情勢の特徴 - 2007年4月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「建設経済研究所は24日、06、07年度の建設投資見通しを発表した。07年度投資の対前年度比伸び率は1月の前回予測と同じマイナス0.7%としており、投資額は53兆2800億円と見込んでいる。06年度の建設投資は前回(1月)発表のマイナス予測から上方修正し、前年度を0.4%上回る53兆6600億円になったとしている。建設投資額の増加は2年連続となった。07年度の建設投資のうち、政府部門は前年度比 5.7%減の17兆6200億円、民間住宅部門は同1.3%増の19兆6000億円、民間非住宅部門は同2.8%増の16兆600億円と見込んでいる。民間非住宅部門は、原子力発電所関連投資など土木工事が好調な上、建築部門も増加基調にあり、4年連続の増加を予測する。ただ、伸び率は前回予測のプラス 3.6%からプラス2.8%と縮小した。07年度の住宅着工戸数は同0.7%減の128.7万戸と予想。投資額の増加とは逆に、戸数は減少となりそうだ。同研究所は『広さや材質など品質の向上が戸数減・投資額増という現象を生んでいる』と分析している。07年度の住宅着工戸数の内訳は、持ち家が36.0万戸(同マイナス0.3%)、貸家が54.1万戸(同マイナス0.8%)、分譲が37.8万戸(同マイナス1.1%)と予測している。(『建設工業新聞』 2007.04.25)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は下請業者の表彰制度を創設した。元請業者が優良工事局長表彰や事務所長表彰を受けた工事の下請業者を対象に、1工事当たり最大3者を目安に業者または専任技術者を表彰する。表彰するだけでなく、元請業者が優良表彰を受けた下請業者を入れた施工体制を組んで応札している場合には、総合評価方式で加点対象にする。…各地方整備局に官房技術調査課長名の通達を3月30日付で出した。表彰の対象となるのは、下請負工事代金が2500万円以上の1次下請業者。1次下請業者がマネジメントを行う場合は、2次下請業者が対象となる。…総合評価方式で加点するのは、優良表彰を受けた下請業者を活用することが明らかになっている場合に限られる。表彰された下請業者が、元請業者として参加する入札でも、総合評価方式での加点対象になる。」(『建設工業新聞』2007.04.16)
●「政府出資法人などの公的機関が保有資産の売却を加速している。年金と健康保険の保険料でつくった保養所などを管理する年金・健康保険福祉施設整理機構は、2007年度の売却件数を前年度比7割増の約100件に増やす。都市再生機構、日本郵政公社は土地・施設の売却を計画より1-3年前倒しする。景気回復で不動産の買い手が増えたことを追い風に、『政府のリストラ』を急ぐ。…年金・健康保険福祉施設整理機構は、…民間企業の購入希望者が強いため、健康福祉センターのサンピア松本(松本市)などの売却を進める。当初は05年10月に社会保険庁から引き継いだ約300施設を10年9月までに売却し解散する計画だった。07年度中に約100施設を売却できれば半分に減るため、解散時期の前倒しも検討する。都市再生機構は山林や原野を宅地にする事業が不振で、 04年7月の発足時に7300億円の繰越欠損金を抱えていた。リストラとして約5700ヘクタールの事業用地のうち2000ヘクタールを08年度末までに処分する計画を進めていた。民間の開発会社が続々と書いてとして名乗りを上げたため、07年度末に前倒しする。日本郵政公社も郵便貯金や簡易保険の関連施設の売却を前倒しする。今年10月の民営化後5年以内に売却するよう義務付けられている約80の施設を、2-3年で売却する。売却益がでた場合、年金・健保整理機構は国庫(年金特別会計)に納める。郵政公社は事業に回す予定。都市再生機構は繰越欠損金の穴埋めに充てる。」(『日本経済新聞』 2007.04.17)
●「国土交通省は、11日に開かれた中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)のワーキンググループ経営事項審査改正専門部会(東海幹夫委員長)の第2回会合で、経営事項審査(経審)の見直し案を提示した。完工高に偏りがちという指摘のある従来の評価方法を改め、利益を重視した内容に転換する内容だ。併せて、企業の自由な活動を促す観点から、経審・技術者制度を柔軟にして、活用しやすいグループ経審制度を目指す方向性も打ち出した。改正案は業界再編加速への引き金となる可能性もあり、完工高ウエートの引き下げには大手企業から、グループ経審制度認定要件の緩和には中小企業からの反対が見込まれる。順調にいけば、今夏の中建審総会を経て、08年度から新経審が適用されることになりそうだ。…今回の改正案では、従来の完工高重視から利益重視という政策の大幅転換が具体的に示された。X1(工事種類別年間平均完工高)評点のウエートを現行の0.35から0.25に引き下げ、逆にX2(自己資本額および職員数)評点は0.1から0.15に引き上げるという内容だ。…同省では完工高評価の上限を、現行の2000億円から1000 億円程度に抑える方針で、1000億円以上の売上高があっても、評価は頭打ちとなりそうだX2評点も、これまで評価対象だった職員数を外し、自己資本や利益、付加価値額などを評価する内容に改めることにしている。…大手ゼネコンは『完工高は発注者が技術力や信用力を評価した尺度だ』として、同省案に反対する意向だ。…今回の経審改正議論の目玉の1つに、グループ経審制度の改善がある。現行のグループ経審制度の改善がある。現行のグループ経審は適用要件が厳しすぎ、業界再編の妨げになっているという指摘がある。改正案ではグループ内再編を評価するように改めるとともに、グループ内での技術者の出向を認めるなど、適用要件の大幅な緩和を提案している。ゼネコン各社が行う再編には、合併、グループ化・子会社化、持ち株会社化による経営統合、分社によるグループ化・持ち株会社化などがある。吸収される企業(消滅会社)の完工高や常時雇用の技術者を存続会社が引き継ぐ『合併』については、現行の経審制度でも十分に評価されている。ところが、他の再編類型は、企業結合による経営基盤の強化を目的とした再編を評価するだけで、グループ内再編を認めないなど、認定要件が厳しすぎたため適用事例がほとんどなかった。グループ内の会社間での技術者の出向を認めないことも、ネックの1つだった。グループ経審制度の高すぎるハードルが、業界再編を妨げていた格好だ。国交省が示した改正案には、▽グループない再編を認める▽グループ全体の規模を表す評価指標を代表企業に集約せず数社に案分▽技術者の出向を認める―などの方向性が示されている。厳しすぎる認定要件の大幅な緩和であり、大手企業が経営基盤・競争力の強化を目的とした企業再編の加速につながる可能性が高い。11日に開かれた専門部会では『大手に有利な改正だ』という批判意見が寄せられたほか、『地方の中小業者の疲弊を加速させる』といった声も聞こえている。」(『建設工業新聞』2007.04.18)
●「国土交通省は、既存の公共施設の運営・管理を一括して長期間委託するPFI事業の導入を検討する。民間企業の事業参加へのインセンティブを高める狙いから、将来の施設更新までを含めた形でのPFI事業化を想定している。…対象とする事業分野は未定だが、公営住宅や下水道事業など料金収入が見込める事業を視野に入れており、検討組織でケーススタディーなどを交えながら議論を進めていく。…現行でも指定管理者制度を活用して公共施設の運営を民間に委託することは可能だが、委託期間が3年程度と短期間にとどまり、中長期的なライフサイクルコストの低減などのインセンティブは働きにくいのが現状。国交省は、民間事業者が参画するメリットを高めることや、施設の更新のタイミングを最適化するといった狙いから、『更新までを含めて一括委託することも視野に入れる必要がある』(総合政策局)としている。ただ、委託後に既存施設に欠陥や瑕疵(かし)が見つかる可能性もあるため、そうした場合の修繕費用負担をルール化するなど適切なリスク分担が検討課題として上がっている。対象施設を建設した際に補助制度を活用しているケースなど、建設時の財源による制約といった観点からも導入上の課題があるかどうか精査する必要があるとしている。このほか、従来の公共事業との税制面の格差を是正するための特例措置拡充や、発注手続きの簡素化などについても中期的な課題として議論を進める。」(『建設工業新聞』2007.04.24)
●「関東地方整備局が所管する土木コンサルタント等業務の06年度入札状況がまとまった。プロポーザル方式、随意契約を除く競争入札による業務のうち、落札率70%未満の低価格入札発生率は53.6%を記録し、過去最高を更新した。本年度は新たな枠組みを取り入れながら低入札価格調査を運用するが、工事と同様、著しい低価格の応札に適用する“特別重点調査”のような措置を早期に講じることが待たれる。」(『建設工業新聞』 2007.04.26)

労働・福祉

●厚生労働省が27日発表した3月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.03倍で、前月から0.02ポイント低下した。雇用の先行指標とされる新規求人数は、前年同月比で4.6%減少。同省は「新卒者採用や非正規雇用の正社員転換が増えた影響で、採用が控えられた可能性がある」(職業安定局)としている。正社員の有効求人倍率は0.63倍で前年同月を0.01ポイント下回った。マイナスは2004年11月の調査開始以来初めてだ。また、06年度平均の有効求人倍率は1.06倍で、前年度を0.08ポイント上回った。都道府県別では最も高いのが愛知県の2.02倍、最低は青森、沖縄両県の0.43倍で、5倍近くの格差がある。…一方、総務省が同日発表した労働力調査によると、3月の完全失業率(季節調整値)は4.0%で5ヵ月連続の前月比横ばいとなった。完全失業者数は前年同月比8万人減の281万人。就業者数は同43万人増の6351万人だった。06年度平均の完全失業率は4.1%で、前年度比0.2ポイント改善した。(『しんぶん赤旗』2007.04.28より抜粋。)

建設産業・経営

●「建設業からの農業進出が増加している。農林水産省のまとめによると、今年3月1日時点の建設業からの進出数は76法人で、この半年間で新たに17法人が参入した。全産業の増加数(33法人)の半分強を建設業が占めたことになる。これまでの参入事例をみると、通年での雇用確保を図るためトマト栽培を始めた北海道の土木・建築業者や、緑化に用いる在来牧草類の自社生産を目的に進出した緑化工事会社などバリエーションも広がりつつある。農水省は、本年度から農業への企業参入支援総合対策を大幅に拡充しており、『参入をさらに加速させたい』(経営局)としている。他産業からの農業参入は、リース方式による農地の取得が解禁されたことを契機に進んできた。農業生産法人を除いた他産業からの進出数は206法人で、業種別では建設業が最も多い。建設業からの進出法人数の推移をみると、05年5月には37社だったのが、06年3月には57社、今年3月には76法人となっており、年間ほぼ20法人程度のペースで増加している。農水省は10年度までに参入法人数を500法人に増やす目標を掲げている。このため、本年度に農地情報システムを構築するほか、進出を目指す企業への個別相談、施設整備や農業資機材リースへの支援などを行っていく。具体的な事例をみると、北海道の北部に位置する下川町では、除雪作業で雇用が確保できている冬季に比べて、夏季の雇用確保が難しいことから、地場の建設業者3社が共同で農業に参入。町の特産品であるトマトジュースの売れ行きが好調なため、増産用のトマトを作付けしている。のり面緑化を得意とする福島県の第一緑化工業は、生態系への配慮から緑化材料が在来種にシフトしている点に着目し、在来種の自社生産に乗り出した。将来的には販売も視野に入れているという。このほかにも、介護リフォームを手掛ける建設業者が、健康的な食事の提供も行っていこうと野菜のミネラル栽培に取り組んでいるケースもある。受け入れ側の市町村の体制も整ってきている。リース方式を活用するには、市町村が参入可能区域を位置付ける必要があり、位置付け済み自治体数は06年5月の段階では136団体だったが、同12月末には600団体に増えている。」(『建設工業新聞』2007.04.18)
●「全国建設業協会(全建、前田靖治会長)は24日、国土交通省が検討を進めている建設業者の経営事項審査(経審)の見直し案について、大手企業が地域ごとに子会社を設ける『地域分社化』を促すようなグループ経審の適用条件緩和に反対する方針を決議し、改正議論を新丁に進めるよう国土交通省に申し入れた。99〜00年の経審見直し議論で同様のテーマが持ち上がった際にも全建は組織を挙げて反対論を展開した経緯があり、24 日の理事会で、現在もその立場に変わりがないことを再確認した。評価項目の見直しや虚偽申請防止の徹底については賛成の立場をとることも確認した。」(『建設工業新聞』2007.04.25)
●「東京・六本木ヒルズ『森タワー』で4日、エレベーター機械室が燃えた火災で、森ビルなどは26日、ワイヤロープの一部が破断し、周囲の部品に接触、火花が出たのが原因だったと発表した。事故機を製造した日本オーチス・エレベータ(東京・中央)は緊急点検を実施。その結果、同様の破断など安全基準を満たさないエレベーターが11基中8基で判明した。11基すべてのロープを交換する方針。日本オーチスから報告を受けた国土交通省は全国の自治他に対し、同社製約5万6千基の緊急点検を指示した。森タワー内については同社以外のエレベーター31基も点検対象とした。…日本オーチスによると、エレベーター火災は破断したストランドがロープの外れ止めに接触して火花が上がり、エレベーター下部に付着したグリスに引火、発煙したため起こった。この火災を受け、日本オーチスがヒルズ内で実施した緊急点検の結果、事故機を含む2基でストランドが破断していた。ストランドの破断は『普通に点検していればあり得ない事態』(国交省建築指導課)で、ここ数年、破断のトラブルは全国で報告されていない。そのほか、6基で素線切れなどの損傷が発見され、ストランド破断の2基と合わせ計8基が建築基準法に基づく日本工業規格(JIS)の安全基準外だった。安全基準内のエレベーター2基でも素線切れが確認された。」(『日本経済新聞』2007.04.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「住生活基本法に基づく都道府県の住生活基本計画がほぼ出そろった。47都道府県中、香川県を除いて策定作業が完了、国土交通省との協議事項となっていた公営住宅の供給量も大部分が固まった。06〜15年度の10ヵ年の間に、46都道府県が供給する公営住宅の合計は約112万戸強(既存ストック活用分も含む)。老朽化した公営住宅の建て替えや、民間住宅の買い取り・借り上げなどで対応する。最も多い供給目標を設定したのは大阪府で、2万戸を建て替えるとしている。…香川県を除いた各都道府県の供給目標量の合計は112万703戸。供給量が5万戸を超えるのは、多い順に、▽大阪府(12万6000戸)▽東京都(11万3000戸)▽北海道(9万9000戸)▽愛知県(6万5000戸)▽兵庫県(6万2000戸)▽神奈川県(5万6000戸)▽福岡県(5万 2000戸)―の7都道府県となっている。大阪府は、2万戸の建て替え事業に加え、1万2500個の耐震改修、1万2000戸の高齢者向け改善事業などに取り組む。東京都は新規建設や建て替え既存公営住宅の空き家募集などで目標達成を目指す。北海道では、新規建設と買い取り・借り上げで8万2500戸を確保するほか、1万6500戸を建て替えて新たに供給する計画だ。このほかでは、兵庫県が、10ヵ年の前半・後半の5ヵ年にそれぞれ7500戸を建て替える目標を設定。福岡県は1万戸の建て替えを計画している。」(『建設工業新聞』2007.04.24)

その他

●「WTO(世界貿易機関)政府調達委員会が16日、スイス・ジュネーブのWTO本部で始まった。期間は20日までの5 日間。日本からは外務、国土交通両省の代表者などが出席し、政府調達協定適用基準額の見直しなどについて議論を再開した。2月に開かれた委員会では、主にEU(欧州連合)と米国が日本に対し、都道府県や政令市、独立行政法人などの工事の適用基準額引き下げを要求したが、日本側が拒否したため、議論は平行線のままだった。今回の議論でも欧米からの引き下げ要求に対して日本側は『前回と同様の対応をする』(国土交通省総合政策局建設業課)としており、基準額引き下げについての最終結論は、6月の次回会合に持ち越される見通しだ。…政府調達協定は、日本が協定を発効した1996年1月から、これまで改定されてなく、日本の工事の適用基準額(2006、07年度)は、国が7億2000万円(450万SDR=国際通貨単位)、都道府県、政令市、独立行政法人などが 24億1000万円(1500万SDR)。EU、米国、カナダは、日本の適用基準額の3分の1となる8億円(500万SDR)と大きな開きがあるため、前回の会合では欧米諸国から強い引き下げ要求を受けていた。」(『建設通信新聞』2007.04.17)