ整備新幹線3区間の新規着工や、07年供用開始を前提とした関西国際空港の2本目の滑走路整備など公共事業の大型プロジェクトには予算を付けた。● 政府は閣議で、05年度予算の政府案を決定した。一般会計の総額は82兆1829億円(04年度当初比0.l%増)で、政策的経費である一般歳出は47兆2829億円(同0.7%減)と、国・地方税財政の三位一体改革に伴う約1兆3000億円の補助金削減などで3年ぶりに減少した。歳入面では、税収が景気回復による自然増と定率減税の縮小で4年ぶりの増加となる。公共事業費は同3.6%減の7兆5310億円。ただ整備新幹線3区間の新規着工や、07年供用開始を前提とした関西国際空港の2本目の滑走路整備など公共事業の大型プロジェクトには予算を付けた。
● 05年度予算の政府案で、国土交通省の予算総額(国費ベース)は04年度当初比3%減の6兆5656億円となった。公共投資関係費は同4%減の5兆9464億円で、内訳は一般公共事業費5兆8489億円(同4%減)、災害復旧等535億円(同横ばい)、その他施設費 440億円(同1%減)となっている。重点事業をみると、大都市圏拠点空港整備に899億円(同2%増)を計上。羽田空港再拡張事業、関西国際空港2期事業などを進める。三大都市圏環状道路の整備費は2059億円(同15%増)。都心部の通過交通を分散し、交通の円滑化、環境負荷の低減を目指す。整備新幹線未着工区間3線3区間の事業費を含んだ新幹線鉄道の整備費は706億円(同3%増)となった。
● 政府が24日に閣議決定する「今後の行政改革の方針(新行革大綱案が明らかになった。国家公務員の定員を2005年度から5年間かけて、04年度末定員(約33万人)から10%以上の削減を目指す。行政サービスの官民の競争入札を推進するため「市場化テスト法(仮称)」の整備を05年中に進めることも明記した。国家公務員の削減をめぐっては、来年夏までに定員削減計画を改定し、各省庁の出先機関の事務事業の見直しや、情報通信技術の活用で組織をスリム化する。治安や徴税などニーズが高い部門への人身配意を手厚くするため、省庁の枠を超えた配置転換も進める。市場化テストについては法整備と並行し、民間開放を推進するための第三者機関を民間主体で設立する。
● 国土交通省は05年度、直轄の公共工事の入札に交渉方式を導入する。技術や資材の調達方法などについて、発注者と入札参加業者が入札前に交渉を実施し、優れた民間の提案に基づいて予定価格を決めてから入札を行う。対象となる工事案件は、ダムや立体交差など大規模事業を念頭に置いている。交渉方式は一般に、発注者と入札参加予定業者が民間の優れた新技術活用などを前提に、話し合いを行って予定価格を決めて入札を行う。既存の工法を前提とした従来の入札方法と比べて、民間の新しい技術や効率的な調達ルート、新しい資材などが採用されやすい。
● 労働政策審議会 (厚生労働相の諮問機関)は17日、「年間総実労働時間1800時間」という政府の時短目標をなくすとする意見書を尾辻秀久厚労相に提出した。意見書は、労働時間を一律に設定することをやめて個別労使の「自主的取り組みを促進していく」と強調。事業者に計画的な時短を促してきた時短促進法の見直しをもとめている。「多様な働き方に対応した」法律に改めることを名目に労働時間短縮を促進するとしてきた政府方針を転換する内容。厚労省はこの方向で来年の通常国会に法案を提出する見通し。意見書は、「時間ではなく成果によって評価される仕事が拡大」していると指摘している。「効率的な事業運営の観点」から「労働者が着実に成果を上げられるようにしていく」との考えを示している。
● 厚生労働省の労災保険料率の設定に関する検討会(座長・岩村正彦東大大学院教授)は、現行の保険料率や業種区分、メリット制の見直しに向けた対応などを盛り込んだ報告書案をまとめた。報告書案では、建設業団体から引き上げ要望のあったメリット制の見直しについて、有期事業(建設事業)の増減幅を現行の35%から継続事業と同様の40%に拡大することが適当としている。一方で建設事業のメリッ卜増減幅拡大は、公共事業の指名停止を恐れる事業者の「労災かくし」を助長する一面もあることから、労災かくしへの対応については、別途検討する必要性を強調している。
● 厚生労働省は21日、特定の地域内で雇用を安定化させる「建設業務労働者就業機会確保事業」(仮称)の活用を促すため、建設雇用再生トータルプランを拡充することを明らかにした。改善計画の認定を受けた建設事業主団体(認定団体)が、同事業の対象労働者に実施する教育訓練を助成する。ほか、認定団体による新分野事業創出を助成する制度も創設する。
● 厚生労働省は、04年度からスタートさせた建設雇用再生トータルプランの施策を大幅に拡充する。労働政策審議会職業安定分科会の建設労働専門委員会(座長・椎谷正雇用振興協会理事長)で、建設労働者の企業間融通などを桂とした「新たな建設労働対策」が検討されていることを踏まえ、05年度に建設業労働移動円滑化支援助成金の助成額を増額するとともに、建設労働者時給調整適正化支援事業(仮称)などを新たに創設する。厚労省は05年度、トータルプランの推進に約30億円を投入する方針だ。トータルプランの拡充は、建設労働者需給調整適正化支援事業(仮称)の創設を盛り込むほか、▽認定団体(改善計画の認定を受けた建設事業主団体)による能力開発支援▽認定団体による人材情報の提供、職業紹介などの事業支援▽認定団体による新分野の事業創出に対する支援▽認定団体による建設労働者の雇用の安定への取り組み支援――などの措置を取り入れる。
● 堅調な民間設備投資を背景にした受注増に、財務体質の改善効果も加わり、大手・中堅建設業の多くが業績を回復させている。建設関係204社を対象に日刊建設工業新聞社情報システム部が行った04年9月中間決算集計を見ると、5割を超える会社が前中間期を上回る業績となった。工事の採算を示す完成工事高総利益(粗利益)率は平均0.4〜1.4ポイント上昇、反対に一般管理費率は平均0.3ポイント下降しており、各社が収益力を高めていることがうかがえる。