情勢の特徴 - 2005年12月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「政府は20日、2005年度補正予算案を決めた。景気回復を背景に税収が3兆300億円増えるのに伴い、国債発行を減らす。25年ぶりに前の年度の剰余金の全額を返済資金に充て、国債償還費は1兆9500億円。アスベスト(石綿)の被害者救済に1800億円、耐震強度偽装問題の対策に80億円をそれぞれ計上し、予算規模は当初予算に比べて4兆5200億円の増額となる。」(『日本経済新聞』2005.12.20。)
●「財務省が20日内示した2006年度政府予算原案は首都圏のインフラ整備に手厚い内容となった。道路や港湾の整備は事業ごとの配分額が決まっていないケースも多いが、今年度当初予算を軒並み上回るのは確実。公共事業費の削減を迫られるなか、限られた財源を『首都再生』に重点配分しようという国の姿勢が明確になった形だ。
○空港 羽田空港南東の洋上に4本目の滑走路を建設する再拡張事業には、今年度当初予算の2.7倍に当たる1624億円の内示があった。国土交通省の当初要求額とほぼ同水準で、国交省は『09年度末の供用開始に向けて予定通り工事が進められる』(航空局)と歓迎している。
○京浜港(東京港、横浜港)の整備に多額の予算が計上された。韓国・釜山など海外の港に対抗するため競争力の引き上げを目指す国の『スーパー中枢港湾』に指定されている影響が大きい。同じく指定を受けた伊勢湾、阪神の両港と合わせた額は今年度当初比で36.9%増の381億円となった。京浜港への配分額は今後決定する。
○道路・鉄道 首都圏に大阪、愛知を加えた三大都市圏の環状道路整備費は1886億円。地域別の額は明らかになっていないが、全体では今年度当初予算比 22%増、340億円の上積みとなりた。首都圏では東京都心から半径40-50キロメートルの地域を結ぶ首都圏中央連絡自動車道(圏央道)と東京外郭環状道路(外環道)、首都高速中央環状線の整備が引き続き認められた。沿線住民の同意取り付けなど課題はなお多いが、来年度は三道路の整備が加速する見通しだ。国土交通省にも圏央道を中心に予算増の必要性を唱える声が多い。」(『日本経済新聞』2005.12.21。)
●「国土交通省関係の2006年度予算財務省原案は、国費総額が前年度当初予算比4.8%減の6兆2493億円となった。うち公共投資関係費は4.7%減の 5兆6633億円で、中心市街地の再生に90億円を新規計上したほか、緊急輸送道路の橋梁などの耐震補強に80.0%増の522億円、建築物・住宅市街地の地震防災対策に57.0%増の373億円、鉄道の安全対策に25.0%増の23億円、土地利用・ソフト一体型水害・土砂災害対策に20.0%増の 1110億円を計上するなど、防災・減災対策、公共交通の安全確保、少子高齢化への対応などに予算配分を重点化した。」(『建設通信新聞』 2005.12.21。)

行政・公共事業・民営化

労働・福祉

●「アスベスト(石綿)含有建材の規制のあり方を検討してきた社会資本整備審議会(国土交通省の諮問機関)の建築分科会(分科会長・村上周三慶応大学教授)は、建築基準法による規制強化を柱とした建議を今月12日に取りまとめた。」「建議に盛り込まれた対策は14項目に及ぶ。中でも核になる対策が、石綿繊維が飛散する恐れがある石綿含有建材の使用禁止措置だ。現時点で対象となっているものは、吹き付け石綿と石綿含有ロックウールの2つ。建築基準法で使用を禁止することにより、これらが使用されている建築物は既存不適格扱いとなり、増改築を行う際には除去が義務付けられる。露出している場合には、除去や封じ込めなどの飛散防止対策が求められる。利用者が直接触れない場所であっても、空調などを通じて石綿繊維が放出されるケースは規制対象になる。こうした取り組みに対する行政の監視体制も強化される。石綿繊維が飛散する危険性がある建物について、特定行政庁が勧告・命令を行えるようになるほか、石綿含有建材の使用状況や劣化状況についての報告聴取や立ち入り検査も可能となる。特に、多くの人が利用する建築物は、石綿対策に関する報告が義務付けられ、この報告内容が一般に公開される。建議では、こうした行政指導が確実に行われるようにするため、勧告・論令ガイドラインの整備も提案した。」(『建設工業新聞』2005.12.21。)

建設産業・経営

●「大手不動産4社の2006年3月期の連結経常利益はそろって最高益を更新しそうだ。なかでも三菱地所は前期比 13%増の1055億円、三井不動産は6%増の1000億円と、初めて1000億円の大台を超える見通し。新規テナントを中心にオフィスビル賃料が上昇してきたことに加え、分譲マンション事業も好調なため。不動産投資倍託(REIT)などへの物件売却も収益を押し上げる。菱地所は主力の『丸の内』地区のオフィスビルが好調。ビル事業が7%の増収になる。REIT向けの物件売却が奏功し、資産開発事業が300億円弱増えて4倍になりそう。……三井不は賃貸事業が2%増収になる。オフィスビルや商業施設の新規開業も貢献するほか、既存ビルの空室率低下や賃料上昇がけん引する。……分譲事業は投資家向けマンション販売が好調で粗利益率が改善。2%減収だが、2ケタ増益になる見込み。住友不動産は賃貸事業が好調なほか金利負担の減少が奏功。特別利益に主力ビルの再証券化の差額益を計上する。東急不動産は旧日本債券借用銀行跡地ビルの持ち分をREITに売却することが収益を大幅に押し上げる。減損処理で200億円強の特損を計上するが、最終黒字を確保する。」(『日本経済新聞』2005.12.16。) オフィスビル賃料の上昇、分譲マンション・投資マンション販売の好調、およびJ-REITへの資産の売却により、大手不動産4社がそろって最高益を更新するという状況は、構造改革政策の展開による「景気回復」と「都市再生」の狙いが実現したものと言える。規制緩和や市場競争促進の中で、設計段階におけるコスト低減の追求や施工段階における労働強化と賃金・賃金単価の抑制が展開され、建築物の品質・安全は危険にさらされてきた。不動産企業に対しては、利益の追求を品質・安全に優先することを許さない強力な社会的な規制が必要であろう。

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「耐震強度の偽装問題で国土交通省は16日、倒壊の危険性が高い分譲マンション居住者向け支援策で、引っ越し費用や仮住まいの家賃補助の統一基準を発表した。引っ越し代は一回当たり25万円以内の実費を2回まで補助。仮住まい中の家賃は建て替えたマンションに戻るまで 10万円を上限に月額の3分の2まで支援する。期間は原則2年間。統一基準は国と関係自治体が合意した。対象となる分譲マンションは16日時点で、グランドステージ稲城(東京都稲城市)など8件。同千歳烏山(東京都世田谷区)など2件も加わる見通し。…… 支援策は地方の提案事業に国が45%補助する地域住宅交付金を活用する。国交省は『被災者支援とのバランスを考えた』としている。」(『日本経済新聞』2005.12.16。)
●「国土交通省は、建築の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)の改正に伴い、住宅などの耐震化率を2015年までに現行の75%から90%とする耐震改修目標などを盛り込んだ基本方針案をまとめた。安全性が著しく低い建築物に対する特定行政庁の指導、指示に従わず、該当する建築物の構造耐震力指針(IS値)が0.3未満の場合は建築基準法に基づく勧告、命令によって強制的に耐震化を進める。同省は、1月19日まで方針案のパブリックコメントを実施し、同月下旬に改正耐震改修促進法を施行する。」(『建設通信新聞』2005.12.26。)
●「東京都千代田区は26日、区内のすべてのマンション約550棟を対象に耐震診断菜を助成すると発表した。2005年度から07年度までの時限措置で、分譲マンションで250万円、賃貸マンションでは125万円を上限に助成する。耐震強度偽装事件をきっかけにマンション居住者の不安が広まっており、事実上の『全株検査』に踏み切る。……マンションの耐震診断費用の一部を助成する自治体は東京都多摩市、横浜市、千葉市など数多いが、『築年数などの制限を設けずに、高額助成金を支給するケースは初めてではないか』と千代田区では話している。分譲マンションでは、入居者の8割以上が千代田区で住民登録していれば250万円を助成し、『区民』の比率が下がるに連れて助成額を段階的に下げる。賃貸マンションについては、物件の所有者を対象に診断費用の半額を助成する。区内で一般的な40-50戸規模のマンションの場合、コンクリートの抜き取りや鉄筋エックス線調査など精密な検査を構造設計事務所などに依頼しても『ほぼ250万円程度で収まる』 (千代田区)という。……マンションの管理組合などが垂尻都の『マンション管理アドバイザー制度』を利用して耐震診断や改修の必要性について専門家に相談する場合も、区が費用を全額助成する。」(『日本経済新聞』2005.12.27。)

その他

●「日本の総人口が初めて減少したことが……2005年国勢調査の人口速報値で明らかになった。10月1日現在の総人口は1億2775万6815人で、04 年10月時点の推計人口に比べ組1万9000人減少した。先に発表した人口動態統計では05年に初めて出生数が死亡数を下回る自然減となっており、外国人の流入なども加味した国勢調査も減少に転じたことで『人口減社会』が到来したことが確認された。」(『日本経済新聞』2005.12.27。)
●「今回の国勢調査(速報値)の地域ごとの人口を5年前の前回調査と比較すると、東京都をはじめ首都圏への人口集中が目立つ一方、三大都市圏を除く、ほぼすべての地域で人口が減少。人口減少社会の日本で、「東京一人勝ち」の近未来を想像させる結果となった。……首都圏への人口集中は、前回調査よりも顕著になった。東京の増加は約50万7000人。埼玉、千葉、神奈川の三県と合わせれば約150万3000人の増で、前回に比べ3.2%伸びた。中部圏も愛知県で3%増と、好調な経済を背景に人口増となった。ただ近畿圏は、大阪、京都、兵庫ともに増加率が1%に届かず、次回調査での人口減も現実味を帯びてきた。」(『日本経済新聞』2005.12.28。)
●自民、民主、公明3党の衆院憲法調査特別委員会理事らは20日、都内のホテルで会合を開き、改憲のための手続きを定める国民投票法案について、2006年1月に召集される通常国会での成立をめざすことで一致した。与党側の提起に、民主党が「技術的な問題がクリアされれば、速やかに通常国会で成立させるのが望ましい」と応じたもの。自公民三党が通常国会成立で合意したのは初めて。日本国憲法は基本原理に反する「一切の憲法、法令及び詔勅を排除する(前文)として、基本原理を変更する改憲を認めていない。」(『しんぶん赤旗』2005.12.21より抜粋。)