情勢の特徴 - 2006年12月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「全国の銀行の住宅ローン残高が2006念10月末で101兆5821億円に達し、過去最高を更新している。住宅金融公庫が融資を縮小するなか、代わりに銀行のローンが伸びているためだ。団塊ジュニア世代(30歳代前半)の住宅購入意欲が高まっていることなども背景にある。銀行は新商品の開発や拠点の拡充を進め、個人向け金融の柱の1つとして販売に力を入れている。」(『日本経済新聞』2006.12.02)
●「政府は9日、来年度予算で発生する国の道路特定財源の余剰分(約5100億円)のうち、3000億円前後を高速道路の料金引き下げなどの道路関連予算に充て、同額分を国土交通省からの一般歳出から削減することを決めた。残りの2000億円は使い道を定めない一般財源とする方向で調整する。……道路特定財源は…来年度予算では旧本州四国連絡橋公団の債務返済(今年度は4500億円)が終了して5100億円の余剰が発生する見込み。国交省や与党は『余剰分は道路財源から出た道路関連の歳出』として、その分を新たな道路関連の財源にするよう求めていた。しかし、余剰分を新たな歳出に回せば、財政健全化に反することになる。そのため財務・国交両省は来年度予算編成で@余剰分は原則、一般財源として扱うAそのうちの使途拡大は、概算要求基準(シーリング)で上限が決まっている国交省予算枠内で拠出――の2点で合意した。」(『日本経済新聞』2006.12.10)
●「公正取引委員会は、ダンピング(過度な安値受注)問題に対して、大手、準大手ゼネコンなどを対象に公共工事物件の損益状況調査を開始した。独占禁止法の不公正な取引方法である『不当廉売』違反の有無が目的。すでに国土交通省は公取委との連携強化を新たなダンピング対策の1つに位置づけている。調査結果によっては、公取委が大規模工事でも、不当廉売として行政処分を行う可能性が出てきた。」(『建設通信新聞』 2006.12.13)

行政・公共事業・民営化

●「公共工事の発注で、入札ボンド制度の導入が拡大する。国土交通省東北地方整備局が試行対象工事の全額を現行の7.2 億円以上から2億円以上に引き下げるほか、埼玉県も本年度内に5億円以上の工事で試行する方針を固めた。早ければ月内に発注する工事に採用する。既に導入を表明している宮城県も今月に発注する工事に初適用するほか、都道府県レベルでは来年度中に試行を開始する予定でいる自治体もある。民間の審査機能を利用して公共工事から不良不適格業者を排除する取り組みが、国交省だけでなく他の発注季刊にも確実に広がり始めた。」(『建設工業新聞』 2006.12.01)
●「日本PFI協会は6日、道路PFIに関する専門部会の初会合を開き、国土交通省近畿地方整備局などが計画している淀川左岸線延伸事業(大阪市、延長約9キロ)を対象に、道路PFIのモデルプロジェクトの検討に着手した。部会を構成する民間企業35社から提案を募り、 07年2月までに投資対象となり得るレベルでモデルプロジェクトをまとめる。検討のベースとなる協会案が提示され、用地費を含めた資金調達を行って用地買収機関を短縮させることで供用開始を早める方向が示された。有力案が提示され、民間発案によって実現に至れば、国内の道路PFIの第1号となる。」(『建設工業新聞』2006.12.07)
●「総務省は地方自治体に財政状況を示す4つの指標の公表を義務付ける方針を固めた。財政破綻の判断基準となる実質収支比率など既存の2指標に加えて、一時借入金の状況や地方公社、第三セクターの経営状態も把握できる新しい2指標を導入する。住民が自治体財政を監視しやすいようにし、財政悪化の初期から自治体に再建を促す。地方自治体の再建法制の見直しを進める総務省研究会が8日公表する最終報告書に盛り込む。総務省は年明けの通常国会に地方財政再建促進特別措置法の改正案を提出する。早ければ各自治体の2008年度決算から、指標の公表が義務付けられる見通しだ。地方財政の健全さを計る既存の指標には『実質収支比率』と『実質公債費比率』の2つがある。実質収支比率は標準的な自治体の財政規模と比べた実質収支の赤字額の割合を表す。現行法制では赤字比率が一定水準を上回った際、自治体は自主再建か国の管理下で再建を進める財政再建団体への移行かを選ぶ。……総務省が地方債の発行を認める目安として06年度から採用している実質公債費比率は、自治体の債務負担の重さを示す。公営事業会計などは含むが、自治体の財政悪化の原因となることが多い地方三公社(土地開発・道路・住宅供給)などは対象外だ。こうした既存指標の弱点を補うため、総務省は年度ごとの資金の流れを示すフローの指標と、積み上がった債務の多さを示すストックの指標の2つを新たに導入する。新指標の詳細な仕組みは今後詰めるが、フロー指標では収支悪化が指摘されがちな国民健康保険や介護保険事業も対象にし、財政悪化の兆しをつかみやすくする。」(『日本経済新聞』2006.12.07)
●「国土交通省は8日、極端な低価格入札に歯止めがかからないことから、新たなダンピング(過度な安値受注)対策を発表した。低入札価格調査制度に実効性を持たせるため、直接工事費、共通仮設工事費、現場管理費、一般管理費が一定の割合を下回った場合に取引原価を追及し、不透明な商習慣を徹底的に調査して、応札者が求められた資料の提出を拒めば失格とする。総合評価方式の技術評価点も拡充し、施行体制評価点を新設するとともに、技術提案に対する加算点の上限を引き上げた『施工体制確認型総合評価方式』を試行する。4月に続く第2弾となる今回は、入札段階に焦点を絞り、@特別重点調査の試行A総合評価方式の拡充B同種工事の実績要件緩和C入札ボンドの導入拡大D公正取引委員会との連携強化E予定価格の的確な見直し――の6施策を実施する。……特別重点調査は、低入札価格調査制度に事実上の失格判断基準を導入し、応札額が調査基準価格を下回り、予定価格の内訳に対して直接工事費75%、共通仮設費70%、現場管理費60%、一般管理費30%のいずれかを切った場合、入札日から7日以内にその根拠となる資料の提出を求めた上で事情聴取する。対象は予定価格2億円以上で、資料の再提出は認めない。……国交省は、必要に応じて下請にも事情聴取し、▽必要は資料が期間内に提出されない ▽提出された資料の内容に不備がある▽合理的な説明がない――場合は失格とする。」(『建設通信新聞』2006.12.11)
●「国土交通省は、『建設業法法令順守推進本部』(仮称)を立ち上げ、建設業法違反行為を徹底して一掃する方針だ。具体的には施工体制等調査指導班、いわゆる『施工体制Gメン』を拡充し、地方整備局に通報窓口を設け、情報収集機能を強化し、情報に裏付けられた立入り調査を増加させる。同省の大森雅夫官房審議官(建設産業担当)は『まじめに努力する企業が報われるようにするための措置』とし、不良不適格業者排除の具体策だと説明している。業法順守を基準に淘汰・再編へ踏み出した施策ともいえる。……対象とする法令違反行為は、今国会で成立した改正建設業法を踏まえ、▽一括下請け▽管理技術者など専任義務違反・名義貸し▽元下関係の適正化▽社会保険、労働保険の加入状況といった労働関係法令――などで、都道府県の建設業担当部局や厚生労働省、公正取引委員会など関係省庁と連携しながら、対応が不十分との指摘がある民間工事も徹底的に取り締まる。」(『建設通信新聞』 2006.12.15)

労働・福祉

建設産業・経営

●「国土交通省は、4日、建設業101団体に対して、下請業者への代金支払いの適正化を通知(盆暮れ通知)した。今回の通知では、現場発生する諸費用を一方的に下請業者から徴収する‘赤伝処理’について、そのような行為がないよう徹底を求め、前回(8月)の通知より踏み込んだ内容とした。……通知では、赤伝処理については『適切な契約手続きに基づかず、元下双方の協議がないまま、現場で発生する諸費用を下請代金から差し引く事例が多く見られる』と事態を指摘した上で、『これらの諸費用を一方的に下請業者から徴収することがないよう徹底すること』と明記している。」(『建設通信新聞』2006.12.05)
●「ゼネコン各社の工事採算が悪化している。日刊建設工業新聞の調査によると、上場各社が先に発表した06年9月中間決算で、調査対象の大半の社が、完成工事の採算を示す感性工事総利益(粗利益)率の数値を落とした。需要が堅調な建築工事の受注競争が過熱しているほか、国内より採算が厳しい海外工事の割合が増したことなどが原因。通期も3分の2の社は前期より粗利益率が落ち込むと予想する。従来は好採算とされた公共事業が中心の土木工事も、予算削減による量の落ち込みと低価格受注の頻発で採算は悪化。資機材料価格や労務単価の高騰が来期移行の業績に影響を及ぼす可能性が高い。調査では、上位27社を対象に、06年9月中間期の単体ベースの粗利益率と07年3月期の粗利益率(予想数値)を土木・建築別に集計し、推移を調べた。その結果、06年9月中間期の粗利益率が前年同期より悪化した社は5分の4を占める22社に上った。07年3月期の粗利益率も16社が前期を下回ると回答。上回るとした社も小幅の改善が多かった。ゼネコン各社の粗利益は従来、利幅の薄い建築と海外両事業の分を比較的好採算が見込めた公共土木工事で埋め合わせるという『土高建低』の傾向にあったが、国と自治体の予算削減で公共工事の受注が急減し、こうした図式は崩れつつある。さらに、談合への罰則を強化した改正独占禁止法が今年1月に施行されたのを契機に、受注競争が一気に激化。低価格入札が頻発して利益率も急速に低下している。06年9月中間期の土木の粗利益率は未回答4社を除く23社中17社が前年同期を下回り、10%台を維持したのは8社にとどまった。06年9月中間期時点ではまだ低価格受注の影響はほとんど表面化しておらず、今後、こうした工事が売り上げに計上される『来期以降に影響が出る』と見るゼネコン関係者は多い。原油高や世界的な鉄鋼需要増による資機材価格の高騰をはじめ、技能者不足による労務単価の急騰などがさらに利益を圧迫する可能性もある。民間建築工事も、各社が需要の堅調な首都圏と工事・物流施設などへの集中を強めていることで競争は過熱気味で、受注価格の低落が続く。06年9月中間期の建築の粗利益率は未回答4社を除く23社中17社が前年同期より低下した。利幅が大きいとされる設計・施工一括の発注案件の数も減り、利益が伸び悩む傾向もある。受注拡大を目指して不採算工事を大量に抱え込めば、数年前の『ゼネコン危機』の際と似た構図になりかねない。選別受注を徹底し、量より質を重視した受注へと一度は転換した各社が、次の危機をどう回避するのか、新たな受注戦略が必要になっている。」(『建設工業新聞』2006.12.08)
●「大手ゼネコンが、受注高に占める海外事業の比率を伸ばしている。鹿島、大成建設、清水建設、大林組の上場4社が06 年9月中間期に計上した海外受注高(単体ベース)の合計は4877億円(前年同期比81.0%増)で、総受注高に占める構成比は17.8%と、前年同期に比べ7.8ポイント上昇した。特に中東や北アフリカでの大型受注が相次いだ土木事業では、国内を含む総受注量の半分以上を海外事業が占めた。国内市場の縮小も背景に、活況を呈する海外事業は各社の大きな収益源になりつつあり、受注拡大傾向がしばらく続きそうだ。」(『建設工業新聞』2006.12.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他