情勢の特徴 - 2006年7月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「建設経済研究所は25日、06、07年度の建設投資見通しを発表した。07年度の建設投資額は51兆8700億円で、前年度比1.8%減となる見通し。民間投資が好調を保つものの、伸び幅は縮小。政府投資が約1割減って 1978年度の水準まで落ち込むと見込んでいることから、全体では減少基調が続くと予測している。07年度の建設投資の内訳は、政府部門が16兆2700 億円(前年度比9.8%減)、民間部門が住宅19兆4200億円(同1.7%増)、非住宅16兆1800億円(同3.2%増)。政府投資のうち、建築分は 2兆200億円(同11.8%減)、土木分は14兆2500億円(同9.5%減)と予測。……民間の住宅投資は、住宅着工戸数が126万戸(同0.4%増)と堅調に推移するとみてプラスの見通し。……民間非住宅投資は、伸び率は鈍化するものの、引き続き増加傾向が続くと予測している。……06年度の建設投資総額は52兆8000億円(同1.2%減)の見込みで、内訳は、政府部門が18兆300億円(同9.3%減)、民間部門が住宅19兆900億円(同 2.6%増)、非住宅15兆6800億円(同4.7%増)。住宅着工戸数は125.5万戸(同0.4%増)、非住宅着工床面積の合計は7036万平方メートル(同7.4%増)と見込んでいる。」(『建設工業新聞』2006.07.26)

行政・公共事業・民営化

●「低入札価格調査制度…を導入した入札は03年度が3万5022件(都道府県2万3253件、政令市5492件、県庁所在地市6277件)、04年度が3万5617件(都道府県2万2868件、政令市6076件、県庁所在地市6673件)で、このうち実際に調査が行われた工事は03年度が2191件(都道府県1292件、政令市497件、県庁所在地市402件)、04年度は3093件(都道府県1685件、政令市758 件、県庁所在地市650件)と大幅に増加した。導入件数に占める調査実施比率は、03年度の6.3%(都道府県5.6%、政令市9.0%、県庁所在地市 6.4%)に対して04年度は8.7%(都道府県7.4%、政令市12.5%、県庁所在地市9.7%)に上昇。中でも、政令市での比率の高さが目立っている。……最低制限価格制度を導入した入札は、03年度が9万5933件(都道府県7万4430件、政令市1万1068件、県庁所在地市1万435件)、 04年度が10万6372件(都道府県8万3644件、政令市1万838件、県庁所在地市1万1890件)。うち、くじ引きで落札者が決まったのは、03 年度が3645件(都道府県2244件、政令市663件、県庁所在地市738件)、04年度が4366件(都道府県2708件、政令市794件、県庁所在地市864件)だった。」(『建設工業新聞』2006.07.18)
●「国土交通省は、本年度末をめどに耐震強化岸壁の緊急整備プログラムを策定する。耐震強化岸壁が整備された港湾は、地震発生時に物資輸送拠点になるため早期整備が必要とされているが、整備率は55%(今年1月時点)にとどまっている。同省は、300〜500年に一度起きる規模の地震に対応する岸壁を整備する従来の方法(特定タイプ)に加え、100〜150年に一度の地震に備える『標準タイプ』を新たに設け、効率的に事業化していく考え。プログラムの計画期間は5年で、この間に整備率を70%程度まで引き上げる方針だ。……新設する標準タイプは、100〜150年に一度の地震の場合には被災直後から利用可能で、300〜500年に一度の最大級地震時には、1週間程度の応急復旧により利用が再開できるレベルを想定している。特定タイプよりも、コストが約2割縮減できるという。」(『建設工業新聞』2006.07.20)
●「首都高速道路会社は、東京都との合併施行で進めている首都高速道路中央環状品川線の整備で、近くトンネル本体工事の入札手続きに入る方針を固めた。施工者を決める一般競争入札を来週早々にも公告する。施工者選定には、高度技術提案型総合評価落札方式と価格交渉を組み合わせた方式を採用する見通し。同社と都が外回り・内回り線で1本ずつ分担するシールド工区では、延長約8.4キロのトンネルを途中に立杭を設けず一気に構築する計画。工事費は1本1000億円近くに上ると見られ、高速道路の入札案件としては過去最大規模になる見込み。同社は来春までに施工者を決め、都に先行する形で着工する。同社が近く発注するのは外回り線のシールドトンネル工事。『技術提案価格交渉方式』を採用するとみられる。この方式では、入札参加希望者が提出した参加表明書と技術資料(施工実績、配置予定技術者、技術提案書、工事費内訳書)を総合的に評価し、3社程度を入札参加者として選定。入札参加者から、詳細な技術提案と工事費内訳書の提出を求め、技術・価格について交渉を行って予定価格や仕様書を作成し、競争入札を実施、技術提案と価格を総合評価して落札者を決定する。技術提案に対する加算点は今のところ10点を予定している。……同社の有料道路事業と都の街路事業の合併施工方式を採用し、約 4000億円の事業費を半分ずつ負担する。供用開始は13年度の予定。品川線が完成すると、中央環状線の全線約47キロが開通する。同社は、外回り線のシールド工区のほか、五反田出入り口や大橋JCTとの接続工事、換気所の設備工事なども担当する。一方、内回り線のシールド工区を担当する都は、詳細設計と施工を一括し、高度技術提案型総合評価方式で公告することを検討している。来年の都議会第2回定例会に契約案件を付議した後、来秋にも工事に着手する見通し。都はこのほかに大井北JCT、同JCT付近の堀割構造となる本線部分、換気所の掘削などの工事を実施する。」(『建設工業新聞』 2006.07.28)

労働・福祉

●「国土交通省がまとめた6月の建設労働需給調査で、鉄筋工不足が深刻化していることが改めて浮き彫りになった。8職種平均の不足率が0.7%(プラス数値が大きいほど技能労働者が不足)なのに対し、鉄筋工(建築)は前年同月を2.7ポイント上回る4.8%で、最も技能労働者が不足している。鉄筋工(土木)も1.1ポイント上昇の2.9%とプラス幅が大きく、2職種ともに関東、近畿でその傾向が強くなっている。……新規募集不足率も、8職種平均4.1%に対して鉄筋工(建築)は19.0%、鉄筋工(土木)は13.5%と高く、他職種に比べて労働者確保が難しい状況にある。」(『建設通信新聞』2006.07.31)
●「厚生労働省は、雇用保険料を原資とする雇用保険3事業の見直し方針をまとめた。雇用安定、能力開発、雇用福祉の3事業のうち、必要な助成措置・事業を除いて雇用福祉業は廃止し、現行の3事業を2事業に再編する。現行3事業のうち、建設関係では、労働移動支援助成金(建設業新規・成長分野定着促進給付金)を廃止し、建設教育訓練助成金の廃止・見直しを検討するなどの方針を示した。……雇用保険3事業の見直しは、05年 12月に閣議決定した行政改革の重要方針や、今通常国会で成立した行政改革推進法で、事業の『徹底的な見直し』が打ち出されたことを受けた措置。雇用状況の改善によって保険給付が減少し、保険料に余剰が出ていることなどから、政府は見直しを加速することにしていた。厚労省によると、保険3事業の廃止・見直しによって、800億円程度の予算が削減される見通し。ただ、同省は要件を厳格化した上で新規措置を創設する考えも示しており、削減効果には不透明な部分もある。雇用保険3事業の見直しでは、建設雇用の大幅な変革が予想されるとして、全国建設業協会(全建、前田靖治会長)が5月末に厚労省職業安定局長に意見書を提出。建設労働対策を後退させないよう申し入れていた。」(『建設工業新聞』2006.07.31)

建設産業・経営

●民間信用調査会社の帝国データバンクが18日発表した今年上半期(1-6月)の全国企業倒産(負債額1千万円以上の法的整理)件数は、前期比を5.3%上回る4625件だった。「倒産は緩やかな増加基調」と指摘している。倒産原因の中で販売不振が65.8%を占めている。倒産企業の97.5%を資本金1億円未満の中小・零細企業が占め、「昨今の景気回復によって中小企業の経営環境が大幅に改善されているわけではない」と分析している。一方、「企業活動の活発化に伴って」資金調達ができずに倒産する例などが増えている。鋼材や燃料などの高騰から収益が悪化して倒産する事例もみられる。負債総額は2兆8047億円で、前期比8.7%減少。大型倒産が低水準で推移しているため額は減少している。6月の全国企業倒産は前期比 1.8%増、前年同月比6.3%減の744件。負債総額は3832億円で、前年同月比12.8%減少した。6月の破産は684件。構成比は91.9%で、法的整理のみを集計する2005年4月以降では最高となった。(『しんぶん赤旗』2006.07.19より抜粋。)
●「大和ハウス工業は主力製品である鉄骨戸建て住宅の工法を25年ぶりに全面刷新する。骨組み強度を上げ、柱の位置を自在に設定できるようにした。リビングルームを広くしたり、大きな窓を取り付けるなど設計の自由度が大幅に向上する。今秋、新工法を採用した鉄骨住宅を発売。2007年度までにすべての製品を新工法に切り替え、積水ハウスなどとの受注競争に弾みをつける。新工法は柱に使う軽量鉄骨を厚くしたほか、耐力壁の内部に組み込む鉄製の筋交いも太くし、それぞれの強度が高まるため耐力壁の枚数が少なくて済み、柱の位置を変更しても耐震強度を保てる。新工法では柱の位置の間隔を伸ばし、広い部屋を造れる。構造上の制約から2.5メートル前後が標準だった天井高を3メートル程度まで引き上げることも可能。壁を減らした部分を使い、従来より約1メートル大きい3.5メートルの大型窓も取り付けられる。リビングが広い家、窓が大きく日当たりや風通しの良い家など顧客の様々なニーズを満たした住宅が造りやすくなる。」(『日本経済新聞』2006.07.20)
●「東京商工リサーチがまとめた2006年6月の建設業倒産(負債総額1000万円以上)は、346件で前年同月比 7.9%の減少になった。しかし、ことしに入ってからは最多の倒産件数となった。負債総額は812億6400万円で4.2%の減少。業種別では総合工事業が3.4%減の198件、職別工事業が6.8%減の81件、設備工事業が20.2%減の67件。倒産原因では、受注・販売不振が11.5%減少の223件で、全体の過半を占めた。」(『建設通信新聞』2006.07.24)
●「東京商工リサーチがまとめた2006年上半期(1月−6月)の建設業倒産(負債総額1000万円以上)は、1926 件で前年同期比3.5%の増加になった。上期としては4年ぶりに前年を上回る結果となっている。負債総額は、3916億5800万円で14.6%の減少になっている。総合工事業が7.5%増の1102件、職別工事業が2.8%減の470件、設備工事業が0.8%増の354件となった。原因別では、受注・販売不振が3.4%増の1243件と、全体の6割を占めた。」(『建設通信新聞』2006.07.26)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、耐震強度偽装問題が招いた建築物の安全性に対する不信感を払拭するため、建築士制度の見直しといった設計分野に加え、建設業が担う施工分野にもメスを入れる方針だ。施工品質を担う監理技術者に着目し、責任・職務の明確化や不正行為に対するペナルティーを検討する。公共工事のみに求めている資格者証の交付要件を民間工事に拡大することも念頭にあり、『建設産業政策研究会』(座長・大森文彦弁護士)での結論を踏まえた上で、建設業法を改正する。監理技術者は、施工技術を確保するため、建設業法で工事現場への配置が義務付けられている。ただ、その責任や職務があいまいな上、資格者証取得の際に不正が見られることから、責任・職務を明確化するとともに不正行為に対するペナルティーを検討する。……また、耐震強度偽装問題を踏まえ、民間工事の監理技術者の在り方も検討する。建設業法では、公共工事の監理技術者だけに資格者証の交付要件を設け、共同住宅、ホテル、事務所などの民間工事には、資格者証の交付を求めず、監理技術者の専任配置のみとなっている。この資格者証交付要件を民間工事にも拡大し、公共工事と同様の施工を確保する考えだ。これらの施策は、建設産業政策研究会の議論を踏まえた上で、具体化する考えだ。同研究会では、分譲マンションのような発注者と最終的な消費者が異なる工事で一括下請けを禁止することも検討する。このため、結論次第では、一括下請けと監理技術者の双方で建設業法を改正することになる。建築士法改正の動きに合わせ、早ければ今秋の臨時国会に提出する見通しだ。」(『建設通信新聞』2006.07.18)

その他