情勢の特徴 - 2005年7月後半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●「政府は15日、2005年度の中小企業向け官公需契約目標を官公需総予算の46.7%に当たる4兆3441億円とする方針を閣議決定した。04年度目標比で割合は1ポイント上回ったものの、目標額は1582億円のマイナスとなる。05年度からは、従来、一括していた目標額と割合を物件、工事、役務に細分化して公表している。中小企業の受注機会拡大に向けては、指名競争での同一資格等級者による競争確保や、中小工事の早期発注、分離・分割発注の推進などを盛り込んでいる。…分離・分割発注については、公共事業のコスト縮減の観点から、適切な発注ロットの設定が求められていることを前提にしつつも、中小企業庁が7月中にまとめる事例集などを参考に、可能な限り推進することを要請している。」(『建設通信』2005.7.19)
●「東京商工リサーチがまとめた6月の建設業倒産は、376件で前年同月比7.7%増となった。増加は、2年10ヵ月ぶりのこと。負債総額は848億8400万円で14.2%の増となっている。原因別でみると受注・販売不振、赤字累積、売掛金回収難の不況型を合わせた件数は304件となり、全体の80.8%に達した。業種別の倒産では、総合工事業が205件を占めている。倒産企業のほとんどは、中小・零細となっており、この傾向は当分続くものと見られる。(『建設通信新聞』2005.7.26)政府の景気回復判断とは異なり建設業者の破綻が増加に転じたことは「景気回復」の実態に限界を表しています。

行政の動向

● 独立行政法人住宅金融支援機構が参議院で可決され、交付された。「これにより平成19年4月1日に、住宅金融公庫が廃止され、その権利及び義務を引き継ぐ(独)住宅金融支援機構が設置されることになった。支援機構は、(1)民間金融機関による住宅資金の融通支援義務(@民間住宅ローンの債権を買い取り証券化する証券化支援業務A民間住宅ローンに対する融資保険業務)を主軸業務とするほか、(2)災害関連、都市居住再生など民間金融機関による融通が困難な分野に限定した直接融資(個人向け住宅融資は災害関係と財形住宅融資、都市居住再生融資では密集市街地建替えや子育てファミリー向け賃貸住宅建設など)、(3)最良のローン選択や良質な住宅建設等が可能となるための情報提供等を行う。」(『日本住宅新聞』2005.7.15.)これにより、銀行債権を買い取り、証券化することが住宅金融公庫の主要な業務となる。広範囲にわたって国民に住宅建設資金を融通することはなくなり、金融資本のための新たな投資対象を国家財政を投入して創出するための機関に変質させられることになる。
●「政府の規制改革・民間開放推進会議(議長=宮内義彦オリックス会長)が29日に中間報告する今年度の規制改革の重点項目の内容が固まった。最大の柱は市場化テスト法の骨子案だが、公平性を担保する役目の第3者機関については対象事業や落札者を決定する権限が見送られた。」(『日本住宅新聞』2005.7.25。)
● 日本道路公団が発注した鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部は、独禁法違反容疑のほう助と背任容疑で、公団副総裁内田道雄容疑者を逮捕し、公団本社やどう容疑者宅などを捜索した。メーカーに天下った道路公団OBを中心とした橋梁談合は、公団現職ナンバー2で技術系トップも関与した「官製談合」に発展した。内田容疑者は2004年5月、公団が発注した「富士高架橋」(静岡県)の工事について、受注調整を主導した元理事神田創造容疑者(独禁法違反容疑で逮捕)からの以来を受け、分割発注するように内部に指示し、談合を容易にした疑い。さらに、分割発注によって、少なくとも約5000万円の不必要な支払いを講談にさせ損害を与えた。(『赤旗新聞』2005.7.26より抜粋。)
●「文部科学省は、校舎や体育館など公立小中学校施設の耐震化予算について、市町村の使い勝手をよくするため、細かく使途を縛らない『安全・安心な学校づくり交付金』(仮称)を創設する方針を固めた。今年4月現在で52%にとどまっている耐震化率を効果的に引き上げるのが狙い。国が各市町村単位で交付金の配分額を決定。その範囲内であれば、改築や耐震補強など各事業の進ちょく率に応じ、市町村が事業費などを変えられるようにする。同省は関連経費を2006年度予算概算要求に盛り込むほか、来年の通常国会に関連法案改正案を提出する。交付金は千数百億円規模となる見通し。(『日本経済新聞』2005.7.31。)

労働関係の動向

● アスベスト(石綿)の健康被害問題で、旧労働省(現厚生労働省)が作業場での石綿粉じんの濃度を規制する基準値(作業環境評価基準)を1976年から今年 4月まで29年間も変更しなかったことが分かった。基準値のレベルは世界保健機関(WHO)が安全の目安とする基準の200倍。この間、作業員らが石綿吸引が原因の中皮種で死亡する報告例が相次いでも、同省は基準値のレベルを下げなかった。」(『日本住宅新聞』2005.7.21)
●「厚生労働省と経済産業省は、アスベストによる健康被害が数多く確認されていることから、『石綿の代替化に関する緊急会議』を開き、ジョイントシートやシール材など製造販売が禁止されていない石綿含有製品について、『遅くとも08年までに(取り扱いを)全面禁止』することを決めた。禁止除外製品の取り扱いに関して厚労省が期限を設定したのは初めて。・・・新たに設置する検討会では、『代替化が難しい石綿製品もある』(関係者)ことから、代替化が可能な製品の見極めを優先的に進め、可能な製品から対応策を講じていく方針。ただ、『石綿の有用性に配慮する必要がある』といった指摘も産業界から寄せられているため、代替化や全面禁止といった措置を講じる際には、一部の産業団体との交渉が難航する可能性もある。」(「建設工業」2005.7.22。)政府は過去の誤った対策を反省し、アスベスト製造、輸入業者などの抵抗に対してもきっぱりと早期全面禁止の措置をとることが求められている。
●「政府のアスベスト(石綿)被害の拡大防止や被害者救済に向けた当面の対策案が28日、明らかになった。労災補償を受けずに死亡した労働者や家族、周辺住民への対応は9月までに結論を出すと明記。現在も含有製品を使っている業者に早期の代替化を促し、2008年としている石綿の全面禁止時期の前倒しも検討する。・・・被害の労災申請後は死後5年以内に限られる。石綿が原因とされるがんの一種『中皮種』は潜伏期間が 30-40年。家族や周辺住民には労災が適用されないため、補償には公害による健康被害の認定が必要だ。対策は「幅広く検討」とし、時効期間見直しや公害認定拡大などを協議する。」(『日本住宅新聞』2005.7.29。)
●「厚生労働省は、最近の雇用情勢を分析した2005年版の労働経済白書を発表した2004年のフリーターの推計値は 213万人と前年より4万人減ったものの、高止まりが続いた。進学も就職もしてない『ニート』も前年並みの64万人と過去最高水準が続いた。・・・若者の雇用情勢について『企業の即戦力思考が大きな影を落としている。今後も変化がなければ、社会全体として人材が枯渇する』と警告。・・・団塊の世代の退職で企業の労務コストは現在の216兆円から毎年約1兆円ずつ減ると試算。このコスト減少分を若年者の計画的な採用などに振り向け労働者の意欲などを引き出すべきだと提言した。」(『日本住宅新聞』2005.7.22。)
●「総務省が29日発表した6月の経済指標によると、雇用の改善が続き、家計消費が底堅く推移した。同月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.2ポイント低下の4.2%となり、6年11ヵ月ぶりの低い水準まで改善した。サラリーマン世帯の実質消費支出も3ヵ月ぶりに前年同月を上回った。景気が『踊り場』脱却へ向け前進していることを示している。」(『日本住宅新聞』2005.7.29。)完全失業率者数はこの間減少してきているとはいえ280万人にのぼる。さらに、雇用労働者中の非正規雇用の比率は拡大しており、最終的な購買力の拡大は見られない。構造改革による景気回復の限界が現れている。
●「アスベスト(石綿)の健康被害で、建設省が各省庁の庁舎や公務員宿舎など国有建物の『建材の非石綿化を進める』方針を1987年9月に決定していたことが29日わかった。石綿の一般使用が原則全面禁止されたのは昨年10月。同法律18年前に省庁が石綿の危険性を認識したことを裏付けており、抜本対策に踏み切らなかった当時の政府の対応に批判が集まりそうだ。・・・アスベストの健康被害で、厚生労働省は29日、 1999-2000年度に石綿の吸引が原因で発祥する中皮種や肺がんで労災認定を受けた人がいた234ヵ所の事業所を公表した。・・・04年度までの6年間に労災認定を受けた531人が所属していた383ヵ所の事業書名を公表した。事業所名を公開することで、同じ事業所にいた人や周辺の住民らに注意喚起するのが狙い。早期の健康診断を呼びかけている。業種別では、製造業が48%、建設業が43%。」(『日本経済新聞』2005.7.30)

資本の動向

● 「自治体と民間企業が出資する株式会社「第三セクター」の経営悪化が深刻だ。日本経済新聞社の調査によると2005年3月期末に累積欠損金が100億円を超えた三セクは24社となり、累損総額は6351億円と前の期に比べて425億円増えた。東京都と大阪府が収益改善の見込めない三社の法的整理に踏み切るなど抜本処理の動きも広がっている。最も累損が多かった東葉高速鉄道(千葉県八千代市)は、輸送人員が減り続けるなかで鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧日本鉄道建設公団)に対して3000億円を超す未払い金を抱える。千葉県や船橋市、八千代市は8月から経営支援策の見直しを検討する。東京都は債務超過にある2社の法的整理を決断した。臨海副都心で賃貸ビルを経営する東京ファッションタウン(東京・江東)とタイム二十四(同)で、東京地裁に三月、民事再生法の適用を申請した。業績が好調な東京ビッグサイト(同)との経営統合をめざして再生計画案を策定中だ。関西国際空港の対岸で高層ビルを経営する大阪府の三セク、りんくうゲートタワービル(泉佐野市)も四月、大阪地裁に会社更生法の適用を申請した。・・・04年は湊町開発センター(大阪市)や大阪ワールドトレードセンタービルディング(同)など金融機関の債権放棄を求める特定調停が相次ぎ成立したが、この方法だと自治体の責任が不明確で再建が先送りされるとの指摘があった。今後は責任がより明確になる更生法や再生法の申請の動きが加速しそうだ。」(『日本経済新聞』2005.7.27)民間投資を呼び込もうと行われた3セクによる基礎整備やビル建設の思惑がはずれ累損が拡大している。過剰投資となっている大規模インフラ整備、ビル開発は中止すべきである。

その他の動向