情勢の特徴 - 2006年2月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

● 国内で販売する投資信託商品の海外への投資残高が二〇〇五年末に十九兆七千五百億円と、前年同期に比べて六〇.五%増えた。日本では超低金利が長引いており、高利回りを期待した個人マネーなどが海外に流出している。米国向けが八兆八千五百億円と五四.一%増えたほか、オーストラリアは八五.四%増の一兆七千九百億円、ニュージーランドは四.七倍に膨らんだ。……銀行や証券会社の店頭では配当金の高い世界の株式で運用する「世界高配当株投信」が人気を集めている。同投信の純資産残高は〇四年末の一千億円強から〇五年末には七倍近くになったもよう。……毎月分配型の外債運用投信の人気も根強い。これらは米国やオーストラリア、欧州など先進国の債券に分散投資している。米国などでの株式相場上昇や円安・ドル高も、円ベースでの投資残高が膨らむ一因になっているようだ。……経済成長の期待が高まるインドなどアジア諸国は三三.五%増の一兆一千百三十三億円。三年間で五倍に膨らみ、一兆円を突破した。インドへの投資残高は〇五年末に三千百四十六億円と、一年前に比べて四十九倍に急増した。中国向けは百九十六億円で四倍、韓国向けは六百億円で二倍に膨らんでいる。(『日本経済新聞』2006.02.06。)
● 平成17年の新設住宅着工は前年比4.0%増の123万6122戸で、3年連続の増加となった。工法別では2×4が5.7%増と4年連続で増加し、戸数も 9万5843戸と史上最高となった。軸組木造とプレハブは前年より減少した。昨年の新築住宅着工戸数は3年連続増加で5年ぶりに120万戸台を回復したが、着工面積は前年比1.0%増(2年連続増加)の1億0659万uにとどまり、1億1千万u割れの状況が続いている(8年連続)。工法別にみると、 2×4は前年より五千戸強増加の9万5843戸。2×4業界にとって念願の10万戸台に達しなかったものの、平成8年の9万3693戸を抜いて史上最高を記録した。平成14年は前年比2.3%増の7万九千戸強、15年は3.2%増の8万2千戸弱、16年は11.3%増の9万一千戸弱、そして17年は 5.7%増の9万6千戸弱と伸び幅は鈍化したが、増加傾向は続いており、今年は10万戸台達成が確実の見通しとなった。軸組木造は0.3%減と微減ながらも3年ぶりに減少したが、前年に続き42万戸台を維持した。プレハブは5年ぶりの増加となった16年から一転して2.3%減少し、戸数も3年連続16万戸割れで、平成元年(この年の年間着工戸数からプレハブと2×4は分離集計)以降の最低戸数となった。在来非木造(非プレハブ系非木造)は、前年比9.2%増の55万8千戸弱で2年連続増加。前年に続き昨年もマンションの増加が伸びの要因となった。利用関係別では、持家は4.5%減で2年連続の減少、貸家は 8.4%増で5年連続増加。分譲住宅も6.8%増で3年連続増加だが、内訳をみると、マンションは12.4%増の22万9395戸で2年連続増加、一方、一戸建は1.0%減の13万7829戸で3年ぶりに減少した。(『日本住宅新聞』2006.02.05。)

行政・公共事業・民営化

●国土交通省がまとめた2005年(1−12月)の受注動態統計調査報告によると、受注総額は前年比4.5%増の55兆 6806億円で、3年ぶりに55兆円を上回った。元請受注高が4.1%増の38兆1079億円と00年度の調査開始以来初めて増加し、下請受注高も 5.3%増の17兆5727億円と2年連続で増加した。元請受注高を発注者別にみると、公共機関は0.5%増の12兆2799億円で調査開始以来初めて増加した。羽田再拡張事業が大きく寄与したもので、同事業分を除くとマイナスに転じる。 ただ、民間などからの受注工事が好調で、5.9%増の25兆 8281億円と3年連続の増加となった。このため、羽田再拡張事業分を除いても元請受注高全体は前年より増えており、あらためて民間の設備投資が全体を下支えしていることが確認された。(『建設通信新聞』2006.02.13。)
●高速道路の整備計画九千三百四十二`bのほぼ全線の建設が固まった。政府の国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)は七日、国と地方の税金で造る無料高速道路に七区間百二十三`bを新たに選定。北側一雄国土交通相は月内に残る未開通区間千百五十三`bを民営化会社が造る区間に指定する。無駄な道路を造らない狙いで昨年十月に道路関係四公団を民営化して動き出した高速道路改革は一段と形骸化が鮮明になった。(『日本経済新聞』2006.02.08。)
●公共工事品質確保促進法(品確法)がきちんと運用されるためには、地方自治体が総合評価制度をどのように取り入れるかにかかっている。日刊建設通信新聞社が1月中旬現在で47都道府県、政令市を対象に調査した結果、総合評価制度を試行・実施した県は半数近くの23都道県に及び、まだ検討中の県も、地方整備局の働きかけもあり、2006年度から試行するところが多く、そのため試行要領やガイドラインの策定に取り組んでいることが明らかになった。政令市では京都市、神戸市でPFI絡みで総合評価制度を取り入れているが、品確法の対応は県の動きを見て06年度から本格化しそう。だが総合評価制度自体はすでに自治法で規定されており、新たに品確法で規定する総合評価との調撃などうするかという悩みも浮き彫りになった。(『建設通信新聞』2006.02.07。)
●防衛施設庁を舞台にした談合事件が広がりをみせているが、同庁が発注した在日米軍施設における建設、土木などの工事のうち、落札率(予定価格に占める落札額の割合)が95%を超える工事が八割にのぼることが二日までに明らかになった。同事件で家宅捜索などを受けた企業も受注している。……調査したのは二〇〇一年度から〇四年度までに防衛施設庁が発注した在日米軍施設内における工事で、契約(当初)総額は三千六十億円。その大半は「提供施設等設備費」などという名目のいわゆる「思いやり予算」で、本来、日本政府が負担する必要のないものである。発注工事総数は四年間で千五百十二件で、平均落札率は97.4%。このうち落札率95%を超えたのは千二百三十四件と82%に及んでいる。また予定価格と落札額が一致した落札率 100%の工事は百十七件となっている。東京地検特捜部の強制捜査を受けた鹿島、大成建設、大林組、鉄建建設などのゼネコンをはじめ、談合に関与したとされる十九社が落札した工事は六十二件にのぼる。この中には、談合の疑いが指摘されている総事業費二千四百億円にのぼる岩国飛行場の滑走路移設工事のほか、硫黄島通信所の浄水施設工事、横須賀基地の高層住宅新設工事、嘉手納基地の多目的棟新設空調工事、横須賀基地の独身下士官宿舎新設工事などが含まれている。このほか、横須賀基地の桟橋工事、佐世保基地の岸壁整備、三沢基地の格納庫新設工事なども95%を超える高い落札率となっている。(『しんぶん赤旗』 2006.02.03より抜粋)
●内閣府は、今通常国会に提出する「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案」(市場化テスト法案)の全容を 2日の経済財政諮問会議に報告した。法案は、公共サービスの実施主体を官民による競争入札で決める市場化テストの導入を推進する方針を打ち出した上で、入札手続きのあり方などを規定している。市場化テストを実施する際は、民間事業者や自治体が要望した競争入札の対象業務を内閣が決めた後、対象業務の所管省庁が、▽提供サービスの質▽競争参加者資格▽落札者の評価基準―などを示す実施要項を作成。実施要項に沿って官民で入札を行い、質と請負額が最も優れた者を公共サービスの担い手とするとした。官が落札した場合は、引き続き公共サービスを提供し、民が落札した際は、みなし公務員規程などを適用した上でサービスの提供を手掛け、官は業務を担当していた職員の配置換えなどを行う。ただし、民によるサービスの提供に不備があれば、官は契約を解除でき、さらに定期的な報告、立ち入り調査も行えると規定。損害賠償を請求することも可能とした。官が策定する実施要項は、内閣府に設ける「官民競争入札等監理委員会」が内容を精査すると規定しており、入札手続きの透明性・中立性・公正性を確保する。(『建設工業新聞』2006.02.03。)
●防衛施設庁発注の空調設備工事を巡る談合事件で、同庁側がメーカー各社に受注させる工事を入札前に配分する際、同庁OBらが天下り先のメーカーから受け取った年収総額を基準に、各社が受注する工事の金額を決めていたことが一日、関係者の話で分かった。同庁技術系幹部による工事の配分が、天下りの見返りのあからさまな利益誘導だったことが明らかになった。・・・・・・同庁の歴代の技術系幹部らの間では長年、談合の仕切り役が引き継がれており、決定した工事の配分は「配分表」にまとめ、全国の各防衛施設局を通じてメーカー側に伝えられたことが既に判明。河野容疑者らは、OBの年収額に応じて工事を割り振るルールも認識していたとみられる。関係者は「現役時代に高いポストに就いていたOBの天下りを受け入れると、支払う給料が増える分だけ工事の受注高も増えるため、各社とも高官のOBを欲しがっていたようだ」と指摘する。特捜部は、歴代の技術系幹部らから任意で事情聴取を進めて空調設備工事の官製談合が始まった経緯などを調べる一方、一月三十一日には大手ゼネコンの鹿島や大成建設、大林組を家宅捜索。同庁発注の建設工事を巡る談合疑惑についても解明を進めているとみられる。(『日本経済新聞』2006.02.01。)

労働・福祉

● 建設労働者は05年半ば以降、不足が顕在化している―。このようなリポートを内閣府の植田博信参事官(経済財政分析−総括担当)付がまとめた。民間建設投資の回復による都市部の大規模マンションの建設ラッシュなどで、特に型枠工や鉄筋工の需要が増加しているという。建設就業者の年齢構成は高齢層に偏っており、「若年層を中心に不足が改善されないと、団塊世代の建設技能を継承できない」といった問題点も指摘した。(『建設工業新聞』2006.02.13。)

建設産業・経営

●東京商工リサーチがまとめた2005年の建設業倒産は、3783件で前年比5.4%の減少となった。これで5年連続の減少となり、10年ぶりに3000件台にまで減った。負債総額は8439億0100万円で23.5%の大幅なマイナスとなっている。受注・販売不振が 2327件に達するなど、赤字累積、売掛金回収難を合わせた、いわゆる「不況型」と呼ばれる倒産が全体の78.5%を占める結果となった。今後も、この傾向は続く見通しだ。(『建設通信新聞』2006.02.01。)
●東京商工リサーチがまとめた2005年12月の建設業倒産は、336件で前年同月比11.2%の増加になった。これで 10月以来、3カ月連続で増加になっている。負債総額は686億8000万円で40.8%の大幅な増加になった。資本金1億円以上はわずかに1件で、そのほとんどは1億円未満の中小・零細企業によるものとなっている。業種別でみると、土木工事業が98件ともっとも多く、建築工事業53件、木造建築工事業 34件と続いている。(『建設通信新聞』2006.02.07。)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●耐震偽装問題で、国土交通省が再発防止策の中間報告案に盛り込んだ「新たな構造計算書の審査方法」の検討素案が明らかになった。それによると、建築確認の信頼性を高めるため、構造計算書の真偽を検証する第三者機関として「再計算センター」(仮称)を設置。構造計算を必要とする建築物の確認申請手数料に一定割合を上乗せし、同センターの設置・運営費に充てる計画としている。第三者機関の再チェックの導入については、一般からの意見公募(パブリックコメント)でも賛否が分かれている。新たな建築確認方法の実効性をめぐって今後、再計算センターの運営コストの試算など詳細なデータを基に議論を詰めるべきだと声も上がりそうだ。(『建設工業新聞』2006.02.13。)
●大手ビジネスホテルチェーン「東横イン」(東京・大田)による不正改造問題で、国土交通省は六日、百二十二の同社系列ホテルのうち六十のホテルで建築基準法やハートビル法などの法令違反があったとする調査結果を発表した。北側一雄国交相は閣議後の記者会見で、ハートビル法の罰則強化や完了検査後の建築物のチェック方法について検討する考えを明らかにし、国が告発する可能性も示唆した。国交省によると、建築基準法違反は三十七件。容積率が制限を超えていたケースが二十七件と最も多く、ほかに建築確認の手続き違反(八件)や定期報告義務違反(三件)などが確認された。ホテルなどのバリアフリー化を進めるハートビル法は二〇〇三年四月以降の着工で床面積二千平方b以上の建築物に適用される。東横インで対象となったのは三十一のホテル。この中で点字ブロック撤去や障害者用駐車場の設置義務違反など十八件の同法違反が見つかった。 このほか駐車場法に基づく条例の違反も二十四件あった。 法令違反があった六十のホテルのうち二十七のホテルが東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏に集中している。(『日本経済新聞』2006.02.07。)

その他