情勢の特徴 - 2007年3月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「公示地価が全国ベースで上昇に転じた。オフィスビルの賃料上昇やマンション人気を背景に大都市圏には海外マネーも流入。一部では加熱感を指摘する声も出始めている。地方については一部の都市に上昇が及んだ半面、下落に歯止めが掛からない地域もあり、『二極化』の構図が鮮明になっている。全国の市区町村で住宅地の伸び率が最も高かったのは東京都港区の27.2%。…中央、千代田、渋谷の都心3区で06年に販売された分譲マンションの平均価格(1平方メートルあたり)は前年比20%を超す伸び。好立地の物件は人気が高く、住宅地の地価を押し上げている。商業地もオフィス・店舗の需要が旺盛だ。大阪市の中心部では06年のオフィスビル空室率が9年ぶりに5%台に低下。『大阪最後の一等地』とされる大阪駅北側の貨物駅跡地『梅田北ヤード』など再開発も相次ぐ。東京では4月、JR東京駅前に『新丸の内ビルディング』が満室状態で開業する。大型オフィスビルの賃料は好立地を中心に上昇が鮮明。日本不動産研究所などによると、東京都心5区の06年のオフィス賃料は前年比約16%上がり、バブル期の91年以来の高い伸びとなった。地方も中核都市には地価反転の動きが広がってきた。札幌、仙台、福岡など地方ブロックの中心地は伸びが顕著で、商業地の上昇率が3−4割の地点も出た。ただ人口減少地域を中心に地方圏の大半ではなお地価下落が続く。ブロック内の人やモノの流れが中核都市に集まる『ミニ二極化』が強まっている。地価反転を支えるのが海外からの投資マネーの流入。東京証券取引所に上場される不動産投資信託(REIT)の取引の約半数は外国人投資家が占める。第一生命経済研究所によると、バブル期の6大都市の土地の実勢価格は経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を基に算出した理論値の1.7倍。昨年9月末の実勢価格は理論値の約 6割にとどまり、なお上昇余地があると映る。東京、大阪、名古屋、福岡の調査地点の一部で、地価上昇率が40%を超えたことで、『局所バブル』を懸念する声も出てきた。上昇率が全国最高だった東京都渋谷区の表参道ヒルズ周辺では『売り手が不動産業界の常識を超える価格を示しても、買い手がついてくる状態』(大手不動産会社)。都内では1年ほど前に『路線価の3倍』の高値取引が話題になったが、今では『6倍』も目につくという。一部の地価高騰に政府も警戒を強めている。金融庁は昨年末、『監督方針』を改正し、金融機関に不動産向け融資のリスク管理の徹底を要請。REITへの業務改善命令なども増やしている。公示地価を担当した土地鑑定委員会の鎌田薫委員長は地価上昇が『1月1日以降も続いていくとの予測を示すものではない』との談話を好評。地価の先行きに同委が注意喚起するのは極めて異例だ。」(『日本経済新聞』2007.03.23)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、建設ケンサルタント業務などの入札・契約で一層の透明化と競争性の向上を図るため、2007年内に簡易公募型方式を大幅に拡大し、原則、コンサル業務委託での指名を撤廃する方針を固めた。プロポーザルで5000万円以下の業務に適応していた標準型と、価格入札で4000万円以下に適用していた指名競争をともに簡易公募型に移行し、指名競争入札は1000万円以下の小規模な業務に限定する。簡易型の拡大に伴い、低価格応札も想定されることから、07年度上期に低入札価格調査制度を導入し、不良的確業者を排除する。」(『建設通信新聞』 2007.03.19)
●「国土交通省は、同省と自治体発注工事で本年度に始まった入札ボンド制度の試行状況をまとめた。これまでに入札を終えた22件の適用工事のうち6割強の14件が低入札価格調査の対象となり、入札ボンドに期待されていた極端な安値入札の防止効果には疑問符が付く結果となっている。応札者が提出した入札ボンドの種類は、損害保険会社の入札保証保険と公共事業保証会社の契約保証予約がほぼ同数で、金融機関の契約保証予約や入札保証はほとんどなかった。」(『建設工業新聞』2007.03.20)
●「東京都は19日、PFIを導入する『がん・感染症医療センター(仮称)整備運営事業』の事業者を総合評価入札で三菱商事を代表企業とするグループに決めた。入札参加者は同グループに決めた。入札参加者は同グループだけで落札金額は1861億5381万3196円。予定価格は1861億7678万1000円だった。同事業は都立駒込病院(文京区本駒込3)の建物や設備を大規模改修し、高度な医療施設にリニューアルする事業で、改修と維持管理・運営を任せるRO(改修・運営)方式のPFIとなる。(『建設工業新聞』2007.03.20)
●「財務省の有識者会議(伊藤滋座長)は、庁舎や公務員宿舎などを対象とした国有財産の売却・有効活用(移転・再配置)に関する中間とりまとめを公表した。…中間とりまとめでは、23区内の庁舎339件の売却・有効活用案を▽財政健全化への貢献▽国民の利便性と業務の能率性(効率性)の向上▽危機管理能力の強化▽まちづくりと景観▽民間手法の活用―の5原則に沿って検討すると明記。売却収入を建設費に充て、財政負担を軽減するほか、合同庁舎化による来庁者の不便さの解消、耐震性の向上、都市景観との整合性の確保などに配慮しながら、計画期間を約10年とする具体案をまとめるとした。…有識者会議は内閣府が入居する中央合同庁舎4号館と財務省庁舎を優先的な検討対象に位置付けていることがうかがえる。未利用容積を考慮すれば、国土交通省がある中央合同庁舎3号館も視野に入っているといえそうだ。具体案の検討では、皇居に近いために景観性を重視しながら、民間施設との合築、余剰スペースの賃貸などの可能性を探る。都市計画の決定権を持つ都と千代田区との調整も進める。出先機関がある大手町(千代田区)の指針では、東京国税局などが入居する合同庁舎3号館と、気象庁を主な検討対象に挙げた。3号館は敷地面積1.1平方メートル(区画調整後)で、延べ床面積は6万平方メートルあるものの、法定容積率に占める利用率は30%で、10.5万平方メートルの増床が可能だ。敷地面積1.3万平方メートル(同)、延べ床面積3.6万平方メートルの気象庁は法定容積率の利用率が16%にすぎず、14.9万平方メートルが上積みできる。有識者会議は、両庁舎を売却した場合、立地条件や容積率からみても民間需要が高く、売却収入は『3500億円くらい』(伊藤座長)と試算しており、売却に意欲的だ。出先機関がある土地のうち、大手町に次いで立地条件が良い築地(中央区)と若松町(新宿区)は、周辺に散らばる庁舎の集約候補地とする考えを示した。築地の海上保安庁海洋情報部(敷地0.9万平方メートル、容積利用率40%)と、若松町の総務省第2庁舎(同2.4万平方メートル、同54%)は、未利用の容積がそれぞれ3.4万平方メートル、3.5 万平方メートルあるため、高層化の必要性を強調。若松町は、警視庁第8機動隊所有地との一体的な利用を視野に入れ、活用策を検討する考えを示した。東京を管轄する法務局出張所・税務署・労働基準監督署などの出先機関は、築30年以上の庁舎を対象に合築するよう提案。合築の対象には区役所や宿舎も含めるとした。敷地の一部売却も盛り込んだ。省庁別に存在する分室・会議室・研修所・倉庫・書庫などは、極力共有化を進めるとし、延べ床面積が3000平方メートル以下の会議室は『廃止すべきだ』とした。…東京23区外にある公務員宿舎は、容積の利用率が5割未満、または敷地が1000平方メートルであれば『原則廃止する』とし、建物の移転・集約を進め、売却収入を確保するとした。…庁舎や公務員宿舎が仮に売り出されれば、都市開発の新たな種池が生まれる。建て替え工事の受注を期待する業者も多いはずだ。ただ、霞ヶ関は、容積率の移転・引き上げによる高度利用を提案する意見が有識者会議内にある一方で、危機管理やセキュリティーの面だけでなく、官庁街としての品格を重んじ、開発に慎重な意見も多く、具体案は『6月以降に考える』(伊藤座長)と、先送りされる可能性が濃厚だ。…民間事業者が開発したくても手出しができずにいた土地だけに、売却・有効利用に期待する声はあちこちから聞こえる。しかし、有識者会議が中間とりまとめ通りに最終報告を打ち出せるかは不透明なのが現実で、議論の行く末は冷静に見守る必要がありそうだ。」(『建設工業新聞』2007.03.28)
●「知事がからむ官製談合が相次いで発生したのを受けて、昨年12月に全国知事会(会長・麻生渡福岡県知事)がまとめた『公共調達改革に関する指針』に沿った、入札契約制度改革を進める自治体が増えてきた。日刊建設通信新聞社が調べたところ(3月28日時点)、1000万円以上での一般競争入札適用に、11道府県が乗り出すことになることが分かった。また、指名競争入札の原則廃止についても積極的な姿勢を打ち出しており、ペナルティーの強化も含めて、再発防止に向けた制度改革が浮き彫りになっている。…1000万円以上の工事への一般競争入札の適用拡大では、北海道、岩手、山形、福島、宮城(措置済み)、埼玉、石川、大阪、京都、広島、島根の11道府県が対応することを表明した。…指名競争入札の原則廃止についても、積極的な姿勢で取り組んでいる。北海道は、入札制度の適正化に関する連絡会議で検討している。秋田県は08年度から廃止する。千葉県は段階的に(廃止を)拡大するとしている。埼玉、群馬、三重の3県も原則廃止で、滋賀県は09年度に廃止する。鳥取県は既に全廃しており、その他の中国地区各県は検討する意向を明らかにしている。宮崎県は、段階的に廃止する。ペナルティーの強化では、北海道が談合違約金を10%から20%に引き上げる。宮城、福島の両県は既に 20%に引き上げており、山形県は4月から、岩手県は7月から引き上げる予定だ。千葉県も20%に引き上げ、茨城県は現在の15%をさらに引き上げることを検討している。埼玉県は既に20%としている。石川県も20%に引き上げるとともに、とくに悪質なケースはさらに5%加算する。中国地区では広島、岡山、山口の3県が20%に引き上げる。九州地区では、福岡、大分の両県がやはり20%に引き上げる意向を示している。このほか、指名停止期間の延長、総合評価方式の採用拡大にも取り組むという発注者が多くみられる。」(『建設通信新聞』2007.03.30)

労働・福祉

●「ゼネコンの若手社員の多くが転職希望――。ゼネコンの職員で組織する日本建設産業職員労働組合協議会(日建協、宮野一也議長)が16日発表した加盟組合員の生活実態・意識調査結果(概要版)で、そんなショッキングなデータが明らかになった。…調査は、賃金交渉の材料にする目的で組合員の生活時間や家計の実態、仕事や建設産業に対する意識を聞くもので、3年に1度行っている。今回は加盟組合員の15%に当たる約6000 人を対象に06年9月に実施した。『今の会社で働きたいか』という質問に対し、7割は定年まで働くことを希望していたが、約3割が転職を考えていると答えた。若手が会社を突然辞めるケースが増えていることから、30歳未満の組合員に絞って集計したところ、4割以上が『転職を考えている』とした。転職を考えている組合員に再就職について尋ねると、『建設産業内での転職』との回答が2割弱にとどまる一方、『他産業へ就職する』との回答は5割を超えた。自由回答でその理由を聞くと、会社や建設産業に対する不信感や、将来への不安が多く挙がった。日建協は『以前なら蓄積してきた技術や知識を生かし同じ産業内での移動を考える職員が多かったが、長時間労働や建設産業に対する社会の評価の低さを嫌う若手の意識が端的に出た』と分析している。現在の仕事と生活に関する満足感では、6割以上が『満足していない』と回答。満足していない理由として、▽収入の低さ▽自分の時間が持てない▽仕事そのもの―が上位に並んだ。全産業を対象とした連合の調査では、半数以上が『満足』と回答していることから、日建協は『建設業の労働環境に、満足感を低下させる要因がある』とみている。労働時間は、他産業の平均よりも1日当たり2時間30分ほど多く、長時間労働が生活時間と睡眠時間にしわ寄せされていることも分かった。…日建協は、まずは過剰な労働時間の削減に取り組むことが必要だと強調している。」(『建設工業新聞』2007.03.19)
●「国土交通省は、土木関係設計業務委託などの積算に使う2007年度の技術者単価(基準日額)を決めた。4業務のうち設計業務が7職種平均で前年度比2.4%減と唯一減少し、測量業務が5職種平均で4.3%増、航空関係が4職種平均で6.7%増、地質業務が3職種平均で 4.7%増となった。国交省は…『測量、航空、地質は、都市再開発など景気回復による民需拡大の影響から増加したが、民需の少ない設計は減少した』との見解を示している。…技術者単価は、所定労働時間内8時間当たりの@基本給相当額A諸手当(役職、資格、通勤、住宅、家族、その他)B賞与相当額C事業主負担額(退職積立金、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険、介護保険、児童手当)―で構成する。時間外や休日、深夜労働の割増賃金、各職種の通常作業条件か作業内容超過労働手当は単価に含まれていない。」(『建設通信新聞』2007.03.28)
●「国土交通省と農林水産省は27日、2007年度の公共工事設計労務単価(基準額)を公表した。51職種の平均単価は前年度比1.6%減の1万6979円で、これまでの50職種の平均単価に換算すると、前年度比0.6%減の1万7154円となった。10年連続してマイナスとなったものの、下げ幅は2年連続ゼロ%台となり、下落率は縮小傾向にある。50職種の平均単価は97年度の2万3295円をピークに下落を続けていたが、07年度は潜かん工、トンネル作業員など14職種が前年度を上回るなど、一部の職種で回復基調がみられる。都道府県別では、神奈川、福井など8府県の平均単価が前年度比で増加した。…平均単価を地方ブロック別にみると、すべての地域で前年度比マイナスとなっているものの、関東や北陸、中部、近畿、中国、九州の縮小率は0.4−0.7とゼロ%台の小幅にとどまった。同省は『主に地方部での下げ幅が大きく、地域間で差が出ている』としている。都道府県別でみると、神奈川、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の8府県で平均単価が前年度を上回っている。設計労務単価は、毎年10月の定期調査に基づいて設定している。単価の内訳は、@基本給相当額A基準内手当B臨時給与(賞与など)C実物給与(食事など)――で、時間外労働の割増賃金や現場管理費、一般管理費などの諸経費は含まれない。…06年10月に実施した調査の有効工事件数は1万2241件、有効標本数は12万3815人だった。」(『建設通信新聞』2007.03.28)
●総務省が30日発表した労働力調査によると、2月の完全失業率(季節調整値)は前月と同じ4.0%だった。2004年 3月に5%を切って以来、3年間4%台が続いている。助成の失業率は3ヵ月続けて悪化した。会社の都合による非自発的離職は3年7ヵ月ぶりに増加した。完全失業者数は270万人で、前年同月比7万人の減少だった。男女別の失業率はともに4.0%。前月比では男性が0.1ポイント低下、女性は0.2ポイント上昇した。年齢別では15−24歳の失業率が最も高く、男性9.4%(前年同月比0.1ポイント低下)、女性8.1%(同1.8ポイント上昇)。若年女性の失業率が最も悪化した。非自発的離職は男性で前年同月比4万人減る一方、女性で6万人増加し、差し引き2万人増えた。就業者数は、教育・学習支援授業(16万人減)、建設業(10万人減)、製造業(9万人減)、卸小売業(6万人減)などで減った。また同日、厚生労働省が発表した2月の有効求人倍率(季節調整値)は1.05倍で、前月を0.01ポイント下回った。正社員有効求人倍率は前年同月と同じ0.67倍だった。雇用の先行指標とされる新規求人数は前年同月比4.4%減った。都道府県別では引き続き、愛知が最高(1.94倍)、沖縄が最低(0.40倍)で、格差が縮まっていない。(『しんぶん赤旗』 2007.03.31より抜粋。)

建設産業・経営

●「大阪府建団連(北浦年一会長)が実施する『建設業務労働者就業機会確保事業』が16日付けで厚生労働省から事業許可を受けた。みやぎ建設総合センターに次いで全国2例目。大阪府建団連と京都大学の共同研究として進めていた。当面、建団連傘下の5組合27社(1次下請け)でスタート。同日、北浦会長と古阪修三京都大学大学院工学研究科助教授が大阪市中央区の建団連会館で会見し、就業機会確保事業の事業許可に至る経緯などを紹介した。新しく設ける組織(5点セット)のうち就業機会確保事業の実務を行う『紹介賃貸室』は建団連内に置く。約1万人の登録を目指す『関西建設技能会』は、6月に設立総会を開く。技能者会加入の登竜門となる『職人学校』は、夜間や土日に開校。4月早々の開校を予定。さらに就業機会確保事業や技能者会のあり方を監視・指導・支援する『第三者機関』については、学識者、弁護士、マスコミなどの関係者に大阪府建団連が委嘱する。北浦会長は『課題は多いがまず一歩を踏み出すことが大事だ。建設生産のあり方を根底から改革したい。国土交通省も支援しており、何としても軌道に乗せたい』、古阪助教授は『5点セットが軌道に乗れば、連携直用組合も現実味を帯びてくる。職人の処遇改善は建設品質の大前提で、発注者や元請けにも理解を得られると確信する』と話す。就業機会確保事業の許可事業所は次の通り。(近畿躯体)吉岡建設▽北口工務店▽オカモト・コンストラクション・システム▽山岡建設▽ヤマシタ▽石田工務店 ▽ハシモトアキ▽吉川組▽山本組▽岸本建設▽翁有建設(関西鉄筋)田村工業▽東亜圧接▽田浦▽辻本建設▽中鉄(府塗装)鉄電塗装▽竹林塗装工業(近畿外壁)日興工業所▽松美化建工業(府左官)亀井組▽田村左官工業▽浪速組▽大栄左官工業所▽山本工業▽南晃工業▽木下工業。」(『建設工業新聞』 2007.03.19)
●「名古屋地検特捜部は20日、大林組名古屋支店元顧問、柴田政宏容疑者(70)ら5人と大林組などゼネコン5社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で起訴した。ゼネコンが同法違反で起訴されたのは初めて。公正取引委員会は同日、起訴に先立ち、柴田容疑者らを同法違反容疑で追加告発した。5被告は起訴事実をほぼ認めているという。起訴されたのは以下の通り。大林組、鹿島、清水建設、奥村組、前田建設工業の5社。大林組名古屋支店元顧問、柴田政宏(70)、鹿島同支店次長、浜島哲郎(57)、清水建設同支店元営業部長、河島嘉(61)、奥村組同支店元次長、後藤邦夫(63)、前田建設工業中部支店元副支店長、柴田幸男(59)の5被告。名古屋市地下鉄工事を巡る談合事件はゼネコンの担当者5人が20日起訴され、公正取引委員会の調査は事実上終了した。公取委が当初目指していた法人トップの罪を問う『三罰規定』の初適用は見送りに。課徴金減免制度に基づいて“自首”したハザマは告発対象から外れたが、制度の運用を巡っては課題も浮き彫りになった。今回の調べで、柴田被告が2006年2月の地下鉄桜通線延伸工事の入札直前、大林組副社長に談合情報を伝えていたことが判明。その際、同副社長が『談合をやめろ』という具体的な指示を出さず、05年末の談合決別宣言前に決めた枠組みまで否定しなかったため、結果的に談合が継続していた事実が明らかになった。公取委などは一連の経緯を『違反行為を知りながら是正措置をとらなかった』行為に当たるとみて、複数の法人トップを対象に三罰規定の適用を検討。しかし供述頼みで、違反行為を本社側が認識し、談合継続を指示した直接的な証拠を得られなかったことから、適用は困難と判断した。公取委は同日、課徴金減免制度に基づき自主申告したハザマの告発免除を公表した。公取委の指針では強制調査前に違反行為を申し出た企業1社のみ告発を免除すると定めており同社は罰金や課徴金も免れる。公取委は『ハザマから公表の要請があった』と説明。告発を公共事業の指名停止の条件にしている自治体も多いことから、関係者は『告発免除が公になることで指名停止の対象とならないことを早くアピールしたかったのでは』と指摘する。ところがハザマの申告は報道などで談合疑惑が明るみになった昨年12月以降とみられることが判明。同制度は談合情報を集めるのが狙いで、本来の趣旨と異なる形で利用されたことになり、制度上の問題も浮かび上がった形だ。」(『日本経済新聞』2007.03.21)
●「大成建設は23日、2007年度から3ヵ年の中期経営計画をまとめた。06年度までの現行計画は連結と単体の売上総利益を除き数値目標を達成しているが、次期計画では受注、売上高ともに06年度実績と同じか下回る目標とし、売上総利益、経常利益を高める減収増益型の目標を掲げた。基本戦略として、@『実りなき繁忙からの脱却』を目指した利益体質の強化A提案競争を見据えた受注体制の確立B開発・エンジニアリングなどの建設周辺事業での収益源確保の3つを挙げている。経営数値目標では、連結受注高は06年業績と同じ目標としたが、単体受注、連結売上高ともに実績よりも低い設定とした。一方で利益面は計上ベースで連単ともに0.6ポイントの利益率向上を目指す。経営基本方針として『魅力ある大成建設グループの構築』をスローガンに、グループ経営体制の強化を打ち出し、内部統制の仕組みを構築してリスク管理体制を確立する。収益源として、開発やエンジニアリングといった高付加価値事業を新たな収益源として位置づけ、とくに開発事業は、3年間で1800億円の新規投資を行う。事業別展開では、国内土木は利益率の高い分野や地域に軸を移すほか、調達単価の情報を共有してコスト低減を図る。建築でも大成ユーレックを含めたグループ全体で調達能力を高め、スケールメリットを生かす。海外は、国や地域の絞り込みとノウハウやネットワークを生かした技術・調達力の向上と、プロジェクトマネージャーの確保・育成を強める。組織対応として、地域特性、市場規模に応じた流動的な人材配置を進める。また4月1日付で監査部を社長室所管から社長直轄部に変更し、内部統制システムの整備・運用を進めるほか、企業の業務執行の健全化、効率化を目指す。」(『建設通信新聞』2007.03.26)

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