情勢の特徴 - 2005年2月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 内閣府が発表した昨年10−12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を調整した実質で前期比 0.1%減、年率換算で0.5%減となった。マイナス成長は昨年だったものの、個人消費の速報が響いた。ただ景気の実感により近いとされる名目GDPは前期比0.02%増、年率0.1%増と3・4半期ぶりのプラス成長。
● 住宅ローン債権を集めて証券化する住宅ローン担保証券(RMBS)の市場が拡大している。昨年は大手銀行が、保有する長期固定型ローンの転売を積極化し、発行額が急増。2005年度の市場規模は5兆円に迫る見通しだ。住宅ローン担保証券は金融機関が持つ住宅ローンやアパートローンの債権を信託銀行に信託し、小口化して投資家に転売する。主要証券会社の集計では、2004年の発行額は市場全体で約2兆2000億円に達した。
● 国内総生産(GDP)に占める雇用関連支出が日本は最低水準にあることが、経済強力開発機構(OECD)の発表資料で、明らかになった。調査対象は2002−2003年。それによると、日本のGDPに占める雇用対策支出の割合は0.76%、1%にも届かない。デンマーク(4.63%)のデンマーク(4.63%)の6分の1、オランダ(3.56%)やドイツ(3.31%)、フランス(3.06%)の5分の1~4分の1という水準。このうち、消極的雇用対策支出(失業給付など)を除く、積極的雇用対策支出(職業訓練や若年者対策・雇用対策など)がGDPに占める割合は、たった0.28%だった。

行政の動向

● 政府は資本力や技術力のある会社が単独で公共事業を受注できるよう、入札制度を改善する。複数の企業が行動で請け負う特定建設工事共同企業態(JV)の結成の義務づけを来年度から原則として廃止。単独受注の機械を増やす。一社では請け負えないような大型工事でJVの結成を今後も義務づける場合は、毎年度にその理由を公表。安易にJVに頼らないようにする。ただ、地方自治体が発注する工事などは今回の義務付け廃止の対象外。
● PFI(民間資金を活用した社会資本整備)事業が急拡大している。学校や図書館といった教育施設から水族館、刑務所に到るまでPFI方式による建設・運営が広がり、日本政策投資銀行によると、2004年度の事業規模は9200億円に達し前年度比3.1倍と過去最高になる。2004年度は大規模案件でPFI方式を活用するケースが目立つ。衆参両議院会館の建替え工事や、東京都が都立3病院を統合して新設する病院、羽田空港のターミナルビルの整備などだ。事業規模はいずれも1000億円を超える。
● 横浜市は22日、2005年度の入札・契約制度の改正内容を明らかにした。「ゆきすぎた競争状況」(横浜市)を受けて、最低制限価格と調査基準価格の事前公表を廃止するほか、詳細な積算内訳書の提出義務化、優良工事業者や災害協力業者への対象工事拡大、ランクの見直しなどを実施する。今回の見直しは、05年度から一般入札を1000万円以上に拡大することを基本に実施する。対象は全工事の約6割に当たる。価格情報の事前公表は、調査基準価格や最低制限価格との同額入札に対応するため、調査基準価格と最低制限価格は事前公表を廃止する。予定価格は事前工業を継続する。これに伴い、これまで低入札価格提示者だけに求めてた詳細な積算内訳書を全落札候補者に提出させるとともに、混乱を防ぐため、低入札価格調査制度の対象金額を一般入札の対象となる1000万円以上ではなく現在と同じ2500万円以上に設定する。
● 都道府県の2005年度の当初予算案において出そろった一般会計の総額は04年度比1.1%減の48兆6473億円。東京都などを除く38都道府県がマイナス予算を編成した。歳入では企業収益の回復を背景に地方税収が5.4%増の15兆8620億円と2年連続の増加を見込む。中でも法人住民税と法人事業税16.7%増と大幅に伸びる。一方、国と地方の税財政改革(三位一体改革)で国の補助金を含む国庫支出金が 11.1%減少。地方交付税はほぼ据え置きのため、全体では4年連続で緊縮予算となる。歳出面では公共事業など投資的経費の削減が緊縮予算の柱。全都道府県の投資的経費は5.9%減の8兆8520億円。過去の借金(地方債)の返済に充てる公債費が0.9%増と高止まりする中で、人件費(1.2%)減を含む経費削減が喫緊の課題だ。
● 文部科学省の「学校施設整備指針策定に関する調査研究協力会議」は、学校施設の整備について、これまで主体だった全面建替え(新・改築)方式から、既存施設を耐震補強するなどの回収方式に転換すべきだと提案した。限られた予算の中で、新・改築に比べコストが安価で、工期も短縮できる回収方式に整備手法を切り替え、安全性を早急に確保する。教育内容の多様化や防犯対策など社会的要請に対しては、老朽化した学校施設の機能改善を目的とした改修が重要だと指摘。高率学校施設は全国に約13万棟あるこのうち約半分に当たる約6万7000棟が、耐震性がないとされ、さらに約4万 6000棟は耐震診断も行われていない。
● 北海道は、公共事業の削減で厳しい経営環境にある建設業の経営強化策として、新分野に進出する建設業者を資金面から直接支援する方針を固めた。05年度に助成制度を創設。新分野への進出を図る建設業者の中から、モデルとなる約30社を選定し、1社につき最大で600万円の資金を補助する。新分野に進出する建設業者への直截な資金援助は、都道府県では初の試みとなる。道が創設するのは「建設業ソフトランディング対策モデル事業」。新分野への進出に取り組んでいる道内の建設業者の中から、地域のモデルとなる業者を選定。新製品や新サービスなどを事業化するための準備経費の一部を補助する。
● 中央防災会議(会長・小泉首相)の首都直下地震対策専門調査会(座長・伊藤滋都市防災研究所会長)は、東京湾周辺を震源とする首都直下地震が発生した場合の被害想定(最終報告)を発表した。初めて公表した被害総定額では、風速15メートルの風が吹く午後6時にマグニチュード(M)7.3の地震が東京湾北部で発生すると、建物の倒壊・焼失などにより被害額が最大で約112兆円に達すると予想している。内訳は被災地の直接被害(復旧費用)が66.6兆円、生産額の低下やビジネス機会の損失と言った間接被害が45.2兆円となっている。最悪のケース被害想定学派、国家予算の1.4倍で、発生から懸念される東南海・南海地震(約57兆円)の2倍、東海地震(約37兆円)の約3倍に相当する。

労働関係の動向

● 厚生労働省が発表した労働者派遣事業の2003年度事業報告書によると、派遣労働者数は236万人(前年度比10.9%増)となり、5年間で2.6倍に増えた。同事業の売上げ高は2兆3600億円(同5.1%増)。いずれも過去最多。派遣労働者のうち、派遣会社に登録し派遣先で仕事をするときだけ雇用される「登録型」が、前年度比10.9%増の198万7000人で大半を占めた。派遣会社に常用雇用される正社員は同7.9%減の13万9000人だった。派遣契約の期間は、「登録型」を含む一般労働者派遣事業では3ヵ月未満が68.4%で、6ヵ月未満は全体の約9割(89.6%)に達している。派遣料金は、全体平均では前年度比1.0%増え1万6003円(8時間換算)となったが、専門的な26業種のうち15業種で低下している。

資本の動向

その他の動向

● 先進国の温暖化ガス排出削減を義務付けた京都議定書が16日、法定拘束力ある条約として発効した。日本も実行ある国内対策を迫られることになった。日本に義務付けられた排出削減量は、2012年までに1990年の排出量の6%減。産業部門などでの削減対策の遅れから、二酸化炭素排出量は90年から増えつづけ、03年度には 8%増にも。このため、目標達成には14%減が必要になった。京都議定書は、国際法としての法的拘束力があり、削減目標を達成できなかった場合、ペナルティーが科せられる。次の排出削減目標が1.3倍増になる。
● 総務省が発表した2004年10月1日現在の推計人口によると、国内総人口は1億2768万7000人で、前年比で6万7000人(0.05%)増加した。増加後、増加率ともに最も低かった02年(前年比14万5000人増、同0.11%増)を下回り、戦後最低となった。男女別では男性人口が6229万5000人で前年比9000人減となり、戦後初めて減少に転じた。女性は6539万2000人で同7万6000 人増だった。年齢別の人口割合は65歳以上(2487万6000人)が19.5%で前年比0.5ポイント上昇し、過去最高を更新。14歳までの年少人口(1773万4000人)は13.9%、同0.1ポイント低下でこちらは戦後最低となった。15-64歳(8507万7000人)は66.6%だった。