情勢の特徴 - 2007年7月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は日本では公道を移動できない特大コンテナの運行を自由化する『特区』精度を大都市圏の港湾周辺地域に導入する。対象となるのは国際標準規格に採用されている長さ45フィート(約13.7メートル)のコンテナ。欧米ではすでに一般的で、中国などアジアでも利用が広がっている。世界の標準に対応できる環境を日本の主要港湾で整え、国際競争力の低下に歯止めをかける。2008年度から実施する。アジアでは釜山など大規模な港湾整備が相次いでいる。1980年にはコンテナ取扱量で神戸港が世界4位だったが、06年には6位までをアジアの港が占め、日本は東京の23 位が最高だ。特区制度は『産業競争力強化ゾーン』の名称。東京、大阪、伊勢湾の三大港湾や北九州など大規模港湾を想定している。港湾施設と隣接地の一帯を国が指定する。港湾周辺で小型コンテナに仕分けして消費地へ輸送することで、特大コンテナに対応できる体制を整える。強化ゾーン内では特大コンテナが港湾と区域内の物流拠点の間を自由に行き来できるよう規制を緩める。土地利用の規制を見直し、港湾の隣接地域に物流拠点や工場などの集約を促す。そのための大規模物流施設を整備する企業への無利子融資の導入も併せて検討する。地方港湾では強化ゾーンを活用して港湾の隣接地帯を産業拠点に育てることを目指す。ゾーン内については埋め立て血などの売買を自由化して土地の流動性を高め、新工場の進出を促す。45フィートコンテナは国際標準化機構(ISO)が05年に規格化。大型化は輸送コスト削減につながるため、一段の普及が見込まれている。日本では公道を走るために国や警察、自治体の特別許可が必要。道路も通行できないケースが多く、国内発着のコンテナでは使えなかった。新制度は交通政策審議会が5日にまとめる報告に盛り込む。国交省は来年の通常国会に港湾法や道路交通法など関連法の改正案を提出する方針だ。」(『日本経済新聞』2007.07.05)
●「景気拡大が続くなか、企業倒産が増えている。民間調査会社の帝国データバンクが11日発表した2007年1−6月の全国企業倒産集計によると、倒産件数は5394件と前年同期を16.6%上回った。第三セクターの倒産は上半期として過去最高となった。金融機関が与信管理を厳しくし、資金繰りが悪化した建設・小売業の倒産も目立つ。倒産件数(負債総額1千万円以上の法的整理)は05年上半期から増加に転じている。財政が悪化した自治体が経営難の第三セクターの処理を進めたため、倒産は11件となった。例えば、北海道夕張市はホテル・スキー場運営の夕張観光開発と、リサイクル事業の夕張木炭製造の2つの三セクを処理した。他の自治体でも売り上げ不振に陥ったゴルフ場やホテルを処理する動きが出ている。負債総額は8.3%減の2兆5725億円だった。大型倒産が一服する一方で、中小・零細企業の倒産が増加しているためだ。…最近の企業倒産は主に3つのパターンに分類できる。まず談合摘発や不正会計をきっかけに経営破綻する『法令違反型』だ。5月18日に甲府地裁に民事再生手続きを申請した建設・橋梁(きょうりょう)のコミヤマ工業(甲府市)…原油や木材など資源価格高騰がきっかけとなる『原燃料高型』倒産も多い。運送会社のエーラインアマノ(東京・江戸川)は4月19日に東京地裁に民事再生手続きを申し立てた。トラック燃料の軽油価格が高騰するなか、運送料金への転嫁が進まず行き詰った。起業家の経営手腕の未熟さが原因となる『ベンチャー失敗型』も出始めている。介護サービスのトータルケアサポート(東京・新宿)は7月2日に破産手続きの申し立て準備に入った。施設数を急拡大した結果、人件費などが膨らみ、資金繰りが悪化していた。」(『日本経済新聞』2007.07.12)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、ユニットプライス型積算方式の適用工種を拡大する。現在、河川維持、河川修繕、道路維持、道路修繕、港湾工事の異形ブロック工、空港基本施設の舗装補修の6工種を対象に、適用に向けた具体的な検討を進めている。道路と河川の維持・修繕の4工種は、一部の工事を対象に早めれば2008年度から試行する。異形ブロック工、空港基本施設舗装の補修についても単価収集などの作業を進めており、ユニット単価を作成し次第、08年度以降の試行を目指す。同省は現在、舗装工など5工種でユニットプライス型積算方式を試行している。08年度以降は、順次6工種が試行対象に加わり、04年度から試行が始まった同方式は、新たな段階を迎えることになる。国交省は、舗装工の一部でユニットプライス型積算方式を始め、築堤・護岸、道路改良、根固め方塊(ほうかい)製作工、空港基本施設舗装に対象を拡大してきた。舗装工、築堤・護岸、道路改良は、07年度から全面試行している。早ければ08年度から試行する河川維持、河川修繕、道路維持、道路修繕の4工種は、07年度をめどに、労務費や材料費、諸経費などをひとくくりにしたユニット単価を策定する。港湾工事では、根固め方塊(ほうかい)製作工の一部を対象に05年度から試行を始め、これまでの適用実績は、05年度6件、06年度8件。09年度は10件程度での試行を予定している。…一方、誘導路や滑走路、エプロンなどの空港基本施設舗装工事も05年度から試行を始め、同年度に1件、06年度に6件の適用実績がある。07年度は9件程度での適用を予定している。航空局では、現在、空港基本しせつの補修で、試行に向けた単価収集作業を進めている。単価分析の結果を踏まえてユニット単価を作成し、08年度以降の適用を予定している。」(『建設通信新聞』2007.07.05)
●「国土交通相の諮問機関である社会資本整備審議会と交通政策審議会は12日の合同会議で、来年度から5年間の公共事業の進め方を定める『社会資本整備重点計画』の中間報告をまとめた。重点目標に道路や橋の『維持管理や更新』を掲げたのが特徴。新設工事の確保を追及してきた公共事業の転換を求めた。ただ維持管理を名目に公共事業予算を確保しようという思惑も透けており、今後の歳出改革で議論になりそうだ。国が定める公共事業の長期計画の中で、重点目標として維持管理や更新を掲げたのは初めて。背景には、公共事業削減が続いているのに加え、高度成長期に大量に建設した道路や端などのインフラが今後、続々と耐用年数を迎えることがある。国交省試算では、国・地方の公共事業の維持管理・更新費は2007年度が4.5兆円で、公共事業費全体に占める比率は約38%。今の公共事業削減ペースが続くと、23年度には維持管理を公共事業費で賄うことができなくなるとしている。提言では、道路や橋、トンネルなどの公共施設の維持管理や更新について、施設の耐用年数を引き延ばし、全体のコストを最小限に抑えるための維持管理計画をつくる必要性を訴えた。…国交省の維持管理・更新費の試算は、現在あるインフラをすべて維持管理・更新する計算になっているが、人口減少時代に入り、利用が少なくなったインフラは更新せずに廃棄すべきだという声も多い。中間報告も、どこまでを維持管理・更新すべきなのかという具体論には踏み込まなかった。」(『日本経済新聞』2007.07.13)

労働・福祉

●「東京労働局は、都内の主な建設工事現場364カ所を対象に実施した、安全面についての監督指導結果をまとめた。このうち、62%にあたる227カ所で安全確保の手段が取られていないなど労働安全衛生法令違反があり、うち61カ所(27%)は事故発生の危険性が高いとして作業停止などの行政処分をした。最も多かったのが足場や高所の作業床などからの墜落・転落防止に関する法令違反で、144カ所あった。高さ2メートル以上の高所での作業に、命綱などをしようしていないことなどがあったという。選任が義務づけられている安全衛生責任者を置いていないなど、安全衛生管理面での違反も84カ所あった。高所での作業場所に墜落・転落防止の手すりをつけていないなど労働災害が起きる危険性が高いと判断した61カ所については、安全措置が行われるまで作業の停止や立ち入り禁止措置などの行政処分をした。都内では建設業での死亡者が毎年40人程度出ている。2006年度は41人が志望し、56%にあたる23人が墜落・転落によるという。」(『日本経済新聞』2007.07.07)

建設産業・経営

●「国土交通省の建設産業政策研究会…は6月29日、最終会合を開き、『産業構造』『建設生産システム』『人づくり』の3つの改革を柱とした報告書案を大筋で了承した。これらの改革を進めるため、産業政策の方向性として、▽公正な競争基盤の確立▽再編への取り組みの促進▽ 技術と経営による競争を促進するための入札・契約制度改革▽対等で透明性の高い建設生産システムの構築▽ものづくり産業を支える『人づくり』―の5つを打ち出している。…具体的な政策の内容をみると、再編への取り組みでは、2003年4月の改正以降、建設業の認定がない産業活力再生特別措置法(産活法)の活用を挙げ、『建設業の再生に向けた基本方針』(事業別分野指針)の見直し・運用の弾力化で、企業の再編にインセンティブ(優遇措置)を与えることの検討を求めている。入札・契約制度改革では、各地方自治体ごとの入札・契約制度のあり方について、都道府県建設業審議会などを活用し、学識経験者や業界関係者などを交えて議論する必要性を説いている。報告書案の修正は、大森座長に一任され、正式にまとめた後に公表する。宿利正史総合政策局長は『方億初の趣旨を踏まえ、最大限実施に努力し、着実に成果が上がるよう施策を展開していく』と述べた。」(『建設通信新聞』2007.07.02)
●「全国建設業協会(前田靖治会長)は、災害復旧制度の仕組みと対応ノウハウを会員企業が吸収するための支援活動を実施することを決めた。市町村などの小規模自治体が災害復旧制度の理解不足により復旧工事が国庫負担の対象とならず、その結果、企業が先行して行った応急対策がサービス(無償)になってしまうなどの問題を解決することが目的。地域に密着した企業が災害復旧制度を熟知していくことで、結果的に市町村など小規模自治体と連携してスムーズな災害復旧の実現と、地域建設業に対する評価の向上という地域の好循環を目指していく。各都道府県建設業協会や支部は、これまでも災害から地域を守るため、地方自治体と災害発生時に復旧支援を目的とした協定を締結、実際に応急復旧工事を担ってきた。ただ、市町村など小規模自治体は、災害復旧対応に精通した職員を確保することは難しいうえ、市町村道といった公共土木施設が被災し生活に支障が生じても、予算(単独費)の心配から、速やかな応急対策をしなかったり、応急仮工事対策をしても、国からの支援が受けられる対策の範囲を超えて、施工企業が無償で工事をするケースもあった。そのため、全建会員企業が、災害復旧制度の内容、特に国庫負担の対象となる範囲や、申請・災害査定・事業費決定・認定までの内容を把握することで、応急仮工事から応急本工事までスムーズな復旧対応と契約を市町村と連携して行うことを目標とする。具体的には、国土交通省の災害査定官など災害復旧制度を熟知した専門職を招いて各地方整備局単位ごとに勉強会を開き、災害復旧制度の習得を目指す。制度そのものを熟知することで、災害対応に精通した職員がいない市町村など小規模自治体で発生した災害に対して、地域に密着した建設業協会が自治体と連携し、じん速な対応をとることが可能となる。災害復旧工事を担う企業だけでなく、建設業協会や全建にとっても、こうした新たな取り組みによる団体の存在価値向上につながるメリットもある。全建は2日に開いた土木委員会(松本優三委員長)で承認した。」(『建設通信新聞』2007.07.03)
●「国土交通省は2日、『建設業法令順守ガイドライン』を策定したと発表した。元・下請業者間の適正な取引の実現に向け、どういった行為が違反事例に当たるかを具体的に明示。認識不足から起きる建設業法違反を根本から防ぐ狙いだ。同法違反は建設業者だけでなく、工事発注者に起因する事例もあることから、ガイドラインを広く周知し、法令順守の姿勢を業界全体に徹底させる。建設業課長名による通知を、同省が所管している 108の建設業団体、都道府県、各地方整備局などに6月28日付で出した。ガイドラインは、建設業者の下請取引に関する建設業法上の規定、同法に抵触する恐れのある行為事例、関係法令の解説、関連条文などで構成している。下請業者との取引の流れに沿って、▽見積りの条件の提示▽書面による契約締結(当初契約、追加・変更契約)▽不当に低い請負代金▽指し値発注▽不当な使用材料等の購入強制▽やり直し工事▽赤伝処理▽支払い保留▽長期手形▽帳簿の備え付けと保存―の10項目について解説した。建設業法以外でも、関連法として、独占禁止法(建設業の下請け取引)や社会保険・労働保険(強制加入)などにも触れ、違反に該当する恐れのある事例を中心に紹介。中にはベストプラクティス(最優良事例)を掲げている項目もある。下請業者との取引は建設工事現場の所長が行うケースが多いことから、ガイドラインは通知先以外に商工会議所や商工会などにも協力してもらい、広く周知することにしている。同省では配布後も、建設業者や発注機関などから寄せられた情報をベースにガイドラインの加筆・修正を行うなど事例を積上げた後に、今年4月に発足させた建設業法令順守推進本部の指針に位置付ける方針だ。同省は、6月29日に報告書をまとめた『建設産業政策研究会』(総合政策局長の私的諮問機関、大森文彦座長)が行った1年にわたる議論の中で、建設業法違反であることを知らずに違反行為を行っている事例があるとの指摘があったのを受け、ガイドラインを作成することにした。中央建設工事紛争審査会が取り扱う紛争は年間100件前後で推移しており、このうち約半数は元・下請業者間の紛争が占める。同省はガイドラインを通じて元・下請業者間の対等な関係の構築と、公正・透明な取引の普及を促す。」(『建設工業新聞』2007.07.03)
●「住友不動産など不動産大手5社が、開発中の不動産である『仕掛かり不動産』増やしている。2007年3月期末の5社合計は9981億円と、1年前に比べて55%増えた。仕掛かり不動産の大半は開発中のマンションで、市況高騰の恩恵を受けて、ビル事業と並ぶ各社の収益の柱になりつつある。仕掛かり不動産の大幅な増加はマンション開発の積極化を示しており、将来の利益成長を左右しそうだ。仕掛かり不動産は、売却を前提に開発している不動産の建築費と用地費の合計額。大半が分譲マンションだが、転売予定のビルや建売住宅なども一部含まれる。マンションは着工から完成まで1-2年かかるため、現状の仕掛かり高が、数期先の利益に結び付く。この1年で仕掛かり不動産を増やしたのが、住友不。前期末の残高は2248億円と1年前と比べて2.5倍になった。住友不は10年3月期までに、計1万9千戸のマンションを販売する予定だが、すでに用地の仕入れは完了している。現在4千戸前後の年間マンション供給戸数を年6千―7千戸に高める。3年間の合計で売上高8800億円、営業利益1200億円を見込む。昨年子会社の三井不動産レジデンシャルに事業を集約した三井不動産は78%増の3114億円(07年3月末は開発用土地など含む)。総戸数1437戸のパークシティ武蔵小杉(川崎市)など大型物件の完成が08年以降控えており、残高が拡大している。野村不動産ホールディングスは36%増、三菱地所も30%増となった。ただ仕掛かり不動産を急増させているのは、マンション専業デベロッパーも同様。クレディ・スイス証券の調べでは、大京や藤和不動産など専業16社の仕掛かり不動産合計も約1兆円に達する。大谷洋司アナリストは『大手、専業を合わせると、マンション供給能力は過去最高レベルになっており、供給側が考えている価格引き上げは困難。地価上昇や建設費の上昇で利益率は悪化する可能性が高い』との指摘も出ている。」(『日本経済新聞』2007.07.04)
●「建設経済研究所は、建設41社の2007年3月期(一部06年12月期)決算分析をまとめた。41社の完成工事総利益(工事粗利)は総額8432億円、完成工事利益率は6.5%で、ともに1994年3月期の調査開始以来最低となった。民間工事での受注競争の激化や利益率の低い海外工事の増加、公共工事の減少などが利益額・率が悪化した要因とみている。08年3月期は、建築が採算性重視の受注の強化や前期以前の工事損失引当金の影響などもあり利益率が好転すると予想している企業が多いが、土木はほとんどの企業で利益率の低下を見込んでいる。…41社の受注高は前期比 2.2%増の総額13兆0553億円で、前期のマイナスから増加に転じた。内訳は土木が0.5%増の3兆0104億円、建築が3.2%増の9町6781億円。土木、建築とも大手の伸び率が大きく、中堅Aが土木を中心に大幅に受注額を減らしている。土木分野では、海外の大型工事を中心に受注を伸ばした一部の企業と、公共事業削減の影響を受けた企業で受注額に大きな差が生じている。…売上高は企業の好調な設備投資を背景に建築分野が増え、3年連続で増加した。海外の大型工事や不動産関連事業で大手が売上を伸ばす一方、国内土木工事の比率が高いAだけが減少した。08年3月期の見通しについては、談合事件や低価格入札の増加といった不透明な公共工事の受注環境や価格競争激化の懸念、不動産事業の売上高減少により、大手を中心に前年度比でマイナスを予想している。」(『建設通信新聞』2007.07.11)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国交省建築指導課はこのほど、地方公共団体における耐震改修促進計画の策定予定及び耐震改修等に関する補助制度の整備状況について公表した。昨年7月末にも公表されたが、今回はそのフォローアップ調査結果。今年4月1日現在で耐震改修計画を策定していない都道府県は、石川、山梨、長崎、鹿児島の4県だが、4県とも7月までに策定する予定。市区町村では策定済みが40(日本全国1831市区町村の2.2%)でしかないが、36市区町村が7月までに策定する。今年度中に策定予定は675(累計751で41.0%)、平成20年度以降に策定する予定は112(累計863で 47.1%)。策定済みの市区町村が最も多いのは静岡県で、42市区町村のうち21(50%)が策定済み。次いで岐阜県(12市区町村で29%)。一方、栃木、愛知、三重、滋賀、和歌山、徳島、愛媛県は今年4月現在、策定済みの市区町村はゼロだが、策定予定ありが100%となっている。静岡県も残る5割の市区町村が策定予定であり、100%になる。耐震診断・改修補助制度については4月現在、戸建て住宅を補助対象とする市区町村が多い。補助が受けられる市区町村とその割合をみると、戸建住宅の耐震診断は1005市区町村(54.9%)が実施、耐震改修については535(29.2%)。マンションの耐震診断補助は190(10.4%)、耐震改修補助は75(4.1%)、非住宅建築物の耐震診断補助は133(7.3%)、耐震改修補助は 30(1.6%)。」(『日本住宅新聞』2007.07.05)
●「マンションの欠陥がどの程度なら施工業者が損害賠償責任を負うのかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(今井功裁判長)は6日、『建物として基本的な安全性を損なう瑕疵(かし)があり、居住者らの生命、身体が侵害された場合、不法行為による賠償責任を負う』との初判断を示した。その上で、大分県別府市のマンション所有者の賠償請求を退けた二審判決を棄却し、福岡高裁に審理を差し戻した。同小法廷は、施工業者が賠償責任を負う対象についても『建築契約を結んだ建築主だけではなく、建物を購入した居住者らも含まれる』と明示。施工業者と契約関係がない居住者や隣人らの賠償請求権も認める内容で、欠陥建物の被害救済の道が広がりそうだ。訴訟は別府市のマンションを建築主から購入した所有者2人が、施工業者と設計会社を相手に約6億4000万円の賠償を求めて起こした。一審・大分地裁はマンションの欠陥と業者側の責任を認め、約7400万円の賠償を命令した。しかし、二審判決は、施工業者の不法行為責任について『建物の基礎や構造にかかわる重大な瑕疵がある場合に限られる』と判断。業者の賠償責任を認定するのに高いハードルを課し、原告の請求を退けた。同小法廷は戸の日の判決で、建物が備えるべき安全性について『居住者や訪問者、そこで働く人など建物利用者に加え、隣人や通行人の生命、身体も危険にさらしてはいけない』と指摘。具体例として、バルコニーの手すりに欠陥がある場合を上げ、『居住者が通常に使用していても転落する危険があり、基本的安全性を損なう瑕疵といえる』とした。その上で、『建物の基礎や構造に欠陥がある場合に限って不法行為責任を認めるとした二審判決には、民法の解釈に誤りがある』と判断。マンションの欠陥が基本的な安全性を損なう程度といえるかどうか審理のやり直しを命じた。」(『日本経済新聞』2007.07.07)
●「パナホームは10月から、住宅密集地などの狭い敷地向けの戸建て商品を東京で販売する。柱や梁など骨組みを小型化し、狭い土地でも住宅を建てやすくした。東京都心部では、細かい注文に融通が利く地元工務店に押され、大手ハウスメーカーの受注は伸び悩んでいる。手薄の都心部向けに新商品を投入し、団塊世代の建て替え需要の取り込みを急ぐ。3階建て住宅『ジェイカーサ』は主に100平方メートルを下回る敷地での建設を想定している。狭く複雑な形状の土地が多い東京23区で限定販売する。骨組みや部材を小さくしてパーツごとに簡単に組み立てられるようにした。現場までの運送や加工が簡単にできるほか、大型クレーンでの作業も不要という。土地の形や大きさに合わせて柱の位置をずらせるため、変則的な形の敷地でも間取りやプランを柔軟に変更できる。大手ハウスメーカーが得意とするプレハブ住宅は郊外の広い敷地を想定した商品が多かった。部材の大きさや規格も細かく決まり、都心の狭くて小さい敷地に合わせて設計や施工の仕方を変えるのは難しかった。」(『日本経済新聞』2007.07.08)

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