情勢の特徴 - 2007年1月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「建設経済研究所は23日、06、07年度の建設投資見通しを発表した。06年度の建設投資は前年度比1.1%減の 52兆8600億円となる見込みで、9年ぶりに増加した05年度から再び減少に転ずる見込み。07年度も、政府建設投資の減少などによって、同0.7%減の52兆4900億円と減少傾向が続くと予想している。07年度の建設投資は、政府部門が同6.2%減の17兆円、民間住宅部門が同1.0%増の19兆 2900億円、民間非住宅部門が同3.6%増の16兆2000億円の見込み。…民間非住宅部門のうち、建築投資は10兆8100億円(前年度比4.6%増)、土木投資は5兆3900億円(同1.5%増)で、それぞれ4年連続、3年連続で増加するとみている。民間非住宅着工面積は同3.4%減の 6860.7万平方メートルと予測した。」(『建設工業新聞』2007.01.24)

行政・公共事業・民営化

●「東京都は16日、都が発注する単独の工事としては過去最大の規模になる首都高速道路の『中央環状品川線シールド工事』の一般競争入札を公告する。予定価格は673億7750万円。技術提案型総合評価方式を採用し、入札には5者構成のJVが参加できる。技術提案は工期短縮など3項目。所定の手続きを経て、4月26日に開札して落札者を決定、6月開催の定例都議会に契約議案を提出する。中央環状品川線は、都と首都高速道路会社の合弁施行方式で建設。都建設局が担当する本線シールド工事は、目黒区青葉台4丁目から品川区八潮1丁目に向かう内回り線で、トンネル外径12.5 メートル、延長約7967メートルの規模。首都高速会社が担当する外回り線と横連絡坑12ヵ所、Uターン路3ヵ所も併せて構築する。標準工期は契約確定日〜13年3月15日と設定しているが、13年度中の開通を実現するため、可能な限りの工期短縮を目指している。」(『建設工業新聞』 2007.01.16)
●「公正取引委員会は17日、中央省庁としては初の官製談合防止法の適用に踏み切ることを決めた。強大な公共工事の発注権限を握り、入札制度改革を推進する立場であるはずの国土工津賞の職員が、受注調整に深く関与した点を重くみた決断。…そうした中、今回の水門談合疑惑の解明の過程で、水門工事を所管する国交省の課長補佐級の職員に加え、旧建設省の技術系トップの元技監らが談合に関与していたことが明らかになってきた。… 談合における発注者の責任を問うことができる唯一の法律である官製談合防止法を、発注機関の国交省に適用する方針を決めた。」(『日本経済新聞』 2007.01.18)
●「名古屋市発注の地下鉄工事を巡る談合疑惑で、2005年末の大手ゼネコンの談合決別宣言後、受注調整を行っていた疑いが強まったとして、名古屋地検特捜部は22日、刑法の談合容疑で、大手ゼネコンの大林組、鹿島、清水建設の本社(いずれも東京・港)の家宅捜索を始めた。受注調整の経緯や手口の実態解明を急ぐ。同工事を巡っては、公正取引委員会が同地検と連携し、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑での刑事告発を視野に調査を進めている。告発すれば、昨年5月の汚泥処理施設を巡る談合事件以来で、ゼネコンに対して独禁法違反罪を適用する初のケースとなる。…大手ゼネコンが『談合決別』を宣言した後の06年2月、入札直前に談合情報が漏れた2工区では、鹿島と清水建設を筆頭とするJV同士が工区を交換するという『再談合』をしていたという。」(『日本経済新聞』2007.01.22)
●「国土交通省が『緊急公共工事品質確保対策』の1つに打ち出した特別重点調査が1日から試行され、22日現在で試行工事(予定価格2億円以上)98件中18件が低入札価格調査制度の調査基準価格を下回り、うち11件が特別重点調査の対象となっていることが分かった。低入札価格調査対象工事の発生率は昨年11月に比べて約2割減っており、加えて特別重点調査の対応に不慣れで書類がそろわないことにより『無効』になるケースが大半だ。新たなダンピング(過度な安値受注)対策が抑止効果を発揮し、1月の落札率も昨年11月の87.5%を上回る見通しだ。国交省が各関係業界団体に対して特別重点調査を含む新たなダンピング対策を説明したにもかかわらず、約1割の工事が特別重点調査対象となっているのも事実で、国交省は…『調査基準価格ぎりぎりを狙った結果、直接工事費、共通仮設費、現場管理費、一般管理費のいずれかの費目が下回った模様で、意図的な低価格入札は減りつつある』とみている。…対策以前のような応札率が5割を下回るような意識的な低価格入札はなくなった。…特別重点調査では、調査対象者に対して、積算内訳書や下請予定業者、資材購入予定先の一覧など所定の書類28種類に加え、それらの証明に必要な領収書や納品書など膨大な資料の提出を求めるため、調査実施の連絡から 7日以内にすべてそろえることは、事前に準備していない限り、物理的に困難な事情も浮き彫りになっている。」(『建設通信新聞』2007.01.24)
●「政府は、26日、物品購入や公共事業発注のために結ぶ随意契約のおよそ6割にあたる約2兆1千億円分を、一般競争入札などによる競争型の契約に切り替える方針を決めた。移行完了は2007年度中で、政府が結ぶ契約全体の8割程度が競争型となる。官製談合事件の反省を踏まえ、調達コスト削減を狙うが、情報公開の徹底で契約内容の透明性を一段と高める必要がある。…2005年度実績額で競争性のない随意契約は約3兆4千億円。省庁と関係のある団体と結んだ契約で約1兆4千億円、民間企業との契約で約7千億円の合計2兆1千億円分は一般競争入札など競争性のある契約への移行が可能と判断した。残る約1兆3千億円分は、防衛装備品など調達先が限られるもので、今後も随意契約とする。05年度の政府調達額全体(7兆3千億円)では、すでに競争入札としている分、(3兆4千億円)、企画提案型の随意契約(約5千億円)とあわせ、6兆円程度が競争型の契約に移行する計算だ。」(『日本経済新聞』2007.01.27)
●「財政破綻した北海道夕張市は26日、再建計画の素案を公表した。市民に新たな負担を求めるとともに、人件費などの経費を大幅に圧縮するのが柱。子ども2人(小学生以上)の標準的な4人家族では年間5万円近い負担増になる。一方で金利負担として道や国が実施する支援は総額45億円に達するとの試算もある。『自主再建』という国の方針変更にもつながるだけに議論を呼ぶのは必至だ。素案では実質赤字353億円を2007年度から18年で解消。最初の10年間は年10億−15億円、それ以降は年12億−36億円を返済する。そのため市職員数の半減や職員給与の30%カットなどで人件費を年間約17億円圧縮、補助金廃止なども含めると05年度比で年間24億円を節約する。一方で市税率アップ、ゴミ処理の有料化などで、同約1億8 千万円の収入増を実現する計画だ。市の試算では65歳以上の夫婦2人暮らしの家庭の負担増は年間2万5千円を超える。小学生1人と保育料がかかる幼児1人の計2人の子どもを持つ家庭では、計画最終年度の負担増は年間16万円を越える。再建支援のため道は実質赤字相当額を、市場より低い年0.5%で市に融資する。…総務省は支援する理由について『夕張市の計画はどの自治体よりも踏み込んでおり、国民にも納得してもらえる内容。最低限の行政サービスを維持するには国の支援が必要だ』と説明する。しかし、夕張市と同じ空知地方にある歌志内市や上砂川町では無許可起債問題を巡り、道が長期資金を融資する方向で検討に入った。財政が行き詰った市町村を、国や都道府県が支援する構図は他の自治体にも広がる可能性がある。」(『日本経済新聞』2007.01.27)

労働・福祉

●「厚生労働省は23日、雇用の基本ルールを定める新法『労働契約法』の法案要綱を固めた。就業規則の役割を大幅に引き上げ、条件を満たせば就業規則の変更で労働条件を変更できるようにするのが最大の柱。また企業が社員を出向させる場合、対象者に選んだ理由を説明できるよう求めるなど新法で基本ルールを定め、労使紛争を未然に防止する考えだ。…就業規則は労働基準法に基づき、休憩時間や休日、賃金の支払い方法などを定めた職場の基本ルール。労働契約法では就業規則で定めた内容を、企業と個々の社員が結んだ労働契約と見なす。就業規則に労働契約としての法的効力を持たせることで全従業員の労働契約をまとめて変更できるようになる。…ただ就業規則は労働組合の意見を聴取するだけで企業が自由に変更できるため、労働組合などは労働契約としての効力を持たせれば『労働条件の一方的な不利益な変更を招く』として慎重な議論を求めていた。法案要綱では企業による一方的な変更を防止するため、就業規則を使った労働条件の変更が合理的かどうかを判断する基準として、『変更後の就業規則を労働者に周知』『労働条件の変更の必要性』など5条件を明記する。ただ周知の方法などの具体策は詰まっておらず、厚労省が指針で示す。変更の歯止めを指針でどこまで明示するかが今後の焦点になる。また従業員を出向させる場合は出向させる人を選んだ理由などを示すほか、転籍の場合は労使合意を条件とし、単に好き嫌いで企業側が出向、転籍を命ずることを禁じる。ただ新法の柱の1つとして検討された解雇の金銭的解決制度は、労政審で導入を求める企業側と反発する労働側が対立し、先送りされた。同時にまとまった労働基準法の改正案には、一定条件を満たす会社員を労働時間規制から除外する『日本版ホワイトカラー・エグゼンプション』と残業代の割増率引き上げの両方を盛り込んだ。」(『日本経済新聞』2007.01.24)

建設産業・経営

●「東京商工リサーチがまとめた2006年11月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、277件で前年同月比 17.5%減となった。件数は10ヵ月ぶりに300件台を下回り、また、産業別に占める割合も、ことし最低の25.3%となっている。負債総額も 27.5%の大幅な減少となっており、475億4900万円だった。8ヵ月ぶりに500億円を割り込んだ。ことし2番目に少ない金額となっている。負債額 10億円以上の大型倒産は8件にとどまった。」(『建設通信新聞』2007.01.23)
●「日本建設業団体連合会(梅田貞夫会長)が30日公表した、会員企業(54社)の2006年受注実績は、受注総額が前年比2.6%減の13兆4100億円で3年ぶりの減少となった。このうち民間は4.1%増の9兆9430億円で、受注シェアは74.1%と過去2番目の高水準となった。これまで民間シェアは、バブル期だった1990年の75.0%が最大だった。06年の民間シェアは、受注総額で最高額を記録した01年の民間シェア72.3%を超えた。また、官公庁は33.2%減の2兆3210億円にとどまり、シェアも17.3%と初めて20%台を割り込んだ。一方、海外も中東、北アフリカの大型事業受注などを背景に、97年以来9年ぶりに、1兆1070億円と1兆台を確保した。海外シェアも過去最大だった97年の6.4から1.8ポイント増加の8.2%と最大となった。…小泉政権が発足した2001年4月以降、官公庁受注は、4兆円台から3兆円台と減少を続け、06年は3 兆円台を下回る2兆3210億円と調査開始以来の最低額まで落ち込んだ。一方、民間は過去10年間で最低だった02年の8.2兆円から4年連続の増加となった。受注総額に占める官公庁シェアが20%を割り込んだのは初めてで、民間と海外受注が受注額全体を底上げする構図が一層鮮明になりつつある。」(『建設通信新聞』2007.01.31)
●「東京商工リサーチがまとめた2006年12月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、336件で前年同月と同数となった。2ヵ月ぶりに300件を上回り、産業別の構成比も30.2%と上昇した。負債総額は535億8900万円で21.9%の大幅な減少になっている。負債額10億円以上の大型倒産が53.8%という大幅な減少にとどまったのが最大の要因。この結果、負債額の平均は22.0%減の1億5900万円となっている。」(『建設通信新聞』2007.01.31)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、耐震偽装問題の再発防止策として昨年成立した改正建築基準法の6月施行へ向け、構造計算に対するピアチェックの実施など新たな規定の細部を定めた政令案をまとめた。ピアチェックを義務付ける建築物は、RCまたはSRC造建築物の場合は高さ20メートル超と規定。S造は4階建て以上を対象とするが、3階建て以下でも高さが13メートル超の場合や軒高が9メートル超の場合はピアチェックが必要になる。指定確認検査機関の中立要件も強化し、親会社と見なす際の株主や役員の割合について、現行の2分の1超から3分の1超に引き下げる。高さ60メートル超の工作物に対する大臣認定取得も新たに義務化する。国交省は政令案に対する意見を2月25日まで受け付ける。」(『建設工業新聞』2007.01.30)
●「国土交通省が都市機能や居住環境の向上を目的に今国会に提出する都市再生特別措置法等改正案の全容が30日、明らかになった。防災上危険な密集市街地の解消に向け、特定の地区内で容積の移転を認め、住宅の高層化を可能にするとともに、その住宅建設を都市再生機構の業務に加える。民間の都市再生事業に対する支援期限の延長、第2種再開発事業の採択要件緩和、民間都市開発推進機構の出資対象などの措置も講じる。同省が提出するのは都市再生特別措置法、密集市街地整備法、道路法などの改正案。改正の柱として、民間都市再生事業計画の認定申請期限を12年3月末まで延長する。都市再生機構のまちづくり交付金計画作成支援業務の期限は10年3月末に延ばす。…密集市街地整備法の改正では、防災街区整備地区計画の区域で、都市計画道路などの整備と併せて密集市街地を解消する事業を行う場合、建て替える住宅の容積を受け皿となる住宅に移転し、高層化できる制度を創設する。国交省は、この措置を『容積適正配置型の防災街区整備事業』としている。用地買収が必要な第2種市街地再開発事業の面積要件(5000平方メートル以上)を2000 平方メートル以上に引き下げ、対象を拡大する措置も講じる。…道路法の改正では、都道府県と協議した上で、市町村が国道や都道府県道の歩道を整備・改修できるようにする。自転車駐輪場の整備を目的に市町村が道路の改築を要請できる措置も創設する。道路管理者が沿道住民と協定を締結した上で、道路区域の外にある工作物を管理する制度や、NPOによる道路占用に対する特例も設ける。」(『建設工業新聞』2007.01.31)

その他