情勢の特徴 - 2006年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は29日、07年度予算の概算要求を発表した。一般会計の要求総額は7兆3366億円(前年度当初比 17%増)で、うち公共事業関係費は6兆6434億円(同18%増)。要求限度額とは別枠での計上が認められている経済成長戦略推進要望としての公共事業関係費は1090億円とした。国際競争力の強化、地域の活性化・都市再生、国民の安全・安心の確保、柔軟で豊かな生活の実現といった課題に対応する施策に予算を重点配分するとしている。……重点的に推進する事業として、3大都市圏環状道路の整備を挙げ、2142億円(同21%増)を計上。流域が一体となった治水・土砂災害対策にも力を入れ、805億円(同18%増)を要求する。地域住宅交付金は2660億円(同75%増)、まちづくり交付金は2980億円(同25%増)と拡充。防災公園の整備には579億円(同16%増)を要求する。下水道による都市浸水対策の推進には2072億円(同24%増)を計上した。……国土交通省は、本四架橋の債務処理経費(06年度4522億円)を道路整備特別会計に計上する『道路整備等予算』などに振り分ける形で07年度予算を概算要求した。本四架橋の債務処理経費は、債務処理への充当措置を06年度で終えることから、新たな使途が注目されていたが、道路特定財源をめぐる政府・与党の見直し案の取りまとめ時期が年内とされたため、国交省は既存の各道路関係事業に上乗せする形で債務処理経費を振り分け、年末の政府予算原案の検討過程で最終的な扱いを決めることにした。」(『建設工業新聞』2006.08.30)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、『港湾の施設の技術上の基準を定める省令』を今秋にも改正し、技術基準を性能規定化する。5月17日に公布した『海上物流の基盤強化のための港湾法等の一部を改正する法律』(改正港湾法)で、性能規定化による多様な設計手法が可能となることから、国または登録確認機関が技術基準への適合性を確認する制度も創設する。改正港湾法は公布日に一部施行済みだが、性能規定化した技術基準に関連する規定は2007 年4月1日に施行する。仕様規定の性能規定化は、技術革新への柔軟な対応がねらい。たとえば、防波堤の場合、現行の仕様規定では、波力に対する抵抗力を堤体の重量で確保しているが、性能規定化すれば、波力を分散するかたちに堤体を設計することで抵抗力を確保できるようになるため、重量も軽減でき、コスト縮減につながる。ただ、港湾施設の建設や改良を許可する港湾管理者や都道府県では、技術的な性能規定化後の技術基準に適合しているかどうかを判断できない可能性があるため、新たに登録機関確認制度を設ける。国以外のものが標準的な設計以外の手法で、防波堤など外郭施設、岸壁など係留施設を建設・改良する際、その設計方法が性能規定化した技術基準に適合しているかどうかの確認を義務付けるしくみで、国土交通省または国土交通大臣の登録を受けた第三者機関(登録確認機関)が適合性を確認する。」(『建設通信新聞』2006.08.17)
●「政府が国家公務員制度改革の一環で検討中の天下り規制と官民交流の見直し試案の原案が17日、明らかになった。公務員OBが民間企業に再就職する場合にそれまでの業務とかかわりのある業務への関与を禁止すると明示。違反への刑事罰を設ける。天下りを生む中央省庁の早期退職勧奨を減らすため、昇進しなくとも定年まで働けるポストも新設する。……現行法では退職前5年間の職務と関連の深い業界への再就職は2年間禁止しているが、再就職後の罰則はない。3年目に一斉に天下る例が多く、OBと元部下との接触を防ぐ規定もなかった。新制度では省庁にも規制を課し、OBから口利きの働きかけを受けた公務員に所属部署の責任者への報告を義務付け、隠ぺいした場合は懲戒処分とする。所管業界の企業に自省庁用の再就職ポストを用意させる行為も処分対象となる。従来ならば50歳程度で退職を迫られていた公務員が希望すれば定年まで役所に在籍できる『専門スタッフ職』の導入も提案。特定分野に通じた職員の雇用は延長し、アドバイザー役などを担わせる。」(『日本経済新聞』2006.08.18)
●「国土交通省は25日、官庁施設の耐震診断結果を発表した。……診断の対象393棟(延べ約350万平方メートル)のうち、官庁施設としての耐震基準を満たす施設は217棟(55.2%)で、震度6以上の大規模地震で損傷する可能性がある基準に満たない施設は176棟(44.8%)だった。176棟は中規模地震では損傷しないことが確認されているものの、同省は耐震化対策を重点的に進めることにしており、耐震性を示す評価値が1.0に満たない114棟は、10年以内に約9割(面積ベース)の対策を完了させたい意向だ。」(『建設工業新聞』2006.08.28)

労働・福祉

●「東京都内における労働災害が増加している。墜落・転落による死亡者は昨年同期に比べ2倍以上となった。建設業における労働災害の状況は、死傷者数(死亡者を含む休業4日以上の災害)では減少しているものの、死亡者数は増加しており、労働災害防止に向けた一層の取り組みを強化しなければならない。」(『建設通信新聞』2006.08.30)

建設産業・経営

●「17日までに業績を公表した大手・準大手ゼネコン22社の2007年3月期第1四半期業績は、国内官公庁と海外での受注が増えたことから、前年同期に比べて建築の受注高が伸びたゼネコンが目立った。一方で土木の落ち込みは大きく、全体では22社の受注高合計は1兆 8003億円となり、前年同期比2.7%の減少となった。公共事業の削減基調に加えて、大型案件の発注が減ったことから、土木の受注高は、22社中15社が前年同期比マイナスとなった。22社合計の土木受注高は、前年同期比21.0%減の3285億円だった。土木の内訳をみると、国内官公庁、国内民間、海外の3区分いずれもが前年同期に比べて大幅に減った。特に、国内官公庁は、前年同期に羽田再拡張工事の発注があったことなどから、28.1%減と大きく落ち込んだ。建築の受注高は、好調だった。……受注高全体に占める建築の割合は、4.1ポイント高まり、78.3%となった。建築の内訳は、国内民間は前年同期比0.4%の微増で頭打ちの状況だったのに対して、国内官公庁は13.2%増、海外は41.6%増と大きく伸びた。海外受注高の増加は、五洋建設がシンガポールで340億円超の大型建築工事を受注したことが大きく貢献した。また、不動産事業など附帯事業の受注高は、22社合計で617億円となり、前年同期比1.0%の微減となった。」(『建設通信新聞』2006.08.18)
●「売上高の9割以上を公共事業に依存する建設コンサルタントにとって、長期化する国と地方の公共事業予算削減は経営を直撃している。一方で、2005年4月に施行した公共工事品質確保促進法によって、プロポーザル方式での発注が増加、技術力の強化が迫られている。1社だけではこうした環境を乗り切ることが困難になっているため、合併や資本提携などさまざまな動きが活発化している。公共事業は今後も減少が続くことから、業界再編のうねりがさらに大きくなる見通しだ。……全国展開しているコンサル同士としては始めての合併が誕生した。6月1日付け国土環境と日本建設コンサルタントが合併、『いであ』を設立した。……同日付で建設技術研究所は、100%子会社『福岡土地区画整理』の営業を開始した。福岡土地区画整理協会から営利事業の土地区画整理事業の譲渡を受け、資本金1億円、社員数約100人で、5月2日に設立した。……日本工営グループの日本シビックコンサルタントは、山岳トンネルを得意とするコンテクと7月に合併した。日本シビックは、シールド関連のプロポーザルで2005年度は特定率100%を誇る。合併によって、トンネルの競争力をさらに高める。夢真ホールディングスの敵対的買収から日本技術開発を救うホワイトナイト(白馬の騎士)として登場したエイトコンサルタント。7月に日本技術開を連結子会社化した。……一方、オリエンタルコンサルタンツは、グループの総合力を高めるため、純粋持ち株会社『ACK(アック)グループ』を今月28日に設立する。……政府は『骨太の方針2006』で、来年度から5年間、公共都市を1-3%削減することを明記した。公共市場の縮小は止まらず、技術力の競争は激しくなる。こうした事態に対処するため、各社とも総合力の強化、ワンストップサービスの提供をキーワードに挙げる。自社単独でこれを実現しようとすると時間がかかり、その間に他社との競争に敗れてしまう。スピード勝負の様相を呈してきているため、今後も合併や提携などさまざまな動きが相次ぎそうだ。」(『建設通信新聞』2006.08.22)
●「東京商工リサーチがまとめた2006年7月の建設業倒産は、337件で前年同月に比べて12.3%の増加となった。産業別で全体の32.0%を占めることになり、ことしになって最高を記録した。32%台に達したのは04年6月の32.3%以来、2年1ヵ月ぶりのことになる。また、4ヵ月連続で3割を占める結果となっている。負債総額は583億8200万円で14.2%の減少になっている。受注・販売不振が207件で全体の61.4%となっている。」(『建設通信新聞』2006.08.22)
●「ゼネコンの設計施工一括受注比率が拡大傾向にある。民間建築の短工期要求が強まり、施工効率に優位性を発揮する一括発注を選択する事業主が増えていることが要因。土地情報と具体の建設計画をセットで持ち込む提案型営業の強化も後押しした。ただ各社がこぞって企画段階からの営業活動を始めたことから、結果的に見積もり競争を余儀なくされるケースも増え、逆に特命受注率が低下した。日刊建設通信新聞社が直近決算で完成工事高1000億円を超えるゼネコン24社の受注実態を調査した結果、建築工事に占める設計施工一括受注の割合は前期実績比5.2ポイント増の45.1%となった。比率を高めたのは約7割の15社に達する。……すでにマンション工事では、土地の買い付けから建物の完成までをできる限り短縮したい事業者の意向により、設計施工一括の発注が大半を占める。近年は準大手クラスを中心にマンション受注を強化する動きが広がり、各社の業績拡大が一括受注の割合を高める結果につながった。一方で特命受注の割合は、前期実績比2.9ポイント減の53.3%と減少傾向にある。調査対象の半数となる12社が割合を下げた。2割以上比率が低下した企業もあり、受注競争の激化が色濃くなっている。」(『建設通信新聞』2006.08.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

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