情勢の特徴 - 2005年6月後半
● 日本プロジェクト産業協議会(JAPIC、千速晃会長)は23日、東京駅と羽田空港を直結する地下鉄高速鉄道「ベイエリア縦断ライナー」構想を発表した。東京駅から晴海・豊洲など今後も発展の可能性が高い東京湾臨海部を経由し羽田空港までを新規地下鉄でつなぐ。ことし東京湾臨海部を海外からの観光客・ビジネスの国際交流拠点で、住みやすい街となる国際性豊かな陸海空の一大結節点として位置付けている。
● 農林水産省は、農地や農業用水路などの新たな保全施策の検討に乗り出す。全国には農地が約470万ヘクタール、農業用水路が延長約40万キロあるが、農村の過疎化や少子高齢化が進み、現状のままでは維持管理が難しくなることが懸念されている。このため、21日に有識者らによる検討会を立ち上げ、ストック保全の新たな担い手確保や保全管理手法を探る。農水省は、地場の建設業者は地域に密着している上、重機も所有していることから「担い手の一員として十分に考えられる」としており、建設投資が減少する中で、中小建設業者の生き残り策の一つにつながる可能性もある。
● 国土交通省は、本年度発注する直轄工事で、総合評価落札方式の採用割合の目標を4割(金額ベース)以上に引き上げる。04年度までは2割以上を目標に実施していたが、価格だけでなく技術力を加味した新しい入札・契約方式の普及を目指し、採用を増やす。このうち3割分は従来と同様の総合評価落札方式とし、1割分に現在検討中の「簡易型」を適用する考えだ。
● 国土交通省中国地方整備局は、総合評価落札方式で技術提案の再提出を認める「技術審査方式」のスキームを固めた。一番札(落札予定者)の業者の提案を審査後、その業者に二番札以下(非落札者)の優れた提案を用いる機会を提供する。審査によって、一度提出した技術提案に改善点があれば、非落札者の提案を参考にするなどして改善案を再度提出することを認める。予定価格は、技術提案の再提出後に作成する。発注者側には応札業者の提案に対する守秘義務があり、非落札者の提案の提供方法や、落札予定者と非落札者という業者間のやり取りにどう関与するかなどが課題になる。改善提案の求め方によっては、受注価格を単純にカットする「歩切り」になる恐れもあり、慎重な運用を図る必要がありそうだ。
● 政府は独立行政法人に移行した研究機関などの職員身分の非公務員化を進めるため、各機関の設置法改正などの関連法案を今秋の臨時国会に提出する。来年四月の実現を目指す。来年三月で独法化後3−5年になり、経営の中期目標期間が終わる53法人のうち、公務員型を続ける必要性の薄い研究・教育関係機関は非公務員化することにした。
● 社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)の住宅宅地分科会基本制度部会(八田達夫部会長)は、今後の住宅政策の方向性を示した報告案をまとめた。国が住宅建設戸数の目標を示す従来の計画体系に代わり、人口減少や超高齢化を見据えたストック重視・市場重視の長期計画が必要だと提言。重点施策分野には▽市場重視型の新たな住宅金融システム整備▽中古・リフォーム市場の整備▽住宅セーフティーネットの機能向上▽市街地の居住環境整備の推進―を掲げた。各主体の役割を明確化させる必要があるとも指摘。国が税制・金融など制度インフラの整備、自治体が地域の実情に応じた住宅政策の推進主体になる形を提案した。重点施策として、証券化による民間住宅ローンの安定供給、住宅性能表示制度の充実や取引価格情報の提供などを打ち出した。
● 勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済(建退共)事業本部は、04年度に実施した建退共制度の実態調査結果を踏まえ、新たな制度改善方策をまとめた。改善方策は、▽就労実態に即した共済証紙の購入の促進▽被共済者による証紙貼付状況確認の徹底▽建退共制度浸透とともに増大する事務負担の軽減▽2次以下の下請け事業主の加入勧奨▽ICカードなど新掛け金納付方式の調査検討推進−の5本柱。証紙購入については、工事ごとに対象労働者数と労働日数を把握して算出することを基本とし、把握が困難な場合には労働者の建退共加入率を勘案した一定割合を用いて算出することを求める。