情勢の特徴 - 2006年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●国土交通省が二十三日発表した公示地価は、地価反転のすそ野が着実に広がっていることが鮮明になった。大都市の住宅地の需要は中心部から郊外へと拡大、三大都市圏だけでなく地方の中核都市でも上昇地点が増えている。地価上昇の背景には低金利で有利な運用先を求める資金の流入もあり、大都市の一部では過熱感を警戒する声も出ている。地価上昇は地方の中核都市の一部にも広がっている。JR仙台駅西口などで再開発が進む仙台市中心部では、住宅地の二カ所、商業地の七カ所で地価が上昇した。上昇地点が出たのは九年ぶり。……広島市では不動産投資ファンドによるマンションや商業施設の開発が活発で、十五年ぶりに商業地で上昇地点が出た。……商業地では京都市がプラス四.一%、札幌市もプラス二.一%とともに十五年ぶりに上昇した。リゾート人気が高まっている長野県軽井沢町でも、二.四%のプラスに転じた。人口減少県などでは底値が見えない。熊本県は住宅地がマイナス五.八%、商業地がマイナス七.四%とそれぞれ下落幅が拡大した。住宅地の下落幅が六.六%と最も大きかったのは香川県と徳島県。……東京都心の商業地では地価上昇が一段と鮮明だ。二月に大型商業施設「表参道ヒルズ」がオープンした原宿・表参道(渋谷区、港区)の周辺地域では、複数の商業地で三割程度の上昇率を記録した。……住宅地で地価上昇率が全国トップだったのは東京都南青山で、二八.八%上昇した。南青山や港区南麻布などで上昇率が二〇%を超える土地が六地点もあった。……今年の公示地価で突出しているのが名古屋だ。全国の商業地で上昇率が三八%と最も高いのはJR名古屋駅前の「名古屋近鉄ビル」。さらに上位十地点のうち、名古屋市中心部が八地点を占めた。名古屋駅前では来年にかけて、トヨタ自動車などが建設中の「ミッドランド スクエア」など、大型ビルが相次いで完成する。「トヨタ効果」も地価押し上げ要因だ。地価上昇は周辺都市に及んでおり、愛知県刈谷市や豊田市など六市の住宅地が上昇または横ばいに転じたほか、商業地では安城市が〇.一%上昇した。(『日本経済新聞』2006.03.24。)

行政・公共事業・民営化

●日本道路公団を分割・民営化して発足した東日本、中日本、西日本の各高速道路会社は、七十二社あるファミリー企業を子会社化したうえで地域や業務ごとに再編し、二〇一〇年度までに、ほぼ半減させる改革案をまとめた。公団とファミリー企業の関係は不透明で、道路行政の高コスト化につながっているとの批判が強かった。親会社になりリストラを強く進めることで業務を効率化させ、収益向上を目指す。三社の会長が十七日の国土交通省幹部との会談で説明した。具体的な再編策を月内に決める。……改革案によると、三社はまず、北海道、東北など営業地域を十程度に分け、地域ごとに、高速道路の維持修繕、保全点検、料金収受、交通管理−−の四つの業務を担う受け皿会社を一〇〇%出資でそれぞれ設立する。そのうえで四業務に当てはまるファミリー企業の事業や人員を四年以内に移管させる。複数の企業が一つの受け皿会社に移ることも想定。ファミリー企業を七十二から四十程度に事実上減らす。公団 OBらの天下りで問題になっていた再就職では、安易なOBの派遣は効率が悪く大幅に減らす。一方、現役の役員や社員の出向は実施し、子会社の人事権を握る。ファミリー企業は連結決算対象にならず経営実態が不透明。公団からかなり高い業務受託収入を得て多額の剰余金を蓄積したとされる。子会社化で財務も開示される。民営化各社は旧公団時代の債務を引き継いだ道路保有・債務返済機構に道路リース料などを払い、機構はそれを原資に四十五年以内に三十七兆円を返済する。各社の収益を上げないと適切なリース料を払えず、結果として債務返済が遅れて、国民負担にはねかえる。(『日本経済新聞』 2006.03.18。)
●東京都は水道業務を委託している第三セクター二社をテコ入れする。二〇〇六年度に都の出資比率を五〇%超に引き上げて経営権を握り、三セクへの委託業務を増やす。他の自治体から水道事業を受託する際の受け皿としても使う。水道局本体のスリム化を進めると同時に、株式の過半数を持つことで、経営内容が不透明とされがちな三セクの情報開示を徹底する。……都は二〇一二年度にかけて、多摩地区の二十五市・町が管理する水道業務を引き継ぐ。だが都の行政改革プランに従って五千人以上いる水道局職員を削減する計画だ。同時に千百人いる多摩地区の市・町の水道職員も都へ移籍しない。このため都はTSSとPUCを活用して人員不足に対応する。設備工事やメーター検針などの監督・指導業務や、多摩地区の水道施設管理を三セクに任せる。四百三十人以上いる両社の従業員は順次増やす。……人口減や地方自治体の行革に伴い、水道など公営事業で外注比率を高める市町村が増えている。都は将来、三セク二社を使って、都外の市町村から水道業務を受託することも視野に入れている。(『日本経済新聞』2006.03.18。)
●谷垣禎一財務相は16日の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)で、国有資産の今後10年間の売却目安と、当面の売却基準を明らかにした。使わなくなる庁舎や宿舎、保有株式などの売却を進めることで、11.5兆円の収入が得られるとし、東京都心3区の宿舎や、法定容積率に対する利用率が5割未満の庁舎の売却を進める考えを示した。売却収入は普通国債の償還に充てる。財務省は今後、宿舎や庁舎の売却に向け関係省庁と調整を進めるとともに、証券化をはじめとした売却手法の検討を本格化する。売却対象の国有資産は、防衛施設などを除いた国の土地や建物と保有株式。売却額の目安の内訳は、▽一般庁舎約5000億円▽宿舎約5000億円▽未利用国有地・物納資産2.1兆円▽民営化法人に対する出資(保有株式)8.4兆円。既存の一般庁舎と宿舎の総資産は9.6兆円とされており、このうち庁舎は法定容積率に対する利用率が5割未満の施設を売却対象とした。売却可能な施設を生み出すために、改築が必要な施設の合同庁舎化も進める。……同省は、「庁舎等の売却・証券化手法についての検討会」(座長・川口有一郎早稲田大学大学院教授)を設置し、証券化による資産処分の手法を検討しており、売却ではこうした新しい手法の導入を目指す。……政府保有株式の売却による収入の目安は、▽日本郵政5兆円▽日本政策投資銀行1・9兆円▽高速道路会社6社2000億円▽東京地下鉄1000億円−(04年度末の純資産額ベースで算定)としている。(『建設工業新聞』2006.03.20。)
●総合評価方式における低価格入札が全国的に多発する中、国土交通省四国地方整備局は来年度から、低入札価格調査制度の対象となった企業に対し、次回以降の総合評価方式の入札で「基本企業評価点」 (満点は55点)を減じるペナルティーを講じる。妥当性が認められる場合を除き、低入札を行った工事が完成するまで30点を減点するほか、完成後も工事成績に応じて翌年度禾まで10点または15点を減点する。ペナルティーを課せられた企業は、総合評価方式による入札への参加がかなり難しくなり、施工品質が懸念される低入札の排除に大きな効果を発揮しそうだ。……国土交通筈は06 年度から、低入札価格調査の対象になった工事で、モニターカメラによる現場監視を行う方針を固めた。低入札案件の工事現場には重点的な監督を実施してきたが、同筈が昨年日月に行った施工体制の一斉点検で、落札率の低い工事ほど不適切な下請契約がみられる傾向が確認されており、カメラの併用で監視体制を一段と強める。モニターカメラの設置はもともと、閉鎖的な建設現場の状況を画像で一般市民に公開することで、事業のPRや公共事業の説明責任を果たすのに役立てることなどが狙い。市民の関心が高い工事をモデル現場に選んで試行している。カメラは発注者の監督業務の補助手段にも活用、カメラがあることで作業員の不安全行動や不正行為などを抑止する効果があると同省は期待している。今後は、低入札案件の工事現場の監視にもカメラの利用目的が広がることになる。(『建設工業新聞』2006.03.20。)
●旧日本道路公団や国土交通省発注の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事をめぐる談合事件で、公正取引委員会は二十七日までに、独禁法に基づき横河ブリッジ(乗京都港区)やJFEエンジニアリング(千代田区)など計四十四社に総額百二十九億一千四十八万円の課徴金納付命令を出した。一事件の課徴金額としては一九九一年にセメント販売のカルテル事件で小野田セメント(当時)など十二社に納付を命じた計百十二億円三千百十四万円を上回り過去最高。ほかに命令を受けたのは、石川島播磨重工業(江東区)、宮地鉄工所(中央区)三井造船(同)、住友重機械工業(品川区)、日立造船(大阪市)、松尾橋梁(同)、栗本鉄工所(同)、川田工業(富山県南砺市)、川崎重工業(神戸市)、神戸製鋼所(同)など。最も金額が多かったのは横河ブリッジで八億五千四百四十万円だった。……勧告書によると、横河ブリッジなどは、国交省の三地方整備局発注工事では、過去五年間の受注実績に応じて幹事社が受注会社を事前に決定。旧公団分では、メーカーに再就職した公団OBと一部の担当者が中心となって年間工事の割り振りをあらかじめ決め、三整備局と旧公団分で二〇〇二年四月から昨年三月にかけ計二百九十五物件、総額二千三百六十億円余を受注した。(『しんぶん赤旗』2006.03.28より抜粋。)
●公共工事の入札・契約制度改革を検討している中央建設業審議会(中建審、国土交通相の諮問機関)のワーキンググループ(WG、大森文彦委員長)は、29日の第5回会合で中間取りまとめを行い、一般競争入札の拡大や総合評価方式の拡充を進めるための条件整備として、▽入札ボンドの導入▽発注者支援・第三者機関の整備▽多段階審査・交渉方式の導入▽JV制度見直し−の4課題を挙げた。WGでは中間取りまとめ案の文言修正を大森委員長に一任、近く開く中建審総会に報告する。国交省はこれを受け、今秋からの段階的な導入に向け、「日本版入札ボンド」の具体化作業を本格化させる。入札契約適正化指針の改正作業にも取りかかり、5月ころの閣議決定を目指す。(『建設工業新聞』2006.03.30。)

労働・福祉

●国土交通、農林水産の両省は24日、06年度の発注工事に適用する公共工事設計労務単価(基準額)を発表した。06年度の単価は50職種平均で1万7262円と、前年度比で0.7%の下落となった。公表を開始した97年度(2万3295円)以降、平均単価は一貫して下がり続け、9年連続の下落。ただ、マイナス3〜4%の間で推移してきた下落率は、05年度にマイナス1.8%に縮小。06年度はさらにその半分以下に縮まっており、下げ止まり感が強まってきた。ブロック別では関東や近畿などがほぼ前年度並みとなり、労務単価の「脱デフレ」まであと一歩といった状況だ。06年度の単価は、すべての地域ブロックで前年度よりも下回っているものの、民間建築工事が活発な関東、近畿の大都市圏2ブロックでマイナス0.0%とほぼ横ばいになった。公共工事への依存度が高い東北や四国などのブロックはマイナス幅が依然として大きいが、下落幅は縮まりつつある。都道府県別では、干葉、東京、神奈川、山梨、大阪、奈良、和歌山の7都府県がプラスに転じた。(『建設工業新聞』2006.03.27。)

建設産業・経営

●国土交通省は、大手建設会社55社の直近の業績や企業活動の状況などをまとめた「05年建設業活動実態調査」の結果を発表した。この1年間の国内売上高の総額は15兆1592億円(前年比2.8%増)で、4年ぶりに前年を上回った。侮外建設事業も、契約金額の総計が1兆 4075億円(同25.3%増)と昨年に続いてプラスとなった。従業員数は11年連続のマイナス。減少幅は小さくなっているものの、技術職、事務職の減少は続いている。この調査は、総合建設業35社と設備工事業20社が対象。国内売上高を見ると、公共分が3兆3351億41百万円(同9.7%減)と減少したが、民間分は11兆8240億24百万円(同7.0%増)と前年を上回ったため、全体ではプラスとなった。事業別では、土木建築工事が11兆8217億円(同1.5%増)、設備工事が2兆6961億円(同7.4%増)で、建設工事以外の売上高は、コンサルティングや設計などの建設関連業が1956億円(同30.3%減)、不動産業や設備機器の製造・販売などその他が4457億円(同45.5%増)だった。海外建設事業は、日系企業の事業が4636億 58百万円(同22.9%増)、そのほかの民間企業の事業が4376億83百万円(同57.0%増)、公共機関の事業が5061億98百万円(同8.3%増)。地域別の受注件数は、タイ、台湾、シンガポール、フィリピン、ベトナム、中国の順に多かった。将来、受注高を伸ばしたい国は、タイ、ベトナム、台湾、インドネシア、中国、シンガポールの順だった。……従業員数の合計は16万7909人(同2.4%減)で、11年連続のマイナス。職種別内訳は、技術職11万0045人(同0.5%減)、事務職4万1634人(同6.4%減)、技能職1万3979人(同16.6%増)、その他2251人(同54.7%減)。設備投資額は833億円(同6.6%増)で、2年ぶりにプラスとなった。資機材センターやその他設備分が増加している。(『建設工業新聞』 2006.03.23。)
●全国鉄筋工事業協会(和田進会長)は24日、…東京・永田町の星陵会館で緊急全国大を開いた。……大会は、田村春雄実行委貝長の開会宣言に続き和田会長があいさつし、全鉄筋40周年の節目を迎えた矢先に発覚した耐震強度偽装問題に対し、現場を担う者として遺憾の意を表すとともに「他産業と異なり、(鉄筋工事業界では)今なお廃業、倒産が続いている。建物構造物の基本である安全・安心を促進するためには指し値発注では経営の健全化は成立せず、適正価格による発注とそれに対する締結を強く訴えたい。その上で、誇りと夢を持てる職場環境づくりを実現し、諸外国の同業の得ている社外的・経済的地位に一歩でも近づこう。本日の大会を機に3K、6Kのハンデを乗り越えて会員一同団結し『鉄筋工事は全鉄筋の組合に』を合言葉に進んでいきたい」と呼びかけた。(『建設通信新聞』2006.03.27。)
●東京商工リサーチがまとめた2006年2月の建設業倒産は、301件で前年同月比2.3%の増加となった。1月に減少となっていたが、再び増加に転じる結果となっている。受注・販売不振197件、赤字累積39件、売掛金回収難5件を合わせた「不況型倒産」が241件となり、全体の80.0%を占めることになった。資本金階層別にみると1億円以上は1件に過ぎず、1000万円未満が164件と、依然として中小・零細企業にとっての経営環境の厳しさが目立つ。(『建設通信新聞』2006.03.28。)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他