情勢の特徴 - 2006年11月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「都市財政の悪化に歯止めが掛からない。日本経済新聞社がNEEDS(日経の総合経済データバンクシステム)で分析した全国777市の2005年度決算(普通会計ベース、速報値)は、人件費や公債費などの義務的経費比率が10年連続で上昇。景気拡大で大都市を中心に法人税収は伸びたが、財政の硬直度を示す経常収支比率は2年連続で90%の大台を超え、独自施策を打ち出す余裕を失っている。各地の自治体は財政健全化に向けた一層の行政改革を迫られそうだ。777市(3月末現在)の決算総額は、歳入が2004年度比で8.5%増の40兆3974億円、歳出が8.4%増の39 兆4201億円。旧合併特例法の05年3月末の期限切れに合わせ自治体合併が進み調査対象の市が増えたためだ。1市あたり歳入は2.3%増。対象市の数が異なるため単純比較はできないが、歳出で最も伸びたのは借金返済に充てる公債費の15.0%増。90年代の不況期に行った公共事業の返済負担が重くのしかかっている。介護など社会保障関連の扶助費も8.1%増で伸び率は高水準。人件費は7.5%増えたが、歳出総額に占める割合はわずかずつだが5年連続で下がった。公債費、扶助費、人件費の義務的経費が歳出総額に占める割合は47.97%で04年度比で0.6ポイント上昇。他の固定費と合わせ、毎年支払う経費の割合を示す『経常収支比率』は90.75%だった。公共事業向けの投資的経費の歳出に占める割合は15%以下(14.83%)に抑えたものの自治体財政の硬直化は着実に進んでいる。歳入では地方税が7.3%増えた。景気拡大で法人住民税が伸び、地方税を押し上げた。国と地方の税財政改革(三位一体改革)の税源移譲に伴い、地方譲与税は46.4%の大幅増。公共事業などにあてる地方債は1.5%減。総務省が今年度から導入した財政健全度をはかる新指標『実質公債費比率』(03-05年度平均)を初めて分析したところ、777市の平均は15.36%。北海道歌志内市の40.6%が最も高く、新庄市(山形県)などが続いた。最低は北名古屋市(愛知県)の3.9%。」(『日本経済新聞』2006.11.24)
●「国土交通省が今週末にも各地方整備局に通知する直轄公示での新たなダンピング(過度の安値受注)対策の具体的内容が判明した。ポイントは、@予定価格の内訳である直接工事費の75%、共通仮説費の75%、現場管理費の60%、一般管理費の30%のいずれかを切ったら特別重点調査を行うA総合評価に『施工体制評価点』を設け、低価格入札はゼロ点、低価格入札以外は30点とする――の2つ。直接工事費の足切りを何%にするかが課題であったが、失格基準を高いハードルとした。特別調査は『洗いざらい調べる』としている。」(『建設通信新聞』2006.11.28)
●「衆院経済産業委員会は29日、官製談合防止法改正案を与党などの賛成多数で可決した。30日の本会議で衆院を通過、参院に送られ、来週中にも成立することが確実になった。自民、公明の与党が提案した改正案は、公務員の談合関与に当たる禁止行為として、現行の落札業者の明示や予定価格など情報の漏えいなどに『ほう助』を追加。業者間での談合の事実を知りながら落札予定者を入札に参加させた公務員を罰することにした。併せて不正行為に加担した公務員を『5年以下の懲役または250万円以下の罰金』にする罰則規定を新設。同法の適用範囲も現行法よりも広げ、国や地方自治体が 3分の1以上出資する特定法人を含めることにした。同日の審議では、自治体の首長の多選が入札談合と密接にかかわっている事例があるとして、その弊害除去の方策の検討実施などを求める付帯決議を賛成多数で採決した。」(『建設工業新聞』2006.11.30)
●「近畿地方整備局は、道路事業でPFIの導入を検討している。対象は、淀川左岸線延伸部(大阪市)、大阪湾岸道路西伸部(神戸市)、名神湾岸連絡道(兵庫県西宮市)の3路線。建設から運営までを民間事業者に委託するもので、実現すれば国内初の道路PFIとなる。淀川左岸線延伸部については、近く発注する『道路整備における民間活力利用等検討業務』の中で、事業手法の検討やVFM(バリュー・フォー・マネー)を試算する。淀川左岸線延伸部はBTO(建設・譲渡・運営)方式を想定し、有料道路事業や沿道施設運営などの収益で建設費を賄う。事業費が膨大となるため、財政難の大阪市は事業費の負担に難色を示している。だがPFIが実現すれば負担がほとんどなく、同延伸部以外の路線でも事業推進を後押しすることも期待できる。外資系企業や海外の道路PFIなどで実績を持つ大手ゼネコンなどの参画が有力とみられる。このうちオーストラリアの大手金融会社・マッコーリーグループの日本法人(マッコーリージャパン)が、独自の提案を整備局に提示している模様。同社は韓国の仁川国際空港高速道路でPFIの実績を持つほか、国内でも東急電鉄の箱根ターンパイクや近畿日本鉄道の伊吹山ドライブウェイを取得し、運営している。同事業が今後具体化すれば、道路分野へのPFI導入に、新たな展開が期待される。」(『建設通信新聞』2006.11.30)

労働・福祉

●「国土交通省は、基幹技能者資格の運営団体などで構成する『基幹技能者制度推進協議会』の4分科会が21日と28日に開いた会合で、基幹技能者資格を経営事項審査(経審)で加点評価する際の条件を提示した。公平な受験機会の確保、試験問題の事後公表、試験の事務規定の整備の3つが整っていることを加点評価の条件とし、加点評価を希望する団体はすべての条件を満たすよう求めた。条件を満たした団体とは、加点評価に向けた調整を開始する意向で、条件に関する質疑にも応じる。……基幹技能者資格は25団体18職種でうんようされているが、分科会では『(各団体の)資格の水準にばらつきがみられる』との指摘があることから、今後、各団体の認定技能者の実態把握と併せて、講習内容や試験水準の検証を進める考え。次回の会合では合否判定に対する第三者の関与の実態を確認する。講習内容や試験水準の検証は07年度の課題とする。認定技能者の実態把握については、認定技能者の活動範囲などを議題とし、地域ごとの必要人数を規定することの是非などを議論。基幹技能者の『地域的偏在の解消』に関する議論も引き続き進める。」(『建設工業新聞』2006.11.30)

建設産業・経営

●「鹿島、大成建設、大林組、清水建設の上場ゼネコン大手4社の06年9月中間期の連結決算が15日までに出そろった。 4社がそろって増収となったものの、競争の激化を反映して工事採算は悪化し、増益は大成1社だけだった。受注高は中東を中心に需要が旺盛な海外事業がけん引役となり、大林を除く3社が前年同期より増やした。下期も厳しい市場環境を想定しているが、民需の好調を背景に4社とも5月に公表した業績予想を上方修正した。9月中間期の売上高は、鹿島が8000億円超となり、大成と清水は前年同期比で2けた増、大林も9.2%増と好調だった。……一方、低採算の海外事業の増加と、国内の公共工事での低価格受注の頻発、民間建築工事の競争激化が利益の足を引っ張った。中間期に売り上げ計上した工事の採算を示す単体ベースの完成工事総利益(粗利益)率は、鹿島8.1%(前年同期8.8%)、大成5.7%(同6.9%)、大林6.4%(同7.4%)、清水5.8%(同 7.4%)と全社が悪化させた。経常利益は大成が前年同期比287.6%増となったが、鹿島は同5.1%減、大林が同14.4%減、清水が同47.5%減。大成は開発事業の粗利益の増加と販管費の削減で大幅増益に寄与した。……下期は、原材料価格の高騰、公共事業をめぐる不祥事による営業停止や指名停止、低価格受注の拡大といった懸念材料もあるが、民需の好調を背景に4社そろって増収を見込む。最終利益は250億円超の決算を予想している。……各社は低採算の海外工事の受注抑制や、資材の早期手配による材料費抑制、販管費の削減を一段と強化する考えだ。」(『建設工業新聞』2006.11.16)
●「不動産大手4社の06年9月中間期の連結決算が16日、出そろった。オフィスビル、マンションとも好調で、4社がそろって増収増益となった。通期見通しの上方修正も相次いだ。三井不動産は、日本橋三井タワーや銀座三井ビルディングなどが05年に竣工・稼動したことや、オフィス賃料の上昇などで賃貸部門が前年同期比で108億円の増収、44億円の増益となった。分譲部門は、下期に売り上げが集中するため減収となったが、通期計上予定の4400戸は約90%が契約済みで、販売は好調としている。三菱地所は、ビル事業が好調で東京・丸の内地区ではオフィスの空室率が、建て替え・改装中の床を除いた実質ベースで0.5%まで下がった。住宅事業も増収で、通期計上予定額のうち約95%は既に売約済み。経常利益の通期見通しは前回予想から105億円上方修正した。住友不動産は、賃貸事業部門とマンション販売の好調で、売上高が前年同期比26.2%増の3142億円に達した。オフィスの空室率は前年同期の6.8%から5.4%に改善。経常利益は同83.4%増と7期連続で最高益を更新した。東急不動産は、賃貸・仲介などが好調で、営業利益と経常利益の通期予想を50億円上方修正。純利益も西渋谷東急ビルの売却で100億円の増益を予想している。」(『建設工業新聞』 2006.11.17)
●「道路舗装大手8社の06年9月中間決算が20日までに出そろった。単体の業績は5社が増収。経常損益はNIPPOコーポレーションと前田道路が黒字となった以外は、すべて赤字だった。昨年来続いている道路用アスファルトの値上げ分の合材価格への転嫁が徐々に浸透し、製造販売部門での損益改善が目立った。一方、工事部門では、価格競争が一段と激化した影響で合材値上げ分を吸収することが難しくなり、採算確保に苦慮した。道路舗装業界の業績を左右する公共投資の減少を補うために各社は、事業の多角化や民間事業の積極展開を図っている。この中で最大手のNIPPOは減収増益。連結は増収で、舗装、土木、建築で受注確保、合材などの製造販売の拡大、東京・大崎など都市部での開発事業の強化など、総合的な事業展開がプラスに貢献した。前田道路は民間工事の獲得に全力で取り組むという一貫した企業姿勢や、製販部門での環境事業の強化が奏功した。日本道路も積極的な提案営業による民間工事や小型工事の受注確保で増収につなげた。大成ロテックは、安定基盤の確立に向けた工事受注や製品販売の取組みで増収。……製販部門では、たび重なる道路用アスファルト価格の値上げ分を合材価格に転嫁しようとするユーザーへの要請を展開してきた。……一方、工事部門では市場縮小に追い打ちをかける競争激化の影響が深刻化。……売り上げ計上した工事の採算性を示す各社の完成工事総利益(粗利益)率は、▽NIPPOコーポレーション=5.8%(前年同期7.3%)▽前田道路=6.6%(同5.6%)▽日本道路=2.6%(同2.5%)▽大成ロテック=1.3%(同0.7%)▽鹿島道路=5.3%(同 4.2%)▽大林道路=5.5%(同6.1%)▽世紀東急工業=4.1%(同0.6%)▽東亜道路工業=0.9%(同0.6%)となった。」(『建設工業新聞』2006.11.21)
●「東京商工リサーチがまとめた2006年10月の建設業倒産(負債総額1000万円以上)は、310件の前年同月比 5.4%減で、4ヵ月ぶりに前年同月比でマイナスになった。これに対して負債総額は572億3900万円で26.4%の大幅な増加となり、6ヶ月ぶりに増える結果となった。負債額が10億円を超す大型倒産がことし最多の14件発生したことが大きな要因になっている。これによって、平均負債額も33.3%増えて、1億8400万円となっている。」(『建設通信新聞』2006.11.22)
●「国土交通省総合政策局長の私的諮問機関、建設産業政策研究会(大森文彦座長)は22日、第6回会合を開き、建設生産システムの改革をテーマに業界代表者などから意見を聞いた。公共工事入札・契約制度改革を進める中で発注者、受注者の関係が希薄になっているとして、英国で導入された『パートナリング方式』を日本の公共工事に導入することを求める声が相次いだ。……同方式について具体案を示した六波羅昭委員(建設業情報管理センター理事長)は、生産プロセスにかかわる関係者がパートナーシップを構築するための仕組みとして『関係者会議』の設置を提案した。同会議は、各主体の役割を責任の明確化、設計・施工情報の共有、リスク分担の透明・公平化を図るもので、円滑に設置、運営するために請負契約書で明確に位置付けることが必要だと強調した。専門工事業者を代表する才賀清二郎委員は、施工体制事前提出方式(オープンブック方式)について発言し、コスト構成の明確化と施工体制の適正化を図る観点から導入の意義を強調する一方、同方式を導入する米国と各種制度や商慣習が異なることから導入に当たっては慎重に対応する必要性も示した。……このほか、古阪秀三委員は、適正な契約関係を構築していくため、利益を認める社会・業界へと国交省が誘導するよう求めた。」(『建設工業新聞』 2006.11.24)
●「建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)が設置している取引慣行是正委員会(委員長・蟹澤宏剛芝浦工大工学部助教授)は第5回の会合を開き、国土交通省に対してオープンブック方式(施工体制事前提出方式)の導入を求めていくことを決めた。コスト構成の透明化が最大の目的としている。また、失格規準を制定することも要望する。事実上の最低制限価格制度の導入となり、低入札価格調査制度では排除できないダンピング(過度な安値受注)を抑止する効果を期待している。」(『建設通信新聞』2006.11.24)
●「上場ゼネコン各社の06年9月中間決算が24日までに出そろった。主要29社のうち、3分の2以上の21社が増収となる一方、競争激化による工事採算の悪化が損益の足を引っ張り、14社が営業赤字を計上。黒字を確保した企業もほとんどが減益となった。今後の収益の先行指標となる受注高は、各社とも公共投資の削減による官公庁工事の減少分を民間建築や海外事業などで補完する動きを強めているものの、半分強の15社が前年同期の実績を下回った。総合力に勝る大手と準大手クラスの業績格差も一段と広がってきている。」(『建設工業新聞』2006.11.27)

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