情勢の特徴 - 2007年5月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「内閣府が17日発表した1−3月期の国内総生産(GDP)の速報値は物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比 0.6%増、年率換算で2.4%増となった。設備投資が前期に比べて減ったものの個人消費と輸出が堅調に伸び、内外需がそろって成長率を押し上げた。プラス成長は9・4半期連続で、日本経済は1%半ばから後半とされる潜在成長率を上回る安定成長を続けている。」(『日本経済新聞』2007.05.17)
●「公正取引委員会は、28日に開かれた自民党の公共工事低入札緊急対策会議に、公共工事の不当廉売調査の概況を報告し、国土交通省、都道府県などから寄せられた2200件(約1100社)の事案のうち、10社程度を抽出して事業者などへの事情聴取や現地調査を交えた重点調査を実施していることを明らかにした。公取委は、重点調査を早期に終え、独占禁止法に違反した場合には『現勢に対処する』とし、6月中に不当廉売への対応方針を示すことを明言した。公共工事では過去に不当廉売による警告が2件あるが、行政処分(排除措置命令)に至ったケースはなく、調査結果を踏まえた公取委の対応に注目が集まる。公取委は、国や都道府県などに、2005年度と06年度上期の入札で低入札価格調査の対象となった工事の情報提供を依頼し、集まった情報の中から、低価格入札で複数の物件を受注している企業の約70件に対し、06年12月に調査票を送付し、受注の経緯や損益情報などについて報告を求めていた。回収した調査票のうち、落札率の低さや低価格入札の頻度や工事規模、赤字受注の程度などを勘案し、重点調査を実施する10社程度を抽出して、2月から発注者や周辺事業者からのヒアリングも交え、不当廉売の影響についての調査を進めている。約10社に対する重点調査の結果は近くまとまる見通し。」(『建設通信新聞』2007.05.29)

行政・公共事業・民営化

●「高架構造から地下構造への都市計画変更手続きが4月に完了した『東京外かく環状道路(外環道)都内区間』(関越道〜東名高速、延長約16キロ)の事業化に向けた動きが本格化する。国土交通省は、本年度中に国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)を開き、同区間を現行の高速道路整備計画(9342キロ)に追加する方針を固めた。整備計画への追加が決まり、事業主体がはっきりすれば、早期着工が現実味を帯びる。同区間の建設費は1兆6000億円とも試算されており、事業家の動向に建設業界も注目している。」(『建設工業新聞』2007.05.23)
●「公正取引委員会は30日、06年度の独占禁止法違反事件の処理状況を発表した。13件の事件で延べ73事業者に対して法的措置を実施したほか、国土交通省に対して官製談合防止法を適用して改善要求を行った。刑事告発したのは『し尿処理施設建設工事』『名古屋市営地下鉄に関する土木工事』の2件の入札談合事件。課徴金は述べ158事業者に対する約93億円の納付が確定した。法的措置をとった13件のうち6件が入札談合だった。このほか価格カルテルは3件、不公正な取引は4件だった。法的措置は前年度(19件)よりも6件の減少。入札談合は前年度の13件から半減している。06年1月に施行された改正独禁法で創設された課徴金減免制度では、06年度に79件の報告があったという。改正法施行後の累計では105件になる。 105件中6件で延べ16事業者が減免制度を適用されたことが公表された。課徴金の引き上げ対象事業者はなかった。」(『建設工業新聞』 2007.05.31)

労働・福祉

●「厚生労働省がまとめた06年の労働災害状況によると、建設業での労働災害による死亡者数は508人で、前年よりも 11(2.2%)増加した。全産業での死亡者数の34.5%を占め、業種別で最も多かった。死亡災害の原因では、全体の3分の2が『墜落・転落』となっている。一度に3人以上がけがなどをした重大災害は120件発生し、死傷者数は543人(死亡者数45人)だった。重大災害も、前年より件数で27件、死傷者数で124人、死亡者数で24人増えている。厚労省は、7月1日〜7日の全国安全週間などを通じて安全管理活動の徹底を図っていく方針だ。建設業の死亡災害状況をみると、墜落・転落による死亡者数が190人と最も多かった。このほかでは、『道路での交通事故』(63人)、『崩壊・倒壊』(50人)、『はさまれ巻き込まれ』(45人)、『激突され』(39人)、『飛来落下』(35人)などが多かった。重大災害の原因は、交通事故が74件と半数以上を占め、中毒・薬傷(14件)、倒壊(10件)などが続いている。全産業での死亡者数は、前年比2.8%減の1472人と過去最小の水準で、初めて1500人を下回った。一方で重大災害は前年比20.0%増の318県と過去最多となった。」(『建設工業新聞』2007.05.16)
●「国土交通省は、建設産業の将来を担う若手の人材育成を強化するため、各都道府県の工業高校や農業高校が地元の建設企業と連携して行う実践的な教育に対する支援を検討している。モデル校を選び、▽業界のニーズを踏まえた人材育成プログラムの開発▽実践的な技能を向上させるための指導の実施▽実践的な技能・技術に応じた副教材の作成▽教育者への研修―などを文部科学省とともに支援する考えで、必要経費を2008年度予算概算要求に盛り込む。高校卒業後、建設業関係の仕事に就く卒業生の数は、05年度が約1万4000人(うち工業科約7000人)、06年度が約1万3000 人(うち工業科7000人)と将来の建設産業を担う大きな役割を果たしている。しかし、高校での教育内容と実際の仕事内容にギャップがあり、建設業に就職しても辞めていく若年労働者も少なくない。…このため、国交省は、文科省とともに工業高校や農業高校が実践的な教育を実施できるように、地元の建設企業との連携を後押しする。支援策の予算額や内容は調整中だが、国交省の岡哲生総合政策局建設振興課労働資材対策室長は『地域によっては、建設企業がボランティアで高校生に教えているところもある。技能継承は建設産業全体の課題であり、国の支援を望む声も多いので、相当の額を確保したい』と意欲的な姿勢を示した。」(『建設通信新聞』2007.05.25)
●総務省が29日発表した労働力調査によると、4月の完全失業率(季節調整値)は3.8%となり、前月に比べ0.2ポイント低下した。4%を下回ったのは1998年3月以来9年1ヵ月ぶり。失業率は低下したもののパート、アルバイト、派遣など非正規労働者は拡大している。失業率を年齢別でみると、15−24歳の男性(8.0%)と女性(6.9%)が最も高くなっている。それぞれ前年同月比で低下はしたものの、25−34歳の女性では同0.3ポイント増の5.4%となった。若者の失業率は平均値を上回る高水準で推移している。完全失業者数は前年同月比で16万人減の268万人で、このうちリストラなど企業側の都合による失業は11万人減、就労者地震の都合による失業も6万人減った。就業者数は同76万人増の6444万人だった。…雇用の先行指標とされる新規求人数は前年同月比で3.3%減少した。主要産業別では、医療・福祉(8.2%増)、教育・学習支援(8.2%増)などがプラスとなった半面、建設業(9.1%減)、情報通信業(8.8%減)、製造業(8.6%減)などが不振だった。(『しんぶん赤旗』 2007.05.30より抜粋)

建設産業・経営

●「国土交通省は、2006年度の専門工事業下請取引実態調査結果をまとめた。それによると、いわゆる『赤伝票』で現場経費などを出来高払金から控除されたことが『ある』と回答した企業の割合は69.7%だった。見積書が未提出で実質的に『指し値』だったものを含む、いわゆる指し値が『あった』と回答した割合は21.3%で、前回の調査に比べて9.3ポイント下回り、改善の傾向にあることがわかった。」(『建設通信新聞』 2007.05.16)
● 「建設大手4社は15日、2007年3月期決算を発表した。単体は、清水建設の2桁増を始め4社とも増収だったが、3社が減益で、増益は大成建設だけにとどまった。資材、労務費の高騰は、『内部努力による原価低減の限界を超えている』(平田光宏鹿島専務執行役員企画本部長)ことから完成工事総利益(工事粗利)も下落が続いており、次期、次次期に影響が懸念される。次期は3社が減収を予想した上、4社とも受注、工事粗利が下回り、2桁の減益に転じる予想を立てている。先行きの業績の指標となる受注高は、3社が1桁増、大林組は前期に海外の大型工事を受注した反動により、減らした。国内の受注は、大成が土木を官民とも減らし、民間建築は3.5%増の8672億円にとどまった。鹿島は官公庁の土木が横ばい、民間建築は1.3%増の8643億円にとどまった。清水は官公庁の土木を42.1%減らし541億円としたものの、民間土木が16.5%増の1104億円を計上、建築は民間が1兆710億円で10.5%増えた。大林は官公庁の土木が56.7%減の481億円だったものの民間土木は6.8%増の859億円、建築は民間が2.5%増の8679億円、官公庁は 57.5%増の1078億円だった。海外受注は、大成が土木で178.4%増の2098億円、建築で23.1%増の1085億円を、鹿島は土木が 83.6%増の1617億円、清水は土木が10.7%減の228億円としたものの、建築が39.5%増の1195億円、大林は土木が46.9%減の671 億円、建築が52.5%減の176億円を計上した。受注が売り上げの伸びを上回ったのは大成と清水で、次期繰り越しは、大成が1兆7068億円で、 0.4%増、鹿島が1兆5554億円で3.5%減、清水が1兆7517億円で4.0%増、大林が1兆6648億円で3.4%減にとどまった。4社とも増収だったものの、工事粗利率は清水が土木で前期を4.0ポイント上回ったほかは、軒並み前期を下回った。9月中間決算で予想した通期の完成工事総利益(工事粗利)率は、大成が6.6%、鹿島が7.9%、清水が6.7%、大林が7.0%だった。一方、販管費は、大成が626億円で販管比率を0.5ポイント下げて4.2%に、鹿島は653億円で0.3ポイント下げて4.6%、清水は575億円で0.6ポイント下げて4.0%、大林は589億円で0.3ポイント下げて4.5%とし、各社増収にあいまって販管比率をた。次期は、大林がこれまで『工期2年以上で請負金50億円以上の工事』に工事進行基準を適用してきた工事進行基準を、2007年度の新規着工工事から『工期1年超の工事』に適用範囲を拡大、今回の業績予想に織り込んでいる。」(『建設通信新聞』 2007.05.16)
●「不動産大手5巣亜の2007年3月期連結決算が17日出そろった。住友不動産の経常利益が7期連続で最高となるなど、経常利益、純利益ともに5社そろって過去最高を更新。全社が増配する。08年3月期もオフィスビルの新規開業や賃料値上げ効果で全社が経常増益を見込む。利益拡大のけん引役となったのはオフィスビル賃貸事業。17日に決算発表した住友不の賃貸事業の営業利益は834億円と前の期に比べ32%伸びた。ビル空室率が4.8%と昨年3月末に比べて0.9ポイント低下。…空室率改善と値上げを合わせた増益効果は70億円に達した。三菱地所は丸の内地区のビル空室率が0.55%まで低下し、ほぼ満室となった。10-15%程度の値上げ交渉を進め『前期は賃料改定効果が20億円前後出た』という。大型オフィスビル開発が相次いでいることも賃料収入の拡大につながった。三井不動産は日本橋三井タワーが通期で稼動した効果などで賃貸事業の営業利益が2割増となった。東急不動産は年7円と2円増配。野村不動産ホールディングスは年20円で実質16円増配。三井不、菱地所、住友不は4円増の年14円配で足並みをそろえる。 08年3月期は全社の経常利益が再び最高を更新する見通し。菱地所は前期に米不動産仲介子会社を売却した影響で、大幅減収となる。ただ新丸ビルの開業と既存ビルの賃料引き上げなどで吸収し、経常利益は前期比3%増の1560億円となる見通し。三井不は3月に開業した東京ミッドタウンが売上高増に貢献する。JFEビルの建て替えなどで賃貸事業の営業利益の伸び率は鈍化するが、分譲事業の利益率上昇で5期連続の経常最高益を見込む。住友不は賃料引き上げによる約50億円の増益効果で経常利益は7%伸びる見通し。東急不と野村不HDはマンション販売が好調なことから分譲事業の利益が伸びる。」(『日本経済新聞』 2007.05.18)
●「海外建設協会(竹中統一会長)は、会員43社の2006年度海外建設受注実績をまとめた。06年度の実績は、金額で 1兆6484億円で、前年度比4774億円(41%)増となり、過去最高の受注となった。特に中東で3201億円増加したのが貢献した。一方で件数は13 件減の1759件だった。アルジェリアの高速道路や、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールなどで大型工事の受注が相次ぎ、全体を底上げした格好だ。資金源では、無償・円借款関連の受注が393億円減の734億円となり、受注全体に占める比率も10%から4.5%に半減した。今回の実績で目立ったのは、中東のシェアが大きく伸びたことだ。地域ごとのシェアでは、アジアが例年どおりトップだが、03年度に1.2%、05年度に16.6%だった中東が、06年度は31.2%と倍増した。また件数は、アジアが1269件で6772億円と件数が多いが、中東は40件で5143億円と、1件当たりの受注額がアジアに比べて非常に大きい。アジアの1件当たりの平均額が5億3000万円なのに対し、中東は128億5900万円に上る。…一方で北米の受注も183件(前年度比19件増)、約3000億円(同約900億円増)と件数、金額ともに躍進した。東欧でも件数、金額ともに伸びている。資金源を見ると、円借款案件が前年度の658億円に比べ55.3%減の294億円と大きく減少したほか、無償資金案件も前年度比6.2%減の440億円にとどまった。半面、自己資金案件が5225億円、49.7%増1兆5736億円と大きく躍進した。」(『建設通信新聞』2007.05.25)
●「ゼネコンの完成工事総利益(工事粗利)率の下落に歯止めかからない。大手、準大手上場建設会社24社の2007年3 月期決算が25日までに出そろったが、公共工事の低価格入札の影響などで土木の工事粗利率が大幅に低下、10%を切る企業が相次いだ。建築も厳しい状況が続き、営業損失に転落する企業も出た。各社とも収益を重視する姿勢を強めており、08年3月期は建築が底打ちするとの予想が多い一方、土木は悲観的な見方が大勢を占めている。長谷工コーポレーションを除く大手、準大手ゼネコン23社を対象に調べた単純平均の工事粗利率は、前期比1.3ポイント減の 6.0%。土木は1.6ポイント減の9.2%に大きく落ち込んだ。…08年3月期も厳しい状況が続く。各社の工事粗利率予想によると、赤字工事の排除などで建築は0.9ポイント改善し、5.1%を見込むが、土木はさらに1.2ポイント下落して8.0%を予想する。全体では0.2ポイント増の6.2%の見通し。予想通りならば、05年3月期に6.1ポイントの開きがあった土木と建築の工事粗利率の差が、2.9ポイントにまで縮まる。ゼネコン24社の売上高総額は、土木が前期比6.2%減ったが、建築が5.8%増で補い、売上高全体では4.1%増となった。ただ、繰越高は前期に比べて1.8%減と減少傾向にあり、08年3月期の売上高は前期比減を見込む企業が半数を超える13社あった。…業績の先行指数である受注高は、07年3月期に土木が0.4%増、旺盛な設備投資を受けて建築も2.4%増となり、全体で1.4%増となった。だが、08年3月期は、目立った大型工事が少なく、一部企業は指名停止の影響も受け、土木が6.7%減に後退する見込み。建築も勢いが弱まり、0.6%の微増にとどまる予定で、全体でも2.9%減の見通し。経常利益は、販管費の圧縮を加速する企業もあったが、工事粗利率の落ち込みを補うまでには至らず、07年3月期は前期比11.4%減となった。」(『建設通信新聞』 2007.05.28)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年4月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、293件で前年同月比に比べて15.0%の大幅な減少となった。07年に入ってから、一進一退を繰り返している。産業別構成比は26.1%で、4ヵ月連続で30%を下回る結果になった。負債総額は、659億8700万円で14.5%の増加。2ヵ月連続で前年同月を上回った。負債額10億円以上がことし最多の12件だったことが要因になっている。」(『建設通信新聞』2007.05.29)

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