情勢の特徴 - 2005年8月前半

経済の動向 行政の動向 労働関係の動向 資本の動向 その他の動向

経済の動向

●「大手銀行グループ(UFJホールディングスを除く)の2005年4-6月期の業績が出そろった。不良債権処理が峠を越え、6行のうち4行の純利益が前年同期比で2ケタ以上の増加となった。不良債権処理に備えたこれまでの引当金が景気回復を背景に不要になり、利益に上乗せされたのが主因。既存の貸出先からの金利収入も依然として大きい。みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、今年10月誕生する『三菱UFJ』の3メガバンクは年換算した純利益が5000億円超の高水準に達する公算。NTTやホンダなどの優良企業並みの収益水準となる。・・・本業のもうけを示す実質業務純益は三井住友や三井トラスト・ホールディングスを除くと前年同期比で増えており、投資信託や年金保険などの販売に伴う手数料収入の増加に支えられている面が大きい」(『日本経済』 2005.08.02)。構造改革政策の下、国民経済全体は依然として停滞傾向にある中で、グローバル企業とメガバンクのみが突出して利益をあげる状況が改めて鮮明に現れた。
●「東京商工リサーチがまとめた2005年上期(1月−6月)の建設業倒産は、1860件で前年同期比11.3%の減少になった。これで3年連続で前年を下回った。負債総額は4587億2900万円で36.3%の大幅なマイナスとなっている。受注・販売不振が1201件、赤字累積が230件、売掛金回収難が 28件で、これらの不況型をあわせると1459件に達し、倒産件数全体の78・3%を占める結果になっている」(『建設通信』 2005.08.06)。建設業者の倒産は、減少傾向にあるものの年間で3500件を超える規模で発生しており、内容的にも不況型が8割を占めている。大手ゼネコンは別にしても、建設業全体では依然として深刻な状況にあることに変わりはない。
●「内閣府が12日発表した4-6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.1%増となった。プラス成長は3.4半期連続。個人消贅と設備投資が堅調に推移し、輸出から輸入を差し引いた海外需要も1年ぶりのプラスに転じた。・・・最高値圏で推移する原油価格など先行きの懸合材料はまだある。過熱気味の成長が続く中国や米国の景気が、日本経済にどう影響してくるのかも読みにくい。もし、企業収益への打撃が広がるようであれば、企業部門から家計に好循環が及んでいる現在の景気回復は揺さぶられる。民需主導の成長をたどる日本経済は、海外発の不透明要素にどれだけ抵抗力を備えているかが試される」(『日本経済』 2005.0812)。「背景にあるのが、企業収益の伸びに支えられた雇用環境の改善。問題はこうした好循環の持続力。90年代以降の不況やデフレ期に企業はリストラをしやすい『非正社員』を増やしてきた。雇用者に占める非正社員の割合は3割を超えるまでになった。雇用の流動化が進んだ分だけ、企業は給与や賞与を減らしたり、人減らしに動きやすくなる。言い換えれば、所得増→消費増の循環は企業業績次第で崩れるもろさを抱えていることになる」(『日本経済』 2005.08.13)。

行政の動向

● 文部科学省は、公立学校施設の耐震化を促進するため、学校の施設整備関連の国庫補助金を統合した上で使途や採択要件を大幅に拡大する「(仮称)安全・安心な学校づくり交付金」を創設する方向で調整に入った。06年度予算の概算要求に盛り込む方針で、予算規模は1300億円前後となる見通し。耐震化のほか、新設や改修に充当できる学校の施設整備関連の国庫補助金は本年度1300億円ほど予算が確保されているものの、国と地方の税財政を見直す三位一体改革で地方6団体はこの補助金を廃止して地方に財源を移譲するよう政府に要望している。廃止された場合、移譲された財源を学校の耐震化に充てるかどうかは各自治体の判断となるため、学校の耐震化については地域ごとにばらつきが生じる可能性がある」(『建設工業』 2005.08.02)。単に地方自治体の裁量を拡大するということに留まらず、耐震化のための必要な措置を保障する予算の抜本的な増額が求められている。

労働関係の動向

●「臨海都民連は6 月3日から3日にかけて、全都でいっせいに実施したカプセルによるNO2易測定調査に参加し、臨海副都心周辺地域などを測定。その結果、臨海副都心周辺地域32ヵ所(有効測定数)のうち、25%にあたる8ヵ所で環境基準(0.04−0.06ppmのゾーン以下)を超えました。今回最高濃度のNO2を測定したのは、江東区有明のテニスの森公園前の湾岸道路沿いの0.079ppm。同区有明の夢の大橋のたもとで0.067ppm、有明クリーンセンター前が 0.062ppmと環境基準を超えた。江東区青海でも汚染がめだち、休憩所前で0.072をppm測定したのをはじめ、青海縦貫道路沿いが軒並み環境基準を超えた。東京臨海部では、大型トラックの通行量が多い湾岸道路に加え、2002年春には大田区域南島と中央防波堤内側埋立地を結ぶ東京港臨海トンネルが開通。大型車を中心に1日約3万台が臨海部に流入しているため、青海地区の汚染が悪化する原因となっている」(赤旗 2005.08.02)。臨海副都心周辺地域の大気汚染をはじめとする住環境の劣悪さは、震災問題とともに、臨海部における超高層ビルの大量供給と都心居住の最大の難点となっている。
●「アスベスト(石綿)による健康被害から労働者を保護する措置を定めた石綿安全条約(石綿の使用における安全に関する条約)への日本の加盟手続きが、同条約発効から16年を経てようやく完了。政府は11日、ジュネーブの国際労働機関(ILO)事務局に条約の批准書を寄託した。来年8月11日に発効する。同条約は1986年のILO総会で採択され89年に発効し、27ヵ国が批准している。政府は今月5日の閣議で、ようやく石綿安全条約の締結を決定。先の通常国会で批准が承認されました。日本が、条約が義務付けた青石綿使用禁止をとったのは95年と採択から10年近く遅れました。国内法令と条約上の義務が整合したのは、昨年10月からアスベスト製品の原則製造・使用禁止やことし7月から施行された石綿障害予防規則を制定したことから。日本政府のあまりにも遅すぎた条約批准で、建設労働者はじめ工場労働者、その家族や住民にまで肺がんや中皮腫などの健康被害を拡大する結果を招いたことに批判がでている)(赤旗 2005.08.12)。
●「人事院は15日、2005年度の一般職国家公務員給与について、月給を平均0.36%(1389円)引き下げるよう国会と内閣に勧告した。年間給与は平均0.1%(4千円)の減額で、2年ぶりのマイナス勧告となった。同時に、民間給与が低い地域での公務員への高給批判を考慮し、06年度から基本給を平均4.8%下げることなどを柱とする給与構造の抜本改革の実施を求めた」(『日本経済』 2005.08.15)。今回の人事院の再度の国家公務員給与のマイナス勧告と民間給与の低い地方での基本給の引き下げ提案は、民間企業における非正規雇用化を含む賃金引下げの流れを人事院が容認・追随するもので、人事院の公的な役割や公務員の労働基本権制限の正当性が問われる事態と言える。

資本の動向

●「清水建設は、総合的な防災対策の技術研究に力を入れ始めた。免・制震などの構造的な事前対応に加え、地震発生時から事業継続までを見据えた一連の防災対策のシステム化を検証している。防災対策システムは、気象庁が提供する緊急地震速報と、自社で開発した建物構造の性能評価モニタリングシステムを組み合わせ、地震発生時の対応と地震後の建物状況を迅速に把握する。収集データはリアルタイムにデータセンターに自動転送され、建物の供用や復旧の早期開始の判断に役立てるという」(『建設通信』 2005.0812)。

その他の動向

● 「昨年10月に起きた新潟県中越地震の被災住民に対し内閣府が実施したアンケート調査の結果が明らかになった。地震によって宅地の地盤に被害が出た世帯は新潟県小千谷市と川口町でそれぞれ44.3%、65.5%に達しており、家屋の建て替えだけでなく、地盤復旧を含めた総合的な住宅対策が必要となっている実態が浮き彫りになった。仮設住宅に入居している住民からは「狭い」「防音が悪い」「結露がひどい」など劣悪な住環境を指摘する意見も寄せられた。調査結果は中山間地域の地震防災対策を議論している専門検討会」(座長・河田恵昭京大防災研究所長)の提言に反映される(『建設工業』 2005.08.11)。