情勢の特徴 - 2006年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「東京外かく環状道路(外環道)のうち未整備の都内区間(関越道〜東名高速、延長約16キロ)について、東京都は6月から、道路構造を現行計画の高架方式から地下方式に変える都市計画変更手続きに入る。2日付で都市計画変更案と環境影響評価(環境アセスメント)準備書を公告し、縦覧手続きを開始するとともに、沿線住民を対象にした説明会を順次開く。沿線住民の反対で事業が凍結されてから30年以上が経過した外環道都内区間は、整備着手に向け新たな段階に入る。……外環道都内区間は、1964年に高架方式による整備手法で都市計画決定された。だが、環境悪化を招くなどとして沿線住民が建設に強く反対。70年に建設省(現国土交通省)が事業の凍結を宣言した。99年に就任した石原都知事は同区間の開通に強い意欲を示し、同省に凍結解除を要請。01年に石原知事と扇千景国交相(当時)が現地を視察したのを機に事態は大きく進展。高架方式から大深度地下を利用する方式に切り替えて同区間を整備する案が浮上し、計画を具体化する作業が進んでいた。外環道都内区間は、国の高速道路整備計画路線(9342キロ)の枠外にあり、事業化するには国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)で計画の位置付けを変更する必要がある。整備計画路線に盛り込むためには事業主体を明確にする必要があり、総事業費が1兆円を大きく超えるプロジェクトをどう進めていくのか、国は整備手法を含め検討することになる。今後、沿線住民の反対運動が激化することも予想され、着工までにはなお曲折がありそうだ。」(『建設工業新聞』2006.05.24。)外環道未整備区間は国の整備計画路線としても規定されておらず、大深度地下方式による地中環境への大きなダメージと巨額の事業費を要するものである。東京都は、この区間の整備を断念すべきだ。
●「国土交通省は、ダンピング(過度な安値受注)対策として打ち出した緊急立ち入り調査の対象工事(業者)を近く決め、 6月にもヒアリングに入り、8月から順次調査に着手する方針だ。工事完了後に実施していた定期の下請代金支払状況等実態調査と異なり、契約後と工事中の複数回にわたって調査に入るのが特徴で、実行予算と実際の原価を比較するなど下請業者への不当なしわ寄せの把握に本腰を入れる。……調査は、低入札価格調査制度の対象となった工事のうち、重層下請構造の工事で社会的影響が大きいものなどが対象で、契約後に実施する調査では、下請けに対して適切な見積期間を設けているか、双方合意の上で契約しているかなど、契約締結に至る過程などが適切であったかどうか調べる。工事中は出来形などに応じた代金の支払状況のほか、技術者の配置体制なども調査する。これまでの調査と大きく異なるのは、実行予算と実際原価にまで踏み込むことで、国交省では、この2つを比較し、下請業者へのしわ寄せなど元下関係の実態を把握する考えだ。元請けに加え、1次下請けまで調査に入り、2次下請けの契約内容も把握する。元請けがJVのときは、代表者以外の構成員も調査する。許可行政庁が異なる場合は他の機関と連携して調査を進める。」(『建設通信新聞』2006.05.30。) 元下関係を中心に低入札価格工事の調査内容を充実させる今回の国土交通省の措置は、ダンピング受注が大規模公共工事にまで拡大する中で、現場において、元下関係の適正化の要請が切実となっている状況に応えたものだ。今回の調査により低入札工事の実態が明らかになるであろうが、個々の工事における具体的な是正措置とともに、低入札調査制度自体の改革を迫られることになる。
●「公務員の…純減数が最も多いのは、ハローワークや社会保険庁など四分野が見直し対象となった厚労省の9338人。農林統計など三分野が対象の農水省の7012人が続き、両省で全体の八割を占めた。法務省は登記・供託で原則として1588人を純減。純減とは別に行刑施設分野で1009人分を民間委託する。国土交通省との調整が難航した北海道開発部門は1003人で決着。当初国交省が示していた861人からは上積みしたが、約6300人の定員の16%にとどまる。外務省職員より多いなどとして『2−3割の純減』を求めた首相の指示通りにはいかなかった。純減の内訳は独立行政法人への移行による『非公務員化』が全体のおよそ4割を占めた。独法化するのは厚労省の国立高度専門医療センター(約5600人)と、農水省の森林管理(2400人)だが、当面は人件費などに充てる国からの交付金の支給が続く見通し。このため、国の総人件費抑制を危ぶむ声も出ている。」(『日本経済新聞』2006.05.30。) 行革関連法に基づく各府省毎の公務員定数削減の数値目標が確定したが、厚労省、農林省などの国民生活と地方の産業振興に重要な分野が狙い打ちされている。今回の定数削減は、市場化テストや民間委託化、独法化などの民間化と密接に結びついており、委託費用等の増大により、歳出の削減に結びつかないどころか、民間企業の利益を保証するために歳出を拡大することに成りかねない。

労働・福祉

●「厚生労働省が15日発表した05年の死亡災害・重大災害発塵状況によると、建設業の労働災害による死者は497人と前年より97人減り、初めて500人を下回った。ただ、全業種中では依然として最も多く、一度に3人以上が死傷する重大災害の発生率も全業種中トップの 97件となっている。建設業の死者は全体の32.8%を占める。主な死亡事故と死者数は、墜落・転落203人(前年260人)、交通事故60人(同74 人)、挟まれ・巻き込まれ50人(同51人)、崩壊・倒壊39人(同54人)。97件発生した重大災害では、419人が死傷し、死者は21人だった。主な重大災害は、交通事故56件(同48件)、中毒・薬傷21件(同10件)、倒壊3件(同6件)となっている。」(『建設工業新聞』 2006.05.16。) 昨年度の建設業における労災事故は、墜落転落による死亡事故が大きく減少したこと等のために死亡者数では大きく減少した。しかし、交通事故と中毒・薬傷の増加により、建設業における重大災害件数は増加、重大災害事故による死傷者数も、55人増えて419人となっている(厚生労働省「平成17年度における死亡災害・重大災害発生状況の概要」)。
●「2005年度にアスベスト(石綿)による健康被害で労災認定された人は722人と前年度の4倍近くに上り、過去最多となったことが30日、厚生労働省のまとめでわかった。05年6月にクボタが社員や周辺住民の石綿による被害状況を公表したのをきっかけに社会問題化し労災請求者が相次いだほか、石綿特有のがんの一種である中皮腫を原則すべて認定するなど基準を緩和したため認定者が急増した。認定者722人の内訳は肺がんが219人、中皮腫が503人。04年度は186人(肺がん58人、中皮腫128人)だった。請求者は1796人で、前年度の8.5倍に達した。請求者は 4−6月で月平均24人だったが、クボタが被害を公表後の7月以降は月平均191人と急増。05年度に認定審査を実施したのは840人分の請求で、うち 722人が労災と認められ、認定率は86%だった。認定者は都道府県別では大阪(129人)、兵庫(105人)、東京と神奈川(ともに64人)など造船所や工業地帯の多い地域で目立ち、業種別では造船業・窯業を含む製造業と建設業で全体の9割以上を占めた。」(『日本経済新聞』2006.05.31。)

建設産業・経営

●「鹿島、大成建設、清水建設、大林組の上場大手ゼネコン4社の06年3月期連結決算が18日出そろった。好調な民間設備投資に支えられて4社とも増収となり、経常利益も4社そろって500億円を超える高水準となった。今後の収益の先行指標となる受注高(単体ベース)は、大幅増となった前の期の反動で鹿島が前年同期比7.4%減と落ちたほかは、清水が同8.6%増と伸び、大林は同0.4%増、大成は0.7%減とほぼ横ばいだった。今期は、各社とも増収を見込む一方、民間工事、公共工事の両分野で競争が一段と激化すると見込まれることから受注減を予想している。各社は既に、減損会計の前倒し適用で不動産などの損失処理を終えており、前期決算でその影響はなかった。加えて民間設備投資や都市再生、海外事業などを中心に受注や開発事業が活況となり、販管費の削減など利益確保への取り組みも効果を上げたことで、確実に収益を上がる体制を構築した。」(『建設工業新聞』 2006.05.19。)
●「東京商工リサーチがまとめた、2006年4月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、345件で前年同月比学 7%の大きな増加になった。これで3カ月連続で300件台で推移したこととなった。負債総額は、576億110万円で、これも24.6%の増加になっている。受注・販売不振が215件、赤字累積が45件、売掛金回収難が4件となり、これらを合わせた、いわゆる不況型倒産といわれるものは264件で、全体の 76.5%を占めた。」(『建設通信新聞』2006.05.22。)
●「長野県建設業協会(中澤英会長)は、県内建設市場の見通しをもとに、今後の建設業界の対応を検討するための調査報告書『長野県建設業の経営改善・再生・再編等の問題点について』をまとめた。……報告書では、将来の市場規模から見て再編問題は避けられないとの認識を示した。協会支部を中心に行政サイド、中小企業団体、金融機関の協力のもとで、再編推進協議会を地域ブロックごとに設置する。また、『協会本部に再編推進本部および相談窓口を置く』ことを提言。公共発注機関にも一層の優遇措置を求めていくべきとした。企業の将来像では、『過疎地域においては地元建設産業の存在抜きには生活基盤サービスに提供が困難になりつつある』ことから『地域総合サービス業』としての展開が必要と指摘した。具体的な企業の経営改善・再生の方策としては、▽経営革新計画の策定▽重点分野への集中▽施工の協業化(設計、元請建設業、専門工事業、資材供給会社などで情報を共有化し、利益など共通目標達成図る)▽建設労働者送出・受入連携事業への取り組み―などを挙げた。」(『建設工業新聞』2006.05.23。)
●「建設産業専門団体連合会(山崎善弘会長)の調査によると、会員団体傘下の企業の68.5%が、『元請けからの指し値発注があった』と回答したことが分かった。『見積書未提出だったが、実質的には指し値だった』も5.2%あり、合わせると73.7%の専門工事業者に対して、元請企業から指し値発注していた実態が浮き彫りになった。見積金額に対する指し値による値引率は『20−39%』の33.6%で最も多く、『59%以下』までを含めると、全体の 89.1%に達している。この調査は、正会員34団体と特別会員2団体のそれぞれの傘下企業10社ずつ、合計360社を対象にアンケート方式で実施しており、およそ4分の3の企業から回答を得た。この結果、指し値発注が『なかった』のは26.2%と、約4分の1に過ぎなかった。業種別にみてみると、土木関係では『あった』のが68.8%、躯体関係では58.8%、仕上げ関係が77.8%、設備関係が62.5%となっている。これに『見積未提出だが実質的には指し値だった』を合計すると、土木関係は70.9%、躯体関係が68.1%、仕上げ関係が82.1%、設備関係は62.5%と変わらない。見積金額に対する指し値による値引率では、当初工事は『10%未満』が17.5%、『10−19%』が26.1%、『20−39%』が33.6%、『40−59%』が 11.8%となっており、『60%以上の値引きをされた』という回答も13.2%あることが分かったという。業種別では、最も多いのが設備関係の『20−39%』の値引きで46.7%に達している。以下、仕上げ関係の『20−39%』の36.5%、土木関係の『20−39%』の35.3%、仕上げ関係の『10−19%』の28.1%、躯体関係の『10−19%』と『20−39%』の25.8%となっている。追加工事の代金の受け取りについては、全体の63.3%が『必要額は受け取った』と答えており、『必要額の一部を受け取った』は34.1%、『まったく受け取っていない』は2.2%にとどまっている。『必要額の一部を受け取った』とする回答で、『90%以上の金額を受け取った』のは10.3%、『70−89%』が33.3%、『50−69%』が 24.4%などとなっている。」(『建設通信新聞』2006.05.31。)

まちづくり・住宅・不動産・環境

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