情勢の特徴 - 2006年11月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「不動産投資信託(REIT)が購入する新規物件が大幅に減っている。4-9月の取得額(契約時ベース、新規上場分を除く)は2426億円と前年同期を49%下回った。優良な不動産を巡るファンド間の獲得競争で物件価格が上昇、運用利回りの維持が難しくなっている。証券取引所で日々売買される価格の低迷で公募増資がしにくかったことも響いた。REITは2001年9月の取引開始以降、上場が相次ぎ現在39銘柄。資産規模も拡大している。ただ上場後1年以上経過した16銘柄で4-9月の取得額を比べると日本ビルファンド投資法人など11銘柄が前年同期実績を割り込んだ。投資額の減少は、大型物件の一巡に加え、値上がりした物件を組み入れると運用利回りの低下につながるため。……物件取得に必要な公募増資も低調。昨年4-9 月に16銘柄が増資をしたが、今年は3銘柄。取引価格が4-9月は軟調な地合いに転じたためだ。」(『日本経済新聞』2006.11.06)
●「年末の2007年度予算編成に向けた政府・与党の攻防が幕を開けた。安部晋三首相が議長を努める経済財政諮問会議は 10日、公共事業費、社会保障費の2つの歳出分野に枠をはめ、安部内閣でも歳出削減を続ける姿勢を鮮明にした。与党との調整の本格化を前に先手を打った格好だが、個別の検討課題では議論の先送りも目立った。10日の諮問会議を主導したのは、御手洗冨士夫日本経団連会長ら民間議員だった。御手洗氏らは国と地方の公共投資を来年度予算案で3%減、その後4年間も継続すべきだと提案。冬柴鉄三国土交通相は来年度に関しては『3%削減は厳しいがやらねばならない』と早々に白旗を掲げた。しかし国交相は『資材の値上がりがあるかもしれない』として08年度以降の継続は拒否。『他国に比べると公共投資の割合は高い』『まだ無駄や非効率はある』と一段の切り込みを求める声が上がったが、大田弘子経済財政担当相は『引き続きの課題』と締めくくった。……政府内の調整では、道路整備費は今年度以下に抑制。道路特定財源のうち今年度まで旧本州四国連絡橋公団の債務返済などに充ててきた『余剰分』は、建設国債の償還費に回す方向だ。野放図な転用を防ぐ案で、本格的な一般財源化とはいえない。揮発油税に上乗せされている暫定税率の見直しなどには踏み込まない内容だからだ。」(『日本経済新聞』2006.11.11)

行政・公共事業・民営化

●「公正取引委員会は10月31日、自治体と政府出資法人を対象とした入札・契約制度の実態調査結果を発表した。価格と技術力を総合的に評価して落札者を決める総合評価方式は、都道府県・政令市と政府出資法人の約6割が導入していたが、中核市は4団体、人口5万〜30万人未満の小規模市は5団体に低迷。公取委は、国・大規模政府出資法人・都道府県などで運用経験を積み、ノウハウなどを小規模自治体に移転していくことが普及のポイントだと指摘した。ダンピング受注対策の1つとして注目される最低制限価格制度については、事前公表の場合に入札価格が制限価格付近に集中するとして、『公表はできるだけ事後に行うことが望ましい』とした。調査には、都道府県・政令市60団体、中核市・人口30万人以上の団体(中核市)67団体、小規模市215団体と、資本金の2分の1を国が出資する政府出資法人212法人212法人の約97%が回答した。」(『建設工業新聞』 2006.11.01)
●「国土交通省が建設コンサルタント業務など(営繕発注分含む)の指名競争入札の落札率と業務成績評定の関係を調査した結果、落札率が低いほど評定点が低下する傾向にあることが分かった。また、近畿地方整備局が発注した業務を対象に低価格入札(落札率70%未満)案件と設計ミスの関係を調査した結果、低価格入札業務1件当たりのミス指摘件数は、平均19.1件で、低価格入札以外の業務の平均14.5件を約32%上回っていた。同省は、これらの調査結果を踏まえ、低価格入札や設計ミス対策として、コンサルタント業務への総合評価方式の導入、設計照査制度の見直しなどを進める。落札率と業務成績評定の関係の調査は、2002-05年度の発注業務を対象に実施した。落札率90%以上では、評定点70点以上が約84%を占めるが、落札率60%未満になると70点以上の割合が約66%まで減少、評定点70点未満が3割を越える。02-04年度に近畿地方整備局が発注した業務(営繕部を除く)を対象とした低価格入札と設計ミスの関係調査では、低価格入札の業務は、工法などの選定方法の『決定根拠が不明』が低価格入札以外の業務に比べ1.9倍、『計算課程の間違い』が1.4倍になるなど成果物への品質が危惧(ぐ)されるような指摘事項の増加がみられる。」(『建設通信新聞』 2006.11.02)
●「公共工事の前払保証事業会社3社(東日本、西日本、北海道)は1日、国土交通省が今秋から同省発注工事に入札ボンド(契約保証予約)を試験的に導入するのに合わせて、入札ボンドの引き受けを開始したと発表した。予約手数料は3社とも同額で、契約希望額(企業が見積もる契約金額)に応じた5段階制を採用。契約希望額が1億円以下は2100円(消費税込み)、同10億円(同)を超える場合は1万5750円(同)となる。保証会社が入札ボンド引き受けの主力になるとみられる低価格帯の工事の予約手数料を低く抑えたのが特色。入札ボンドにはダンピング受注の抑止効果も期待されていることから、低入札価格調査の対象となった場合は、与信枠を縮小したり、現金の担保を求めたりする措置も用意している。」(『建設工業新聞』 2006.11.02)
●「国土交通省は、同省が05年度に発注した工事のうち、総合評価方式や設計・施工一括方式など民間の技術を生かす入札契約方式の実施件数をまとめた。総合評価方式は1899件の工事に採用され、これを含む1905件の工事で入札時VEが実施された。また、契約後VEを行った工事は2263件あった。設計・施工一括方式は14件、マネジメント技術活用方式は3件だった。総合評価方式、入札時VEの実施件数は増加傾向にある上、05年度実績は過去最多となり、着実に定着していることがうかがえる。」(『建設工業新聞』2006.11.09)

労働・福祉

●「大手建設会社で組織する建設労務安全研究会(労研)傘下の大阪建設労務研究会は、不足傾向が顕著になっている建築系躯体職種の労働者の技能水準が低下しているとの調査結果をまとめた。大阪を中心とする建築系躯体職種の1次業者120社、2次業者240社を対象に調査を実施した結果、『技能労働者の質が以前より悪くなった』との回答が56.1%に上った。団塊世代の大量退職による技術伝承への影響については、『既に問題が生じている』と『将来的に問題が生じる可能性がある』との回答が合わせて65.0%を占めた。同研究会は、元請業者が協力業者の育成を考えた発注や指導・教育を行う必要があると指摘している。大阪労研は、景気回復に伴い建築系躯体職種の技能労働者の不足がより深刻になると見込まれることから、品質・安全面への影響を把握する目的で躯体6業種(型枠工事、型枠解体、とび工事、土木工事、鉄筋工事、左官工事)の技能労働者の過不足や、下請事業主の意識を調べた。現時点での過不足の状況は、『不足』が73.3%、『過剰』が3.1%で不足が大幅に上回る状態だった。不足の度合いについては、『2割程度』が 41.2%と最も多く、『1割程度』が27.7%、『3割程度』が24.6%と続いた。6カ月後の予想を聞いたところ、77.8%の会社が『不足』と答えた。不足の度合いは現時点と同様に『2割程度の不足』が最も多くなっている。業種別では、各業種とも不足感が顕著で、特に型枠、解体、鉄筋の不足感が強く、2割超える不足感を持つ会社が多い。こうした不足を埋めるための方策として、1次業者では『外注契約を増やす』が最も多く、2次業者では『従業員を新規に採用する』『応援を頼む』が多い。技能労働者を確保する難しさを聞いたところ、『容易』とした企業は1.8%とわずかで、多くが『困難』と答えていた。人材確保が困難な理由では、『賃金など労働条件が悪く新規採用が難しい』との回答が55.2%と半数を超えた。次いで『外注単価を上げることができないから』が25.1%、『良い労働者が不足しているから』が18.2%となっている。」(『建設工業新聞』2006.11.07)
●「石綿による健康被害者に対する救済金の財源問題で、環境省と厚生労働省は、建設業からの負担金徴収の仕組みをまとめた。通常の継続して設置されている事業所からは、年間に支払った賃金総額に0.00005を乗じた金額を一般拠出金として徴収。大規模な建設工事現場をはじめ事業所の設置が時限的な有期事業所については、期間中に支払った賃金総額に0.00005を乗じる形で一般拠出金を徴収する。」(『建設工業新聞』 2006.11.07)
●「厚生労働省は10日、雇用ルール改革を話し合う労働政策審議会(厚労相の諮問機関)労働条件分科会を開き、今後の議論のたたき台となる素案を示した。ホワイトカラー社員を労働時間規制から除外する条件として、企業に従業員の健康管理や週2日相当以上の休日の確保などを義務づけ、労働基準監督署による監視強化も盛り込んだ。雇用ルール改革は今回の素案を軸に労使代表が具体策を詰める段階に入った。……条件の1つは週休2 日以上の休日の確保。『過労死の事例では休日を取っていない人が目立つ』(労働基準局)ためで、4週で4日以上、年間を通じて週休2日分(104日)以上の休日を取れるよう企業に義務づける。労使委員会で医師による面接指導の仕組みを決めることも求める。厚労相が過重労働を防止する指針を定め、違反企業には罰則も検討する。新制度の適用対象となるホワイトカラーは@労働時間と仕事の成果が比例しない働き方をするA権限と責任を相当程度持つB仕事の進め方や時間配分などで上司から指示されないC年収が相当程度高い――という4条件を満たす人に限る。」(『日本経済新聞』2006.11.11)

建設産業・経営

●「大林組が10日発表した06年9月中間期の連結決算は、売上高6448億29百万円(前年同期比9.2%増)、経常利益126億95百万円(同14.4%減)の増収減益だった。公共工事、民間工事とも受注競争が激化したことで工事利益率が低下。採算が厳しい海外土木工事の割合が増加したことも減益要因になった。純利益は135億49百万円(同74.8%増)で、大阪本店のある『大阪大林ビル』 の売却益の計上が大幅増につながった。単体の受注高は、6019億74百万円(同12.8%減)で、前年同期に海外土木工事の大型受注が相次いだことによる反動減。売り上げ計上した工事の採算を示す完成工事総利益(粗利益)率は6.4%(土木9.9%、建築5.5%)で、前年同期の7.4%(土木9.2%、建築7.0%)を1ポイント下回った。通常の連結業績は、売上高が予想を400億円上回る1兆6000億円(前年同期比8.4%増)、営業利益が480億円(同2.9%増)、経常利益が520億円(同2.2%増)、純利益が400億円(同16.0%増)と見込む。」(『建設工業新聞』2006.11.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他