情勢の特徴 - 2007年8月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2007年分の路線価(1月1日現在)を公表した。全国約41万地点の標準宅地の平均路線価は1平方メートル当たり前年比8.6%、1万円増の12万6000円で、2年連続の上昇となった。東京・表参道や大阪・キタの御堂筋など都市部の一部で上昇率が40%を突破。地価の上昇傾向が東京、大阪、名古屋の三大都市圏だけでなく、地方の中核都市にまで広がり始めている。圏域別の上昇率は、東京13.1%(前年3.5%)、大阪8.1%(同0.7%)、名古屋9.1%(同2.1%)。三大都市圏いずれも2年連続の上昇で、上昇率が大幅に拡大した。前年マイナス5.7%だった地方圏も0.0%の横ばいとなった。都道府県別でみると、3年連続の東京、2年連続の千葉、愛知、京都、大阪など12都道府県で上昇を記録した。前年までの下落から上昇に転じたのは、北海道、宮城、埼玉、神奈川、滋賀、兵庫、福岡の各県。静岡、奈良、岡山、愛媛の4県は横ばいとなった。下落が続く31県のうち26県で下落率が縮小しており、下げ幅が拡大したのは大分だけだった。県庁所在都市の最高路線価は、東京の7年連続など計20都市で上昇した。昨年は上昇率が20%を超えたのが東京と名古屋の2都市だったが、今年は札幌、仙台、横浜、京都、大阪、神戸、福岡が加わり計9都市に増えた。地方は多くで下落傾向が続くものの、下落した都市数は前年の30都市から19都市にまで減った。下落率はいずれも前年より縮小している。」(『日本経済新聞』2007.08.01)
●「08年度予算の概算要求基準(シーリング)の決定へ向け、政府・与党内での議論が大詰めを迎えている。7日に開かれた政府の経済財政諮問会議では、公共事業費の前年度比3%削減などを盛り込んだ『08年度予算の全体像』が原案通り合意。政府・与党が8日開いた政策懇談会でもシーリングが議論され、公共事業費の3%削減や社会保障費の伸びを2200億円圧縮することなどで合意した。政府は9日夕に開く諮問会議でシーリングを取りまとめ、10日に閣議了解する運びだ。しかし、こうした削減への反発も依然としてくすぶっている。8日には自民党国土交通部会が公共事業費3%削減に『断固反対である』との決議文をまとめ、中川昭一政調会長に対して、政府に見直しを働きかけるよう要請した。…自民党内では、小泉政権下から続く公共投資の縮小が地方を疲弊させ、地方票の離反を招いて参院選大敗の一因になったとの見方も強く、7日の政調全体会議と8日の国土交通部会で、公共事業費削減に対する反対論が噴出。国土交通部会では、『マイナス3%というのは世の中を見ていない。見識を疑われる。』など、地方の疲弊が問題視されている中で公共事業費の大幅削減を続ける政府の姿勢に批判が集中した。」(『建設工業新聞』2007.08.09)
●「国内最大の民間年金基金の企業年金連合会は、2008年度から不動産の開発事業への投資を始める。大手の不動産会社と組んで高層のオフィスビルや商業施設を新たに建設し、テナントから得る収入で年金資産を増やす。最大で運用資産13兆円の5%にあたる6500億円程度を投資に充てる方針。年金マネーの不動産市場への流入が本格化する。…連合会の前身の旧厚生年金基金連合会はバブル期に一時値上がりを狙って不動産投資をしたが、市況悪化で1992年度に停止。この反省から今回は『不動産の値上がり益は狙わず、賃料収入の獲得だけを目的にする』(年金運用部)。10年を超える長期投資を原則とし、短期売買向きの不動産投資信託(REIT)などは投資対象にしない。重点的に投資するのは東京ミッドタウン(東京・港)のような大規模都市再開発事業。連合会は計画段階から事業に参画し投資物件の収益性向上に努める。…企業年金の上部組織である連合会が不動産投資に乗出すことで、今後は参加の厚生年金基金など企業年金が追随する可能性もある。連合会に加盟している約1400の企業年金の資産合計は50兆円程度で、不動産投資が広がれば市場にも大きな影響を及ぼしそうだ。ただ、不動産開発事業は、賃料が下がったりテナントが集まらないなどで投資が失敗するリスクはある。年金基金が不動産で安定した利回りを確保するためには、投資物件選びが課題になる。」(『日本経済新聞』2007.08.15)

行政・公共事業・民営化

●関西国際空港の第2滑走路が2日、使用開始された。需要が伸び悩み、関西空港株式会社のきびしい経営状況が続くなか、総事業費1兆円近い第2期工事には「ムダな公共事業」との批判が強く、結局、旅客ターミナルなどの建設は先送りの形となり、問題山積のスタートとなった。第2滑走路はジャンボ機の運用も可能な全長4千メートル。「10月からは新しい管制システムで国内初の完全24時間対応の空港」として売り込んでいる。関西空港は大阪国際空港(兵庫県伊丹市など)の騒音解決のために大阪湾の沖合に埋め立てられた日本初の「民活」方空港で、1994年9月に開港した。1期事業は埋め立て土砂による改訂の地盤沈下などで建設事業費が1.5倍に膨れ、総事業費は約1兆5千億円。関空会社は焼く1兆2千億円近い有利子負債をかかえており、バブル崩壊やアジアでの相次ぐ主要空港の開港、世界で最も高い着陸料などで需要が低迷し、経営難に追いこまれている。…欧米の長距離旅客線の撤退が相次ぐなど発着回数は、現行の滑走路1本の発着能力16万回に対し、06年度で約11万6千回にとどまっている。関空の需要が伸び悩むなか、この間、神戸空港や中部国際空港が開港した。…2期工事を強行した矛盾はますます深刻になっている。(『しんぶん赤旗』2007.08.03より抜粋。
●「防衛省は2日、沖縄に駐留している米海兵隊のグアム移転事業に関する企業向け説明会を開いた。移転事業は、グアム島に米海兵隊の司令部庁舎や家族住宅、関連インフラなどを日本政府の負担で整備する事業で、日本側の負担総額は60.9億ドル(約7200億円)を想定。家族住宅とインフラの整備には民間活力が導入される。日本政府が主体となって、来年後半にも民間事業者の選考作業を開始し、10年春か夏にも合意文書を締結して工事に着手する。移転事業の完了は14年を予定している。説明会にはゼネコンや商社、金融機関など270社が参加した。…日米両政府の合意によると、日本側の負担で▽司令部庁舎、教場、隊舎、学校等生活関連施設▽家族住宅▽インフラ(電力、上下水道、廃棄物処理)―を整備する。経費の内訳は、司令部庁舎などが28.0億ドル(約3300億円)、家族住宅が25.5億ドル(約3000億円)、インフラが7.4億ドル(約900億円)。うち、家族住宅とインフラの整備に民間活力を導入する計画で、想定スキームによると、国際協力銀行(JBIC)と民間企業が共同で特別目的事業体(SPE)を設立し、米国政府から土地を借り受けて整備する。住戸数は3500戸程度で、1戸建て住宅と3階建てまでの集合住宅を用意する。防衛省は、家族住宅とインフラとで事業を分け、2つのSPEに発注する方向で検討を進める。事業期間は、家族住宅が50年程度で、インフラについては現在詰めている。現時点のスケジュールでは、来年後半から民間事業者の選考を開始。10年春か夏にも着工し、工期は4〜5年を見込む。…残りの司令部庁舎などは米国政府が入札を行う。入札は、現時点では08年後半から09年にかけての時期になる見通し。日米両政府は、日本企業が米国企業などと同じ条件で競争できるようにすることで合意している。」(『建設工業新聞』2007.08.03)
●「日本PFI協会(植田和男理事長)は3日、既存の学校施設の耐震改修と再生整備を促進するため、複数校をまとめて事業対象とし、標準化された簡易型PFI方式を活用する手法を提案した。1校当たりの耐震改修は小規模で、事業内容自体もある程度標準化できることから、複数校をまとめて簡易型PFIを導入する。…提案によると、事業者選定プロセスを簡素化することで、平均で約12ヵ月を要する実施方針から契約調印までの期間を5ヵ月に短縮する。学校施設の耐震改修について、コンサルタントによる行政支援業務と契約書(案)をモデル化しておき、審査体制も簡素化。一定の基準に基づき行政が行った評価を、学識者を交えた審査委員会が監査する体制を整え、審査委員会の開催を1〜2回で済ませる。『SPC(特定目的会社)の設立が大変だ』という声もあることから、代表企業自らが事業者となることも許容する。…複数校をまとめて整備するPFI事業は、三重県四日市市で実例がある。植田理事長は、複数校の耐震改修にPFIを導入する意義について、『長期契約により複数校(棟)を一括管理することで、効率的なマネジメントが実現する』と説明。耐震性の高い学校施設の整備を早期に実現する必要性を強調した。」(『建設工業新聞』2007.08.06)
●「国土交通省は8日、2008年度予算概算要求の基本的方向をまとめた。▽国際競争力の強化と地域の活性化▽地球環境時代や少子高齢化への対応▽国民の安全・安心の確保――の主要検討事項に重点的に取り組むなど、メリハリの効いた予算を目指す。また、予算の効率的な執行に向けて、中長期的な視野に立った戦略的な維持管理を実施し、社会資本整備を重点的、効果的、効率的に推進するため、08−12年度を計画期間とする次期社会資本整備重点計画を策定する。道路特定財源については、06年12月に閣議決定した『道路特定財源の見直しに関する具体策』に基づいて見直しを進め、真に必要な道路整備を計画的に進めるため予算を確保する。概算要求に向けた主な検討事項は次のとおり。=国際競争力の強化と地域の活性化=<アジア・ゲートウェイ構想の実現など成長基盤の強化>▽大都市圏や地域の拠点的な空港の整備▽スーパー中枢港湾プロジェクトの充実・深化▽国際物流に対応した基幹道路ネットワークの整備▽三大都市圏環状道路の整備。<歴史・風土に根ざした美しい国土づくりと観光交流の拡大>▽歴史的環境の保全・整備によるまちづくりの推進▽国際競争力の高い魅力ある観光地の形成▽国際観光交流の拡大などを通じた観光立国の実現。<自立した活力ある地域づくり>▽自立的な広域ブロックの形成や地方都市でのまちづくりの促進▽地域公共交通に対する総合的な支援▽整備新幹線の着実な整備▽建設業の活力回復▽臨海部産業エリアの形成と港を核とした地域づくり。=地球環境時代や少子高齢化への対応=<低炭素社会・循環型社会の構築>▽地区・街区レベルでの環境負荷低減のための取り組み支援▽住宅・建築物の省エネルギー性能の向上、グリーン庁舎の整備。<誰もが暮らしやすい生活環境の実現>▽200年住宅ブロジェクトの推進▽住宅セーフティネットの充実▽一体的・総合的なバリアフリー化の推進。=国民の安全・安心の確保=<防災・減災対策の強化>▽住宅・建築物の耐震化、被災したまちの活力ある早期復興▽公共交通機関の耐震化による大規模災害への対応力強化▽激化する水害への予防対策の充実、流域一体となった治水対策の推進▽防災気象情報の高度化や地震津波監視機能の強化。<日常生活における安全・安心対策の強化>▽新築住宅の瑕疵担保責任の履行の確保に関する新制度の万全な運用▽公共交通の安全・保安対策の強化▽既存の社会資本ストックの戦略的維持管理▽踏み切り対策のスピードアップ。」(『建設通信新聞』2007.08.09)
●「国土交通省は9日、同省所管の公益法人など153団体について、国家公務員の再就職者数と国からの交付金(補助金)額をまとめた資料を明らかにした。昨年度上半期に支出した国の交付金(補助金額)が100億円を超えた4団体には公務員OBが1団体あたり122人天下っている計算。天下りの受け入れが補助金交付とセットになっている仕組みが改めて浮き彫りになった。…交付額が最も多いのは独立行政法人自動車事故対策機構で128億円で、OBを72人受け入れていた。社団法人の中部建設協会は200人以上のOBを抱え、国から100億円超を受けとっている。国からの支援が多い上位10団体の再就職者1人あたりの交付金額は1億2千万円程度。全団体平均の約3700万円を大きく上回った。」(『日本経済新聞』 2007.08.10)

労働・福祉

●「鉄筋加工など建設関連工事の単価上昇が続いている。景気拡大が続き大都市の再開発需要が見込めるなか、熟練工などの不足感が強まっているためだ。夏本番を迎え、暑さで人員確保は一段と難しくなってきた。専門業者に対するゼネコン(総合建設会社)の発注単価は年初に比べ最大で1割前後上昇している。特に人手不足感が強いのが鉄筋・型枠工事だ。鉄筋を切断して組み立てる鉄筋工事は『人員が20%ほど足りない』(全国鉄筋工事業協会)といい、東京地区の工事単価は1トン4万3千円前後。年初比で平均千円(2%)程度上がった。大阪も4万2千円前後と約2千円(5%)上昇した。暑さが人手不足に拍車をかけている。鉄筋コンクリートの基礎をつくる型枠工事は『今月は東京で働ける人の数が必要人員に対し約25%不足する見込み』(業界団体の日本建設大工工事業協会)。東京の単価は1平方メートル3千9百円前後と年初比11%高い。大阪市内の工務店も『労働条件が悪化する8月は現場の作業効率も落ちる』と話す。大型物件中心に工期の短縮が進み、一時的に集中して多数の技能者が必要になったことも影響している。人手不足による工事の遅れを懸念するゼネコンは、専門業者の値上げ要求を受け入れる姿勢をみせつつある。建設関連の労働者数は、減少が続く。6月時点の建設就業者数は 549万人。10年前のピークに比べ22%減った。」(『日本経済新聞』2007.08.04)

建設産業・経営

●「建設産業専門団体連合会(才賀清二郎会長)は31日、東京・霞が関の東海大学校友会館で、国土交通省との意見交換会を開き、調査基準価格・特別重点調査の設定水準を引き上げることを要望した。要望に対して国交省は、特別重点調査が試行したばかりのため、試行を継続し、データを収集していくと明確な回答を避けた。一方、下請現場管理の別枠計上と確実な支払確認を求める要望に対しては、専門工事業の技術力などを審査する新たな総合評価方式を検討していると説明した。建専連は、国交省に対して、▽調査基準価格・特別日本住宅店調査の設定水準の引き上げ▽下請現場管理費の別枠計上と確実な支払い確認▽建築一式工事と専門工事の役割の明確化▽元下契約の適正化と法令順守の徹底▽公共事業労務費調査方法の改善―の5点を要望した。このうち調査基準価格・特別重点調査の設定水準の引き上げは、全国基礎工業協同組合連合会の梅田巌会長が要望し、『現在の水準では、下請けの経費と利益が確保できない』と訴えた。その根拠となっているのが、国交省の実施した工事コスト調査で、落札率が85%未満では、下請けが黒字で工事成績も平均点以上の工事が大幅に減り、下請けの赤字が急増するといった結果が出ている。下請現場管理費の別枠計上と確実な支払い確認では、日本建設大工工事業協会の三野輪賢二副会長が『総価契約によってコスト構成が透明になっていない一方、発注者の積算体系が元請けの直営施工方式時代のままで、分業関係を基本とする現在の建設生産システムに合致していない』と指摘し、積算体系の見直しとオープンブック(施工体制事前提出)方式の導入を求めた。また、日本シャッター・ドア協会の岩部金吾会長は元請けの現場管理能力の低下を指摘し、『本来であれば元請けが作成すべき施工図を下請けが作らされている』と訴え、建築一式工事と専門工事の役割を明確化することを要望した。岩部会長は『元請けと下請けの役割についての問題は、「建設産業政策2007」の理念が実現されれば解決すると思うが、実態は逆の方向に進んでいる。派遣社員の現場監督や施工図への無理解など、ゼネコンの商社化が進み、現場力の低下が著しい。協会会員の多くは中小企業の零細者集団であり、専門外の仕事をすることへの負担は大きい』と、元下の役割の境界線が不明瞭となっていることに危機感を示した。」(『建設通信新聞』 2007.08.01)
●「海外建設協会(竹中統一会長)は1日、2007年度第1四半期(4-6月)の会員企業46社の海外受注実績を公表した。1兆6484億円と過去最高額を記録した06年度の同期比で5割増となり好調を維持している。6月累計(第1四半期)は、件数が前年度同期比 24.4%増の479件となった。受注額は53.8%増の3830億8300万円と大幅に増加した。地域別では、年度受注額の半分近くを占め、主力地域のアジアの受注額が43.8%(本邦法人と現地法人合算)と好調を維持した。また、受注額シェアが3年間で30倍と急拡大した中東は218.4%増と3倍増を記録した。受注額が急増している中東の大きな特徴は、1件当たりの受注額が増加している点だ。最大の市場であるアジアの今期1件当たり受注額の5億 4300万円程度に比べ、中東は06年度第1四半期で45億8600万円だったが、07年度第1四半期は116億8000万円とさらに受注案件が大型化した。このほか、アフリカも155.1%増、太洋州その他163.9%増と2.5倍以上の伸びとなった。また、これまで主力市場としてけん引してきた北米も 0.2%減と前年度同期水準を維持した。さらに欧州も17.6%増と増加したが、中南米は1.2%減、東欧も34.6%減と減少した。」(『建設通信新聞』2007.08.02)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年6月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、383件で前年同月比 10.6%増となった。件数が380件を上回ったのは04年3月の385件以来、3年3ヵ月ぶりのこと。産業別構成比でも32.3%を占めて、6ヵ月ぶりに3割を超えた。負債総額は769億100万円で5.3%減。4ヵ月ぶりに前年同月を下回り、平均負債額も14.5%減の2億円になった。倒産の原因で最も多かったのが、受注・販売不振で13.0%の252件。全体の65.7%となっている。」(『建設通信新聞』2007.08.10)

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