情勢の特徴 - 2005年1月前半
● 日銀が11日発表した2004年12月の「生活意識に関するアンケート調査」によると、景況感指数(DI)はマイナス19.7と昨年9月に実施した前回調査に比べ9.3ポイント悪化した。DIが前回調査を下回ったのは2003年3月以来、1年9ヵ月ぶり。企業の景況感の改善一服が個人にも波及している。生活実感を示す暮らし向きDI(「ゆとりが出てきた」から「苦しくなってきた」を引いた値)はマイナス44.8と前回から2.5ポイント悪化。増税や社会保障関連の負担増を懸念して一年前に比べて支出を減らした人が0.8ポイント増えた。
● 日本銀行が12日発表した昨年12月の貸出・資金吸収動向(速報)によると、銀行の貸出平均残高は前年同月比 3.1%減の385兆6547億円と、84ヵ月連続で減少した。この結果、2004年の平均残高は前年比4.0%減の389兆331億円と、8年連続のマイナスとなった。8年間の減少額は、貸出残高の3分の1に近い約141兆円となった。中小企業向け貸出残高約289兆円(昨年9月末現在)のおよそ半分に当たる融賢が消えたことになる。
● 国土交通、総務の両省は、入札契約適正化法(入契法)を厳正に運用するため、同法が規定する義務付け事項や努力項目の実施を地方自治体などが徹底するよう、都道府県と各省庁に通知を出した。要請は、談合などの不正行為の防止、指名停止措置の運用改善、ダンピング受注対策の3項目が柱。両省は今回、要請の実効性を高めるため、都道府県に対しては、不正行為防止、指名停止措置の運用改善、ダンピング受注対策の3点について、「特に対応を強化すべき事項」として従来以上に強く実施を求めた。不正行為の防止では、発注者側が関与する不正行為の防止の徹底や教育.研修の実施、第三者機関の設置など、対応すべき事項を明記した。指名停止措置の運用改善では、1年12月に出した通達「工事請負契約等にかかる指名停止措置の適切な運用等について」の徹底を再度要請。ダンピング受注対策に関しては、最低制限価格の事前公表に伴う問題点を明確にし、工事費内訳書の提出徹底、工事の重点監督の実施、配置技術者の増員義務付けといった対応策を積極的に導入するよう促している。
● 厚生労働省は同じ建設事業主団体に加盟する事業主間で常用労働者を融通する「建設業務労働者就業機会確保事業」での労働者保護策を明らかにした。送出する労働者の労災保険料については、元請け事業主が負担すべきとの見解を示し、労働政策審議会がまとめる報告書の原案に盛り込んだ。今回の提案では、労災保険の元請一括適用制度の趣旨を踏まえ、元請け事業主を適用事業主とすべき見解を示した。労災保険の適用漏れの防止といった観点もあり、送出事業主を受け入れ事業主の下請負人と見なし、受け入れ事業主の元請負人が労災保険料を負担する。受け入れ事業主が元請負人の場合は、受け入れ事業主が保険料を負担する。このほか、労働者保護策として、雇用する労働者を送出労働者とする場合、書面で同意を得ることや、送出期間は原則として同一の業務につき1年以内とすることなどを示した。
● 厚生労働省は11日、新たな建設労働対策を盛り込んだ建設雇用改善法改正案を労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の建設労働専門委員会(椎谷正座長)に報告した。改正案には、専門工事業者間などで労働者を融通し合う「建設業務労働者就業機会確保事業」(就業機会確保事業)や建設事業主団体による有料職業紹介を認める「建設業務有料職業紹介事業」(職業紹介事業)などを盛り込んだ。厚労省は審議会の意見を聞いた上で改正案を通常国会に提出する。同法改正は、建設投資の縮小や受注量の季節変動によって生じている建設労働者の過不足是正や、技能労働者の育成、新分野進出支援などが狙い。導入する就業機会確保事業と職業紹介事業の内容と実施に必要な手続き、労働者の保護のあり方などを規定。
● 厚生労働省の「労災保険料率の設定に関する検討会」(座長・岩村正彦東大大学院教授)は11日の会合で、労災保険料率の改定に向けた報告書を大筋で了承し、17日の労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会に提出することを決めた。報告書では、現在35%に設定されている建設業のメリット増減幅を他産業並みの40%とするよう提案したほか、保険料率を設定する際の業種区分について現行の51業種をさらに細分化することなどを求めている。厚労省は報告書を2006年4月の保険料率改定に反映する。
● ゼネコンの人事戦略が新たな局面にさしかかっている。「団塊の世代」の社員が大量に定年退職する、いわゆる「2010年問題」や、昨年6月に成立した改正高齢者雇用安定法への対応などが背景にあり、ゼネコン各社は新規採用も含めた人事計画の再構築に乗り出した。中長期的には技術とノウハウを継承しながら、年齢構成のアンバランスを是正していくことも大きな経営課題となっており、各社の人事と営業、生産、管理部門が一体となった取り組みが本格化してきた。ゼネコンの人員構成は、団塊世代に代表される50歳代の社員数と、90年代の好景気時代に大量採用した30 歳代後半から40歳代前半の社員数が突出して多い。特に50歳代の構成比は高く、この年代が全体の4割を超える大手ゼネコンもある。団塊世代を中心とした大量退職には、社員の年齢構成のアンバランスを是正できるメリットもある。しかし一方で、「これから10年足らずの間に50歳代の2700人ほどが抜ける」(大成建設)というように、技術やノウハウを持つベテラン社員を大量に失う影響は深刻で、経験豊富な現場所長が減少するだけでなく、施工人員が不足する事態も考えられる。