情勢の特徴 - 2005年5月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 国土交通省などが発注する鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事の入札談合疑惑で、東京高検は二十三日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で、三菱重工業(東京・港区)、石川島播磨重工業(千代田区)、横河ブリッジ(港区)、川崎重工業(神戸市)など談合組織に加わっていたメーカー各社と担当者宅など20 数カ所を捜索した。公正取引委員会の同日の刑事告発を受けたもの。対象には日本を代表する超大手企業が含まれ、市場規模で約3500億円にのぼる過去最大級の談合事件となる。公正取引委員会が告発したのは、昨年まで2年間に談合組織「K会(旧紅葉会、大手メーカー17社)」と「A会(旧東会、後発メーカー 32社)」で幹事者だった8社。
● 国内のPFI事業で、市場全体の規模を示すライフサイクルコスト(LCC)が、05年3月までに1兆円に達したことが、日本PFI協会のまとめで明らかになった。施設整備費と維持管理・運営費を合わせたコストで、04年度末までに契約調印されたPFI事業のLCCの合計額は、推計で1兆2595億円。このうち施設整備費の合計額は5816億円で、残る6700億円超を維持管理・運営費が占める。日本のPFIは、施設整備に主眼を置いた箱モノ≠ェ中心で、維持管理・運営段階で民間ノウハウを生かせる余地が少ないとされるが、維持管理・運営費も相当額に及ぶことが分かった。
● 2004年度の不動産証券化の実績が7兆5183億円と、前年度に比べ9割近く増加したことが、国土交通省の独自調査で明らかになった。同省は証券化を通じた資金流入が不動産取引の活性化につながっていると分析している。証券化の内訳は、不動産投資信託(REIT)が 9000億円、REIT以外の私募ファンドなどを通じた分が約5兆5000億円、一度証券化された物件の転売などが約1兆1000億円。REITは32%増、REIT以外は倍増。件数ベースでは66%増の1027件だった。

行政の動向

● 国土交通省が直轄工事(一般土木)を対象に落札率と完成工事総利益率(粗利率)の関係を調査した結果、落札率が低くなると、赤字幅を圧縮するために工事原価を減らすケースが増加することが分かった。そのうち約4割で下請けの原価割れが発生し、半数以上が工事成績70点以下となっている。同省では、ダンピング(過度な安値受注)が生じる構造を企業の会計処理などの観点から他産業と比較、分析し、その防止策を検討する構えだ。2002年度に契約を結び、03年度に完成した低入札価格調査対象工事113件を分析したもので、下請けの原価割れは49件、全体の43.3%を占めた。うち31件が工事成績70点以下だった。工事成績70点以下の合計は66件で全体の58.4%を占める結果となった。低価格入札(落札率85%未満)の工事は年々増加しており、04年度上半期では、同省直轄工事の7.2%が低価格入札で、1999年度に比べて5.1ポイント増えている。全都道府県でも 01年度9.2%から03年度上半期11.6%に増加している。
● 国土交通省は19日、国土を九つに分けたそれぞれの「地域ブロック」と、各ブロックを構成する住民の「生活圏」という二つの層に対応した交通政策などを検討した報告書を発表した。高速道路の断続区間(ミッシングリンク)の解消や羽田空港再拡張事業の早期完了による航空需要対策が急務などと指摘している。報告書は「ニ層の広域圏の形成に資する総合的な交通体系に関する検討委員会」 (委員長・森地茂政策研究大学院大学教授)がまとめた。具体策として、地域ブロックについては、ブロック間の交流を促進すると同時に競争環境を整えるため、道路のミッシングリンクの解消と航空サービスの充実を提案。短距離区間の整備で道路ネットワークが完成する路線の建設や、観光客や貨物の受け入れ態勢の高度化を目的とした空港整備事業の加速などを求めた。大深度地下空間を使った環状道路整備も必要だとし、東京外かく環状道路未整備区間などの早期事業化を提案した。生活圏に関しては、インフラの更新時に、配置、規模、機能などの最適化を図り、職場、住宅、学校、病院といった機能を都市の中心部にコンパクトに集中させるよう求めた。病院については、高規格幹線道路と連結させることの必要性を強調した。
● 国土交通省は23日、「公共工事における総合評価方式活用検討委員会」の初会合を開き、総合評価方式の適用拡大の方向性を示した。現行は対象外の中小規模の工事にも総合評価方式を適用することが重要と指摘した。一方で、現行の総合評価方式は、発注者、入札者双方の労力が大きく、拡大に結びつきづらいため、新たな総合評価方式を検討する必要があるとの見解を示した。同省は、高度な技術や優れた工夫などが必要な工事だけでなく、工事に必要な施工方法に関係する知識や一般的な技術力、工夫などを評価することで、工事の品質確保向上が期待できる工事にも総合評価方式を適用させたい方針だ。
● 住宅金融公庫は東京都墨田区と協力し、木造住宅が密集する市街地の再開発支援に乗り出す。老朽化した木造アパートなど利用効率の低い土地所有者の利害を調整し、賃貸、分譲マンションなどへの建て替えを促す。都心の木造住宅密集地は防災上、自治体も建て替え促進が望ましいとみており、公庫自体の直接、間接の融資案件開拓にもつながると判断した。同公庫、墨田区は防災上の観点から、まずは京島地区を再開発、建て替え促進が必要な最重点地区とみている。同公庫が再開発の支援対象に想定しているのは@狭い敷地にある老朽化した木造の一戸建て住宅A更地や青空駐車場としてしか利用されていない遊休地B入居率の低い木造アパート――など。こうした利用効率の低い土地に、地主の資金繰りがうまく行くような仕組みで分譲、賃貸のマンションを建設する。単独では狭過ぎたり、形がいびつだったりする低利用地は、土地所有者の権利を等価交換するなどの形で、周辺の土地と一括で活用する方式も検討。マンション建設には定期借地権を活用し、入居者が共同で資金を出し合い、建物を建設する「スケルトン定借」などを提案していく。

労働関係の動向

● 道路建設会社で働く社員の労働環境が悪化していることが、日本道路建設業協会が20日発表した新中期ビジョン「道路建設業の望ましい将来像に向けて」で明らかになった。03年に会員企業に行ったアンケート結果によると、土曜・祝日の社員の出勤率が、前ビジョンをまとめた96年に比べ大きく上昇していることがわかった。土曜日を「ほぼ毎週休む」と回答した内勤者は、96年が73%だったのに対し、03年は35%と半減した。18%の内勤者は「ほぼ毎週出勤している」と答えた。96年はゼロだった日曜出勤も、9%の内勤者が「月に2〜3回ある」と回答した。各社はここ数年、市場縮小に合わせたリストラを進め、不採算部門の統廃合や希望退職の募集などで人員削減を実施。96年に比べると人員は約3割減っており、これが人手不足を招いている可能性が高い。

資本の動向

● 大成建設、鹿島、清水建設、大林組の大手ゼネコン(総合建設会社)4社の2005年3月期連結決算が18日、出そろった。国内景気の回復基調を受け、民間設備投資や都市再開発案件が増加。大規模海外工事の受注などで工事採算が悪化した大成建を除く3社が経常増益となった。鹿島が13期ぶりに増配するほか、清水建も今期に15期ぶりの増配を見込む。単独ベースの受注高も、電機産業を中心に国内で設備投資が回復したことで軒並み増加。総額約6000億円の大型プロジェクトである羽田空港の再拡張事業も受注高を押し上げた。都市再開発事業の盛り上がりを受け、マンションやテナントビルなどの不動産開発事業の受注も好調だった。
● 不動産大手4社の2005年三月期の連結決算が出そろい、全社が経常最高益を更新した。三菱地所が14期ぶりに最高益を更新したほか、住友不動産が5期連続、東急不動産は4期連続の最高益となった。ビル賃住友不動産の連結売上高は7%増の6161億円、経常利益は3%増の743億円となった。「汐留住友ビル」(東京・港)など新規ビルの稼働が寄与し、賃貸事業が6%増益だった。菱地所はマンション引き渡し戸数が過去最高の3452戸で、部門営業利益は8%増。三井不も投資家向け分譲が好調なうえ、販売費の削減も寄与し7%増益だった。
● 住宅大手8社の2004年度連結決算が出そろった。ミサワHDが20日発表した2005年3月期の連結決算は、最終損益が2033億円の赤字(前の期は 1287億円の赤字)だった。減損損失など特別損失を計上し債務超過に陥った。パナホームは販売戸数が減少したが、太陽光発電システムなどを採用し維持管理費を削減した住宅の販売が好調で、営業利益が急増。積水化学も太陽光発電システムを使った住宅が好調だったほか、旭化成は耐用年数の長い住宅の販売が伸びるなど、機能性を高めた住宅が需要を伸ばしている。一方、最大手の積水ハウスは自然災害による完成の後ずれなどで販売戸数が減ったことが響き5%の営業減益だった。
● 海外建設協会がまとめた2004年度会員企業服(45社)の海外建設受注実績が1兆0617(前年度8982億円)と 4年ぶりに1兆円を突破したことが分かった。北米前年度比683億円増)、中東(同1061億円増)、東欧(同375億円増)などで大幅に増えたことが要因。国別では米国が前年度比4ポイント増加し19.7%と受注シェアが拡大、唯一2桁台を確保した。また、ベトナム、中国、トルコが増加した。契約形態は、設計施工、PM(プロジェクト・マネジメント)・CM(コンストラクション・マネジメント)が増加した。地域別では、アジアが1093件の5885億円で受注シェアは最大だったが、受注金額シェアは前年度の68%か55%に減少した。
● 上場ゼネコン各社の05年3月期決算が27日までに出そろった。減収と増収の社がほぼ半数で、需要が堅調な都市開発などの工事に強みを持つ企業や海外事業に注力した企業が増収を果たした〕不採算工事の受注抑制や販管費の削減などで2年連続で増益を達成した社も多く、安定的に利益を確保できる体制が定着してきた。 売上高は、国内建設投資の縮小を反映し、減収を余儀なくされた企業も多いが、総合力のある大手や準大手上位クラスは首都圏を中心に堅調な都市開発や超高層マンション、海外工事などで売り上げを伸ばした。工事の採算を示す単体ベースの完成工事利益(粗利益)率は、建築工事での赤字受注の排除と原価低減の取り組みで前年同期より改善させたところもあったが、逆に競争激化で悪化した企業も少なくない。 大手・準大手の多くは、リストラの進展により本業のもうけをしめす営業利益か増え、有利子負債の削減による金融収支の改善効果で経常利益も増加した。大手・準大手は減損会計の前倒し適用にとる不動産の含み損処理声終えた企業も多く、最終黒字が大半を占めた。受注高も多くの社が前の期を上回り、大手では2けたの伸びになったところも多かった。羽田空港再拡張工事が発注されたことも受注増に寄与した。

その他の動向