情勢の特徴 - 2007年6月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「独占禁止法の見直しを検討してきた『独禁法基本問題懇談会』(塩崎恭久官房長官の私的懇談会)は26日、違反行為への罰則強化を提言する最終報告書を発表した。課徴金の対象を広げ、悪質行為には重くする。一方で、経済界が強く主張していた審判制度の見直しは退けた。公正取引委員会は来年の通常国会に独禁法改正案を提出する方針だが、経済界との調整は難航しそうだ。…報告書は課徴金を科す違反行為の範囲拡大を打ち出した。現行法は談合、カルテルなどに限っているが、市場の競争を制限する『排除型私的独占』にも拡げる。例えば、原価を割り込むような低価格で継続的に販売することで他社の事業活動を困難にする『不当廉売』。このほか、取引相手によって不当に価格を差別し公正な競争ができなくする『差別対価』なども対象にする。ただ、競争の制限状況に関係なく『不当廉売』や『差別対価』の行為自体に課徴金を科すべきかどうかについては結論を避けた。…報告書は談合の幹事役など違反行為で主導的な役割を果たした『主犯格』の企業には、課徴金の引き上げを求めている。調査に協力した企業には、課徴金を減額するよう提言した。経済界も一定の理解を示しており、法改正案に盛り込まれる可能性が高い。報告書は課徴金の加算、減算の程度については明示しておらず今後の検討課題となる。… 報告書は公取委の『審判制度』について、『高度な専門性に基づく判断が求められるため当面存続が妥当』と結論づけた。審判制は公取委の処分に対する企業からの不服申し立ての是非を公取委が判断する制度。日本経団連は『公取委が検察官と裁判官を兼ねるようなもの』と反発し、廃止を求めていた。…報告書は課徴金と刑事罰を併科する現行制度についても『違反行為の抑止の観点から効果的』として、維持することが適当と明記した。」(『日本経済新聞』 2007.06.27)
●「財務省は国有地を売る相手を選ぶ際に、購入希望価格だけでなく購入後の用地利用計画も含め総合的に審査する新手法を導入する方針を固めた。土地値上がりを期待した転売目的による取得や、周辺環境にそぐわない施設の建設を防ぐのがねらい。同省は2015年度末までに全国 900ヵ所の国有地を売却する計画で、適切な土地利用を促すには現行ルールだけでは不十分と判断した。…財務省は新方式として、土地の開発計画の優劣で相手を選ぶ『企画競争方式』と、価格と利用計画を総合的に評価する『総合評価方式』の2種類を検討している。両方式とも、買い手となる不動産業者などから土地利用計画を提案してもらい、有識者など第三者で構成する国の独立委員会が審査する。審査の基準については、行政の裁量が入らないように透明な仕組みを今後検討する。国の資産・債務改革の一環で、財務省は全国で庁舎・宿舎など国有地を売却する計画。全国で900ヵ所超、400ヘクタール弱の土地を売却し、1兆6400億円の収入を確保する方針だ。特に東京都心の大手町地区では気象庁と東京国税局がある2.4ヘクタールの大規模な土地を売却する予定。現行制度のままだとこの売却のほとんどが一般競争入札になる可能性が高い。」(『日本経済新聞』2007.06.29)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、トンネル工事の積算基準を抜本的に見直す。現行は、トンネル工事の標準的な実作業時間を9時間に設定し、それを基準に工事の予定価格を決めているが、新たな積算基準では、標準的な実作業時間を定めず、それに代わる基準として地質・岩盤の硬軟と断面積の大小に応じた1メートル当たりに必要な作業員数、機械稼働時間などから予定価格を積算する方法に切り換える。2008年度の積算基準から適用する予定だ。積算基準の見直しは、冬柴鉄三国土交通相が15日の閣議後の会見で明らかにした。同相は、トンネルじん肺訴訟で国と原告が和解に向けた協議をしていることに関連し『労働者の安全確保に今後も十分配慮した発注をしないといけない』と述べた。トンネルじん肺訴訟では、積算基準に定めた標準的な実作業時間によって長時間労働を強いられていると原告側が主張している。これに対し、国側は、積算基準の標準的な実作業時間は目安であり、労働時間を拘束するものではないと反論していたが、和解に向けて積算基準から標準的な実作業時間を削除する。」(『建設通信新聞』2007.06.18)
●「政府の都市再生本部(本部長・安倍晋三首相)は19日、国際金融拠点の整備を新たな都市再生プロジェクトに決定した。金融・資本市場の国際競争力を高めることが狙いで、金融機能を支えるオフィスの供給促進や、サービス水準の高いホテルの供給などの基盤整備を都市再生プロジェクトとして進める。具体的な対象エリアは確定していないが、東京駅周辺や大手町、日本橋、兜町(東京都中央区、千代田区)など金融・オフィス機能が集積している地区が検討対象になるとみられる。同本部は、取り組みを進める地域を選定した上で、年内にも今後の方向性を示す『地域整備方針』をまとめる。同プロジェクトでは、都心の都市再緊急整備地域の中で、特に金融機能の強化を目指す場所を決め、官民が協力して金融機能を支えるハード整備を進める。必要な取り組みについては、▽高機能オフィスの供給▽金融関連サービス業務機能の集積促進▽サービス水準の高いホテル、サービスアパートメントなど宿泊・滞在・居住機能の充実▽医療機関、インターナショナルスクールなど外国人就業者や家族の生活を支える機能の充実―などを挙げている。」(『建設工業新聞』 2007.06.20)
●「PFIの事業者選定で、各発注者が指名停止企業の扱いに苦慮している。これまでは、グループ構成員のうち1社が指名停止を受けただけでもグループ全体を失格とするケースが多かったが、最近では、指名停止企業の入れ替えを認める事業が増えた。なかには、建設会社が未定のままでも、グループ応募を認める事業も出てきた。神奈川県開成町が計画している小学校整備のPFI事業では、実施方針に『入札参加時に建設業務を行う者が、未定の場合は、(落札者決定後の)基本協定締結までに明らかにし、町の確認を得ること』と明記した。つまり、応募グループのうち、建設会社が不在でも応募を認める仕組みで、『建設会社が未定のまま、落札者を決定する場合もある』(同町)どいう。…指名停止企業の扱いをめぐっては、発注者間で判断が分かれているものの、最近では、指名停止企業の入れ替えを認めるケースが増えている。こうした場合、入札手続きのうち、どの段階での入れ替えを認めるかなどについて詳細に定める必要がある。各発注者が公表するPFIの実施方針や入札公告では、構成員の入れ替えに関する記述が大幅に増えた。こうした指名停止対策は、事業をスケジュール通りに進めたい発注者による‘苦肉の策’だが、『審査の適正さに課題が残る』との指摘もある。」(『建設通信新聞』 2007.06.26)
●「防衛施設庁発注工事の談合事件で公正取引委員会が先週末、50社を超える建設会社に排除措置命令と課徴金納付命令を出したことが、早くも公共工事の発注現場に波紋を広げている。命令を踏まえ、各発注機関が対象業者の指名停止措置に乗りだしたためだ。異例ともいえる大規模な指名停止で、入札の手続きが中断に追い込まれたり、予定していた工事の発注時期のめどが立たなくなったりするケースが相次いでいる。混乱はしばらく尾を引きそうだ。…最近、都内では民間工事が活況なこともあり、建設業者が区の入札に無理して参加するのを控えて入札が成立しなかったり、資材費の高騰などを背景に入札不調が続発したりする状況。そうした中での公取委の大量処分に『(指名停止を出すのは)ダブルパンチだ』(新宿区)と悲鳴にも似た声が上がっている。」(『建設工業新聞』2007.06.26)
●「政府は、2007年度の中小企業向け官公需契約目標を総予算額8兆4560億円の50.1%に当る4兆2406億円とする契約方針を閣議決定した。官公需総予算額に占める契約目標比率が半数を超えるのは初めてで、目標額は前年度実績に比べて1254億円上回り、 3.0%増となった。うち工事は前年度実績比5.1%増の1兆8199億円、役務は1.0%増の1兆1962億円となっている。…契約方針では、分離・分割発注について、政府調達協定などとの整合性の確保に配慮しながら、価格、数量、工程などの面からみて適切であるかどうかを十分検討し、可能な限り分離・分割発注に努めることを06年度と同様に求めた。ただ、公共事業の効率的執行を通じたコスト縮減の観点から、適切な発注ロットの設定を前提に分離・分割発注することとした。また、中小建設業者に対する配慮として、指名競争の際極力同一資格等級区分内の建設業者による競争を確保するが、優良な工事成績を上げた中小建設業者に対しては、施工能力などを勘案し、上位の等級に属する工事に競争参加できるよう積極的に受注機会の確保に努める。中小企業庁は、同日付で 06年度の中小企業向け契約実績もまとめた。契約実績額は、官公需総実績額8兆6559億円の47.5%に当たる4兆1152億円で、前年度に比べて 0.3%減少した。うち国は6.6%増の2兆4611億円、公庫などは9.1%減の1兆6542億円だった。」(『建設通信新聞』2007.06.27)
●削減計画を検討していることを示す内部資料によると、約77万戸ある賃貸住宅を『エリア毎(ごと)の再生・活用戦略と各類型の事業価値の比較検証』によって類型設定するとして、『A』―『G』の7つの基本的類型に分けている。このうち、類型『E』とされた『他用途活用団地』は、大規模団地を集約化し、30-40%程度削減し、それによって生まれた用地を他用途に活用しようとする『E@』はじめ、団地をつぶし、更地化して売却する『EA』、民間売却や居住者への払い下げも検討する『EB』に分類。計217団地を対象に約16万7000戸を削減しようとするものである。類型『F』とされた『譲渡団地』は、いわゆる市街地のげたばきアパートの賃貸住宅で、地権者(地主)などに譲渡、売却するとされ、対象団地は248団地で約2万6000戸だ。類型『G』とされた団地は、民間から借り受けた住宅を返却しようとするもので、129団地、約7000戸だ。『E』『F』『G』あわせて、594団地、約20万戸が削減されることになる。…内閣府の規制改革・民間解放推進会議(草刈隆郎議長)は昨年12月25日に『機構のもつ77万戸の賃貸住宅について削減目標を明確にすべき』だとの第三次津答申を出した。ところが、内部資料が作成されたのは、同会議でその議論がおこなわれていた真っ最中の同年11月22日。機構側が『答申』に対応するため事前に削減目標算定の作業をすすめていたとみられる。(『しんぶん赤旗』)2007.06.30より抜粋。)

労働・福祉

●「国などが発注したトンネル工事の現場で働き、じん肺になった患者と遺族約960人が国に計32億円の損害賠償を求めた訴訟を巡り、安倍晋三首相は18日午前、首相官邸で全国原告団代表と面会した。国がじん肺対策の強化を約束する一方、原告側が賠償請求を放棄することなどを柱とした内容で同日午後、和解に合意。全国各地で続いている訴訟はすべて終結に向かう。首相は『患者とご家族の皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、既に亡くなった方々とご遺族の皆様に哀悼の誠をささげたい』と表明。そのうえで『これまで闘ってこられた原告団の気持ちを無駄にすることがないよう対策を進めていきたい』と強調した。原告団代表の船山友衛さんは『我々は地底から日本の発展を支えてきた。今後トンネル工事でじん肺に苦しむ患者が一人も出ないようにしてほしい』と訴えた。じん肺は大量の粉じんを吸い込んで肺の機能が低下する病気。1950-90年代に国などが発注した新幹線や高速道路、ダム建設などに伴うトンネル工事の現場で働いてじん肺になった作業員が国の責任を問うため、2002年11月の東京地裁を皮切りに全国11地裁で訴訟していた。今回原告団と国が合意する和解案は、国が省令の『粉じん障害防止規則』を改正し、公共工事での粉じん濃度測定を義務化したり、粉じん防止マスクの装着や掘削作業時の換気を義務付けたりする内容。現場での労働時間を短くするため、トンネル内労働者の作業時間の積算基準の見直しなども検討する。政府は患者や死亡した元患者の遺族にお見舞いや弔意を表明。原告は一人あたり330万円の損害賠償請求を取り下げる。18日午後、これらの内容を盛り込んだ文書を国と原告団の間で交わして正式に合意する。同訴訟を巡っては昨年7月に東京地裁が『国はじん肺防止対策を怠った不作為の責任がある』として原告44人に約 6900万円を支払うよう賠償を命令。その後、熊本、仙台、徳島、松山の4地裁でも原告側勝訴の判決が出ていた。」(『日本経済新聞』 2007.06.18)
●出稼ぎ先の建設現場でけがを負った大工の佐藤吉治さん(55)が、労災補償を拒否した神奈川県の藤澤労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟の判決が28日、最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)であった。下請けの工務店から『ある程度細かな指示を受けていた』と認める一方、二審判決を追認し、『労働者に該当しない』と上告を棄却する不当判決を出した。佐藤さんは、工事材料を自分で持たず、労務を提供する手間受け(出来高)の労働者だ。山形県から出稼ぎに来ていた1998年、神奈川県茅ヶ崎市のマンション新築中に右手の指3本を切断した。元請けのゼネコンが労災を申請したが、同労基署は『労働者ではなく、個人事業主』と申請を拒んだ。財界と政府は、一体となって、本来労働者として雇用すべきものを個人事業主扱いにして労働基準法や元請けの労災保険の対象からはずす方向をとっている。判決後、建設労働者でつくる全建総連の佐藤正明書記長は、『労働者性否認の判断は労働環境の変化と無縁ではない』とする声明を発表した。国会内で開かれた報告集会で原告の佐藤さんは、『大工道具を持っているから、労働者ではないとは本当におかしな判決だ』と批判。佐藤書記長は『不当判決だ。手間受けや外注形態が強まるなか、労働者性を追求していく』と今後の決意を述べた。(『しんぶん赤旗』 2007.06.29より抜粋。)

建設産業・経営

●「公正取引委員会は26日、公共工事の受注で『不当廉売』(ダンピング)があったとして、大手ゼネコンを含む5社に独占禁止法に基づく警告を行った。警告を受けたのは大林組、大成建設、ハザマ、馬淵建設(横浜市)、丸本組(宮城県石巻市)。05年4月〜06年9月の間に発注された公共工事での各社の応札行動が、公取委が04年9月に定めた基準『公共工事の不当廉売の考え方』に抵触すると判断した。公共工事をめぐる不当廉売での警告は04年に2社を対象に行われて以来で、大手ゼネコンが対象になったのは初めて。警告対象になった工事は、大林組が国土交通省発注の『夕張シューパロダム骨材製造第1期』、大成建設が同省発注の『夕張シューパロダム堤体第1期』、ハザマが千葉市発注の『下水道排水施設(中央雨水1号貯留幹線2工区)など2件、馬淵建設が横浜市発注の『舞岡川改修工事』など5件、丸本組が『相野谷工区区画整理工事』など9件。実行予算上の工事原価を大幅に下回る価格で受注していたとされた。公取委の基準では、工事価格は『工事原価に一般管理費を加えた額』とした上で、正当な理由なしに実行予算上の工事原価(直接工事費+共通仮設費+現場管理費)を大幅に下回る価格で応札した場合は『ダンピング』と認定する。公取委は発注機関から提供された情報をベースに調査を進めていた。公取委は昨年10月、国交省、農林水産省、都道府県に対し、05年度と06年度上半期の入札のうち、低入札価格調査が行われた案件について情報提供を依頼した。寄せられた約2300件(約1100社)の情報から、不当廉売の疑いがある68社を選んで調査票を送付。受注に至る経緯や、損益状況などの報告を受け、赤字受注かどうかや、赤字幅、落札率の低さ、低価格入札による落札の頻度・規模などの観点から8社を絞り込み、最終的に5社を警告対象とした。』(『建設工業新聞』2007.06.27)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「財務省が検討してきた国有不動産の売却計画が15日固まった。公務員宿舎や庁舎など全国で合計900を超す不動産物件を売却。都心の庁舎ビルの高層化も進める。国の資産・債務改革の一環で、2015年度末までに1兆6400億円の売却収入を見込む。都市部の優良物件の大量売却で不動産売却が活発になる可能性がある。…売却対象として新たに固まったのは、北海道、福岡県など全国16都道府県にある637の公務員用宿舎。総面積は309面平方メートルで東京の日比谷公園の19倍に相当する。神戸の本山地区など人気の住宅地も含まれる。買い取った民間事業者は住宅などに転用する見通し。すでに決まっている東京23区内の約250の物件とあわせ、売却物件は合計900弱になる。都心庁舎では気象庁や東京国税局のある大手町地区の土地を売却する。総面積は2.4万平方メートルで、3700億円の売却収入を見込む。その一方で、売却で移転を迫られる省庁の受け皿として、霞ヶ関の財務省、内閣府などの3庁舎を高層化。容積率いっぱいまで有効活用する。建て替え費用などにかかる6000億円を差し引いた約1兆400億円が国の最終的な収入になる見通しだ。」(『日本経済新聞』2007.06.16)

その他