情勢の特徴 - 2005年6月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

● 東京商工リサーチがまとめた4月の建設業倒産は、281件で前年同月比20.3%の減少となり、再び300件の大台を割った。負債総額は462億200万円と65.2%の大幅な減少になっている。ただし、依然として受注・販売不振が176件、赤字累積が27、売掛金回収難が5件で、これら不況型といわれる倒産は208件で、全体の74.0%を占める結果になっている。企業規模別でみると、資本金1億円未満が280件で、中小・零細に集中している。
● 国土交通省は7日、2005年度の建設投資見通しを公表した。総額(名目ベース)は、前年度比2.7%減の51兆3300億円、9年連続の減少で、ピークだった92年度84兆円の61%にとどまった。政府投資は20年ぶりに20兆円を下回り、全体の投資水準は85年度の50兆円レベルにまで落ち込んでいる。内訳は、政府投資が8.4%減の19兆3000億円、民間投資が1.1%増の32兆0300億円。製造業を中心に好調な設備投資を維持している民間非住宅(土木含む)投資が全体を下支えしている。政府投資は、05年度当初予算の一般公共事業費(国費ベース)が前年度比3.7%減となり、地方単独事業費も8.2%減少することなどから、7年連続の減少を見込んでいる。

行政の動向

● 四国地方整備局(横田耕治局長)は、昨年度試行導入した「技術提案対話型入札」を、小規模(分任官、土木3億円未満)工事で適用するための検討に入った。四国地方整備局は昨年度、技術提案対話型入札を小坂高架橋と河ノ瀬高架橋工事の2件で試行導入している。中国地方整備局が最も優れた技術提案の一部に官積算を盛り込んだ予定価格を設定した通称岡山方式″に対し、四国地方整備局は最高提案者の見積もりをベースに予定価格を設定する四国方式≠導入した。これまでは技術提案対話型方式は大規模工事が対象。小規模工事でも技術提案対話方式が導入されれば、「業界がこれまで指摘してきた総合評価方式で総合評価管理費が計上されないとの問題も解決する」(四国地方整備局)。
● 建築物の安全確保を目指した改正建築基準法と、良好な景観の保全・形成を図る景観広が、1日に施行する。景観法の施行では、適切に維持・保全され良質な景観を生み出す建築物や街並みの保存に法的強制力が与えられ、美観を損ねるような開発事業者の計画を、行政の判断で中止にすることが可能になる。一方の改正建基法では、老朽化の著しい建築物に対して、是正命令が出せるようになる。
● 東京都は首都直下地震など大規模地震の発生に備え、建築物の耐震性向上策を強化する。検討課題には耐震改修費用を助成・補助する制度の創設などが含まれる見通しだ。検討項目は、▽木造住宅の耐震化促進に向けた仕組みづくり▽防災上重要な建築物・公共施設の耐震性向上▽その他建築物の耐震化に向けた取り組み強化――の3点。木造住宅については、耐震改修の普及啓発、工事費用の負担軽減(助成・補助制度や税制優遇措置の創設など)、優良な設計・施工業者の育成と不良不適格業者の排除、安価な耐震改修技術の開発などの施策の具体化を目指す。
● 国土交通省が04年度に発注した工事のうち、中小建設業者への発注率(金額)が前年度を0.2ポイント上回る50.8%となり、「50%以上」と設定した目標を達成した。同省は本年度も中小建設業者への受注機会の確保に向け、▽分離・分割発注の推進▽経常JVの活用による上位ランク工事への参入機会の拡大 ▽下位ランク業者の上位ランク工事への参入機会の拡大――などに引き続き取り組む。
● 国土交通省は、自己負担では住宅の耐震改修が困難な低所得者に代わって地方自治体が簡易かつ軽微な耐震改修を実施する新たな事業の検討に入った。数十万円程度で実施できる低コストの耐震改修工法を開発し、従来の助成事業と同程度の負担額で必要最小限の耐震補強を行う考え。全国の住宅(約4700万戸)のうち、耐震性が不足している住宅は全体の約25%、約1150万戸と推計されている。この中には、自己負担での耐震改修が難しい住宅所有者が一定数いるとみられることから、地震時の被害を抑抑えるため新事業の早期具体化を目指す。
● 国土交通省は、不特定多数の人が集まる特定建築物の耐震化率を、今後10年間で9割まで引き上げる方針を決めた。03年の推計値によると、耐震性能が不足している特定建築物は全国に約9万棟あり、これを15年までに約4万棟に減らす。老朽化などで建て替えられるものを除くと、年間に約3000棟のビルが耐震改修の対象となる。国や地方自治体による支援策を強化。耐震改修費用の一部を税額から控除する税制優遇制度の創設や、全国の市町村への相談窓口の設置、低コストの耐震改修工法の開発などを進める。

労働関係の動向

● 総務省が発表した労働力調査の今年1-3月平均の「詳細結果」によると、労働者に占めるパートなど非正規社員の割合が32.3%と過去最高になった。特に、次代を担う15-24歳層労働者では半数近い48.2%が非正規社員で、過去最高だった。同詳細結果によるとパート・アルバイト、派遣社員、契約社員などのいわゆる「非正規の職員・従業員」は、ことし1-3月は1年前の同期に比べ三36万人増の1591万人。一方、「正規の職員・従業員」は1年前より 47万人減の3333万人だった。
● 住宅生産団体連合会(会長・和田勇積水ハウス社長)は、2004年度低層住宅の労働災害発生状況報告書をまとめた。労働災害発生件数は前年度を17件下回る598件で、若干減少した。完工棟数1000棟当たりの労働災害発生率も3.2件で、前年度の3.3件に比べてわずかだが改善された。作業分類別の労働災害発生状況では、建方が24.6%、内部造作が23.9%で、ほかの作業の災害発生率が1桁台なのに対し、2桁台と群を抜いて災害発生率が高く、両方を合わせて50%近くを占めている。住団連は「(建方は)大工、とび、玉掛け者、重機オペレーター・運転手など多職種の作業者が混在するため、連携プレイや気配り、目配りが必要で、適切な作業計画の作成、作業前ミーティングが重要」と指摘している。原因・型別労働災害発生状況は、墜転落災害が47.7%で圧倒的に高い。

資本の動向

● ゴールドマン・サックス証券や森トラストなどで組成する投資ファンドがフジタの第3者割当増資の引受先に決まった。フジタへの出資は森トラストとの共同だが、大半が同ファンドからの出資とみられる。ゴールドマンはフジタの非中核ビジネスである不動産関連事業でも収益チャンスをうかがう。ゴールドマンはフジタに役員を送り込む可能性があり、経営改革を監視することで株価上昇によるキャピタルゲイン(値上がり益)を狙う。投資銀行業界では、本業である M&A(企業の合併・買収)仲介の利ザヤが世界的に縮小しており、ゴールドマンは自らが投資家に変身し、新たなビジネスモデルを打ち立てた。ゴールドマンは4月、過去最大規模となる総額85億ドルの投資ファンドを設定した。
● 大手総合建設会社(ゼネコン)が不動産開発事業を拡大する。清水建設が東京都心部を中心にオフィスビルなど八件の案件に着手。大成建設も都心部を中心に今期から2年間に320億円を投じ、前期より大幅に上積みする。鹿島を含む大手3社は前期までにバブル期の負の遺産処理が終了したのを受け、資金力を生かした積極策で建設受注拡大を狙う。バブル期の不動産投資の失敗で、大手4社だけで計2兆円前後の損失を処理した。前期までに負の遺産をほぼ一掃。大手各社は開発事業を拡大するが、不動産証券化などの手法を使い資金回収を早める。

その他の動向