情勢の特徴 - 2007年9月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「内閣府がまとめた災害・地震対策関係の2008年度予算概算要求は、前年度比18.2%増の7901億8200万円となった。歳出・歳入一体改革への取り組みが進む中、公共事業費についてはシーリング(概算要求基準)で6年連続の3%削減を迫られるなど厳しい状況下にある。ただ「生活の安全・安心」は政府の骨太方針で重点分野に位置付けられている聖域ということもあって、各府省とも強気の要求姿勢がみられる。主要事項の中でも建築物の耐震化促進費は133.7%増と2倍以上の増額要求となっており、防災拠点官庁施設や学校などの耐震化を促進する。各府省は、政府の中央防災会議が6月に決定した、▽大規模災害の被害軽減への戦略的取り組み▽国民運動の展開による防災力の向上▽迅速・的確な防災情報の提供▽建築物の耐震化の促進▽災害に強い社会基盤づくり▽災害応急対応力の増強▽被災地の復旧・復興支援▽国際防災協力の推進――の防災対策の重点8項目に基づいて予算要求している。大幅な増額要求となった建築物の耐震化促進には582億2300万円を計上。国土交通省は、構造体と設備を含めた建物全体の総合的な耐震安全性を確保した防災拠点官庁施設の耐震化を推進するほか、緊急輸送の拠点となる主要鉄道駅の耐震補強を緊急的に実施する。…経済産業省は、新潟県中越沖地震による柏崎原子力発電所への影響を踏まえ、原発施設の耐震安全性対策と防災対策の強化に、49.7%増の120億9800万円を要求した。…下水道の耐震化に向けては、下水道総合浸水対策緊急事業を主体に、拠点地域の排水機能や緊急避難路の確保など最低限の機能を確保するため、施設の耐震化、減災対策を緊急的に進める。」(『建設通信新聞』2007.09.18)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省は、港湾・空港関係の建設工事の入札参加資格審査について、企業の技術力を一段と重視する方向で審査基準を見直す。企業の格付け(ランク付け)の基になる総合点数を構成する客観点数(経営事項評価点数)と特別点数(主観点数)のうち、特別点数の算定方法を見直し、保有する港湾工事用作業船舶の能力が高い企業や、港湾工事の専門技術者資格である『海上起重作業管理技士』の数が多い企業ほど特別点数が高くなるようにする。総合点数を算定する際の特別点数のウェートも現在より高め、工事の成績・実績と技術力が総合点数により強く反映できるようにする。新たな審査基準は09?10年度の資格審査から適用する方針だ。国交省の港湾・空港関係の建設工事の入札参加資格審査では、建設業法に基づく経営事項審査(経審)に準じて算定する客観点数と、過去の工事成績などの項目を評価して算定する特別点数を6対4のウェートで合算して総合点数を算定している。…特別点数を算定する際の評価項目は現在、▽港湾工事用保有船舶の能力▽工事成績▽工事の施工経歴▽専門技術者数▽新技術・新工法の開発実績▽技術提案実績?で、これを▽工事成績▽作業船などの機械類の保有力▽技術力▽技術開発への取り組み?に再編・統合した上で各項目の点数配分も見直し、技術力として作業船の能力や海上起重作業管理技士の数を重点的に評価する。客観点数と特別点数のウェートは5対5に変更。総合点数に対する工事成績や技術力の影響が現在より強まるようにする。…来年2月中旬ころに新基準の大枠を固める。08年度に等級格付け要領の改正や競争参加資格審査支援システムの改良に取りかかり、08年10月には新たな審査基準を公告。09年1月ころに始まる09?10年度の資格審査から新基準を適用する。」(『建設工業新聞』2007.09.19)
●「中央建設行審議会(中建審、国土交通省の諮問機関)は21日、国土交通省で総会を開き、『入札契約制度の改革について』と題する提言をまとめた。提言は、エンドユーザーの国民・住民に対し、価格と品質が総合的に優れた公共調達を実現することが入札契約制度改革の究極の目標だと強調。価格以外に企業の技術力などを評価する総合評価方式の導入拡大や、工事の特性に合わせた適切な調達手段の活用を公共発注機関に求めている。国交省は近く、各公共発注機関に建設流通政策審議官名で提言を通知する。…入札契約制度改革については、一般競争の導入拡大だけでは、極端な低価格受注や不良不適格業者の参入といった問題があり、価格と品質が総合的に優れた公共調達が実現できないとの意見が強いことから、総合評価方式の導入促進や、入札ボンドの導入などの条件整備を公共発注機関に促す形で提言をまとめた。」(『建設工業新聞』2007.09.25)
●「国土交通相の諮問機関である中央建設業審議会は21日の総会で、経営事項審査改正専門部会がまとめた見直し案を了承した。公共工事の企業評価の『物差し』として、公正で実態に即した評価基準の確立、生産性向上、経営効率化に向けた企業努力を評価・後押しすることを目的に、完成工事高(X1)のウエートを現行の0.35から0.25に引き下げるとともに、評点の上限金額を2000億円から1000億円にする。専門工事業団体が運営している基幹技能者資格者を一律で3点加点することなどの見直しをする。2008年度から適用する。」(『建設通信新聞』 2007.09.25)
●「日本電設工業協会(電設協)が市町村を対象に行った07年度の建築・設備工事の分離発注実態調査結果によると、回答した1824市町村のうち、『原則分離発注』としたのは1277団体で、全体の70%を占めた。06年度調査(回答1874市町村)に比べ1ポイント増とほぼ横ばいだった。…今後の方針では、『分離発注維持』が1267団体、『一括発注を分離発注に変更』が69団体、『一括発注維持』が312団体、『その他』が176団体だった。回答した市町村を都道府県別でみると、分離発注の割合が低いのは奈良県(18%)と徳島県(25%)で、分離発注を採用している市町村がいずれも3割未満。一方、分離発注の市町村の割合が大きく伸びたのは島根県と福岡県だった。」(『建設工業新聞』2007.09.26)
●「国土交通省は、耐震偽装問題の再発防止策として建築確認検査を厳格化した改正建築基準法が6月20日に施行された後、建築確認申請書類の『軽微な不備』の取り扱いなどをめぐって審査現場に混乱が生じていることから、不備の補正などに関する基本的な考え方を『技術的助言』としてまとめ、25日付けで審査を担当する自治体や民間確認検査機関などに通知した。通知は、『軽微な不備』や『不明確な事項』について具体例を挙げ、記載の補正や追加説明書の提出が認められる場合を具体的に示した。統一的な指針を示すことで、取り扱いにばらつきが出ないようにするのが狙いだ。国交省は今後、業界団体向けにも説明会を開く方針だ。改正建築基準法に基づく建築確認審査では、申請書類に不備や不明確な点があった場合、審査機関は申請者に対し、▽不適合通知▽無期限審査終了通知▽補正を求める通知▽追加説明書の提出を求める通知?の4パターンのいずれかで対応することになっている。…改正法施行後、審査現場では特に補正を求める通知▽追加説明書の提出を求める通知?の2パターンに該当するケースをめぐって混乱が起きていることから、国交省は今回の技術的助言で、補正や追加説明を行うことで審査手続きを継続できる場合を例示した。…このほか、確認審査手続きの厳格化に伴い、申請側や、審査側に必要以上に負担がかからないようにするため、申請図書に明示すべき事項や、添付図書が不足している場合の取り扱いも通知で明示した。…国交省は、改正建築基準法の施行に合わせて、審査手続きの運用方針を提示していたが、軽微な不備や不明確な申請書類について、どの程度の補正・追加説明が許されるのかが明確でなかったため、審査現場で手続きが滞るなどの支障が出始めていた。追加的措置として今回、具体的に例を挙げた技術的助言を提示することで、手続きの円滑化を図りたい考えだ。」(『建設通信新聞』2007.09.26)
●「国土交通省が試行導入を検討している応札者の見積もりを活用した予定価格の作成方法が明らかになった。応札者が提出した工事費内訳書の純工事費(直接工事費と共通仮設費)のうち、発注者の積算とかい離の大きい工事区分の単価を予定価格に活用し、それ以外は発注者の積算を使用する。急増する不落札・入札不調、依然として続く低価格入札に対処するのが狙いで、国交省幹部は『新たなパートナーシップの確立』と説明している。具体的には、標準型総合評価方式の場合、技術提案と直接関係する純工事費のうち、発注者の積算とかい離が大きい工事区分を対象に、応札者から見積もりを徴集し、ヒアリングなどで価格の妥当性を確認した上で、発注者の積算の単価とのかい離が妥当な範囲内にある応札者の単価の平均値を予定価格に活用する。…国交省では、応札者の見積もりを勝つようするに当たり、入札書や工事費内訳書の提出期限を前倒しする方針で、競争参加資格確認資料の提出期限と同時にする考えだ。ただ、競争参加資格確認資料の提出期限が、公告日から25?30日となっているため、応札者に配慮し、この日数をWTO(世界貿易機関)政府調達協定対象案件と同じ40日以上に延長することも検討する。…高度技術提案型総合評価方式では、当初提出した工事費内訳書よりも低い応札がみられるが、競争参加資格確認資料の提出期限に入札書と工事費内訳書を同時に提出させることで、そういった行為を防ぐ。一般競争入札の拡大、総合評価方式の拡充で建設業界では受注の選別化が進んでおり、その結果、国交省直轄工事では不落・不調が急増している。特に関東地方整備局でその傾向が顕著になっており、不落・不調工事の発生率(発注件数のうち入札不成立件数の占める割合)は、2006年度が17%だったのに対して、07年度(4?8月)は9.7ポイント増の26.7%となっている。工種別にみると、機械設備が66.7%と最も高く、通信設備が60.9%、建築が58.1%、電気設備が39.1%と続く。入札不成立件数は、維持修繕が発注件数383件中93件と最も多く、建築が43件中25件、機械設備が30件中20件、一般土木が107件中19件だった。また低価格入札は、施工体制確認型総合評価方式や特別重点調査の試行導入で極端な低価格入札はほぼ無くなったものの、低価格調査基準価格に張り付くような応札が多くみられる。」(『建設通信新聞』2007.09.27)

労働・福祉

●「国土交通省は、06年度の同省直轄工事(港湾空港関係を除く)での労働災害事故発生状況をまとめた。死亡または負傷者(休業4日以上)が出た労災事故の発生件数は177件と05年度より19件少なかった。死亡者は8人で、05年度の16人の半分となり、同省が統計の公表を開始した00年度以降初めて1けたに減少した。負傷者数も05年度より減った。事故の発生件数も00年度が222件、01年度が270件、02年度が 266件、03年度が307件と高水準だったが、04年度は146件、05年度は196件となり、06年度も04年度には届かなかったが減少した。死亡者数は00年度15人、01年度25人、02年度22人、03年度13人、04年度12人、05年度16人で、国交省発足(01年度)以後、04年度まで毎年度減少していたが、05年度には再び増加していた。06年度は前年度の半分まで減り、初の1けた台になった。負傷者数の推移も死亡者数とほぼ同様の傾向で、00年度220人、01年度253人、02年度262人、03年度308人、04年138人、05年度193人と、04年度にいったん減少した後、 05年度には再び増加したが、06年度は187人とまた減少に転じた。直轄工事での労災事故防止には、発注者・受注者の双方で力を入れてきたが、事故減少の背景には、公共事業費の削減で工事件数そのものが減っていることがあるとの見方もある。」(『建設工業新聞』2007.09.19)
●「東京都電業協会(東電協馬田榮会長)は18日、会員企業の電工と現場代理人を対象とした06年度労務費実態調査の結果を明らかにした。電工の賃金は、30歳以上の年齢層では増加し、熟練電工ほど金額の増加幅が大きい傾向が見られた。東電協は、技能者不足の影響が技能ある電工の需要を増大させ、賃金の大幅な上昇をもたらしたとみている。…電工の40歳の賃金日額は1万9525円。前回比で4.4%増となった。現場代理人の場合、高卒40歳で賃金日額2万1745円。前回よりも1.9%増。大卒40歳は2万2444円で前回比0.3%増だった。年間労働日数については、電工は前回より3日減り273.5日、現場代理人は前回とほぼ同じで267.0日だった。」(『建設工業新聞』2007.09.26)
●総務省が28日発表した労働力調査によると、8月の完全失業率(季節調整値)は前月と比べ0.2ポイント上昇し、 3.8%になった。失業率が悪化するのは昨年9月以来で、5月kら7月までの減少傾向が反転した。女性の失業率が前月に比べ0.4ポイント上昇の3.7%と大幅に悪化したことが、全体の失業率を引き上げた要因だ。とくに15歳から24歳の若年層では、女性の失業率が前月の5.3%から8.4%に跳ね上がっている。男性の失業率も0.1ポイント上昇して3.8%となった。「収入を得る必要が生じたから」とする就業希望の女性が、前月の14万人から20万人に増加するなど、これまで、働いていなかった人で、新たに求職活動をはじめる人が増加した。こうした求職者は、完全失業率の算出の分母となる完全失業者として計算される。…また、厚生労働省が同日発表した全国のハローワーク(公共職業安定所)窓口での一般職業紹介状況でも、8月の有効求人倍率(季節調整値)が、前月から0.1ポイント低下し、1.06倍(パートタイム含む)となった。雇用の先行指標とされる新規求人数は前年同月比で6.7%減少。雇用情勢は全体として悪化している。(『しんぶん赤旗』2007.09.29より抜粋。)

建設産業・経営

●「ミサワホームは、入居者をNPOなどが支援する高齢者専用賃貸住宅の提案を本格的に開始する。入居する高齢者それぞれがオーナーと賃貸契約を結び、NPOや地元医療機関などのサポートを受けながら生活する賃貸住宅を普及させる方針で、高齢者が多い地域の地主や、経営に頭を悩ませるアパートのオーナーなどに積極的に提案する。グループ会社の多摩中央ミサワホームが提案・施工に関与した高齢者専用賃貸住宅の1号物件が東京都狛江市に完成しており、提案・施工実績を基に全国規模で営業活動を強化する方針だ。1号物件は『狛江共生の家』という名称の高齢者専用賃貸住宅。規模は木造2階建て延べ679平方メートル。世帯数は14戸(1戸27〜41平方メートル)で、ひとり暮らしの高齢者が入居する。所在地は狛江市駒井町1の1の2.施設は地主の農家が所有し、日常的な管理・運営にはNPO法人格の取得を申請中の民間団体『狛江の高齢者のくらしをよくする会』(酒見はま子会長)が携わる。入居者は、地域の医療法人恵泉クリニック、看護・介護業者のメディカル・ハンプがサポートする。…狛江共生の家は、『ひとり暮らしの高齢者が地域に支えられ、安心して暮らせる住宅』の確保を行政に要請していた酒見会長の運動に土地所有者が賛同。相談を受けた多摩中央ミサワホームが設計・施工した。同社は、こうしたひとり暮らしの高齢者の住宅確保に関するニーズが全国に多いことから、狛江共生の家をモデルに土地所有者やアパートのオーナーに新設・改修を積極的に提案しており、既に2件の引き合いがあるという。今後ミサワホームは、グループの販路を通じて駐車場経営者のほか、社会貢献を考えている地主などに事業化を提案する方針だ。」(『建設工業新聞』2007.09.18)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省が28日発表した8月の新設住宅戸数は前年同月比43.3%減の6万3076戸で、過去最大の下落率となった。耐震偽装の再発防止のため、建築確認の審査を厳しくしたのが主因。建築業界や確認検査機関への制度改正の周知不足が響き、申請手控えや審査の長期化などの混乱が広がった。8月の着工戸数は年率換算(季節調整済み)では72万9000戸で、過去最低水準。建築確認を厳しくした6月20日の改正建築基準法施行以降、着工は急減。7月の23.4%減、8月はさらに減少率が大きくなった。制度改正では@慣例だった申請後の修正を認めず、再申請を求めるAマンションなど大型建築物の構造計算書を二重チェックする――など建築確認を強化した。ただ改正法の詳細な解説書の発行が8月にずれ込むなど制度改正の周知が遅れ、申請者や検査機関の間で『改正後の審査基準が不透明』と戸惑いの声が広がった。再審査になれば時間や手数料がかさむため、申請手控えが広がったほか『業務停止などの処分を恐れ、過剰に審査を厳しくする検査機関も目立った』(都内の設計事務所)。国交省によると、建築確認の終了件数は7月の3万 6355件(前年同月比9.3%減)から、8月は4万6071件(同24.3%減)とやや持ち直した。民間確認検査機関の日本ERIは『9月中旬以降は建築確認申請の受理件数が法改正以前の水準に回復した』と説明している。」(『日本経済新聞』2007.09.29)

その他