情勢の特徴 - 2007年2月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「全国15政令市と、4月に政令市に移行する新潟、浜松両市の2007年度予算案が27日に出そろった。日刊建設通信新聞社の調べによると、17市の一般会計総額は06年度比2.7%減の10兆3435億円。このうち普通建設事業費は5.0%減の1兆4098億円、災害復旧事業費は8.1%増の40億円となった。一般会計、普通建設事業費ともに、東日本で増加を示す自治体が多い一方、西日本の多くはマイナスとなる。“東高西低”傾向がみられる。市長選の影響から17市のうち、札幌、広島の両市が骨格予算、北九州市は3ヵ月分の暫定予算を編成している。この3市を除き、実質的なマイナス予算を組んだのは、仙台、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡の6市で、このうち名古屋と大阪は、6年連続の緊縮・抑制型となった。普通建設事業費は、新潟と浜松がともに20%台の伸びを示しているが、政令市への移行に伴い、件からの事業移譲が影響しているとみられる。このほか、さいたま、千葉で2桁台の伸びとなった。ともに再開発事業関連費用が寄与している。」(『建設通信新聞』2007.02.28)
●「日刊建設工業新聞社は、東京都内の49区市の2000年度から07年度の当初予算案の推移をまとめた。一般会計、普通建設事業費ともに、“V字回復”の傾向が顕著となっている。特に07年度は、税収の増加などが追い風となり、『これまで積み残してきた事業の具体化を加速させる』(板橋区)といった姿勢を示す自治体もある。また、昭島市や日野市でも過去最大規模の予算を組むなど、積極型の予算を編成した自治体が目立つ。…49区市の07年度予算案総額は、一般会計が4兆1702億5000万円、普通建設事業費は4936億9500万円で、ともに00年度以降では最大規模となった。普通建設事業費は、5000億円台が目前に迫っている。普通建設事業費の推移をみると、“底”は04年度の3753億3900万円だった。一般会計に占める普通建設事業費の割合も、穏やかなV字で推移している。構成比は00年度の11.08%から減少基調に入り、04年度には9.42%と、 10%を割り込んだ。その後増加基調に入り、07年度は、11.83%にまで回復する見通しだ。普通建設事業費の構成比と、一般会計規模の間には穏やかな比例関係が見られる。緊縮型予算に伴って、歳出削減の矛先が公共工事に向けられるケースが多い。このため、一般会計の下げ幅に比べ、普通建設事業費の下げ幅がより大きくなる傾向がある。財政の好転によって、その反対の減少が起きているのが07年度だ。一般会計の伸び率は3.7%だが、普通建設事業費は 5.4%となっている。区内では、墨田区の新東京タワー建設計画や周辺まちづくりを始め、面的整備への予算配分が多い。市では、国分寺市など庁舎建設に向けた動きが活発化している。」(『建設通信新聞』2007.02.28)

行政・公共事業・民営化

●「国交省は国と地方の公共工事で、談合しにくい一般競争入札の対象を拡大するための方策をまとめた。国の事業は 2007年度から一般競争入札を義務付ける工事を現在の『予定価格2億円以上』から大幅に引き上げ、不良業者を排除する仕組みも整える。…一般競争入札の拡大については、与党や建設業界から『安値受注による粗悪な工事が増えている』として、慎重論や入札への参加条件の強化を求める声が出ていた。…このため国交省は工事の質を確保する新しい仕組みを導入し、一般競争入札を拡大することにした。国交省はまず国の公共工事の約8割を占める同省直轄事業(07年度予算案で5兆4428億円)について、予定価格2億円以上の工事としている一般競争入札の対象範囲を広げる。…工事の質の確保に向けて、損害保険会社などの金融機関が建設会社の財務状況を審査し、落札した場合の契約履行を保証する制度も全国で導入する。この仕組みは『入札ボンド制度』といわれ、金融機関による財務内容や信用力の審査に合格しなければ入札に参加できないため、工事の履行能力が低い業者の排除につながる効果がある。…参入基準は価格だけでなく技術力も加味して落札者を決める『総合評価方式』という仕組みを活用する。具体的には過去に手掛けた工事の受注額の累計や、国や自治体が採点した過去の工事成績などを点数化。さらに土木施工管理技士などの資格を持っている社員数なども点数化して建設会社の能力を判断する。」(『日本経済新聞』 2007.02.16)
●「国土交通省の本年度の発注工事の入札で、低入札価格調査制度の対象になった工事が第3四半期(06年10〜12月)に急増していたことが分かった。同省が、4〜12月に発注した工事(港湾空港関係を除く)のうち予定価格100万円以上の工事を対象に集計した結果、 7777件あった入札のうち887件(11.4%)で基準を下回る低価格入札があり、特に第3四半期の発生率は14.8%と、上半期(4〜9月)の 9.2%と比べ飛躍的に上がっていた。」(『建設工業新聞』2007.02.16)
●「47都道府県の2007年度一般会計予算案が21日、出そろった。日刊建設通信新聞社の調査によると、総額は前年度比2.1%減の47兆2375億円で、6年連続の縮小となった。また、普通建設事業費は13.1%減の6兆7920億円と減少傾向が鮮明で、普通建設事業費が増加したのはわずか4都県にとどまっている。災害復旧事業費は、23.4%減の2212億円。北海道や東北地方などでは、06年秋に発生した暴風雨災害の対応を進める方針だが、大半の地域では事業費が減った。…普通建設事業費が前年度を上回ったのは、青森、群馬、東京、長野の4都県だが、伸びは小幅にとどまっている。普通建設事業費は、全国的な抑制傾向に歯止めがかからず、19道県が2桁台の減少となった。山形、広島、沖縄などのように、財政健全化の一環として、公共事業の削減を掲げる自治体も少なくない。このため、地方単独事業も減少傾向にある。…公共工事の削減が進む中で、都道府県は病院や学校などの施設整備への予算配分が目立つ。…効率的な施設整備を進めるため、PFIの導入を検討する動きも増加している。宮城の教育・福祉複合施設整備、茨城の県庁立体駐車場整備、山口の下関地域総合武道館整備などのプロジェクトがある。複数のPFI事業を検討する自治体もあり、静岡で5件、埼玉、東京でそれぞれ4件ずつ検討が進んでいる。」(『建設通信新聞』2007.02.22)
●「国土交通省は、国際競争力強化に向けた今後の港湾政策の案をまとめた。柱となるのが、インフラ整備などに集中的に取り組む『産業競争力強化ゾーン(仮称)』の創設。後背地を含めた地区を強化ゾーンに設定し、支援の充実や規制緩和などの措置を講じることにより、工場の新設や物流施設の集積などにつなげる。民間資金の導入による臨海部用地の供給や物流施設の整備促進にも取り組む。拠点的な港湾での適用を想定しており、次期社会資本整備重点計画に盛り込む。国交省は、国際分業の進展や高付加価値型製造業の国内回帰などを踏まえ、スーパー中枢港湾プロジェクトと、産業競争力強化ゾーンでの支援拡充により、臨海部への産業集積を加速させる。アジアのゲートウエーとなる港湾が対象で、京浜、名古屋、四日市、大阪、神戸などを具体例として挙げている。強化ゾーンでは、インフラ整備や産業立地支援、規制緩和などを一体的に講じる。老朽化した倉庫群の再開発に対する出融資制度の充実や、工場移転への支援制度の検討などを行う。…インフラについては、長大コンテナ車が通行可能な臨港道路の確保や、広域的な幹線道路との接続強化などに取り組むとともに、手続きの迅速化といった特例措置を設け、基盤整備のスピードアップを図る。」(『建設工業新聞』2007.02.23)
●「総務省は23日、自治体の公共工事に絡む談合をなくすため、全自治体に一般競争入札の導入を求めることを柱とする再発防止策をまとめた。都道府県と政令市には一般競争入札の対象を1千万円以上の工事に広げるよう要請。小規模市町村は1年以内に導入方針を定めるよう求めた。さらに、談合業者の入札参加停止期間を現在の上限2年間から3年間に引き上げることを検討する。入札参加者を限定しない一般競争入札の拡大を通じ、契約の透明性を高めるとともに工事費を削減する。このほか、電子入札の早期導入や技術力を考慮して落札者を決める『総合評価方式』の導入を要請。粗悪工事を防ぐ工事監理職員の研修強化も求めた。」(『日本経済新聞』2007.02.24)
●「埼玉県は、県産建設資材の積極的な利用を検討するよう『埼玉県土木設計業務共通仕様書』に明記し、4月1日から適用する。第1編共通第2章設計業務等一般の第1209条『設計業務の条件』の12として追加。『受注者は、当該設計を行うにあたって、新技術情報提供システム(NETTS)や埼玉県建設工事新製品・新技術紹介制度等を利用し、新技術や新工法の積極的な活用を検討すること。また、設計にあたっては、埼玉県産の建設資材の積極的な利用を検討すること』と規定した。」(『建設工業新聞』2007.02.26)
●「国土交通省は、コンサルタントと建設期魚の異業種コンソーシアムを直轄事業で適用することを検討する。設計・施工一括発注方式で試行導入する見通し。官房官庁営繕部が参議院新清水谷議員宿舎整備事業で試行した方式を念頭に置きながら、…実現すれば、設計段階で建設企業がコンサルタントに非公式な形で技術協力する、いわゆる事前協力の問題を解決する一つの糸口になりそうだ。事前協力の問題は、日本土木木工業協会(葉山莞児会長)が2006年4月に発表した『透明性ある入札・契約制度に向けて 改革姿勢と提言』の中で指摘。旧来のしきたりとして『さまざまな非公式な協力』を明示し、入札前にコンサルタントに対して無償で支援・協力する事前協力を一切行わないことを宣言した。合わせて、その打開策の一つとして『設計・施工一括の積極活用と、コンサルタントと建設業者の異業種JV導入』を提示した。建設コンサルタンツ協会(石井弓夫会長)も、異業種JVについて『設計・施工分離が原則』とした上で、『例外的に設計・施工一括方式を採用する場合、コンサルタントを活用した制度を整備してほしい』と国交省に導入を求めていた。…建設業法上、建設企業が設計業許可のないコンサルタントと結成した異業種JVとは請負契約を結べないため、国交省は、その解決策として異業種コンソーシアムを検討する。異業種コンソーシアムへの設計・施工一括発注…契約は、発注者、設計者、施工者の3者連名で結んでいるものの、実質は『設計、施工を分離発注し、それぞれの契約書を一本化したようなもの』(官庁営繕部)となっている。工事完成までの連帯責任を設計者に負わせると、建設業法に抵触する恐れがあるためで、その問題を回避しながら、『設計段階で施工者の技術を反映できるという最大のメリットが得られる』としている。…課題となるのが発注者、設計者、施工者の各主体の瑕疵(かし)に対する責任で、導入に当たっては、それぞれの責任分担を明確化する必要がありそうだ。」(『建設通信新聞』 2007.02.28)

労働・福祉

建設産業・経営

●「全国建設業協会(全建、前田靖治会長)は15日、06年の会員企業の倒産状況を発表した。倒産件数は前年度比 20.0%増の378件で、2年連続の増加。過去最悪を記録した02年の449件に次ぐ水準となった。地域別では、四国が同130.8%増の30件と最も増加率が大きかった。このほか、北海道・東北が同45.0%増の58件、近畿が同29.0%増の40件、中国が同31.6%増の50件、北陸が同 26.7%増の19件、九州が同6.5%増の82件と、5ブロックが前年に比べ増加した。関東・甲信越は前年と同数の77件。東海が同8.3%減の22件だった。民間需要が市場を下支えしている地域と、民間需要が少なく公共需要の落ち込みの打撃が大きい地域との間で、明暗がはっきりと分かれた格好だ。倒産原因では、受注減少が272件で全体の7割を占めた。次いで赤字累積が19件、放漫経営が15件だった。倒産形態では、破産が236件で全体の6割を超えた。これに内整理が56件、銀行取引停止が34件と続く。業種別では、公共工事への依存度が高い土木が261件と、依然として高い割合で推移している。建築・土木は58件、建築は38件。県の格付けランクでみると、Aランクが78件、Bランクが87件、Cランクが65件、Dランクが24件。資本金階層別では、1000万円以上5000万円未満の階層が306件で8割を占めた。このほか、5000万円以上1億円未満の階層が42件、500万円以上1000万円未満の階層が14件だった。06年10〜12月期の倒産件数は前年同期比14.5%増の87件。」(『建設工業新聞』2007.02.16)
●「積水ハウスの2008年1月期の連結経常利益は前期推定比5%増の1200億円前後と、2期連続で過去最高を更新する見込みだ。不動産開発事業でオフィスビルやホテルなど大型複合案件の開発利益が寄与。都市部で分譲マンションの販売戸数も伸びそう。年間配当は2円増の 24円程度とする可能性が高い。売上高は7%増の1兆7千億円前後になる見通し。投資額全体の10%を出資する東京・六本木の防衛庁跡地の共同開発『東京ミッドタウン』や、主要都市部で単独開発するオフィスビル数棟が完成時期を迎える。これに伴い、今期中に不動産ファンドなどへの売却益が発生する見通し。金利動向が不透明要因だが、高額所得者向けを中心に分譲マンションや戸建て住宅の高級商品も伸びそうだ。営業利益は3%増の1150億円前後の見通し。建築資材や住設機器の値上げで住宅の生産費用が増えそう。営業人員の増加で人件費もかさむが、戸建てや低層アパートなど工場であらかじめ部材を加工する皇后か住宅の販売数増で補う。07年1月期の分譲を含めた工業化住宅の受注は前の期に比べ5%増と堅調だった。工場稼動の平準化や建築基幹短縮など費用も削減する。販売用不動産の評価損など特別損失が減り、純利益は4%増の650億円前後となりそう。不動産開発がけん引する収益拡大時期に入ってから2期連続で 2円ずつ配当を増やしており、業績好調が続く今期も2円増配に踏み切りそうだ。07年1月期の経常利益は前の期に比べ40%増の1145億円前後になったもよう。分譲マンションで大型物件の販売が相次いだうえ、再開発したオフィスビルの売却益が寄与した。売上高は6%増の1兆5950億円前後、純利益は 45%増の625億円前後だった。」(『日本経済新聞』2007.02.23)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は27日、新築住宅の売り主らに対し、住宅に欠陥があった場合の瑕疵(かし)担保責任の履行確保措置を義務付ける新法『特定住宅化し担保責任の履行の確保等に関する法律』案を、自民党住宅土地調査会・国土交通部会合同会議に提示、了承された。今国会での成立を目指す。新法が成立すれば、売り主らには、供託や保険による資力確保措置の実施と、半年後との実施状況の届け出が義務付けられる。違反した業者は、届け出から50日後以降の新築住宅の販売契約締結などが規制されるとともに、懲役を含めた罰則規定の対象となる。これに伴い、宅地建物取引業法(宅建業法)と建設業法も一部改正する。国交省は、3月 6日の閣議決定を目指している。国交省は、耐震偽装事件で分譲マンションの建築主が瑕疵担保責任を履行できないケースが生じたことを受け、対応策を検討してきた。新法では、▽供託または保険による資力確保の義務付け▽保険の引き受け主体の設置▽紛争処理体制の整備―の3つが柱となる。資力確保が義務付けられる対象は、新築住宅を販売する宅建業者と、注文住宅を建設する建設業者。ゼネコンがマンションを自ら建設して分譲する場合は、宅建業者として資力確保措置の義務付け対象になる。具体的な資力確保方法は、住戸数に応じた保証金の供託または、住宅瑕疵担保責任保険契約の締結で、両方を組み合わせることも認める。供託金額では、新法で戸数に応じた金額の範囲を定め、詳細は政令で規定する。保険については、国交相が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人が実施する。住宅の検査と保険業務を一体的に行なうため、民間の住宅保証会社などが参入するとみられる。国交省は、毎年3月31日と9月30日を基準日と定め、供託などの対応状況の届け出を求める。…届け出をせずに新たに新築住宅の売買契約を結んだ場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、見届け出の場合や届け出内容に虚偽があった場合は、50万円以下の罰金となる。これらの罰則は、行為者と法人の両方に科せられる。違反行為に対しては、宅建業法と建設業法に基づく指示書分や営業停止処分もある。」(『建設工業新聞』2007.02.28)

その他