情勢の特徴 - 2005年11月後半
●「財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は21日、『06年度予算の編成等に関する建議』(意見書)をまとめ、谷垣禎一財務相に提出した。建議は、06年度予算について『今後の歳出・歳入一体改革の基礎を固める極めて重要な予算』とし、公共事業をはじめ各分野の歳出削減の必要性を強調。公共事業については、人口減少社会の到来や維持更新費の増大を踏まえて既存ストックの有効活用を進め、新規投資を抑制するよう求めた。財務省は建議に沿って予算案の編成作業を進め、12月20日に原案を各省庁に内示する予定。建議では、公共事業について、ストックの有効活用と新規投資の抑制を求めたほか、物価や地価の下落、コスト縮減によって『事業量を確保しつつ、公共事業費の規模を抑制していくことができる』と明記。歳出削減に向けた対応を国土交通省などに求めた。防災関係の事業については『対策の重要性が再認識されている』と必要性を強調した上で、事業の優先順位付けなどを実行すべきだとの見解を示した。……公共事業以外の分野では、地方財政について、執行額が計画額に届かなかった投資単独事業など地方財政計画の歳出項目の規模を早急に見直すよう求めた。国と地方の税財政を見直す三位一体改革については、4兆円の国庫補助金削減と3兆円の税源移譲を『確実に実現する』とした上で、建設国債を財源とする公共投資関係の国庫補助金は『移譲する財源がない』『(移譲は)極めて問題が多い』と主張。地方向けの国庫補助金は、整理合理化の主体を公共事業分野から自然増の続く社会保障分野に移すべきだとの考えも示した。政府開発援助(ODA)については、『予算を削減して、事業量の拡充と国内の歳出改革への取り組みとを両立するべき』とした。」(『建設工業』2005.11.22.)
●「国土交通省が、今後おおむね10年のうちに進める道路事業の概要が17日、明らかになった。都市再生プロジェクトに位置付けられている首都圏の環状高速道路について、2010年代前半の完成を目指すほか、災害時の緊急輸送道路の橋梁約1万6500橋の耐震補強をほぼ終える考え。道路特定財源の一般財源化をめぐる議論の中で、道路整備の必要性を主張する材料として利用するほか、08年度から始まる次期社会資本整備重点計画に盛り込む道路関係の事業・政策に反映させる方針だ。……高規格幹線道路も、『ネットワークを概成』させるとしている。主要渋滞ポイントは、『日中の渋滞の激しい個所の解消・緩和』を目指すとし、現在ある『開かずの踏切』は『すべてで対策を実施し、解消』するほか、歩道の狭い踏切も拡幅をはじめ『速効対策を完了』させるとした。中心市街地の無電柱化と、乗降客5000人以上の駅と公共施設を結ぶ経路のバリアフリー化を『概成』させる考えも盛り込んだ。現状では、▽主要渋滞ポイント1900ヵ所の対策が未実施▽開かずの踏切(遮断時間40分以上)約600ヵ所と歩道の狭い踏切約700ヵ所の対策が必要▽ 高規格幹線道路5270`が未供用▽計画延長で約1210`ある3大都市圏環状道路の約6割(697`)が未供用▽約1万6500橋の耐震補強が必要−などとしている」(『建設工業新聞』2005.11.18。)
●「近畿地方整備局の04年度の低入札価格調査実施状況が17日までに明らかになった。低入札発生状況は全契約 1548件中、132件で、発生比率はc9%。集計が公表され始めた99年度以降を含め6年以上連続して全整備局で一番多く、発生率はここ数年で全国平均の2〜3倍ある。……同局が低入札価格調査時に実施した業者へのヒアリングによると、施工実績を得るためが36件(28%)と最も多く、受注量確保のためとした19件(14%)を合わせた『積算を度外視したと思われる低入札』が55件と全体の42%を占め、受注環境の厳しさが浮き彫りとなった。……04年度に発生した132件の工種別内訳は、一般土木が43件、維持修繕が24件、次いで建築19件、造園10件、電気設備8件、As舗装7件、塗装7件で、その他は5件以下。これを落札率平均でみると、塗装の54.6%(調査基準価格の平均75・5%)が最も低く、造園の59・5%(同74・3%)、法面の 61・7%(同76・9%)と続く。逆に最も高いのは建築の73・6%(84・4%)であり、一般土木は68・6%(同77・2%)だった。また、個々の発注では、道路植栽工事(造園)で22・9%で落札したものがあり、これは予定価格2292万円に対し、525万円で入札している。一方、低入札価格調査時に実施した業者へのヒアリングによると、低入札を行った理由として『今後の入札参加を有利にするため、施工実績先付ける』が36件(132件に占める割合28%)と最も多く、次いで『下請の協力・資材調達』が28件(同21%)、『経営維持のための受注量の確保が19件(同14%)で、『コスト縮減など』 『自社施工(製作)』 『近隣で施工中』『会社が現場に近接』は10〜12件(同8〜9%)。最も低いのが『得意分野・工夫』で5件(同4%)だった。」(『建設工業新聞』2005.11.18。)
●「総務省が29日発表した10月の完全失業率(季節調整値)は4.5%となり、前月比で0.3ポイント上昇した。景気回復や企業の業績改善を背景に、仕事をやめて好条件の職を求めたり、主婦層などで職探しに動く完全失業者が増えたためだ。企業に勤める雇用者数が 5457万人と過去最多を更新、雇用情勢は改善が進んでいる。働いている人の総数である10月の就業者数は6409万人で、前年同月比57万人増と6ヵ所月連続の増加。このうち企業が雇っている雇用者は95万人の大幅増となった。好調な医療・福祉、サービス業だけでなく、製造業や卸売・小売業にも増加の動きが広がっている。……職探しをする人が増えたことで全体の失業率は上昇。男女別でも男性が前月比0.2ポイント、女性が0.3ポイント上昇し、ともに 4.5%になった。25−44歳の女性の上昇が目立ち、主婦層の参入の動きが鮮明になった。」(『日本経済新聞』2005.11.29。)
●「厚生労働省東京労働局は、管内の建設業42社の安全衛生管理状況についての実態調査結果をまとめた。それによると、現場管理者や下請事業者に対する安全衛生教育が一部未実施の企業が25%に達したほか、内容を変更した作業手順章の周知が不十分な企業も15.2%あった。大半の現場では作業手順書の作成を 1次下請事業者に任せていることもわかった。東京労働局は、労働災害が増加する傾向にある年末に向け、監督指導を強化するとともに、建設業労働災害防止協会東京支部による現場パトロールを拡充。労災防止の徹底を図る。……作業手順事に関しては、1次下請事業者に作成を委ねている事業所が84.3%で、元請事業所が策定している割合は15.7%にとどまった。作業手順書について、▽周知が的確でない=15.2%▽変更・修正事項が未実施・一部未実施=26.1%▽実施状況の確認が一部未実施=19.6%−などの結果も出た。者の割合が80%を超えたのは2事業所だけで、50%未満が16事業所。自社の労働者比率が10%や12%の事業所もあった。このほかの調査結果では、▽職長会の設置・運営を実行していない事業所=32.6%(一部未実施含む)▽現場所長になるまでの業務経験年数が5年前より短くなった事業所=13.0%▽施工管理業務を外部(自社以外)に行わせている=34事業所、 76.1%▽現場の安全経費が5年前より増えた・変わらない=100%▽2次・3次下請けの安全管理があまりできていない=17.4%−などとなっている。」(『建設工業新聞』2005.11.29)
●「政府は29日午前、アスベスト(石綿)による健康被害者救済に関する関係閣僚会合を開き、給付金の財源を全事業書から徴収することなどを盛り込んだ新法案の大綱を決めた。……二階俊博経済産業相は同日の記者会見で、救済費用と負担者数について『270億円程度を約260万の事業所に負担してもらう』との見通しを示した。法案は労災補償の対象外である従業員の家族や石綿関連工場の周辺住民の迅速な救済が目的。石綿を原因とする中皮腫などの治療中の患者に医療費の自己負担分を補償するほか、療養手当、死亡時の葬祭料、既に死亡した患者の遺族には特別遺族弔慰金を支給する。……政府・与党では療養手当は月額 10万円、葬祭料は20万円、弔慰金は260万円とする方向で調整している。 基金を設け、財源は国と自治体のほか業種を問わず『労働者を雇用する事業主』から徴収すると明記。そのうえで『一定の要件に該当する事業主から追加費用を徴収する』として、石綿にかかわりの深い企業には上乗せして負担を求める。」(『日本経済新聞』2005.11.29)
●「総務省が29日発表した労働力調査(速報)によると、10月の完全失業率(季節調整値)は4.5%となり、前月とくらべて0.3ポイント悪化し」た。「男性は4.5%で0.2ポイント悪化、女性は4.5%で0.3ポイント悪化し」た。「完全失業者は前月から19万人増え304万人に、就業者数は同28 万人滅って6409万人となり、失業率を押し上げ」た。「実収入の低下傾向が続くなか、パートなど女性の就業希望者が増えていること、今より良い条件の職を求めての転職希望者が増えたこと、などが要因とみられ」る。「年齢別にみると、24歳以下で前月から0.4ポイント悪化し8.6%。25−34歳層で 0.4ポイント悪化し5.7%となってい」る。「高水準の若年層の失業率は、さらに悪化し」た。「前年同月と比べると就業者数は57万人増加。就業者はサービス業、『医療・福祉』、製造業などで増加し、建設業、運輸業などで減少してい」る。(『しんぶん赤旗』2005.11.30より抜粋。)
●「ゼネコン(総合建設会社)大手四社の2005年9月中間期の連結決算が17日、出そろった。清水建設と鹿島が経常増益を確保した。単独受注高は大成建設、大林組、清水建の3社が前年同期を上回った。都心の地価は値上がりしているが、清水建を除く3社が経常利益予想を据え置くなど慎重な見方が目立つ。大成建は14年ぶりに増配し、年6円(前期は年5円)とする。清水建も今期から増配することで、大手4社の今期の配当は、大林組が8円、清水建が7円、鹿島と大成建が円となる。清水建は特別目的会社(SPC)を通して手がけていた用地開発やオフィスビルの施工といった一連の事業による収益が予想を上回った。開発事業の営業利益は171億円と前年同期の8倍に拡大。売上高の落ち込見などで営業減益となった建設事業を補った。鹿島は国内に比べて利益率が低い海外工事の増加で、単体の完成工事総利益率は8.8%と前年同期から0.2ポイント低下したが、受取配当金の増加などによる金融収支の改善が寄与し、経常利益は微増益となった。9月中間配から増配する大成建だが、受注工事について将来見込まれる損失量も前もって引き当てる工事損失引当金を計上。営業利益は60%の減益となった。大林組は販管費の圧縮などで営業増益となったが、前年同期に営業外収益に計上した株式の売却益がなくなり、経常減益となった。06年3月期通期の経常利益は大成建など3社が期初予想を据え置いた。単独受注高は大成建以外は従来見通しを上方修正したが、『受注競争が激しく利益の上積みは簡単ではない』(大林組の野間瞑史副社長)などしい見方をしている。」(『日本経済新聞』2005.11.18。)
●「東京商エリサーチがまとめた10月の建設倒産は328件となり、前年同月比3.7%増となった。負債総額は452億6500万円で11.6%の減少。倒産の原因別では、受注・販売不振が222件、赤字累積が40件、売掛金回収難が1件で、これらの不況型倒産は263件に達し、全体の80.1%を占めた。倒産形態別では、法的倒産が155件で、民事再生法が8件、破産が145件、特別清算が2件となっている。私的倒産は銀行取引停止処分が148件だった。」(『建設通信新聞』2005.11.24。)
● 民間債用調査会社の帝国データバンクが15日発表した10月の全国企業倒産(負債額1000万円以上、法的整理のみ)は、件数が前月比23%増の825 件、負債総額が同19.9%増加の6605億円で、ともに4月以来の最高」となった。「負債額5000万円未満を中心に小規模倒産の増加が全体の件数増加を押し上げ」た。「同データバンクは『件数の減少は底を打ち、増加基調』としてい」る。「負債総額も2ヵ月連続で5000億円を上面る高水準。業種別では運輸・通信業(53.8%増)をはじめ全7業種で増加。地域別では中部での増加が目立」つ。「破産が742件で4月以降の最高。構成比も90%近くを占め、再生ができない倒産が圧倒的多数であることを示してい」る。販売不振を中心とする『不況型倒産』が595件と、構成比で72.1%を占めています。倒産の内容として同デ一夕バンクでは、景況感の回復を受けて業容拡大をしたものの資金手当てができずに倒産する事例が見られる一方、消費不振や原油高騰の影響とみられる中小・零細スーパーマーケットや運送業者の倒産が目立つ、としてい」る。「東京商工リサーチが同日発表したところによると、任意整理を含めて集計した十月の全国企業倒産は1171件(前年同月比4.1%噂)、負債総額は6350億円(同19.2%減)」(『しんぶん赤旗』 2005.11.16。)
●「ゼネコンの完成工事総利益(粗利)率が悪化傾向に転じている。22日までに今9月中間決算を公表した主要15社の2006年3月期の通期見通しは、軒並み前期実績を下回ることが分かった。これまで下支えしていた土木分野の市場縮小が進み、全体の利益率を下げている。また、工事損失引当金を計上するゼネコンが相次ぎ、工事原価への上乗せ処理によって粗利率に影響が出ている。今9月年間決算は、13社が前年同期実績を下回った。土木分野の市場桁小による影響から、大型工事が減少するとともにことも粗利率の低下につながっている。『民営化の影響から工事のコスト縮減策が拡大している』(準大手)状況もある。 建築分野では、不採算工事の排除や集中購買などの徹底した原価管理につとめ、利益率を回復させる動きも出ている。ただ、戦略的に受注量を確保する動きもあり、建築での収益悪化もー部で見られる。また、大手を中心に受注拡大に努める海外工事が『そり率低下の要因』となっているケースもある。粗利率の通期見通しは、土木工事での苦戦が顕著になっている。これまで10%台を維持していた利益率予想を、1桁台に落とす企業も見られる。05年3月期決算から計上が相次いだエ事損失引当金の影響も出ている。主要15社の大半が中間決算に計上している状況だ。中には『海外大型エ事1件の損失見込みが原因となり、土木工事の粗利率を大きく下げる』企業もある。ゼネコン各社では、低率に苦戦していた建築工事で原価圧縮や生産システムの改善が徐々に実を結びつつあるだけに、縮小する土木市場への対応が今後の新たな課題となりそうだ。」(『建設通信新聞』2005.11.24。)
●「国土交通省は17日、千葉県の建築設計事務所が、建物の耐震性などを示す『構造計算書』を偽造していたと発表した。書類が偽造された疑いが強いのは東京、千葉、神奈川のマンションなど21棟。このうち少なくとも2棟は震度5強の揺れで倒壊の恐れがあるという。国交省は建物所有者らへの連絡を始めるとともに、建築基準法違反容疑で設計事務所を警視庁に刑事告発する方針を決めた。……国交省によると、書類を偽造していたのは千葉県市川市の姉歯建築設計事務所。2003年2月以降に建設許可の出たマンション20棟とホテル1棟について偽造が疑われている。所属する一級建築士の男性(48)はホテルを除く20棟について偽造を認めており、『コスト削減のプレッシャーがあった』などと話しているという。マンション4棟は工事中、3棟は未着工だった。完成済みのマンションは世帯向けが七棟(236戸)、単身・小世帯向けが六棟(235戸)だった。建築基準法などは震度6−7級の地震でも人命が危険にさらされない耐震性を求めているが、既に国交省が点検を終えた五棟のうち千葉県船橋市と川崎市のマンションは、いずれも震度5強の揺れで倒壊の恐れがあった。残り3棟は未完成だが完成すれば同様の危険があったという。」(『日本経済新聞』2005.11.18。)
●「構造計算書偽造問題を受けて、国土交通省は登録更新制度の導入も含めた建築士法の再構築に着手する。……更新制については以前から、資格者の適正化の観点で建築界から要望があった。検討項目には、専門分野別の区分け(専攻制)や管理建築士の要件整備なども議論のテーブルに上がる可能性もあり、士法の抜本的な改正につながりそうだ。現行の制度は、更新制がないために有資格者の能力や実績を定期的に確認することができない。建築士有資格者は05年3月末時点集計で101万5376人。うち一級建築士登録者は31万6888人となるが、更新制がないために積み上げによる集計となり、実数が把握できない状況にある。同省は、構造計算書偽造問題の再発防止策について、社会資本整備審議会の建築分科会に専門部会を設け、建築士法を含めた現行制度の検証を進める。更新制の導入は有資格者の適正化を図る上での重要な検討項目の一つになる。建築士法については、実務レベルで資格者が意匠、構造、設備などの専門特化している状況から、日本建築士会連合会が会員を対象に専攻建築士制度をスタートさせたように、建築界で士法に専門業務の表示を求める声が以前から上がっている。……同省の検討議題では、これまでに建築団体が訴えてきた専攻制や管理建築士の要件整備なども検討課題にあがる可能性もある。」(『建設通信新聞』 2005.11.25。)
●「構造計算書を偽造していた姉歯建築事務所を経営する姉歯秀次一級建築士(48)は18日午前、千葉県市川市の事務所で報道陣の取材に応じて『マンション施工業界からのコスト削減のプレッシャーがあった』と偽造の理由を説明『重大なことをしてしまった、反省している』と陳謝した。姉歯建築士は計算書の偽造を始めたのは約二年前で、改ざんしたのは21棟だけと説明。『コストが低くなる書類を作ることで仕事が多く回ってくるかもしれない、という考えもあった』と話し、『検査機関のチェックが甘く、何度もやってしまった』と漏らした。一方、同事務所が偽造したうち20棟の計算書を審査した民間検査機関『イーホームズ』は18日、『審査業務は適切に行っており、われわれに問題があるとは思っていない』とコメントした。同社は計算書などを7人体制でチェックしていたが、偽造は見つけられなかったという。10月に行った内部監査で再計算したところ偽造が発覚した。」(『日本経済新聞』2005.11.18。)
●「建築主が法で定める建築物の建築を行う場合、工事着手前に構造や設備の計画が建築基準法などの法令に適しているか、構造計算書などを提出して審査を受ける建築確認が必要です。ところが政府は「規制緩和推進三カ年計画」(九八年三月閣議決定)などにもとづく九八年の建築基準法改悪によって、これまで自治体の建築主事が行っていた建築確認・検査を民間に「開放」。大臣、知事が指定する民間の「確認検査機関」も行えるようにしました」(『しんぶん赤旗』 2005.11.19。)
●「東京都など1都2県で竣エまたは工事中のマンションとホテル計21棟の構造計算書を、千葉県の建築設計事務所が偽造していたことを受け、国土交通省と東京都を始めとする特定行政庁は18日、協議会を開き、今後の具体的対応についての検討に着手した。……構造計算書は特定行政庁への建築確認申請の際に必要な書類で、通常は元請けの設計者と指定確認検査機関が申請前に内容を確認することになっている。今回のケースでは、偽造された構造計算が設計者の確認、審査機関の検査、施工段階のすべてで是正されず、各段階でのチェック体制の甘さが結果として偽造を見逃していたことになる。また、構造計算に当たって、『大臣認定構造プログラム』を使った場合、特定行政庁にプログラムの計算過程を提出しなくても済むことになっており、この提出書類の軽減が『偽造の見落とし』につながったことも要因の一つとして考えられる。……建築確認審査は、1998年から国交相が指定した確認検査機関にも開放され、現在は122機関が検査に当たっている。国交筈は今回の事態を重く受け止め、偽造を見抜けなかった審査機関に対して業務停止などの監督処分を検討している。……12月には社会資本整備審議会建築分科会に専門部会を設置し、指定確認検査機関制度や確認検査制度の在り方などについて、対応策の検討を始める。」(『建設通信新聞』 2005.11.21。)
●「千葉県の姉歯建築設計事務所がマンションなどの構造計算書を偽造していた問題で、国土交通省は21日、偽造の疑いが強い21棟のうち少なくとも16棟が『震度5強の地震で倒壊する恐れが強い』と発表した。……国交省は既に完成・入居済みの14棟について、姉歯建築設計事務所作成の構造計算書を基に、震度 6強程度の大地震に対する抵抗力を計算し直した。すべての建物が現行の建築基準法の耐震水準を大きく下回っており、大半は必要な強の3-4割だった。 特にこのうち13棟は震度5強の地震で『大きくは存したり、傾いたりひび割れるなどの恐れが強い』と指摘。国交省は『本来は震度5強程度ではびくともしない強度が必要』としている。工事中や未着工の7棟のうち、サンプルとして再計算した3棟についても同様に震度5強で倒壊の恐れがあった。国交省は既に湊町中央ビル(千葉県船橋市)とグランドステージ川崎大師(川崎市)、工事停止中の3棟については危険性を公表していた。この日は新たに11棟の調査結果を交えて発表した。」(『日本経済新聞』2005.11.21.)
●「構造計算書を偽造した姉歯建築設計事務所が22都府県で193件の設計に関与していたことが判明したのを受け、各地の自治体は22日、該当物件の偽造の有無の調査に乗り出した。……関与した物件が五件確認された静岡県は22日、建築主から構造計算書を取り寄せ、県の建築確認検査室が再チェックを始めた。また同事務所の元請けだった設計業者に、建物の強度を計算し直すよう指示した。」(『日本経済新聞』 2005.11.22.)
●「姉歯建築設計事務所(千葉県)による建築物の構造計算膏偽造問題で国土交通省は21日、偽造が確認されている物件名称と耐震性能の再計算結果を公表した。建築基準法で求められている耐震性能を1として該当物件の耐震性を比較したところ、各物件の耐震性の最小値は0.26〜0.78で、竣工済み物件14 棟すべてが基準を満たさないことが分かった。このうち12棟については、行政が耐震改修を指導する基準となる0.5を下回っており、震姉歯建築設計事務所(千葉県)による建築物の構造計算膏偽造問題で国土交通省は21日、偽造が確認されている物件名称と耐震性能の再計算結果を公表した。建築基準法で求められている耐震性能を1として該当物件の耐震性を比較したところ、各物件の耐震性の最小値は0.26〜0.78で、竣工済み物件14棟すべてが基準を満たさないことが分かった。このうち12棟については、行政が耐震改修を指導する基準となる0.5を下回っており、震度5強の地震で倒壊の恐れがある。この結果を受け国交筈は、千葉県など関係自治体とともに、入居者の転出支援などの対応を急ぐ方針だ」。(『建設工業新聞』2005.11.23。)
●「耐震性を示す構造計算書の偽造が明らかになった首都圏のマンション計20棟(建設中、未着工を含む)の建築主は、消費者が購入の際に良質な物件を選択できるよう第三者機関が評価、格付けする『住宅性能表示制度』を活用していなかったことが28日、国土交通省の調べで分かった。同制度の利用は任意だが、通常の建築確認や施工段階での中間検査とは別に、第三者の共通ルールによるチェックが入ることで住宅の相互比較できるメリットがある。……住宅性能表示制度は2000年の住宅品質確保法施行でスタートした。一戸建てやマンションなど住宅を対象に、建築主が国交相指定の第三者機関(指定評価機関)に申請すると、設計段階と施工・完成段階に指定評価機関が数回にわたり検査する。建築基準法をクリアしていれば耐震性、耐火性など10分野、29項目について、細かくランク付けした『評価書』が交付され、マイホームを購入する消費者が参考にできる仕組み。……新築着工戸数に占める評価書交付の割合は昨年度で約14%にとどまっている。」(『日本経済新聞』2005.11.28。)