情勢の特徴 - 2005年3月後半
● 財務省は22日の参院財政金融委員会で、2005年度末の国と地方の借金総額が1093兆円になるとの見通しを明らかにした。同省は長期的な政府の債務残高が計774兆円になると説明していたが、一時的な資金繰りに充てる政府短期証券(FB)や原則として返済に税金を充てない財政投融資債は含んでいなかった。国の借金の総額は888兆円、地方は205兆円。国と地方で重複しでいる借金34兆円を除いても1000兆円を超えており、国内総生産(GDP)の2 倍の規模になる。
● 文部科学省が設置した「学校施設整備指針策定に関する調査研究協力者会議」 (主査・辻村哲夫国立美術館理事長)は 16日、学校施設整備のあり方に関する報告書をまとめた。報告書では、限られた予算の中で学校施設の整備を効率的に進めるため、整備方針を従来の改築から改修へ切り替えるよう提案。改築は耐震強化のために構造躯体の改良が不可欠な施設などに限定し、改築より工事費が安く済み、工期も短い改修方式を中心に進めるよう求めている。報告書はさらに、「学校施設の耐震性の確保が急務」になっていると指摘。大規模地震によって倒壊・大破しかねない約2万2000棟については、重点対策を5年以内に行うよう要請した。
● 政府は行政業務を民間に開放する「市場化テスト」に成果報酬制度を導入する。民間事業者の運営成績があらかじめ定めた数値目標を上回れば、基本的な委託費に報酬を上乗せする。成果次第で民間の利益が増える仕組みとすることで民間の創意工夫を引き出し、サービス向上と効率化を一段と促す。官業の民間開放を進めている全国の自治体でも採用が広がりそうだ。2005年度から始まる市場化テストは厚生労働省が所管するハローワーク事業、社会保険庁の年金徴収事業など8事業。官民の競争入札でコストを抑え成果報酬制度でサービスの向上を狙う。
● 東京都は臨海副都心にある経営が悪化した第三セクターの破たん処理に踏み切る。東京ファッションタウン(TFT、東京・江東)などビル賃貸2社は31日に民事再生法の適用を東京地裁に申請する。負債総額は約1300億円。債務超過に陥っている他の臨海三セク3社も早ければ年内に処理策をまとめる。再生法を申請するのは都が24.64%出資するTFTと同16.1%出資するタイム24(同)の2社。都のほか日本政策投資銀行やみずほフィナンシャルグループなどが出資している。両社は再生手続き開始後に金融機関など債権者に約75%の債務カットを要請する。都は両社に対する出資金約46億円のほか、これまでに滞納した地代約36億円を放棄する。
● 総務省は28日、地方公務員の人員削減を全国の自治体に求める新たな地方行革指針をまとめた。職員定員削減の数値目標を初めて導入し、2005年度からの5年間で増員分を差し引いた純減ベースで4.6%超とした。新指針は市町村合併による統合が一段落するのを受け、力点を自治体のスリム化に移したのが特徴。職員厚遇問題などへの批判が高まっている。具体的には職員削減など九項目について、各自治体が5年間の施策を明示した「集中改革プラン」を策定し、05年度中に公表することを盛り込んだ。
● 勤労者退職金共済機構・建設業退職金共済事業本部は、1月末時点の2004年度建退共事業概況をまとめた。加入企業を示す共済契約者数は1月末で前年同月比2.4%増の18万3108件となった。このうち04年度(04年4月−05年1月)の新規加入は前年同期比 15.1%減の7613件、脱退は同19.6%減の2883件だった。また加入労働者数である被共済音数は1月末で、同2.9%増の255万8074人となった。このうち新規加入は14万6365人となっている。共済者数とも増加した一方で、建退共の収入となる掛金納付額は6.8%減の430億8000万円と減少した。また、実際に退職金として支払った件数も9.1%減の7万2724件、支払い平均額0.2%減の93万7000円、支払い総額9.3%減の 681億6000万円といずれも減った。
● 厚生労働省は2005年度から雇用・労災保険に加入していな事業所を強制的に加入させる「職権適用」に動き出す。新たに100人の非常勤職員を各地の労働局に配置し、未加入事業所の洗い出しと指導を強化。加入を拒み続ければ、職権加入手続きをして保険料を徴収する。加入に応じない間に労災事故が起きた場合には保険給付額を全額負担させる。
● 日本建設業団体連合会(平島治会長)、日本土木工業協会(梅田貞夫会長)、建築業協会(野村哲也会長)の3団体と、全国建設業協会(前田靖冶金長)は28日、労働災害時に労災保険を適用しない、いわゆる「労災かくし」の撲滅に向けた適切な対応を、会員会社や傘下団体にそれぞれ要請した。労災保険料のメリット制増減幅が06年4月にも他産業と同じ40%に拡大されるのを踏まえ、業界が一丸となって労災かくしの撲滅キャンペーンを展開する。ただ、厚生労働省の調査によると、労働者死傷病報告義務連反で送検された件数が建殻業の場合、03年1年間で100件、全件数の 75.8%を占めていることや、労災かくしの主な動機に下請業者の「元請けへの配慮」や「今後の受注への影響を懸念」など構造的な問題が挙げられていることなどから、業界をあげて労災かくしの撲滅運動を展開していく必要があると判断した。
● 国土交通省と農林水産省は29日、2005年度の公共工事設計労務単価(基準額)を決めた。50職種平均単価は前年度比1.8%減の1万7376円で8年連続でマイナスとなったものの、これまで2−3%だった減少率は縮小した。国交省は、減少率の縮小について、「若干の回復傾向にある雇用情勢が影響した」と説明している。主要11職種の平均は2.3%減の1万4842円となった。