情勢の特徴 - 2005年4月前半
● 日銀が発表した3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を表す業況判断指数人(DI)は大企業製造業で前回の昨年12調査に比べて8ポイント悪化し、プラス14となった。悪化は2.4半期連続。IT(情報技術)関連産業などの生産調整と原材料不足が響いた。ただ、非製造業の景況感が横ばいで踏みとどまったほか、全体として雇用の不足感も出始めている。
● 東京商工リサーチがまとめた2月の建設業倒産は、294件と前年同月比で15.0%の減少になった。これで2カ月連続して300件を割る結果になった。負債総額は521億6000万円で45.8%の大幅な減少になっている。とはいえ、倒産件数の79.5%までが、受注・販売不振、赤字累積、売掛金回収難を合わせた「不況型」といわれるもので、また、中小・零細企業がそのほとんどを占めるように、企業規模の小さい階層を中心に、苦しい建設業経営が続いている。
● 森トラストは、東京23区の大規模オフィスビル供給量調査結果を発表した。延べ床面積1万平方メートル以上の大規模オフィスビルの供給量は、05年は82 万平方メートルにとどまるが、06年はほぼ倍増の153万平方メートルに達する見通し。05〜08年の供給量の多い区では千代田区と港区が突出。両区がそれぞれ供給量の3割ずつを占める。特に「大手町・丸の内・有楽町」地区はこの4年間で約76万平方メートルの供給が見込まれている。
● 総務省がまとめた02年度行政投資実績によると、公共インフラの整備(土地取得含む)や維持補修に対する国・都道府県・市町村の02年度投資額は前年度比6.6%減の35兆9033億円となった。内訳は、国(特殊法人など含む)主体9兆1761億円(前年度比4.4%減)、都道府県主体11兆5364億円(同8.3%減)、市町村主体15兆1909億円(同6.7%減)。投資分野別では道路が10兆5882億円(同 3.3%減)で、調査を開始した62年度以来連続して最多を維持している。
● 東京都財務局は本年度、入札価格と施工能力を総合的に評価して落札者を決める「簡易型総合評価方式」を、予定価格4 億円未満の建築工事など中小規模工事で試行する。同方式を試行するのは財務局が発注する工事のうち、予定価格が▽4億円未満の建築工事▽3億2000万円未満の土木工事▽1億2000万円未満の設備工事。中小規模の建築・土木工事に工事成績不良が集中していることや、設備工事の2件に1件がくじ引き落札になっていることが、同方式を試行する理由だ。価格点と施工能力点の合計が最も高い応札者が工事を落札できる。
● 厚生労働省は、建設業の雇用状況を改善するために新設・拡充する補助金の詳細を決めた。業者間で技能労働者を融通する「建設業務労働者就業機会確保事業」(就業機会確保事業、10月開始予定)を手掛ける事業主や事業主団体を対象とした補助金を創設するほか、新分野進出を後押しする助成制度も立ち上げる。既存の補助制度も支給要件や支給額を緩和・増額する。新設する補助金のうち、就業機会確保事業の関連(法施行後開始)では、業者間で融通する技能労働者に教育訓練を実施したり、訓練を受講させたりする事業主団体に助成金を出す。助成率は経費の2分の1。中小建設藁主団体の場合は3分の2に設定した。融通する予定の技能労働者に、有給を使わせて教育訓練を受講させた事業主に対しては、労働者に支払う賃金の一部に補助金を支給する措置も立ち上げる。4月からは、労働者に教育訓練関係の講習を受けさせ、3カ月以内に再就職を実現させた事業主団体や事業主に助成金を交付する制度を始める。助成額は経費の6分の1。労働者の就職先が介護、住宅リフォーム、環境関係などの新規・成長分野の場合、助成額を経費の3分の1に引き上げる。 06年4月には「建設業新分野雇用創出給付金」(仮称)の支給を開始。事業主とともに新分野進出で雇用を創出した事業主団体に対し、労働者の人数に応じて事業経費を支給する。
● 建設業振興基金が2004年度から始めた海外建設研修生の受け入れが、156人となった。これにより、建設産業教育センターが91年度に受け入れを始めて以来、累計の研修生は3000人を突破することになる。全国鉄筋工事業協会が12社で39人、日本左官業組合連合会が1社で7人、関東専門工事業協同組合が3社で26人、福島国際交流事業協同組合が1社で3人など、いずれも中国からの派遣を受け入れた。大半は中国からの派遣生で、1年間の研修の後は、2年間滞在でき、この間、実際の工事現場で働くことによって、労働対価として賃金を得ることができる。こうした研修生のうち中国人は、日本企業の中国進出が著しいこともあって、日本のゼネコンの中国の工事現場で働くケースが多いという。
● 新しい労働契約ルールの法制化を検討している厚生労働省の研究会は、解雇時のトラブルを金銭で解決する方法などを盛り込んだ中間報告をまとめた。働き方が多様化し、現在の労働関係法では対応しきれない紛争が増えているためで、同省は2007年の通常国会に民法の特別法となる「労働契約法」(仮称)の提出を目指す。中間報告では、解雇を巡るトラブルで職場復帰が難しくなった場合に、企業側が社員に金銭を支私って解決する方法を盛り込んだ。企業ごとに労使で事前に解決金の額や手続きを決めておく案などを提示している。また、転籍時などには転籍先の財務内容や労働条件を書面で示して事前同意を得るよう義務づけるとした。整理解雇は配置転換や一時休業などの手段を尽くしたことを前提に、再就職の支援や退職金の加算など社員の負担軽費を指針で示す必要があるとした。
● 経営再建中の総合建設会社準大手の三井住友建設とフジタは10月1日付で建設・土木事業と不動産関連事業に会社分割するとそれぞれ発表した。2005年3月期は固定資産の減損処理などで両社とも大幅な債務超過に陥ったもようで、三井住友銀行などに合計2750億円の金融支援を要請する。