情勢の特徴 - 2006年10月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、これまで実施している施策を含めた新たなダンピング(過度な安値発注)対策をまとめた。近畿地方整備局がWTO(世界貿易機関)適用工事を対象に、施工体制事前提出方式(オープンブック方式)を導入して効果を検証するほか、中国地方整備局は、低入札価格で応札し、内訳書で直接工事費、共通仮設費、現場管理費、一般管理費の経費が定めた基準を満たさない場合、落札者としないなどの方策を実施していくことにしている。」(『建設通信新聞』2006.10.02)
●「国土交通省関東地方整備局は、調査・設計業務の入札・契約手続き改善策をまとめ、2日から本格運用を開始した。国交省が先に策定した『随意契約見直し計画』や、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の規定を踏まえ、同省の地方整備局では初めて、発注者が一方的に指名または資料提出依頼をする指名競争入札と標準プロポーザル方式を原則廃止した点が柱。さらに、従来は特命随意契約で公益法人に委託していた業務のうち高度な技術力が必要な業務については、公益法人と民間コンサルタントが同じ土俵で技術力を競うプロポーザル方式を運用する。……国交省は先に、随意契約手続きの不透明性が問題化したため、05年度の随意契約の緊急点検を実施。6月には、真にやむをえない業務以外は随意契約をやめ、遅くても07年度からは一般競争入札などに移行することや、公募・プロポーザル方式の本格導入、総合評価方式の導入・拡大、国庫債務負担行為による複数年度契約の活用などを盛り込んだ『随意契約見直し計画』を打ち出していた。」(『建設工業新聞』2006.10.03)
●「国土交通省が8月に契約した工事の平均落札率が、月ごとのデータを集計して以来最低を記録した。8月契約分の単純平均の落札率は88.7%を下回り、2ヵ月連続して前月より低下。これまで最低だった3月の88.3%も下回った。競争激化が低価格入札に拍車をかけているといえそうだ。同省が8月に契約した1件当たり100万円以上の直轄工事(港湾・空港関係含む)は845件。各月の平均落札率は05年11月の契約分から公表しており、05年11月91.1%、12月90.6%、06年1月89.0%、2月88.7%、3月88.3%、4月91.3%、5月89.4%、6 月89.5%、7月88.7%と推移し、8月は過去最低となった。落札率が50%を切る極端な安値発注が増え、全体の平均落札率を引き下げている格好だ。」(『建設工業新聞』2006.10.04)
●「国土交通省は、共同企業体(JV)の資格審査要領を改正する事務次官通達を、各省庁・特殊法人・都道府県などに5日付で出した。5月に閣議決定した改正入札契約適正化指針を受け、企業合併につながらない経常JVに対しては、従来あった主観・客観点数の加算措置を行わないよう要領を変更する。同日発表した07・08年度の同省競争参加資格審査では、加算措置を受ける場合は、次期(09・10年度)の競争参加資格認定日までに合併契約を締結する旨を記した書面の提出を義務付けることにした。改正適正化指針には、単体企業と経常JVの同時登録を認めないことも盛り込まれており、同一工種で単体と経常JVの両方で競争参加資格を登録することはできなくなった。」(『建設工業新聞』2006.10.06)
●「国土交通省は、建設業法の改正案で禁止する民間工事での一括下請けの対象を『共同住宅』にする方針を固めた。分譲マンションの禁止は鮮明に打ち出していたが、そうした場合、賃貸と偽って施工し、完成後に分譲に転換するといった脱法行為が発生する恐れがあるため、賃貸、分譲を問わず共同住宅は禁止する。改正案は20日に閣議決定される見通し。……今回の建設業法改正では、民間工事での一括下請けの禁止に加え、監理技術者資格者制度・講習制度の民間工事への適用、施工に関係する図書の保存、建設工事紛争審査会の処理手続き見直し(時効中断効創設)も行う。(『建設通信新聞』2006.10.06)
●「国土交通省が05年度に発注した直轄工事(港湾空港関係を除く全地方整備局、官庁営繕部、国土技術政策総合研究所発注)の低入札価格調査実施状況が明らかになった。発注件数1万0929件のうち、低入札価格調査を実施した工事は計913件、発生比率は8.4%と、件数・比率ともに前年度の2倍を記録した。WTO政府調達協定が適用される一般競争入札案件でも、それまでの年間件数から30件へと激増。04年度まで 1〜2%台の発生比率だった鋼橋上部工事では、60%超の工事が低入札価格調査の対象となった。……入札方式別に見ると、政府調達協定が適用される一般競争入札案件では、総発注件数124件のうち30件で発生。比率にすると24.2%と、全体の比率に比べて高い発生率となった。政府調達協定適用外の一般競争入札案件(予定価格3億円以上)では173件(発生比率17.5%)、工事希望型競争入札案件では149件(同8.5%)、公募型指名競争入札案件では 105件(同7.0%)、工事希望型指名競争入札案件では50件(同7.2%)だった。……地方整備局別に件数と発生比率を見ると、▽東北101件(6.9%)▽関東256件(12.4%)▽北陸53件(5.3%)▽中部68件(5.2%)▽近畿208件(13.7%)▽中国65件(6.1%)▽四国36件(6.2%)▽九州118件(6.1%)。速報値の発表時と同様、件数ベースでは関東が初めて近畿を上回ったが、発生比率では速報値と同じく近畿が最高だった。工種別の件数と発生比率は、一般土木234件(6.4%)、鋼橋上部87件(61.7%)、建築119件(18.3%)、PC19件(11.0%)などとなっている。」(『建設工業新聞』2006.10.10)
●「国交省は、低入札価格調査制度でのヒアリングの際に対象企業が施工体系図や元下間の契約書などを提出できない場合、工事の品質と下請けとの適正な契約が確保されていないと判断する仕組みの構築を念頭に、失格判断基準を検討している。形骸化が指摘されている同制度に実効性を持たせるのがねらいで、元下間の契約書で下請けへのしわ寄せが確認された場合も失格とする考えだ。……判断材料となるのが、元下間との契約書や施工体系図などで、これらの資料を低価格で応札した企業に提出させ、工事の品質確保と下請けなどにしわ寄せが及んでいないことを自ら証明してもらう。施工体系図などが提出できない企業は、それが証明できないということとなり、必然的に失格となる。つまり施工体制が入札前に整っていない企業は、調査基準価格を下回る額で落札できなくなるということだ。……国交省が調査した工事コストの結果によると、落札率の低さにほぼ比例して工事成績評定が平均(74点)を下回り、下請け企業の赤字の割合も増すことが判明している。この結果に基づき、国交省は『落札率が80%を下回った場合、隣接地に資機材基地を持っているなどの特別な好条件がそろわない限り工事原価が確保できず、下請けへの不当なしわ寄せや平均的な工事の品質が確保できなくなる懸念が大きい』、さらに、落札率が60%を下回った場合は『特別な好条件がそろっていたとしても工事原価が確保できず、下請けへの不当なしわ寄せや平均的な工事の品質が確保できない』との見解を示している。このため、同制度に基づくヒアリング時には、この見解を覆すだけの根拠を施工体系図や元下間の契約書などで対象企業に証明してもらう方針だ。国交省は、検討中の工事内訳書を活用して施工体制を評価する新たな総合評価方式との二段構えにより、入札・契約段階でダンピング(過度な安値発注)を排除する考えだ。」(『建設通信新聞』2006.10.12)

労働・福祉

●「みやぎ建設総合センターが全国初の建設労働者派遣事業と、有料職業紹介事業を10月から開始へ−。労働政策審議会(建設専門委、椎谷正座長)が、みやぎ建設総合センターが厚労省に申請していた建設労働者派遣、有料職業紹介の両事業の実施を認定・許可するとした同省の判断をこのほど承認した。これを受け、厚労省宮城労働局は9月29日、みやぎ建設総合センターに両事業の許可書を交付した。……派遣事業は、宮城県建設業協会加盟企業などを会員とし、建設技能労働者を派遣してほしい会社と、受け入れを希望する会社が希望を表明し合い、労働者を融通する。労働者の派遣事業者の許可を得たのはみやぎ建設センターと、宮城県建設業協会の会員8社。8社合計で59人の建設労働者を登録した。この59人を宮城県内の建設業者で、同事業に沿った形で派遣を希望している18社に送り出す。職業紹介事業は離・退職した建設労働者が対象。求人を希望する企業がセンターに求人情報を提供し、それをセンターがホームページと、閲覧簿に掲載する。就職希望者がこれらの情報を見て求人に応募したいという意志を持った際に、センターが求人企業と就職希望者を仲介する。就職が決まったら求人企業はセンターに対し、就職者の就業後6ヵ月間の平均賃金の1ヵ月分の10%(給料が30万円の場合は3万円)を支払う。」(『建設工業新聞』2006.10.02)
●「厚生労働省は、雇用保険3事業の見直しに伴う建設雇用関係の補助金の改革案をまとめた。労働者の健康診断に対する助成措置を除いて団体・事業主向けの福利厚生助成金を廃止。利用率が低迷していた事業主向けの建設業新規・成長分野定着促進給付金と、団体向けの建設業新聞や雇用創出給付金も廃止する。雇用福祉事業の建設教育訓練助成金は、3種、4種とも能力開発事業の同助成金に一本化するなどとした。改革案は07年度予算に反映させる方向で財政当局と調整する。」(『建設工業新聞』2006.10.05)

建設産業・経営

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、耐震偽装問題の再発防止に向けて検討を進めてきた建築司法などの関係法の改正案をまとめ、12日に開かれた自民党国土交通部会・住宅土地調査会合同会議に提示、了承された。政府は20日の閣議で法案を決定する予定で、今臨時国会での成立を目指す。改正法では、建築物の構造と設備の分野でそれぞれ『構造設計1級建築士』と『設備設計1級建築士』と呼ぶ資格を創設。構造については高さ20メートル超のRC造建築物、設備については3階建て以上かつ延べ5000平方メートル超の建築物では、これらの資格者が法適合性を確認することが義務付けられる。建築士の受験資格の厳格化や建築士団体の監督機能の強化、共同住宅の工事の一括下請禁止も盛り込んだ。」(『建設工業新聞』2006.10.12)

その他