情勢の特徴 - 2007年1月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「不動産や債権の『証券化』市場が拡大している。三菱UFJ信託銀行など大手信託5行を通じた2006年9月末の残高は合計で50兆円規模になった。企業が保有する債権や資産を圧縮するとともに、資金調達方法を多様化しているためだ。投資家も高い利回りを期待して証券化商品への投資を増やしており、市場はさらに拡大しそうだ。」(『日本経済新聞』2007.01.05)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通、財務両省が2008年度予算から、民営化した旧日本道路公団などの約40兆円の債務の一部を国費で肩代わりすることで合意したことが明らかになった。道路特定財源を使って高速道路会社の負担を軽減し、通行料の引き下げにつなげるという名目だ。利用者にメリットがあるように見えるが、国費投入は『国民負担なしに債務を返済する』との民営化の趣旨に反し、財政負担の増大につながる。構造改革に逆行する動きで、安倍晋三首相の判断が問われる。・・・債務の肩代わりは昨年12月の道路特定財源の見直しで、国交・財務両省が合意した。具体的には、各高速道路会社が債務返済機構に支払う高速道の賃貸料を軽減。軽減分だけ、高速道料金を引き下げる。国は引き換えに機構の債務の一部を引き受け、道路特定財源で肩代わりする。債務の返済を確実にする狙いがあるという。・・・民営化に伴う閣議決定で、政府は旧日本道路公団の債務返済に国費を投入しないとしており、債務の肩代わりは事実上、閣議決定に反する。高速道路会社の経営努力で高速道料金を下げるとした民営化の趣旨にも反し、経営規律が働きにくくなる恐れもある。」(『日本経済新聞』2007.01.04)
●「極端な低価格で公共工事が入札されるケースが相次いでいる問題を受け、公正取引委員会は5日までに、独占禁止法違反(不当廉売)に当たるかどうかを調べるため、大手ゼネコンを含む全国の建設会社に公共工事の落札価格や工事原価などを報告するよう要請した。・・・公取委によると、調査対象は大手・準大手ゼネコンや地方の主要建設会社など数十社。2004年4月から06年9月末までに国土交通省と都道府県や政令指定都市から受注した工事について@入札時の一般管理費など工事原価の構成A会社の財務状況―などを報告するよう求めている。国交省によると、国発注の公共工事の平均落札率(予定価格に対する落札価格の比率)は01年度に96%台だったが、業者間の競争が活発になったことなどで、05年度には約91%まで下落。その半面で、落札価格が、予定価格の67-85%の間で設けられた基準を下回った場合に行われる『低入札価格調査』の対象になった同省発注工事も増加傾向にあるという。この中には、受注実績を得るため、利益を見込まずに採算ラインを度外視した安値落札を繰り返し、他業者の参入を妨げる不当廉売に当たるケースもあると公取委はみている。」(『日本経済新聞』2007.01.05)
●「農林水産省は、同省発注工事の入札で、著しい低価格で応札した業者を対象に『特別重点調査』を実施するよう全国の地方農政局に通知し、今月の入札案件から適用を開始した。調査の実施方法は、既に導入を発表している国土交通省とほぼ同様の内容。原則として2億円以上の直轄工事を対象にするが、2億円未満の工事についても部局長の指示により実施が可能としている。・・・入札価格が調査基準価格を下回り、かつ費目別金額のいずれかが発注者側積算額の一定割合を下回った場合に、特別重点調査を行う。一定割合は、▽直接工事費75%▽共通仮設費70%▽現場管理費60%▽一般管理費30%―と、国交省と同じ割合に設定している。調査対象となった応札業者には、見積書や取引実績などコスト低減を裏付ける書面を7日以内に提出するよう求める。国交省が昨年12月に発表したダンピング受注防止対策には、原価割れで受注したケースを公正取引委員会に通報することも盛り込まれている。農水省の今回の通知にこれは含まれていないが、同省は同様の措置を講じる方向で検討し、公取委と調整する。」(『建設工業新聞』2007.01.09)
●「東京都千代田区は10日、区内のマンションに耐震診断報告を12月28日までに行うよう求めると発表した。区が安全と判断したマンションは公表する方針だ。区が耐震診断に要する費用を助成するほか、アドバイザーの無料派遣を行うことで診断環境を整え、マンションの耐震補強の実効性をあげたい考え。区は同日付で区内のマンション466棟に耐震診断報告を求める文書を郵送した。耐震診断に必要な費用は250万円を上限に、費用の半分から全額を区が補助する。耐震改修をする場合も、2175万8千円を上限として、費用の3分の2を区が負担する。耐震診断では建物の強度を確認するため、管理組合が保管している構造計算書の再計算や、レーダーを用いて鉄筋の位置を確認する調査などを行う。区ではマンションに無料でアドバイザーも派遣し、改修工事や資金計画について提言をする。区では2006年からマンションの耐震促進事業を始めているが、昨年末までで、6棟が耐震診断を実施したにとどまる。各マンションに文書を送ることで、早期の耐震診断を促す。問題のある物件については、補強の徹底を求める方針だ。」(『日本経済新聞』 2007.01.11)
●「国土交通省が25日に召集予定の通常国会に提出する同省関係法案が明らかになった。提出予定法案は9法案で、新築住宅の売り主などに構造的欠陥を補償する保険への加入や供託を義務付ける『特定住宅瑕疵(かし)担保責任の履行の確保等に関する法案』(仮称)など3法案を新法として提出する見込み。いずれも3月上旬までに法案を国会に提出、会期中の成立を目指す。耐震強度偽装事件では、住宅の売り主が保険に加入していなかったため、十分な瑕疵担保責任が履行できない状況が浮き彫りになった。このため、新法では、すべての新築住宅の売り主、請負者を対象に保険加入や供託を義務化し、瑕疵担保の確実な履行を財政的に裏付ける。『地域公共交通の活性化及び再生に関する法案』(仮称)は、市町村が主体となった協議会が策定する地域公共交通総合連携計画(仮称)に盛り込まれた特定事業に対し、国が特例措置を講じる。国土交通大臣が認定する特例事業は、LRT(超低床路面電車)、BRT(バス・ラピット・トランジット)など5つを設定しており、LRTやバスサービスの高度化などを支援する。・・・また、広域的地域活性化のための基盤整備に関する法案(仮称)は、広域的な地域の活性化を図るため、都道府県に対して地域自立活性化交付金を交付する。市町村に交付するまちづくり交付金に対し、新たな交付金は、都道府県が広域的な活性化事業に使えるというメリットがある。」(『建設通信新聞』2007.01.11)
●「国土交通省が06年11月に契約した工事の平均落札率が、月ごとのデータを集計し始めた05年11月以降で最低になったことがわかった。1件100万円以上の工事1046件の落札率を単純平均したところ、87.5%となり、これまで最低だった06年8月の88.2%を下回った。平均落札率は、9、10月とやや上向く兆しを見せていたが、再び下落した。同省は05年11月分から、1ヵ月ごとの平均落札率を公表し始めた。各月の落札率は、05年が▽11月91.1%▽12月90.6%、06年が▽1月89.0%▽2月88.7%▽3月88.3%▽4月91.3%▽5月 89.4%▽6月89.5%▽7月88.7%▽8月88.2%▽9月88.9%▽10月89.4%―で、05年度の年間平均落札率91.8%を下回り続けている。」(『建設工業新聞』2007.01.12)
●「政府が地域活性化の支援を目的に今月始まる通常国会に提出する『広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律案(仮称)』(広域地域活性化基盤整備法案)が11日、明らかになった。インフラ整備とソフト施策を組み合わせた『広域的地域活性化計画』を策定した都道府県に、国が公共事業や人材育成などに充てる地域自立・活性化交付金を支給する制度や、民間事業者が進める拠点施設整備に対する支援措置の創設などを盛り込んでいる。政府は2月13日の閣議で法案を正式決定し、国会に提出する方針だ。政府は、国土整備のあり方を8つの圏域ごとに示す『国土形成計画』の策定を進めており、全体の方針を示す全国計画を07年半ば、広域地方計画を全国計画策定から約1年後に策定する予定。新法の制度は、国土形成計画を踏まえた地域の自主的な国土づくりを支援し、各圏域の自立・活性化を促すのが目的で、都道府県と民間事業者それぞれに対する支援措置をまとめている。具体策では、国土交通相が作成する基本方針に基づき、広域的地域活性化基盤整備計画を策定した都道府県に対し、国交省が地域自立・活性化交付金を支給する。同省によると、交付金は、道路、河川、鉄道、空港、港湾、下水道、住宅、公園整備などすべての公共事業に充てられるほか、街づくりに必要な人材の育成・誘致といったソフト施策にも充当できる。・・・民間事業者に対する支援措置では、広域的地域活性化基盤整備計画に定める重点地区の民間事業者が『民間拠点施設整備事業計画』を作成し、同省が認定すれば、民間都市開発推進機構から出資を受けることができ、都市計画提案などの面でも特例措置が講じられるようにする。事業計画に盛り込む拠点施設の整備については、会議場、オフィスビル、工場、流通センターなどを想定している。」(『建設工業新聞』2007.01.12)

労働・福祉

●「厚生労働省は雇用ルール見直しの柱の1つとして検討してきた残業代の割増率引き上げについて、1ヵ月の残業時間に応じて3段階の割増賃金を支払う新制度を導入する方針を固めた。健康への悪影響が増すとされる月80時間を超す残業については、現行(最低25%)より大幅に高い50%の割増賃金を義務づける方向で労使と調整する。長時間労働を是正する狙い。・・・労基法は労働時間の上限を1日8時間・週40時間と規制。それを超える残業に対し、現行ルールでは雇用主は残業代として25%以上50%以下の割増賃金を支払う義務を負うが、実際には多くが下限の25%にとどまっているとみられる。・・・経済界が導入を強く希望する労働時間規制の適用除外制度については『労働強化につながりかねない』と労働側が反発。7月の参院選をにらんで与党内にも慎重論が台頭し、法案提出は不透明になっている。労働時間規制の見直しが先送りとなり、残業代の割増率引き上げだけが先行実施されれば、企業の反発は必至だ。」(『日本経済新聞』2007.01.07)
●柳沢伯夫厚生労働相は9日、失業手当を支える雇用保険への国庫負担の大幅削減や、季節労働者の生活を支える『特例一時金』の給付切り下げなどを盛り込んだ雇用保険法『改正』案要綱を、労働政策審議会(菅野和夫会長)に諮問した。・・・労働者からは『雇用情勢の好転で保険財政が改善しているのに、給付切り下げはおかしい』『国庫負担削減ではなく、保険料の大幅引き下げ給付の改善こそは急ぐべきだ』との声があがっている。要綱では、特例一時金の給付を現行の基本手当50日相当分から30日相当分に削減(当分の間は40日相当分)。すでに決まっている『冬期援護制度』の今年度打ち切りと併せて、季節労働者の生活を直撃する。国庫負担は来年度から45%にのぼる大幅削減。60歳から65歳までの再就職に伴う賃金低下を補てんする高年齢雇用継続給付の国庫負担の廃止を打ち出した。雇用保険3事業のうち就職資金の貸し付けなどを行う雇用福祉事業も廃止する。一方、短時間労働者の被保険者資格にかんする正規労働者との区分の廃止や、育児休業給付の10%引き上げが盛り込まれている。安倍内閣は来年度予算で212億円もの失業対策費を減らす計画だ。そのため厚労省は、通常国会に『改正』法案を提出。4月施行をめざしている。・・・北海道の季節労働者は約14万人。除雪などで仕事ができない労働者の生活を支えてきたのが、『冬期援護制度』と『特例一時金』だった。ところが、冬期援護制度は今年度で打ち切られる。特例一時金(1人平均25万円)の削減によって1人約5万円、道内全体では330億円の減収となり、地域経済への影響も甚大だ。・・・建交労組合員は『地元で働く仕事と90日支給復活を要求する北海道連絡会』に結集して、季節労働者の雇用と生活を守れと運動してきた。道内の自治体・議会でも、制度存続を求める意見書などを相次いで可決している。(『しんぶん赤旗』2007.01.11より抜粋)
●「厚生労働省は派遣社員の雇用ルールである労働者派遣法を大幅に改正する方向で検討に入る。派遣会社から人材を受け入れる際に企業が候補者を選別する事前面接を解禁する。企業にとっては候補者の能力や人柄を見極めたうえで受け入れの是非を決められるようになる。すでに議論を始めている派遣期間の延長などとともに、企業側の雇用の自由度を高める。・・・労働組合は『年齢や容姿、性格などを理由に派遣社員になれない人が出る』と懸念している。いまの労働者派遣法令は派遣社員の定義を、企業から仕事や技能の希望を聞いた派遣会社が人を選び、企業に派遣する雇用形態と位置付けえちる。一時的に発生した仕事を片づけてもらう臨時雇用という発想が前提だ。企業が経費削減へ安易に正社員を派遣社員に代えないよう歯止めをかけるため、企業側に事前面接など派遣労働者を選ぶ行為を禁じている。今回見直しを検討するのは事前面接の解禁。派遣会社が選んだ候補者の受け入れを企業が拒否でき、新たな人選を求めることができるようにする。・・・いまも『顔合わせ会』『職場見学会』などと称して派遣候補者に事前接触するケースも多い。ただ非公式なため、派遣会社が示した候補者を断りにくかった。事前面接が解禁すれば、派遣候補者側も職場環境や雇用条件などを具体的にチェックできるようになる。企業側が人材を選別する結果、年齢が高い、性格が合わないなどの理由で仕事に就けない派遣希望者が出てくる可能性がある。労組のなかには『企業が派遣社員の採用範囲を広げ、正社員採用を減らす』と懸念する声もある。部会では事前面接解禁のほか、原則3年と決まっている派遣期間の制限を延ばしたり、撤廃したりすることや、一定範囲に限られている派遣対象業務を広げることも検討する。労働者派遣法を03年に改正したばかりだが、雇用形態の多様化や派遣社員数の急増で再改正が必要となった。」(『日本経済新聞』2007.01.11)

建設産業・経営

まちづくり・住宅・不動産・環境

その他