情勢の特徴 - 2007年3月前半
●「政府は9日、地方自治体の財政再建を早期に促す『地方財政健全化法案』を閣議決定した。自治体の財政の健全性を4つの指標で判定。悪化度合いに応じ早期是正措置を発動し、自治体に早めの対応を求める。…2008年度決算から適用する新制度では、財政の悪化度合いに応じて、自治体を『財政健全化団体』と『財政再生団体』の2段階に認定して再建を促す。再生団体になると国の関与が強まる。…新制度では、第三セクターなども含め連結ベースの財政状況を把握するため、4指標を国に報告する義務を自治体に課す。指標ごとに基準を設け、1つでも満たせなければ、再建計画の策定・実施を求める。どの程度の財政状況で自治体に健全化や再生計画を求めるかは、総務省が今秋にも政令などで定める。新制度の検討過程では、財政が著しく悪化した自治体の借金棒引きを可能にする債務調整の是非も議論されたが結論を先送りした。政府は4月に設置する地方分権改革推進委員会で、地方分権とあわせて継続審議する。菅義偉総務相は同日の会見で『債務調整は緊張感を保つうえで十分に検討する必要がある。非常に大きな課題になる』と述べた。」(『日本経済新聞』2007.03.10)
●「国土交通省は、ゼネコン(総合建設会社)が経営の再編・統合を進めやすくするように、公共事業入札に参加する際の経営審査の基準を見直す。…中央建設業審議会(国交相の諮問機関)の作業部会で検討し、5月をメドに具体的な見直し案をまとめ、2007年度中の導入を目指す。国や地方の公共事業入札に参加する業者に義務付ける経営審査は、完成工事高や技術職員数などを基準にしている。今の基準は、経営規模を示す指標の比重が高いので規模の大きい建設会社に有利になっている。このため、大手ゼネコンが、持ち株会社制度を導入して、地域ごとの子会社に分割した場合、各子会社の規模が小さくなり、従来は入れた大型工事の入札に参加できなくなる恐れがある。…国交省は経営審査の基準を連結グループを一体として評価する方式に見直す。完成工事高や技術者数などを連結グループ全体で評価し、その評価を子会社にも適用する。新基準になれば、大手ゼネコンが地域分社し、地域ごとに違う賃金体系にして経営効率化を進めたり、地場ゼネコンを買収しても、審査で不利にならずに済む。得意な営業地域や事業分野の異なる中堅ゼネコン同士が、経営統合して経営体力を強化することもできる。…国交省は…経営審査の基準見直しで一段の再編を促す。」(『日本経済新聞』2007.03.04)
●「国土交通省の『公共工事における総合評価方式活用検討委員会』(小澤一雅委員長)は2日開いた第11回会合で、総合評価方式による入札の普及に向けた委員会報告『総合評価方式適用の考え方』をまとめた。公共発注機関が総合評価方式を採用して入札を行う際のガイドラインと位置づけており、技術力評価の結果に差が生じやすい評価項目と配点のあり方を示したほか、自治体が総合評価方式を容易に導入できるよう『市町村向け簡易型』と呼ぶ新方式を盛り込んだ。受・発注者双方の事務量の軽減を図るため、入札後に競争参加資格などの確認を行う『事後審査型入札方式』の導入の必要性も示した。検討委は、今後も総合評価方式の改善を継続的に行うため、実務者で構成する作業部会を新設することも決めた。」(『建設工業新聞』 2007.03.05)
●「国土交通省発注の工事で、低入札価格調査の対象案件が1月に急減したことが分かった。ピークだった昨年11月は 18%、同12月は17%の入札が低入札価格調査になっていたが、年が明けて1月は7%と10ポイント以上も減少。月別では本年度で最も発生率の低かった昨年4月と並んだ。…同省は昨年12月、ダンピング受注の防止に向けた追加対策(緊急公共工事品質確保対策)を発表。これを受けて低価格入札が沈静化した形で、今後は他の公共発注機関の動向に関心が集まりそうだ。…緊急工事品質確保対策は、特別重点調査の実施や、施工体制を確認する総合評価方式の導入、歩掛かりの見直しなどが柱で、1月以降の入札から適用が本格化した。緊急対策の対象は予定価格が2億円以上の工事が中心で、この結果、この範囲の工事での低価格入札は151件中31件(発生率20.5%)と、100件中41件で発生した昨年11月と比べると発生率が半分に急落した。100万円以上の工事でも発生率は3分の1に下がり、件数ベースでも100件以上の減少となった。」(『建設工業新聞』2007.03.07)
●「全国知事会が昨年末に打ち出した入札契約制度改革の指針を受けて一般競争入札の拡大が全国的に進む中、自治体の入札改革をリードしてきた長野県が、建設業界の疲弊対策に動いた。同県では、全国に先駆けて一般競争を導入し、入札の透明性・競争性の向上に取り組んできたが、公共工事の減少と競争の激化で、地元建設業界の経営環境は急速に悪化。災害復旧や除雪に対応する体力まで失いつつあるとされる。県は、県民の安全・安心を確保する観点からも、地域には優秀な建設業者が必要と判断。事業費の確保とともに、4月から建設工事の入札で低価格の失格基準を5%引き上げ、受注価格の適正化を後押しすることになった。…長野県では『受注希望型競争入札』(事後審査型の郵送方式による一般競争入札)を導入したところ、03年度の建設工事の平均落札率は73.1%まで落ち込んだ。100万円超2億円未満の工事には、設計価格の75〜80%の範囲で変動する失格基準価格を導入しているものの、現実には、受注確保のため、最低ラインの75%付近に応札者が張り付く傾向がある。長野建協が04,05年度の県発注工事174件を抽出してコスト調査を実施したところ、建設価格に対する工事実績額は82.7%という結果が出た。設計価格の75%の金額で受注すれば赤字になりかねず、調査対象の 65%で採算割れが発生していた。…中澤会長によると、昨年7月の豪雨災害の復旧では、応札者なしという工事も出てしまった。除雪工事でも応札者なしの地域が発生し、昨春の豪雪の際には『発注者も骨を折って、何とか対応できた』(中澤会長)という。…赤字工事を減らすために失格基準を設計価格の 80〜85%に引き上げるとともに、補助事業を中心に必要な事業費を確保することにした。」(『建設工業新聞』2007.03.07)
●「国土交通省は8日、官製談合防止法適用に伴う公正取引委員会からの改善措置要求を受け、営業停止処分や指名停止措置の強化、一般競争入札の拡大などを盛り込んだ当面の対策をまとめた。対策には、『詳細設計付き施工発注』や『本体・設備一括発注』など多様な方式の導入を盛り込み、談合の温床となっている設計業務への不明瞭な協力の排除を明確に打ち出している。多様な発注方式は2007年度から一部の工事に適用する。同省は、ペナルティー強化に伴う基準改正作業などを早急に進め、準備が整った対策から実施する。営業停止処分の強化では、独占禁止法や刑法談合に対する処分を一律倍増する。代表役員が独禁法や刑法談合の刑事罰を受けた場合は現行90日の営業停止期間を約4倍の1年に引き上げる。営業停止期間の地域限定も廃止し、処分の対象地域を全国に拡大する。…一般競争入札については、対象の拡大に伴う事務処理体制が整い次第、現行2億円以上としている対象工事を2007 年度に1億円以上、08年度には6000万円以上にまで拡大し、水門設備工事は07年度当初から全工事が一般競争入札となる。6000万円以上への拡大により、08年度には全発注工事の9割が一般競争入札に移行する。指名停止措置は、重大な独禁法違反などの停止期間を現行の1.5倍に強化し、最長期間を2 年から3年に引き上げる。関係省庁や地方自治体の期間延長についても検討する。…当面の対策はこのほか、コンプライアンス(法令順守)徹底に向けた職員からの内部通報制度の整備やOBなどからの不当な働きかけの記録・報告・公表、工事発注組織の見直しなどが盛り込まれている。」(『建設通信新聞』 2007.03.09)
●国土交通省などが発注した水門工事を巡る談合事件で、同省が価格だけでなく技術力を勘案して落札者を決める「総合評価方式」で実施した入札でも、談合が行われていたことが、9日までにわかった。談合防止に有効として、同省が2000年から導入を拡大している新方式も、骨抜きにされていたことになる。公取委によると、総合評価方式に対応するため、受注予定業者とそれ以外の応札業者は、営業担当者と技術者が同席する会合を開催していた。受注予定社の技術者が資料を持参し自社技術を説明。他社担当者は説明された技術を念頭に、より劣る技術を同省に提案しました。受注予定社の技術が簡易なものであれば、他社にファクスで説明資料を送って済ませる場合もあった。同省が01年夏から05年5月までの間に一般競争入札などで発注したダム用水門33件のうち12件、河川用水門61件のうち12件が総合評価方式だった。(『しんぶん赤旗』2007.03.10より抜粋)
●「国土交通省は、建設業法第28条に基づく2006年(1月-12月)の大臣許可業者の監督処分実績をまとめた。処分件数は、指示処分31件、営業停止処分66件の計97件で、05年(96件)とほぼ同数だった。ただ、内訳をみると、刑法談合による営業停止処分が26件と05年(3件)の約9倍に激増しており、検察が談合事件の摘発に積極的だったことをうかがわせる結果となった。…営業停止処分は、独禁法違反が24件で、競売入札妨害・談合(不誠実な行為)17件、刑法関係13件(贈賄4件、競売入札妨害・談合9件)、経審虚偽・技術者の不設置・粗雑工事5件、贈賄、その他法令違反が各2件、労働安全衛生法・同規則違反、廃棄物処理法違反、一括下請禁止違反が各1件となっている。このうち刑法談合に該当するのは、建設業法第1項第2号の不誠実な行為に当たる競売入札妨害・談合で17件、同法第1項第3号の他法令違反に当たる刑法関係の競売入札妨害・談合が9件の計26 件。成田国際空港、防衛庁設庁発注工事をめぐる談合事件が含まれている。」(『建設通信新聞』2007.03.12)
●「鳥取県は、『鳥取県建設工事等の入札制度を定める手続きに関する条例』を4月から施行する。知事の専属的権限となっている入札制度などの決定に、議会が関与できる全国で初めての枠組みとなる。…条例は、9日に開いた県議会で可決した。あわせて知事が規則などを定める前に議会に示す基本方針も承認された。基本方針に基づいた入札制度の改正は、周知期間を設ける付帯意見が議会から提出されたため、7月以降に運用を始める。…条例の制定で、知事が建設工事などの入札制度を規則などで定める際に、事前に基本方針を策定する。方針案の時点で、その内容について、議会の承認を得ることが必要となる。議会承認後は、方針に基づいた内容で必要な事項を規則で定める。今回、承認された基本方針は、@談合を防止し、競争性を高めるA工事の品質確保を図るB入札制度の透明性を高める――を理念として掲げている。具体的には、発注区分や各工事の入札参加者の地域要件、入札参加資格申請の主観点審査項目、低価格入札対策、不良・不適格業者の排除などを基本事項として盛り込んでいる。…地域要件は、6000万円以上とすべての港湾工事について、県内全域を対象とした。6000万円未満の工事は東、中、西部の3地区としたが、条件を満たす業者が20社以上見込めない場合は、対象区域を拡大する。県外業者の入札参加は、従来どおり、24億1000万円以上の工事を対象とし、これ未満の工事では、技術的に可能な限り、地元業者に優先的に発注する。低入札価格対策については、従来からの対策をより厳しく実施する。」(『建設通信新聞』2007.03.13)
●「全国の自治体が発注するごみ焼却炉建設工事を巡る談合事件で、公正取引委員会は2日、三菱重工業など大手プラントメーカー5社に対し、総額約270億円の課徴金納付を命じる方針を固め、各社に事前通知した。独占禁止法違反の課徴金額としては過去最高。今後、各社から弁明を聴いた上で正式な命令を出す。このほか命令を受けるのは日立造船、JFEエンジニアリング、川崎重工業、タクマ。…これまでの課徴金の最高金額は、旧日本道路公団などが発注した橋梁(きょうりょう)工事を巡る談合事件で昨年、44社に納付を命じた約129億円だった。今回の事件は、1994-98年にかけて、5社が自治体発注のごみ焼却炉『ストーカ炉』建設工事の入札であらかじめ受注業者を決めていたとされる。公取委は99年に独禁法で排除勧告した。この期間の全国のストーカ炉の発注額のうち、5社の受注総額は全体の約88%を占める約9600億円。課徴金の対象は、このうち談合を認定した約 4500億円分の工事とみられる。」(『日本経済新聞』2007.03.13)
●「国土交通省は、新築住宅を購入した消費者保護のための新法『と食え地住宅瑕疵担保責任の履行の確保に関する法律案』を、今国会に提出する。耐震偽装問題の再発防止策の最後(第3弾)を締めくくるもので、新築住宅を販売する宅建業者と注文住宅を請け負った建設業者に対して、瑕疵担保責任が確実に履行できるよう資力確保措置の実施を義務付けることが柱だ。十分な対応を講じていない業者には、新築住宅の販売禁止や、懲役刑を含む罰則などが適用される。同法案は6日に閣議決定しており、今国会で成立・公布されれば、2年半後に全面施行される予定だ。…瑕疵担保責任は、新築住宅の完成引き渡しから10年以内に構造耐力の面で主要な部分などに問題が生じた場合、補修や賠償金などを受けられるセーフティーネットだ。既に制度化されているものの、耐震偽装事件では瑕疵担保責任が発生した物件が集中してしまったため、機能しなかった。こうした被害を再び引き起こさないため、瑕疵担保責任の履行に関する資金を、住宅の売り主から引き離した場所で確保しておくというのが、新法の考え方だ。新法で定められた資力確保措置の手法は供託と保険の2つで、両方を組み合わせることも認める。…売り主らには、供給する新築住宅の戸数に応じた措置を講じていなければ、住宅販売などができなくなる。供託の場合は、供給戸数に応じて設定された金額以上の保証金を、法務局の供託所に供託することが必要になる。…一方の保険に関しては、国土交通大臣が『住宅瑕疵担保責任保険法人』を指定し、この保険法人が保険のための審査と保険業務を一体的に担うことになる。この制度は、住宅保証機構が行っている保証制度がベースになっており、保険料について国交省では『マンション1戸当たり4万〜8万円程度になるのでは』(住宅局住宅生産課)とみている。保険法人には検査機能が求められるため、既存の民間住宅保証会社が参入すると見られる。供託や保険による措置を講じているかどうかは、半年に1度行政に届け出を行わなければならない。…仮に、供給戸数に対応した供託などの措置が講じられないまま基準日から50日が経過した場合には、新築住宅の販売契約の締結などが禁止される。…新法では、違反行為に対する罰則も盛り込まれた。供託などの措置を講じていなかったり、届け出を行っていないにもかかわらず新築住宅の売買契約を結んだ場合には、1年以下の懲役または100 万円以下の罰金が科せられる。見届けの場合や、届け出に虚偽があった場合は、50万円以下の罰金となる。罰金刑は、行為者だけでなく法人も対象となる。違反者には、宅建業法や建設業法に基づく指導も行う。このため、新法制定に併せて、宅建業法と建設業法の一部改正も行う。このほか紛争処理体制の確立として、既存指定住宅紛争処理機関(各都道府県の弁護士会)が保険契約などに関する紛争のあっせん、調整、仲裁を行うことも定めた。」(『建設工業新聞』 2007.03.15)