情勢の特徴 - 2007年6月前半
●「国土交通省は12日、07年度の建設投資見通しを発表した。投資総額(名目)は前年度比0.1%増の52兆3400 億円と、微増ながら2年連続のプラスになる見込み。内訳は政府建設投資が17兆1700億円(前年度比6.8%減)、民間建設投資が35兆1700億円(同3.9%増)で、政府部門は9年連続で減少するが、民間部門が4年連続で伸び、全体を下支えする。07年度の建設投資総額は、ピークだった92年度の約63%の水準となる。政府部門の投資額の内訳は、土木が15兆4400億円(同5.9%減)、非住宅が1兆2200億円(同17.6%減)、住宅が 5100億円(同5.6%減)と見込む。07年度当初予算では国の一般公共事業費、地方単独事業費とも前年度比で削減が続いており、投資額の大幅な縮小が避けられない。民間部門の投資額の内訳は、住宅が19町5900億円(同2.6%増)、非住宅建築が9兆9500億円(同5.0%増)、土木が5兆 6300億円(同6.8%増)の見通し。国交省は、景気回復に伴う雇用情勢や家計の改善を背景に、住宅投資は引き続き底堅く推移するとみている。非住宅建築と土木の投資額の合計は前年度比で5.6%増となり、設備投資が堅調なことから伸び率は前の年度に比べて1.5ポイント拡大する見通し。前年度の設備投資は主に製造業がけん引したが、07年度は非製造業でも増加するとみている。」(『建設工業新聞』2007.06.13)
●「国土交通省は5日、06年度に発注した工事のうち中小建設業者への発注率が金額ベースで50.9%になったことを明らかにした。官公需法に基づく集計値で、06年7月に閣議決定した『05年度を上回る発注率』という目標を達成した。中小への発注率は04、05年度とも 50.8%だったが、06年度は0.1ポイント上昇したことになる。中小業者への発注総額は、前年度の約9500億円を約1000億円上回る1兆558億円だった。同省は本年度も『06年度を上回る発注率』を目標に掲げ、中小業者の受注機会の拡大に配慮する方針だ。」(『建設工業新聞』 2007.06.06)
●「政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は4日、6月中旬に閣議決定する経済財政の基本方針(骨太の方針 2007)の素案について議論した。素案では公共投資改革として、真に必要な投資を選別化した上で、さらなる重点化、効率化を促進するという明記にとどまり、これまで民間議員が強調してきた公共事業費3%削減という具体的な数値は盛り込まれなかった。…骨太の方針06では11年度までの公共事業費の削減幅をマイナス3−マイナス1%と明記している。素案では、公共投資改革の基本的考えとして、経済成長などを踏まえた既存の計画、目標の見直し、既存ストックの維持・長寿命化への重点化などが盛り込まれている。また、入札談合の廃絶に向けては、一般競争入札の計画的な拡大やペナルティーの強化、詳細な予定価格と落札情報の公表などが明記されている。」(『建設通信新聞』2007.06.06)
●「独占禁止法の見直しを検討する内閣府の独禁法基本問題懇談会(座長・塩野宏東大名誉教授)が今月末にもまとめる報告書素案が、7日までに明らかになった。建設業界が問題を提起していた課徴金と違約金(損害賠償)との関係については、調整する必要がないことを明確にしたほか、日本経団連など経済界が当初から問題を指摘していた法人に対する課徴金と刑事罰の並存・並科についても『適当』とした。公正取引委員会の主張を認めた格好だ。報告書素案は、▽違反金(課徴金)と刑事罰のあり方▽不当な取引制限、私的独占(支配型)に係る違反金の水準、算定方法▽私的独占(排除方)、不公正な取引方法を違反金の対象にとするかどうかの検討▽違反金と損害賠償などとの関係▽審判制度の位置づけ▽審判官のあり方▽審判・事前手続きにおける証拠開示のあり方▽行政調査手続きのあり方▽警告・公表のあり方▽独禁法違反行為に係る民事訴訟制度のあり方▽公共調達のあり方――などを骨子に構成している。…独禁調は既に日本経団連、関西経済連合会、日本商工会議所など主要経済団体からもヒアリングしていた。今後さらに幅広く関係団体からヒアリングし、今秋以降、独禁法見直しへ向け各論点ごとに議論を進める予定だ。」(『建設通信新聞』2007.06.08)
●「総務省は8日、2006年度に国の各府省が行った事業などの政策評価結果を公表した。事業採択後5年を経過しても未着手か10年を経過しても完了しない公共事業約1000件のうち、休止または中止となったのは、厚生労働省所管の水道水源開発施設整備事業や国土交通省のダム事業など28件で総事業費は約3057億円だった。公共事業を除いた一般政策では、改善、見直しが図られた割合が前年度比3.5ポイント増の 51.2%となり、政策評価による成果が向上した。…休止または中止となった公共事業の内訳は厚生労働省が8件(総事業費約1398億円)、農林水産省が3件(同56億円)、経済産業省が4件(同685億円)、国土交通省が13件(同919億円)。02-06年度の5年間で休止、中止にした総事業費は累計で約3兆5000億円となった。国交省は、ダム事業4件、土地区画整理事業3件、都市再生推進事業1件、公営住宅整備事業等2件、下水道事業1件、河川事業2件を休止または中止にした。」(『建設通信新聞』2007.06.11)
●「国土交通省は、専門工事業界から要望の出ていた基幹技能者の公的評価について、経営事項審査(経審)の評価対象に加えることを決めた。企業の技術力を評価するZ評点の中で、一律に3点の評価が与えられる。13日開かれた中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)ワーキンググループの経審改正専門部会(東海幹夫委員長)第4回会合で了承された。新しい経審制度は08年度にスタートするが、基幹技能者については団体ごとに異なる講習や資格などの水準を標準化する必要があることから、加点は09年度に受ける経審から適用されることになる。…技術職員に対する点数は最高5点で、1級施工管理技士と1級建築士に与えられる。基幹技能者には3点が与えられ、2点で評価される1級技能士や2級施工管理技士などの資格者よりは高得点になる。基幹技能者資格は、3月末時点で28の専門工事業団体が21職種について設けており、合計で2人以上が資格を保有している。資格・講習実施団体のすべてが経審での加点評価を国交省に要望しており、既存の有資格者だけでなく、新規に認定される技能者も加点対象になる。」(『建設工業新聞』 2007.06.14)
●「国土交通省は13日、中央建設業審議会(中建審、国交相の諮問機関)ワーキンググループの専門部会(東海幹夫委員長)に、経営事項審査(経審)制度の改正に関する取りまとめ案を提出、了承された。量(完工高)から質(利益)を重視した企業評価への転換を明確に打ち出すとともに、社会性の評価を現行基準よりも大幅に拡大するのが特色。グループ経審の認定要件緩和については、強硬な反対姿勢を示していた地方建設業界に配慮し、適用除外項目を設定。グループ内の技術者の出向の扱いについては結論を先送りした。同省は今月中に中建審ワーキンググループに報告した上で、秋に中建審総会を開き、新経審を08年度審査分から適用する。同省は当初、グループ経審の認定要件を大幅に緩和し、新たな経営形態への移行などの企業再編を強く促す方針を打ち出していたが、大手企業の地方分社化による中小企業向け工事への参入や、不良不適格業者による制度の悪用を懸念する地方の建設業界に配慮。大手が地域ごとに分社化することや、地域の複数の小規模会社が結合して実態以上に大きな評価を得られないようにする歯止めを設ける。具体的には、企業グループの経営状況分析(Y点)について、親会社だけでなく、連結子会社も連結財務諸表で評価するが、連結子会社の売上高がグループ全体の売上高の一定割合(5%)未満のケースや、連結子会社の単体評価による評点の一定割合(3分の2)未満のケースでは、連結評価の対象に含めないことにした。Y点以外の項目は、受審企業それぞれの実際の完工高や技術者数などで評価する。…評価項目・基準の見直しでは、企業規模を表すX2評点の指標に、EBITDA(営業利益+減価償却費)と自己資本額を新たに採用。EBITDAは300億円、自己資本額は3000億円をそれぞれ上限に設定し、メーカーや商社など建設業以外を本業としている企業に高得点が出ないようにした。…社会性評価のW評点では、労働福祉の状況の下限値を撤廃し、雇用保険や健康保険に未加入だった場合にはマイナス点が出る評価方法に改める。」(『建設工業新聞』2007.06.14)
●「全国知事会の公共調達に関するプロジェクトチーム(座長・上田清司埼玉県知事)は13日、各都道府県の公共調達改革の取り組み状況に関する調査結果をまとめた。1000万円以上の工事に一般競争入札を導入済みの都道府県は7団体(公表せず)で、今後予定は24団体だった。入札ボンドは8団体が導入し、25団体が今後の導入を予定している。調査は、知事会が昨年12月、全国で官製談合事件が相次いだことを受けてまとめた指針について、4月1日時点での取り組み状況を調べた。談合の温床と指摘される指名競争入札を既に廃止した都道府県は10団体で、今後廃止する予定が35 団体だった。価格だけでなく、技術力なども勘案する総合評価方式の実施件数は、2007年度に101件以上の都道府県が20団体(前年度は5団体)、51 件から100件までが11団体(同4団体)と大きく増加し、1件から50件までは、14団体(同35団体)だった。」(『建設通信新聞』 2007.06.14)
●「国などが発注したトンネル工事現場で働き、じん肺になった患者と遺族約960人が国に計32億円の損害賠償を求めた訴訟で、国と原告側で協議している和解内容が13日、関係者の話で明らかになった。国が省令を改正し、じん肺防止対策を強化する一方、原告側が賠償請求を放棄することが柱。企業とは企業側の和解金支払いで既に和解しており、トンネルじん肺訴訟は終結に向かう見通しだ。安倍晋三首相と全国原告団代表が18日に面会する予定。東京訴訟は20日に東京高裁で開かれる弁論で正式和解し、その後、各地の訴訟も順次和解する方向だ。関係者によると、和解内容は、国が省令の『粉じん障害防止規則』を改正し、公共工事での粉じん濃度測定を義務化したり、粉じん防止マスクの装着や掘削作業時の換気を義務付けたりする方向だ。現場での労働時間を8時間程度に短縮するよう企業を指導することも検討する。また、政府は死亡した元患者や遺族に弔意を示すほか、じん肺に苦しむ患者にお見舞いを表明する方針。一方、原告は1人当たり330万円の国への損害賠償請求を取り下げる。国を相手取ったトンネルじん肺訴訟は2002年11月に東京地裁で賠償請求の訴えが起こされたのを皮切りに、全国の11地裁に賠償請求が起こされた。昨年7月、東京地裁判決が『国はじん肺防止対策を怠った不作為の責任がある』として原告44人に約6900万円を支払うよう賠償命令。その後、熊本、仙台、徳島、松山の4地裁でも原告側勝訴の判決が出されている。各訴訟で国は『じん肺予防策は十分に行ってきた』などとして争う姿勢を示してきた。ただ、国の責任を認める司法判断が相次いだことから、国の不作為責任は認めないものの、じん肺防止策の一層の強化を約束する内容の和解方針に転換したとみられる。」(『日本経済新聞』2007.06.13)
●「東京・六本木ヒルズ『森タワー』の日本オーチス・エレベータ(東京・中央)製エレベーターのワイヤロープに損傷や大量の赤さびが見つかった問題で、国土交通省は4日、同社製の全国約5万基を緊急点検した結果、80基にロープの一部破断や伸びなどの不具合が見つかったと発表した。事故にはつながっておらず、すでにロープ交換などを実施している。調査対象は、日本オーチスが1年以内に定期点検を実施した同社製の全国4万 9853基。問題のあった80基では、六本木ヒルズのケースのようなロープを構成する金属線(素線)の束(ストランド)の破断は確認されなかったが、素線が激しく損傷するなど日本工業規格(JIS)の基準に適合しないものが76基あった。JIS基準外のうち、素線の破断が61基、ロープが伸びきってブレーキの利きが悪くなっているものが15基あった。このほか、建築基準法に基づく交換基準に抵触するロープ被膜の損傷が1基、JIS基準内の素線の破断が確認されたものも3基あった。同省は六本木ヒルズでの同社のずさんな点検体制を問題視していたが、今回の点検では定期検査後に不具合が見つかった可能性が高く『定期点検はおおむね適正だった』(同省建築指導課)という。…札幌市中央区の住友生命札幌ビルで3月、日立製作所製エレベーターのワイヤロープの一部が破断していたことが4日、分かった。破断によるけが人などはなく、保守管理を担当する日立ビルシステム(東京・千代田)がロープを交換した。国土交通省は5日にも、同社が保守管理する全国のエレベーター約15万基を2ヵ月以内に緊急点検するよう指示する。同省によると、3月25日、同ビル内にあるホテルの従業員がエレベーターの異常音に気づき、日立ビルシステムに通報。エレベーターを調べたところ、5本のロープのうち1本で、ロープを構成する8本の金属線の束(ストランド)のうちの1本が破断していた。同社は3月27日までにこのエレベーターのすべてのロープを交換した。同省は、日立ビルシステムが昨年5月のエレベーター定期点検で『問題なし』と報告していたことに着目。『1年以内の定期検査で無傷なものがストランド破断に至ることはまれ』(同省建築指導課)として、同社の安全管理に問題があったとみている。」(『日本経済新聞』2007.06.05)
● 「総合不動産大手がマンション発売戸数を大幅に増やす。三井不動産と住友不動産、三菱地所の2007年度の発売計画は合計で約1万5千戸と、前年度実績より5割増を見込む。資金力を背景に地価上昇局面でも順調に土地の仕入れが進み、今後の売れ行きも好調に推移すると判断しているためだ。ただ首都圏を中心に地価が一段高になれば販売価格の割高感が強まり、売り出しに慎重になる公算もある。全国のマンション市場は06年に3年ぶりに減少に転じた。首都圏や近畿圏を中心に、分譲会社が値上がりを見込んで発売を先送りした影響が大きい。ただ、今年はこうした物件が売り出されるため、増加に転じるとの見方が強い。不動産経済研究所(東京・新宿)は07年のマンション発売戸数が16万4千戸と前年より5.2%増えると予想している。大手不動産が計画している発売の伸びはこれを上回る。ここ1、2年の地価上昇で、資金力を強みに用地仕入れを優位に進めてきたことが大きい。ブランド力があるため、有利な価格設定でも売れると見て強気の発売計画を打ち出すが、各社ともマンションが値上がりした分、付加価値を高めようと工夫を凝らす。商業施設と一体開発したり、個別物件ではキッチンなど住宅設備機器の仕様を高め、内外装のデザインに凝ったりしている。…1994年からマンション大量供給が始まり、最大手の大京など専業会社が市場を広げてきたが、ビル事業が主力だった総合不動産大手も、バブルの負の遺産処理が進むとともにマンション分譲事業を拡大した。半面、中建・中小のマンション分譲会社は苦戦している。郊外で駅から遠い不便な場所で用地を仕入れざるを得ず、売れ行きが鈍い物件を抱えるケースが目立つ。売り切るために値引きすることもあり、これが用地取得でも苦戦を強いられる結果となっている。ピーク時に年間8千戸超を発売したダイア建設の07年度発売計画は1千戸台で、大手とは対照的だ。マンション市場を巡っては首都圏を中心に地価が上昇し、昨年末から建築資材も値上がりしている。このため供給戸数が増えても、『販売価格は今秋以降、現状よりさらに15%上昇する』(販売価格マンション市場調査のトータルブレインの久光龍彦社長)との見方もある。完成在庫を気にせずに販売価格を設定するなど、不動産大手では強気の値付けが目立つが、今後、割高感から購入客の物件選別の目が一段と厳しくなることも予想される。マンションの平均販売価格は首都圏や近畿圏で上向にある。首都圏では2000年以降、年間平均約4千万円で推移していたが、今年4月には4651万円に上昇。平均的なサラリーマンが購入できる価格とされる4千万円前後を上回った。大手が得意とする超高層マンションの初月契約率は足元でもなお約90%と販売好調が続く。だが、首都圏全体では契約率が昨夏以降、それまでの80%台から70%台へ低下。近畿圏は4月には3年3ヵ月ぶりの50%台となる58.1%に下がった。」(『日本経済新聞』2007.06.09)
●「旧日本道路公団の民営化で発足した東日本、中日本、西日本の高速道路会社3社の2007年3月期決算が12日出そろった。コンビニエンスストア出展効果でサービスエリア(SA)事業が好調だったことなどから、3社ともに中間決算時点の業績予想を大幅に上回る98億−120億円の最終利益をあげた。中日本と西日本は債務返済を前倒しした。ただ経営効率化はまだ目立った効果が見えない。通期決算の発表は05年10月の旧公団の民営化後で初めて。本業の高速道路事業は、景気回復に伴う交通量増加や暖冬による除雪費用の減少で、それぞれ90億−125億円の営業利益を計上した。高速道路は旧公団から資産・債務を継承した日本高速道路保有・債務返済機構が、民営化会社から受け取る道路リース料を原資に債務を返済する仕組み。 06年度からは計画を上回って料金収入が伸びた場合は債務返済に充てる仕組みも導入し、中日本が115億円、西日本が140億円を上積みした。旧公団時代には免除されていた納税額も3社合計で258億円に達した。債務返済を前倒ししたが、2050年までに機構が返済しなければならない債務残高はなお40兆円ある。最大の利益押し上げ要因はSA事業。道路事業では利益をあげられない民営化会社にとって限られた収益源だ。コンビニや人気コーヒーショップの出展などが奏功した。旧公団時代のSA事業はOBが天下る『ファミリー企業』をテナントとして優先する傾向があり、利用者の不満もあった。民営化を機にホテルや大型ショッピングセンターをSAに誘致する動きも出てきた。ただ営業収益(売上高)に対する人件費など販売・管理費の比率をみると、3社とも前の期に比べ上昇か横ばいで、効率化は進んでいない。」(『日本経済新聞』2007.06.13)
●「ゼネコン各社の工事採算の悪化が深刻だ。先月までに07年3月期の決算を発表した主要25社を対象、日刊建設工業新聞社が単体ベースの完成工事総利益(粗利益)率を調べたところ、フジタを除く24社が前期の実績を下回っていることがわかった。ほとんどの社は、建築、土木ともに粗利益率を落としており、し烈な価格競争による工事の奪い合いが、各社の業績を圧迫する要因になっている。昨年度は公共工事で低価格入札が頻発。その影響が出る今期は、土木工事の採算が一段と悪化すると予想する社が相次いでいる。調査では、各社の粗利益率を建築・土木別に集計し、推移を調べた。建築では、マンション建築に特化して事業を展開している長谷工コーポレーションを除く24社のうち、8割に当たる19社の粗利益率が低下。土木でも18社が前期の粗利益率を下回り、採算悪化の傾向に歯止めがかからない状態が続いている。建築工事の売上高は、民間企業の活発な設備投資に支えられて増勢基調を維持しているものの、発注者のコストダウン要求が強く、資材価格や労務費の高騰も加わって採算を悪化させる要因となっている。各社は低採算のマンション工事の受注を避け、生産施設など非住宅系の工事の受注活動を強化している。このため、今期に建築の粗利益率が悪化するとしている5社と大幅に減少する見込み。ただ、厳しい受注競争が続く中では、なお予断を許さない状況が続きそうだ。一方、土木では、公共工事の低価格受注の影響が粗利益率の低下という形で表れ始めた。昨年12月に国土交通省が打ち出した『ダンピング受注防止策』の効果で、極端な安値受注は減少傾向にあるとされるが、昨年度に低価格で受注した工事が業績に強く影響するのは今期。土木の今期の粗利益率については21社が低下を予想するなど深刻だ。土木ではさらに、大手を中心に国内市場の縮小を補完するため低採算といわれる海外土木工事の受注を拡大させていることも、粗利益率の押し下げ要因になっている。営業利益や経常利益などすべての利益の源泉となる工事の粗利益。採算悪化が続くこの危機をどう乗り切るか、対応策は容易には見つかりそうにない。」(『建設工業新聞』2007.06.14)
●「国土交通省は14日、06年度に実施した下請代金支払い状況等実態調査の立ち入り調査結果をまとめた。大臣許可業者 6000社と1次下請業者1200社に対して行った書面調査に基づいて、06年11月〜07年3月に全国307カ所に立ち入り調査を実施。契約時期や変更契約の内容、見積期間などで不適切な契約が明らかになった197社に対し改善を勧告した。勧告者数は前年度の162社を大きく超え、過去最多を記録した。同省は4月に建設業法令順守推進本部を立ち上げており、元下請け関係の適正化に向けて従来以上に厳しく対処していく方針だ。…契約を書面で適正に締結している業者は156社と立ち入り調査対象の50.8%だった。書面で契約を交わしているものの記載内容が不十分または不適切なケースは133社と全体の 43.3%(前年度43.8%)、契約が書面で締結されていなかったケースは18と5.9%(同4.2%)あった。前年度調査では書面での適正な契約が 52%だったため、やや悪化したことになる。下請代金への支払いでは、適正とされる全額現金払いは88社で全体の28.7%(同25.5%)となり、前年度よりやや改善した。ただ、労務費相当分を現金で支払っている業者は187社、60.9%(69.3%)にとどまり、前年度より悪化した。手形期間が、適正とされる120日以内だったのは180社、82.2%(同86.0%)で、120日超は39社、17.8%(同14.0%)と不適切の割合が増加した。施工体制台帳が適正に整備されていたのは197社、70.6%(同66.2%)、施工体系図が整備されていたのは196社、87.9%(同82.4%)と、前年度より改善していた。同省は立ち入り調査時に指導や助言を行っているが、改善されなかた197社(うち一般建設業許可業者9社)に対して勧告を行った。」(『建設工業新聞』2007.06.15)
●「国土交通省が調査した06年度の不動産証券化市場の規模は役7.8兆円で、前年度比で約12.6%の伸びとなった。 02年から続いてきた急成長に頭打ち傾向が見えてきた。国交省は『今後の動向に注目が必要』としている。証券化の案件数は1661件で前年度より79件増加。増加件数が100件をきったのは02年以降始めて。スキーム別では、信託受益件を特定目的会社(SPC)などを通じて証券化する方法がもっとも多く、 06年度は4兆2288億円で全体の約54%を占めた。Jリートは2兆0312億円、土地や建物(実物)をSPCが取得する方式は1兆3869億円となっている。信託受益件と実物の比率は信託受益権が約8割、実物が約2割となっている。不動産の用途別では、オフィスが全体の30.8%で最も多い。住宅・商業施設も増加傾向。開発中の物件を証券化・流動化して資金を調達し開発事業に充てる開発型証券化は181件で総額約7000億円。01年以降着実に増加している。01年以降増加し続けてきた、土地・建物の現所有者が、自ら利用する不動産を証券化して引き続き賃借するリースバック(サブリース)は、06年度になって初めて減少。107件、総額約4700億円だった。調査は、証券を発行したものと、ノンリコースローンだけで資金調達した場合も含めて集計。資産流動化法にもとづくSPC、不動産投資法人の実績に、信託銀行による証券化の実績を加えた。」(『建設工業新聞』2007.6.11)