情勢の特徴 - 2007年8月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は、2008年度予算概算要求をまとめた。一般会計は前年度比20%増の7兆2566億円で、うち国費ベースの公共事業関係費が16%増の6兆334億円となった。特別要求枠の『重点施策推進要望』には2493億円を盛り込み、公共事業関係費の総額は 21%増の6兆5730億円となる。また、財政投融資は8%減の3兆6780億円となった。重点的取り組みとして、▽国際競争力の強化・地域の活性化▽地球環境問題・少子高齢化への対応▽国民の安全・安心の確保――の3分野を打ち出し、限られた予算で最大限の効果の発現を目指す。事業別要求額を事業費ベースでみると、治山治水が8%増の1兆5263億円、道路整備が5%増の4兆3779億円、港湾空港鉄道などが8%増の1兆2181億円、住宅都市環境整備が10%増の7兆604億円、下水道水道廃棄物処理などが12%増の1兆6306億円で、一般公共事業は8%増の15兆8133億円。このほか災害復旧などの647億円(1%減)、官庁営繕の462億円(76%増)などが加わる。重点的に取り組む事業では、大都市圏や地域の拠点的な空港整備が8%増の 1081億円、スーパー中枢港湾プロジェクトの充実・深化が22%増の640億円、国際物流に対応した幹線道路網の整備が19%増の2122億円、三大都市圏環状道路の整備が18%増の2388億円、整備新幹線の着実な整備が12%増の790億円、総合的なバリアフリー化の推進が15%増の2889億円となっている。自立的な広域ブロックの形成は前年度の13.8倍に当たる2768億円、建設業・不動産業の一体的な振興は前年度の2.5倍の22億円を計上した。住宅・建築物の耐震化と密集市街地の整備促進は87%増の542億円、激化する水害・土砂災害への予防対策などの充実が22%増の1044億円、予防保全的管理への転換に向けた社会資本の戦略的維持管理は6%増の5164億円を要求する。重点施策推進要望枠は、スパー中枢港湾プロジェクトの推進が 121億円、羽田空港整備による航空交通ネットワーク強化の推進が84億円、成田高速鉄道アクセス線の整備が21億円、歴史・文化を生かしたまちづくり支援が100億円、中心市街地の活性化が100億円となった。また、地域活性化基盤道路整備プロジェクトに680億円、水辺での良好な環境の保全・再生・創出に123億円、下水汚泥の資源・エネルギー循環の推進に148億円、二酸化炭素吸収源対策に役立つ都市緑化の推進に3億円、高齢者などの住宅の耐震改修促進に45億円、安全で信頼性の高い道路ネットワークの緊急整備に305億円、密集市街地の緊急整備に75億円、防災公園の緊急整備に52億円、緊急浸水対策に528億円などを要望する。」(『建設通信新聞』2007.08.30)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、2008年度の重点政策として、社会資本の戦略的な維持管理に取り組む。高度経済成長時代に集中投資した社会資本の高齢化に対処するため、事後的管理から予防保全的管理に転換し、施設の長寿命化・延命化で更新時期を平準化する。具体化に当たっては、外部有識者で構成する検討委員会を設置し、先導的な取り組みとして道路(舗装、橋梁)、河川、下水道、港湾施設を対象に、考え方を整理する。国交省によると、建設後50年を経過する道路橋梁の割合は、06年度の約6%が10年後には約20%まで増加し、水門、ポンプ場など河川管理施設の割合も06年度の約 10%から約23%、岸壁は約6%から約25%まで拡大するという。維持管理・更新費の急増は明らかだが、公共事業費の削減ペースが現在の状況のまま続くと社会資本の整備だけでなく、既存施設の維持管理・更新にも支障をきたす恐れがあるため、劣化状況・健全度の評価による修繕・更新時期の予測など予防保全的管理の考えを導入する。国交省は、この施策効果として、▽致命的損傷・崩壊を計画的な点検・修繕などで予防し、社会資本の安全・安心を確保▽施設に応じた経済性などの観点からライフサイクルコストを縮減▽社会資本の計画的な長寿命化・延命化による更新時期の平準化――を挙げている。…予防保全的管理の実施に向け、劣化状況の把握に必要な健全度指標の検討、劣化曲線の予測手法の開発を支援するための研究組織を設置するほか、点検する技術者の技術力を養成するため、資格制度の創設、研修の実施も検討する。また、点検工法など技術開発の研究に対する費用の助成、地方自治体の維持管理計画策定と計画に基づく施設管理の一部費用の補助も行う。予算制度や各技術的資料などは、07年度以降に充実させていく。国交省は、道路橋梁の長寿命化修繕計画を策定する自治体に対して計画策定費の半分を補助する制度を07年度に導入しており、計画に基づかない修繕・架け替えへの補助は5年後に廃止する。河川でも同様な措置を実施しており、その他についても拡大していく方針だ。」(『建設通信新聞』2007.08.16)
●「国土交通省は2008年度の税制改正要望に、老朽化した住宅の耐震補強工事を支援する耐震改修促進税制の拡充を盛り込む。新潟県中越沖地震で耐震強度が不足した住宅の倒壊による犠牲者が目立ったことなどから、すべての市町村を制度の対象とし、全国的に耐震改修を促す。耐震改修税制は回収費用の10%(最大20万円)を、その年の所得税から税額控除する仕組みで、06年度から導入された。建築基準法の耐震基準が強化された1981年以前に建てられた住宅について、住宅の筋交いの増設や柱の補強工事などをした場合を対象としている。・・・国交省の推計では、耐震強度不足の住宅は全国で約1150万戸。政府は06年に施行した改正耐震改修促進法で@全住宅に占める耐震化住宅の比率を現在の75%から15年までに90%に上げるA06年から10年間で百万戸を耐震改修する――との目標を掲げた。目標達成には、年10万戸のペースで改修を進めていく必要があるが、国交省によると、改修税制の利用件数は年間約4000件にとどまる。目標達成が大幅に遅れる懸念が強まっていることから、拡充を求める。」(『日本経済新聞』 2007.08.27)
●「国土交通省が全国で建設中のダム149基の建設費が約9兆1千億円と当初見積もりの約1.4倍に膨らんでいることが日本経済新聞の調べで明らかになった。工期の延長や設計変更などが主因で、見積りの約16倍の建設費を計上しているダムもある。無駄な公共事業の見直しで、いったん建設を凍結したダムでも建設再開の動きがあり、さらに建設費が膨らむ可能性が大きい。国交省から入手した資料によると、149基のダムが完成するまでに必要な建設費は総額で約9兆1千億円。当初の見積りから2兆8千億円増えた。すでに約4兆5千億円は支出済みで、残りも今後10年以上かけて支出する。これとは別に新たに18基のダムも建設準備に入っている。建設費増大の要因の1つが工期の延長だ。奈良県の大滝ダムは当初計画を1972年に策定し77年度に完成する予定だったが、35年たったいまでも出来上がっていない。…この家庭で、当初は230億円の見積りが3640億円(現時点の見込み)と約16倍に膨らんだ。…当初計画より工期が遅れているダムは90基と全体の6割にのぼり、そのうち18基が当初の完成予定の年から10年以上経ってもまだ建設中だ。…滋賀県の大戸川ダムは国交省が05年7月にいったん凍結したが、今月、設計変更し建設する方針に転換した。長野県では田中康夫前知事が01 年に『脱ダム』を宣言したが、現職の村井仁知事は方針転換した。」(『日本経済新聞』2007.08.30)

労働・福祉

●「東京都内の労働災害が大幅に増加している。このため、東京労働局は建設業労働災害防止協会東京支部と連携をとり、9月に労働災害防止に向けた対策を講じる考えでいる。…同局がまとめた2007年1月から7月までの死傷災害発生状況(速報値)によると、全産業で4401 件となっている。前年同期比で1.3%増、件数で55件増えている。業種別では建設業では建設業が最も多く全体の約2割を占める861件発生、前年同期より7.9%、63件も増えている。建設業の死傷災害の増加は、建築工事業での増加によるもので、前年同期の526件から620件と100件近く増加した。土木工事業は20件減の142件、木造家屋建築業が10件減の71件、その他の建設業は11件減の99件となっている。事故の型別でみると、墜落・転落が 297件と最も多く、全体の34.5%を占める。次いではさまれ・巻き込まれが100件、転倒が93件など。…現場の施工管理を派遣労働者に任せるケースが増加し、派遣労働者の労働災害が増加にあるという。労働災害が発生した場合に労働基準監督署に提出する労働者死傷病報告書によるもので今後、東京労働局では正確な実態を把握する考えでいる。災害の要因は、開口部からの転落や昇降設備があるのに使わなかったといった管理者自らが近道行動によるものだという。元請企業から十分な説明を受けていないのではないかという指摘もある。また、被災者の年齢も30歳代から60歳代までと経験年数との関係はないようだ。」(『建設通信新聞』2007.08.16)

建設産業・経営

●「全国建設業協会(全建、前田靖治会長)が公表した07年度第1四半期(4〜6月)の会員企業の倒産は128件と、前年同期に比べて30件増加した。倒産企業の規模をみると資本金1000万円〜5000万円未満の階層が100件と、全体の8割弱を占めた。地区別では九州の32件が最も多く、業種別では土木が81件、建築が9件、土木建築が20件となっている。倒産原因は『受注減少』が79件と全体の6割を超え、公共事業費の削減による工事量の減少と受注競争の激化を背景とした倒産が多数を占めている状況があらためた浮き彫りになった。倒産形態は破産が65件、内整理が 32件、銀行取引停止が10件。5件は民事再生法を適用した。四半期ベースで倒産件数が120件を超えたのは06年度第2四半期(7〜9月)以来。06年度第4四半期(1〜3月)と比較した地区別の状況は、倒産件数が九州で19件、関東甲信越で15件増加するなど、近畿を除く7地区で倒産件数が増えた。倒産企業のランク(県ベース)はA等級が34件、B等級とC等級が各26件、D等級が9件、E等級が0件となっており、ランクが高いほど倒産件数が増加する傾向が見られた。」(『建設工業新聞』2007.08.21)
●「堅調な民間設備投資を追い風に、大手・準大手ゼネコンの設計施工一括受注比率が拡大基調にある。直近決算の建築受注に占める設計施工比率は平均で前期比3.4ポイント増の50.2%となった。施設の大型化とともに、短工期の要求が強まり、効率的な施工が実現しやすい一括発注を選択する建築主が増えたことが要因。2002年度に30%後半だった比率は右肩上がりに推移し、この5年間で1割強も上昇した。日刊建設通信新聞社が完成工事高1000億円以上のゼネコン25社を対象に調査したところ、設計施工比率は年々増加し、直近決算の06年度実績で5割に乗ったことがわかった。とくに工場などの生産系では施設の大型化とともに、短工期が強く求められ、設計施工一括発注を選択する傾向が強まった。土地持込を足がかりに受注を優位に進めるなど川上営業の拡大がマンションやオフィスでも着実に広まっている。建築プロジェクトは分野を問わず、土地取得から完成、運営までの事業化スキームが短縮傾向にあり、これまでのように設計と施工を分離した対応ではスケジュール的に間に合わない状況が、ゼネコンへの一括発注に結びついている。短工期要求に後押しされている設計施工一括発注の動きはべつの側面でも、追い風が吹こうとしている。6月の改正建築基準法施行により、建築確認はこれまで以上に厳格になり、計画変更があった場合、許可が下りるまで工事の中断を余儀なくされるケースも出てくる。『施工時のVEを極力減らすつくり込みが求められるため、設計段階から施工方法を加味できる一括発注が優位に動くだろう』(大手)との見方もあるからだ。」(『建設通信新聞』2007.08.22)
●「積水ハウスの2007年7月中間期の連結経常利益は、前年同期比37%減の490億円前後となったようだ。従来予想を約30億円上回る。都市再開発事業でオフィスビルの売却益が減る一方、分譲マンションや集合住宅の販売が計画を上回り、減益幅縮小に寄与した。売上高は 3%減の7970億円前後と、従来予想を190億円下回りそうだ。消費税率引き上げ論議や金利動向が不透明なことから新築住宅を買い控える動きが広がり、戸建て販売が期初予想を約15億円上回る。地価上昇を受け、全国の中核都市で高価格帯を中心とした分譲マンションへの価格転嫁を進め、期初予想より分譲マンション販売の売り上げが1割伸びた。建築資材の価格高騰が続いたが、生産や出荷、建築工事の平準化で費用を削減し補った。前年同期は自社で再開発したオフィスビル『赤坂ガーデンシティ』の土地所有権と建物の階数の3分の2を売却し、売却益300億円を計上した。今中間期は残り3分の1の売却分の利益が百億円程度にとどまり、大幅な減益となった。純利益は従来予想の260億円を上回り、前年同期比37%減の285億円前後となったもよう。下期は、4月に発売して受注好調が続く戸建て新製品が貢献して増収を確保する見通し。さらに、出資した東京ミッドタウンの持分を三井不動産に売却する方針を固めており、通期は売上高が前期比8%増の1兆7200億円、経常利益は5%増の1200億円を見込む。」(『日本経済新聞』2007.08.25)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は08 年度、民間事業者による地方の小規模都市開発を金融面から後押しする新たな支援制度を設ける。大都市と異なり、地方都市では投下資金の回収リスクが高いことなどから、民間投資が少なく活性化が進んでいない。新制度では、面積要件や事業内容などを基準にプロジェクトを選定した上で、民間都市開発推進機構(民都機構)を介して出資する従来制度を拡充する一方、金融機関から開発事業者への債権を民都機構が買い取って流動化する制度を創設する。08年度予算の概算要求に制度創設と運用費を盛り込む。…08年度から制度を拡充するのは、民都機構が民間事業者に出資する『まち再生出資業務』。市町村が定める都市再生整備計画の区域内で、民間事業者が都市開発事業を実施する場合に民都機構が開発資金の一部を提供する制度だ。資金提供の方法は、出資や信託受益権の取得など。税制上の遊具措置も認められている。現在の面積要件は0.5ヘクタール以上となっているが、来年度からの拡充では、面積要件を緩和することなどで、制度活用の幅を広げる方針だ。創設する支援制度は、金融機関の民間事業者向け融資の債権を民都機構が買い取り、機関投資家などに信託受益権を売却するスキーム。民都機構が債権を取得することを前提に、民間事業者が金融機関からの借り入れができるようにする。融資が認められやすくなることで、民間事業者の資金調達がスムーズになるとみている。制度の対象は、人口30〜50万人程度の小規模な地方都市を想定。これより小規模な都市でも民間事業者の参入意向があれば制度を適用できるようにする。」(『建設工業新聞』2007.08.28)

その他