情勢の特徴 - 2005年1月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 政府の経済財政諮問会議は20日、経済財政の中期展望を示す「改革と展望-2004年度改定」を決めた。日本経済は2006年度に名目2%成長を達成し、デフレから脱却するとの見通しを堅持。国と地方の基礎的な財政収入(プライマリーバランス)の黒字化目標は内閣試算2012年度に1年前倒しした。ただ、生産性の向上など楽観的な前提に依存しており、もくろみ通りに財政健全化を実現できるかどうかば不透明だ。
● 東京商工リサーチがまとめた2004年の建設業倒産は、件数で4002件となり、前年比21.7%のマイナスになった。負債総額は1兆1036億7800万円で、前年比29.2%の大幅な減少になった。受注・販売不振、赤字累積、売掛金回収難の「不況型」といわれるものが3113件となっており、全体の77.7%を占めた。
● 財務省は28日、2005年度予算案をもとに、08年度までの財政状況の中期試算を衆院予算委員会に提出した。国債の元利払い費や社会保障費の膨張を補うため、新規の国債発行額が08年度に初めて40兆円を突破。過去の発行分を含む08年度末の国債残高は04年度末見込みに比べ120兆円程度増えて 625兆1700億円に達する
● 金融機関の破たんなどバブル崩壊後の金融危機に対応するために投入した公的資金の総額が35兆8000億円に上ることがわかった。預金の全額保護に必要な破たん処理費用が膨らんだほか、銀行の資本増強にも12兆円以上を投入。うち8兆円余りを回収したものの、10兆円超の損失が確定した。90年代からの公的資金投入をみると、破たん処理では、受け皿金融機関に引き渡す際に債務超過分を穴埋めする「金銭贈与」が13兆 2000億円にのぼった。うち3兆4000億円は保険料で将来返済することを前提とした民間借入金だが、残る10兆4000億円は国債の形で国が負担し、すでに国民的な損失となっている。

行政の動向

● 政府が通常国会に提出する地域再生法案の詳細が26日、明らかになった。自治体が策定した地域再生計画の内容に応じて「地域再生基盤強化交付金」を支給。地域再生事業への出資者に税制上の優遇措置を講じることが柱。同交付金については05年度、国土交通、農林水産、環境の3省が計810億円の予算を充てる。同法は、自治体主導の地域再生事業を後押しすると同時に、地域再生事業に民間資金を誘導するのが狙い。同法に基づく地域再生事業では、政府が今春に決定する「地域再生方針」に沿って、自治体が地域経済の活性化や雇用機会の創出に関する目標、事業内容などを示す地域再生計画を策定し、内閣府に申請。苛請。計画認定されると、地域再生基盤強化交付金を構成する△道整備交付金△汚水処理施設整備交付金△港整備交付金――を受給できる。
● 国土交通省は国の長期的な政策指針である国土計画を「全国計画」と「広域地方計画」の2本柱にする方針だ。1950 年成立の国土総合開発法の改正案を通常国会に提出する。現在は、全国総合開発計画(全総)に加え、3大都市圏の整備計画や地域ブロックごとの地方開発促進計画などがあり、わかりにくい。日本の総人口は2007年にも減少の転じると見込まれている。国交省は、経済の規模拡大を前提にした開発型の国土計画を転換する必要があると判断。計画には景観の向上や既存のストックの活用、県をまたいだ防災対策などの視点も盛り込む。名称は「国土形成計画」とする。

労働関係の動向

● 労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の建設労働専門委員会は17日、建設現場で働く労働者を業界内で派遣できる制度の新設を盛り込んだ報告書をまとめた。今週中に建設労働者雇用改善法「改正」案要綱を厚労相に提出する予定で、同省は通常国会に上程し、10月の法施行を見込んでいる。新制度は「建設業務労働者就業機会確保事業」で、事業主が余った建設現場労働者を建設事業主団体内で「貸し借り」できる仕阻み。対象は職人とよばれる技能者だけでなく単純作業者を含む建設現場労働者全般。雇用保険と社会保険に加入していることが要件。「送出」された労働者は「受入」事業主の指揮・命令下で働き、賃金支払い義務は雇用者である送り出し事業主が負う。労働者の送出期間は原則一年以内だが、工事期間が長期なら数年も可能。送出には労働者の同意が必要。労働者派遣法の建設業務禁止規定はそのままに、新制度を創設する。
● 大手ゼネコン各社の人事制度が多様化してきた。大成建設、清水建設、大林組、竹中工務店の4社が、勤務地域を支店エリア内などに限定した「地域社員」の制度をスタート。地域社員の対象は企業によって異なるが、中期的な採用計画に沿って対象者を増やしていこうとする企業が多く、「総合職」や「一般職」といった従来型の人事体系は大きく変わり始めている。ゼネコン各社が地域社員制度を導入するのは、地域密着型の社員を増やし、営業と施工の両面で事業を円滑に進めるのが狙い。加えて、地域性を加味した給与体系とすることで、固定的な人件費を削減するのが大きな目的だ。
● 厚生労働省は、04年の労働災害発生状況(速報値)をまとめた。それによると、建設業で04年中に起きた作業中の事故などで亡くなった人(05年1月7日現在)は565人と03年より既に44人(8.6%)増加した。製造業の274人の2倍を超えており、全産業の 37.4%を占めて前年同様、全産業で最も死亡者が多くなっている。休業4日以上の負傷者と死亡者を含めた建設業の死傷者は、04年1〜11月の累計で1 万9093人、前年同期比で1014人減っている。04年の確定値は4月に公表される。
● 厚生労働省は、拡充する建設雇用再生トータルプランの助成内容を明らかにした。建設業新分野定着促進給付金(仮称)を創設し、建設業関連の新分野へ進出する中小建設事業主が離職を余儀なくされた建設労働者を新たに雇い入れ、2週間以上の定着講習を実施した場合、1人当たり30万円を助成する。同じ建設事業主団体に加盟する事業主間で常用労働者を融通する、建設業務労働者就業機会確保事業の導入を見据え、建設業務労働者就業機会確保事業教育訓練助成金(仮称)も創設する。改善計画の認定を受けた建設事業主団体(認定団体)が対象労働者への教育訓練を実施した場合、その経費の2分の1(中小建設事業主団体は3分の2)を助成する。限度額は1コース1人当たり5万円。
● 厚生労働省は、建設業の労災保険料のメリット制増減幅を現行のプラスマイナス35%からプラスマイナス40%に見直す方針を決めた。17日に開かれた労働政策審議会(厚労相の諮問機関)労働条件分科会労災保険部会(会長・保原喜志夫天使大学教授)で了承された。今後、関係法案の改正案をまとめ、21日から始まった通常国会に提出する。適用開始は06年4月の予定。
● 総務省が28日発表した労働力調査によると、20004年は六6642万人と6年連続で減少、1998年のピーク時に比べ百五十青151万人減った。高齢化に加え、「働く意欲を示さない若者」、が増えていることが響いている。2004年の平均の完全失業率(季節調整値)は前年に比べ0.6ポイント低い四.七%。2年連続の低下で、年間では過去最大の改善幅となった。雇用環境の好転にもかかわらず、労働力人口の減少には歯止めがかかっていない。15歳以上の人口のうち、どれだけの人が実際に働いたり職を探したりしているかを示す「労働力率」は1992年の64%をピークに低下を続け、2004年は60.4%。労働力市場の縮小が続いている。

資本の動向

● 日建連が27日発表した会員企業57社の04年(1〜12月)の受注総額は前年比3.6%増の13兆1640億円。官公庁からの受注が、調査を開始した76年に次ぐ低水準となる一方、好調な輸出を背景に大きく伸びた工場・研究所などの民間建設需要がけん引役となり全体をプラスに押し上げた。04年の受注総額は86〜87年と同水準。ピークを記録した91年の26兆4210億円のほぼ半分だ。内訳は、民間工事が前年比8.5%増の9兆4360億円、官公庁工事が同9.4%減の3兆0840億円。民間工事のうち、製造業からの受注は同35.8%増の1兆6170億円と大幅増。

その他の動向