情勢の特徴 - 2006年10月後半
●「建設経済研究所が24日発表した建設投資見通し(06年10月)によると、07年度の建設投資は、前年度比1.8%減の51兆8400億円となる見通しだ。民間投資はプラスのまま推移するものの伸び率が鈍化。政府建設投資が引き続き1割近い減少となるため、全体では縮小基調で推移すると予測している。……07年度の建設投資の内訳は、政府部門が16兆2700億円(前年度比9.8%減)、民間住宅部門が19兆2800 億円(同1.4%増)、民間非住宅部門が16兆2900億円(同3.6%増)と予測。政府部門のマイナス幅が拡大し、民間部門も住宅、非住宅とも伸び率が縮小するとみている。政府建設投資については、建築が2兆0200億円(同11.8%減)、土木が14兆2500億円(同9.5%減)で、ともにマイナスになると予測。特に地方の投資は厳しいとみている。民間住宅については、着工戸数を125.3万戸(同0.1%増)と予測。景気回復の本格化などを背景に、団塊ジュニア世代を中心に住宅取得意欲は旺盛で、金利先高観も追い風になるとみている。内訳は、持ち家が35.8万戸(同1.1%増)、貸家が 52.5万戸(同0.2%増)、分譲が36.4万戸(同0.9%減)。……民間非住宅部門の内訳は、建築投資が10兆9000億円(同4.6%増)、土木投資が5兆3900億円(同1.5%増)と予測。引き続き増加傾向を維持するが、人件費や金融費用の負担増が企業収益を圧迫し、伸び率は鈍化するとみている。」(『建設工業新聞』2006.10.25)
●「国土交通省は、政府の『公共事業コスト構造改革』に対する同省の実施状況(05年度分)をまとめた。独立行政法人など関係機関を含めた全体のコスト縮減率は、基準年の02年度との比較で9.9%、物価下落などを含めると10.4%となった。・・・・・・物価下落などを含めた縮減率を事業分野別にみると、道路事業の10.0%が最も高く、港湾事業が9.3%、航路標識整備事業が9.0%と続いている。関係機関別では、関西国際空港会社20.9%、水資源機構13.0%、東・中・西日本高速道路会社12.1%の潤で縮減率が高かった。」(『建設工業新聞』 2006.10.17)
●「高速道路の建設工事の入札で、鋼橋工事の談合事件を受けて旧日本道路公団(JH)が昨年8月に実施した入札契約制度見直しの前後を比較すると、入札に参加する業者数が減少したことが、会計検査院が国会に提出した資料で明らかになった。制度見直しでは、談合防止策として一般競争入札の対象範囲が大幅に拡大されたのが特色。・・・・・・検査員の調査によると、入札1件当たりの平均応札者数は、見直し前は政府調達協定適用一般競争が5.3者、公募型氏名競争が6.3者、従来型氏名競争が9.6者だったが、見直し後は政府調達協定適用一般競争が4.0者、条件付き一般競争が 6.3者、従来型氏名競争が7.5者となった。見直し後に条件付き一般競争に移行した工事のうち、見直し前に公募型指名競争を採用していた範囲の工事の応札者数は変わらなかったが、見直し前に従来型指名競争を採用していた範囲の工事の応札者は大きく減った形だ。・・・・・・公共工事の入札契約制度改革では、一般競争の拡大とともに、総合評価方式の導入拡大が進んでいることもあり、技術提案などで手間もコストがかかる入札には、案件を絞り込んで参加する傾向が今後も強まりそうだ。国土交通省発注工事の一般競争入札でも応札者は減少傾向にあり、1件当たりの平均応札者数は00年度の10.1者をピークに01 年度9.4者、02年度8.6者、03年度8.1者、04年度8.1者と減少。05年度は近くまとまる05年度契約関係資料で公表されるが、122件の入札に延べ834者が参加したことから、平均6.8者とデータの公表を開始してから最小となる見通しだ。」(『建設工業新聞』2006.10.18)
●「国土交通省は、入札ボンド試行に当たっての具体的な手続きなどを定め、各地方整備局などに通知した。対象は16日以降に入札手続きを開始するWTO(世界貿易機関)政府調達協定対象案件(予定価格7億2000万円以上)で、地方整備局長が必要と認める工事。2006年度は現段階で東北地方整備局2件、近畿地方整備局12件を予定し、07年度以降に入札手続きを開始する工事については改めて通知する。国交省が導入する入札ボンド制度は、入札保証制度の体系を活用したもので、現在は一律に免除している入札保証金(現金)の納付を原則とした上で、その代替・免除措置として『金融機関や前払保証事業会社の履行保証予約』『損保会社の入札保証保険』『金融機関の入札保証』の3つを取り扱い、国債などの提出もニュ巣圧保証金に代わる担保として認める。入札保証金、入札保証、入札保証保険、国債の付保割合は、見積価格の5%以上。・・・・・・入札ボンドの提出時期は、競争参加資格確認資料と同時となる。前提となる見積金額が入札ボンドなどの提出後から入札までの間に変更した場合は、入札保証金、入札保証、入札保証保険などの金額が増額後の見積価格の5%未満、履行保証予約の契約希望金額が増額後の見積金額未満または増額後の見積金額の30%未満のいずれかに該当し、変更後の金額が変更前の金額の2倍以内、変更の時期が入札ボンド提出後10日以内に限り変更を認める。」(『建設通信新聞2006.10.24』)
●「中小企業が東京都から受注した工事が、05年度は10年前と比較して件数ベースで約3分の2、金額ベースで半分以下にまで落ち込んだことが、都財務局がまとめた中小企業受注実績で明らかになった。受注実績は96〜05年度までをまとめたもので、05年度の実績は2万 1263件、2631億20百万円となっており、件数は96年度の3万3646件と比べると63.1%、金額は5278億82百万円と比べて49.8%となった。財政悪化などによる公共事業の縮小などが背景にあるとみられ、中小企業にとっては厳しい状況となっている。都の05年度の局別中小企業受注実績をみると、知事部局は計8817件(対全対比84.7%)、1367億円35百万円(同58.1%)。・・・公営企業局は計5303件(同73.9%)、 1123億円25百万円(同37.9%)となっている。・・・また、行政委員会などは計7143件(同94.7%)、140億60百万円(同 83.7%)。・・・東京都の予算規模は、96年度に比較して05年度は1兆円程度縮小されており、05年度の全企業の工事受注実績も96年度と比較すると件数が64.9%、金額が48.6%にまで減少している。全体に占める中小企業の受注割合は件数ベースが84.7%、金額ベースが48.0%となった。」(『建設工業新聞』2006.10.24)
●「国土交通省は、公共工事の入札で予定価格を大きく下回る金額を提示した応札者に対し、契約内容を確実に履行できるかどうかを調べる低入札価格調査制度で、応札価格の正当性を立証する責任を応札者側に負わせる検討を始めた。現在は、低入札価格調査が行われても最終的には落札が決まるケースが大半で、調査制度が十分に機能していないとの指摘も出ている。国交省は、低価格受注が頻発し、品質低下や下請業者へのしわ寄せが懸念されている状況に対応。応札者に立証責任を負わせることで、調査制度の実効性を高め、原価割れ受注の排除につなげる考えだ。・・・・・・国交省は現在、各工事ごとに、予定価格の67〜85%の範囲で『調査基準価格』を設定。応札額がこのラインを下回った場合には、契約内容を確実に履行できるかどうかを調べた上で、その応札者を落札者とするかどうか判断する。・・・だが、実際には、・・・応札者側が『契約通り履行できる』と主張すれば調査をパスしているのが現状。」(『建設工業新聞』2006.10.26)
●「国土交通省は26日、05年度に同省が発注した建設工事や建設コンサルタント業務の契約状況を収録した『直轄工事等契約関係資料06年度版』をまとめた。同省が05年度に発注した工事の総数は1万6919件、契約金額は1兆7053億円で、件数は前年度よりも1277 件減少し、契約金額も約8100億円下回った。契約金額の大幅減は前年度に羽田空港の再拡張事業が発注されたことによる反動減が主因。コンサル関係の契約件数は164件少ない2万1372件で契約額は約28億円少ない約3468億円だった。建設工事の平均落札率は全体で92.28%(旧建設省系 91.75%、港湾空港関係92.62%、北海道94.88%など)だった。港湾空港関係を除く地方整備局の契約金額は、建設工事が約1兆1747億円となり、前年度より約1916億円減少。コンサル関係が同約38億円少ない約2492億円だった。契約件数は建設工事が978件少ない1万1663件、コンサル関係が154件減の1万4460件。低入札価格調査制度の対象になった工事は913件で、発生比率は8.4%。前年度よりも440件増加した。調査対象のうち3件で応札者が失格になったが、いずれも入札金額のけた間違いが理由だった。地方整備局のうち港湾空港関係は、工事契約金額が約1640億円で、羽田再拡張の発注があった前年度よりも約6030億円少なくなっている。件数は807件で、逆に前年度よりも13件増えた。コンサル関係は契約金額が10 億円増の約177億円、件数が130件増の1458件。低入札価格調査制度の対象になったのは37件で、前年度よりも16件の増加。発生比率は5.0%だった。・・・・・・港湾空港関係を除く05年度国土交通省直轄工事の平均落札率は91.8%と、データの公表を開始した99年度以降で最低を記録した。WTO政府調達協定対象が適用される一般競争入札だけの平均落札率を見ると、05年度は86.3%と、初めて9割を下回った。公共投資の縮小で受注競争が一段と厳しさを増している。一般競争入札の平均落札率は99年度97.5%、00年度97.1%、01年度96.0%、02年度95.5%、03年度 95.9%、04年度94.9%と、全体平均に近い数値だったが、05年度は全体の91.8%との5.5ポイントの差がついた。」(『建設工業新聞』 2006.10.27)
●「国土交通省近畿地方整備局は、道路事業でPFIの導入を検討している。対象は、淀川左岸線延伸部(大阪市)、大阪湾岸道路西伸部(神戸市)、名神湾岸連絡道(兵庫県西宮市)の3路線。建設から運営までを民間事業者に任せるもので、実現すれば国内初の道路PFIとなる。すでに海外で実績を持つマッコーリージャパン社(オーストラリア)などが関心を示している。淀川左岸線延伸部については、近く発注する『道路整備における民間活力利用等検討業務』の中で、事業手法の検討やVFM(バリュー・フォー・マネー)を試算する。淀川左岸線延伸部はBTO(建設・譲渡・運営)方式を想定し、有料道路事業や沿道施設運営などの収益で建設費を賄う。事業費が膨大となるため、財政難の大阪市は事業費の負担に難色を示している。PFIが実現すれば負担がほとんどなくなり、淀川左岸線延伸部以外の路線でも事業推進を後押しすることが期待できる。外資系企業や海外の道路PFIなどで実績を持つ大手ゼネコンなどの参画が有力とみられる。マッコーリージャパン社は、独自の提案を整備局に提示している模様だ。同社は韓国の仁川国際空港高速道路でPFIの実績を持つほか、国内でも東急電鉄の箱根ターンパイクや近畿日本鉄道の伊吹山ドライブウェイを取得し、運営している。淀川左岸線延伸部は、大阪市此花区高見1〜北区豊崎6の長さ4.3キロ。同整備局の淀川左岸線延伸部有識者委員会では、大深度地下案などのルート・構造を検討中で、整備費用は 3000-4000億円と想定されている。大阪湾岸道路西伸部は、神戸市東灘区向洋町東〜長田区駒カ林南までの約15キロを結ぶ。橋梁・高架構造となり、車線数は6車線。六甲アイランド西、ポートアイランド東、同西、駒栄の4ランプと南駒栄ジャンクションを設ける。名神湾岸連絡道は、名神高速道路と阪神高速道路湾岸線を結ぶ。ルートなどはこれから検討する。」(『建設通信新聞』2006.10.30)
●「みやぎ建設総合センター(奥田和男理事長)は、建設産業における人材の確保・育成に向けた取り組みを強化する。全国初の建設労働者の派遣事業を10月末からスタートさせるほか、建設労働者個人を会員企業にあっせんする有料職業紹介事業も30日から開始。会員企業において適正な就業機会を確保して雇用の安定を図り、優秀な技術や技能、知識を持った人材が他産業に流出するのを防ぐ。また、退職した技能者を登録しておき、講師として次世代への技能の伝承に努めてもらう事業にも取り組む方針だ。」(『建設工業新聞』2006.10.17)
●「大和ハウス工業は金融事業に参入する。11月にもクレディセゾンと共同で金融子会社を設立し、来月4月からクレジットカード事業を始める。個人向け融資事業にも進出。住宅リフォームや購入者向けの独自ローン商品を手掛ける。住宅メーカーとカード会社の本格的な提携は初めて。住宅市場が成熟するなか、長年てがけた住宅やホテルなどの顧客基盤を活用し金融事業との相乗効果で受注拡大を狙う。新会社は『大和ハウスフィナンシャル』。資本金合計は30億円で大和ハウスが6割、セゾンが4割を出資する。金融庁に貸金業務を申請し、第一弾としてクレジットカード『大和セゾンカード』を発行。5年後に会員数50万人を目指す。……新会社は07年度中にも自前のリフォームローン商品を開発し販売する。与信管理ノウハウを蓄積し、5年後をメドに住宅ローンの開発に踏み切る。ローンを組めば住宅購入費用を割り引く制度などを検討。住宅商品から購入資金の相談まで一貫して手掛ける。セゾンは関西圏に強い大和ハウスと組むことで、首都圏に比べ営業基盤が見劣りする関西での会員獲得に弾みをつける。クレジットカード決済がそれほど普及していない賃貸マンションの家賃やリフォーム代金の支払いなど住宅関連市場も開拓する。セゾンはローソン、高島屋、みずほ銀行など多様な企業との提携戦略を進めるが、メーカーとの提携は初めて。カード取扱高のシェアを現在の約16%から30%まで早期に引き上げる考えだ。」(『日本経済新聞』 2006.10.24)
●「東京商工リサーチがまとめた2006年9月の建設業倒産(負債総額1000万円以上)は、326件で前年同月比 12.8%の増加となった。7月から3ヵ月連続で前年同月を上回った。負債総額は669億4400万円で16.3%の減少となっている。総合工事業が 183件で6.3%増、職別工事業が76件で11.7%増、設備工事業も67件で36.7%の大幅な増加になった。倒産の原因で最も多かったのは、受注・販売不振の198件で3.6%増えた。」(『建設通信新聞』2006.10.25)
●「政府は23日、耐震偽装問題の再発防止策を反映させた建築士法などの改正案を内定した。24日の閣議で正式決定し、国会に提出、成立を目指す。『構造設計1級建築士』と『設備設計1級建築士』を認定する制度を創設し、一定規模以上の建築物の構造や設備については、同建築士が自ら設計するか、法令への適合性を確認することを義務付ける制度を設ける。建築士事務所に所属する建築士への講習受講の義務付けや、設計・工事管理業務の再委託の制限、建築士の受験資格の厳格化、分譲マンションの設計・施工の一括下請け全面禁止も盛り込んだ。今月末から来月初旬にかけて国会で審議入りする見通しだ。……建築士法の見直しが改正案の中心で、建築基準法や建設業法なども併せて改正。構造設計1級建築士と設備設計建築士の認定は、5年以上の実務経験があり、所定の講習を修了した1級建築士が対象となる。構造設計に関しては、高さ20メートル超のRC造建築物など、設備設計に関しては3階建て以上かつ延べ5000平方メートル超の建築物について、それぞれ構造と設備の1級建築士による設計か法令適合チェックが義務付けられる。建築士試験については、建築に関する科目の修了を求める形に受験資格を見直すとともに、実務経験要件の適正化を図る。建築士会や建築士事務所協会などによる研修の実施や、建築士・建築士事務所に関する登録制度の創設、管理建築士の要件の強化などの対策も講じられる。」(『建設工業新聞』2006.10.24)
●「政府が24日、耐震偽装の再発防止策を盛り込んだ建築士法などの改正案を閣議決定したのを受けて、国土交通省は欠陥住宅への補償を強化する制度づくりを本格化する。故意の犯罪による欠陥住宅の購入者も救済する方針。売主が拠出する基金を新たに設け、補償に充てる方向で最終調整を急ぐ。来年の次期通常国会に関連法案を提出する。新築住宅の売り主は、10年以内に欠陥が見つかった場合、補修や建て替えなどの瑕疵(かし)担保責任を負う。しかし耐震偽装事件では売り主が破産で責任を果たせず、公的な財政支援を迫られる事態となった。国交省は売り主が倒産しても欠陥を補償する資金を確保できる制度が必要だと判断。すべての売り主に保険への加入か、補償資金をあらかじめ確保して第3者に預ける『供託』、『信託』のいずれかを義務付ける。2008年度の導入を目指す。……既存の保険は瑕疵の補修に必要な経費の8割程度を売り主に支払っており、国交省はこの仕組みを参考に調整する。保険料や基金への拠出金を直接支払うのは売り主だが、最終的には住宅価格に上乗せされて消費者負担になる可能性が大きい。国交省は保険料を住宅購入価格の0.5%程度としている既存の保険を念頭に詳細を詰める考えだ。」(『日本経済新聞』 2006.10.25)