情勢の特徴 - 2007年10月前半
●「公正取引委員会は、談合など独占禁止法の違反行為を企業が自主申告する制度の見直しに着手した。自主申告した企業の課徴金を減らす『課徴金減免制度』の対象を拡大。減免が認められる企業数を現行の先着3社から5社程度に増やし、グループ内の数社が一括で自主深刻できるよう改める。公取委が入手する違反情報を増やし、談合やカルテルへの監視を強める狙いだ。」(『日本経済新聞』2007.10.14)
●「国土交通省の『土木機械設備工事の入札契約手法に関する委員会』(委員長・小澤一雅東大社会基盤学科社会基盤学専攻教授)は11日、総合評価方式や設計・施工一括発注などの多様な発注方式の適用方針などを盛り込んだ最終報告をまとめた。報告書では、建設コンサルタントに十分な技術力がなく、施工企業の技術力に基づく独自の設計が必要な土木機械設備工事について、詳細設計付き施工発注方式か設計・施工一括発注方式を適用し、併せて高度技術提案型の総合評価を採用することを求めている。」(『建設通信新聞』2007.10.12)
●「国土交通省は、建設コンサルタント業務を対象にした低入札価格調査制度の運用を詳細に定めた通達を5日付で各地方整備局に出した。1日以降の発注公告案件から適用する。4月の制度導入以後、暫定運用してきた提出資料の様式、追加資料の種類、調査項目などを詳細に定め、業務が契約通りに履行されるかどうかを判断するための手続きを明確化。応札価格のより詳細な積算根拠を示すように求めることも可能にした。調査結果は公開する。同省は併せて、各地方整備局に独自の取り組みも促している。対象業務は▽測量▽建設コンサル▽地質調査▽補償関係。予定価格が1000万円以上の競争入札が対象で、工事と同様に会計法令に基づく低入札価格調査基準を下回った応札者に対して調査を実施する。…調査の項目と調査に用いる資料は、▽当該価格で入札した理由▽入札価格の内訳書▽履行体制▽手持ちの建設コンサル業務状況▽配置予定技術者名簿▽手持ち機械の状況▽過去の受注・履行状況(同種・類似業務の名称や発注者名)▽直前3ヵ年の計算書類−など。再委託を行う場合は、その業務内容、再委託する予定金額、理由なども調べる。」(『建設工業新聞』2007.10.12)
●「国土交通省の佐藤直良官房技術審議官は、工事規模(金額)で区分しているランク別発注(発注標準)について、技術力が優れた企業の上位または下位等級工事への参加を認める『食い上がり・食い下がり』の弾力的運用を検討していることを明らかにした。国交省では『必要なのはまじめでいい仕事をする企業の努力が報われる仕組み』(佐藤技術審議官)との考えを前面に打ち出しており、技術評価点数(主観点数)に都道府県の結果を反映することも検討していく。…発注標準や企業格付けの見直しは、国交省が設置した『直轄事業の建設生産システムにおける発注者責任に関する懇談会』企業評価専門部会(部会長・高野伸栄北大大学院工学研究か准教授)で進められている。工事規模だけで区分している発注標準については、▽工事規模と技術的難易度の2つの軸で区分▽土木、橋梁下部、トンネルといった工事分野別の技術力に応じて区分▽各等級の工事規模範囲を上位か下位等級の工事まで拡大・重複▽区分の集約化――などの方向性を示している。一方、格付けは、▽技術評価点数(主観点数)だけ▽経営事項評価点数(客観点数)だけ▽技術・経営事項評価点数の2軸――の3パターンの見直しに加え、工事分野別の技術力に応じた発注標準に合わせて、現在のA、B、Cといった格付けではなく、工事分野別の成績や主観点数などで企業を評価し、三ツ星、二ツ星、1ツ星といった格付けをする方法も検討している。」(『建設通信新聞』2007.10.15)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年7月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、353件で前年同月比 4.7%の増加となった。04年5月以来3年2ヵ月ぶりに3ヵ月連続で350件を上回っている。産業別構成比では29.0%を占める結果になった。負債総額は754億4200万円で29.2%の増加。平均負債額は2億1300万円で23.1%の増加になった。倒産の原因別では、受注不振が230件で 11.1%の増加。倒産件数全体の65.1%となっている。」(『建設通信新聞』2007.10.03)
●「建築設計事務所は零細規模が多く、重層下請構造が進み、契約も口頭契約の比率が高く、相互の業務コミニュケーションも希薄で、各種の資格は品質確保での整合性にかける――。日本建築学会住まい支援建築会議の調査研究部会(古阪秀三部会長)のまとめた調査で、設計事務所の構造的な問題が浮き彫りになった。また設計報酬では、旧建設省告示1206号による事務所は11%にすぎず、51%が料率算定、その他が38%となっており、使われない告示の実態も明らかになった。民需の減少、利益率低下、赤字の実情も判明した。」(『建設通信新聞』2007.10.09)
●「建設経済研究所は10日、建設会社の兼業化の進展について分析したリポートを発表した。それによると、建設会社全体では、兼業率が10年前と比べて3.2ポイント、30年前と比べて1.6ポイント高まり、07年時点で24.0%、個人事業者を除くと28.5%に上っていることがわかった。主な進出分野は、環境(30%)、農業(13%)、介護・福祉(13%)で、経営資源に余裕のある大企業ほど事業を多角化させている実態が明らかになった。大臣・知事認可を受けている建設業者全体のうち、資本金別に07年時点の兼業率をみると、▽10億円以上=93.5%(77年比 13.2ポイント上昇)▽1〜10億円未満=88.0%(同21.9ポイント上昇)▽5000万円〜1億円未満=65.3%(同8.3ポイント上昇)▽1000万円〜5000万円未満=36.6%(同2.6ポイント低下)▽500万円〜1000万円未満=17.7%(同4.3ポイント低下)▽500万円未満=14.6%(同3.6ポイント低下)―だった。兼業比率が最も高かったのは設備工事業の20%、最も低かったのは総合こう事業で 13.9%だった。設備工事業では、兼業企業数が96年から増加傾向となった。同研究所は、他の建設業種に比べて設備工事業は製造や販売などへの転換が比較的容易であることが兼業増加の主因と分析している。地域によって、全国平均に比べ専業率が高いところと低いところがあることも分かった。01〜05年の5年間の平均値でみると、専業比率が最も高かったのは宮崎県、最も低かったのは東京都。専業比率の高い総合工事業者が相対的に多い地域では、地域全体の専業比率も高くなる傾向にあるとしている。」(『建設工業新聞』2007.10.11)
●「建設経済研究所は10日に公表したリポートで建設産業分析を行い、規模別・職種別の『利益構造』を解明しながら、産業構造の底辺を支えていた膨大な零細企業者の危機を明らかにした。また職別では、総合建設業は売上総利益率が収益性の優劣に直結しており、多くの売上高・低い売上原価の遂行がカギを握り、その意味で過当競争を制しながらの原価圧縮が課題といえる。専門職別、設備は総利益率と営業利益率の相関性が認められない、としている。…零細規模は、ピークの1991年に1億4100万円の平均売上高が2005年に6400万円と半減以下に減少し、営業利益率もマイナス 0.4%と悪化している。ところが許可業者数は、ピーク時の00年比で07年は3.2%減にとどまっている。個人が28.2%減、資本金1000万円以上が105%減と比較しても、零細の減少率は低い。リポートでは、零細規模が人件費面でそれなりの削減率を示しているが『零細建設業の平均従業員数は3人程度であり、減らせる人件費には限界がある』と分析。『これ以上のコスト削減の余地がない』というギリギリの立場にあるという。零細には『打つ手』がないというこの指摘は、業界構造を底部の厚い層で支えていた零細規模で廃業、破産など淘汰(とうた)が一挙に雪崩打つ可能性を示唆している。」(『建設通信新聞』2007.10.11)
●「改正建築基準法の施行に伴う建築確認制度の大幅な見直しによる建築着工件数への影響が続いている。国土交通省が9月 28日に公表した建築着工統計調査報告によると、8月の住宅着工(戸数ベース)は前年同月比43.3%減で、改正法施行後の7月(23.4%減)を上回る大幅減となった。事務所や工場などの非住宅も42.4%減となり、着工できずに建築市場全体が休止状態となっている。改正法施行前のいわゆる『駆け込み申請』分は消化され、改正法施行後の影響が全面的に表れた格好だ。同省は、建築確認済証の交付が回復基調にあることから、『9月以降、着工数も徐々に回復する』とみているが、構造計算適合性判定(ピアチェック)が必要な大規模物件の多くは正式申請前の相談段階にとどまるなど、確認手続きの正常化が待たれる。」(『建設通信新聞』2007.10.01)