情勢の特徴 - 2007年10月後半
●「公正取引委員会は16日、独占禁止法改正の基本方針を発表した。談合などに科す課徴金の見直しが柱で、対象の違法行為に不当表示などを加える。主犯格の企業が支払う課徴金を増やす一方、違法行為を自主申告した企業への減免措置は拡大する。…課徴金の対象となる違法行為は、現在ほぼカルテルや談合に限られている。改正法で新たに対象となるのは、大企業が中小企業などに不利な取引を強いる優越的地位の乱用、虚偽広告などの不当表示、不当廉売などで競争を制限する『排除型私的独占』など。こうした行為にはこれまで、違法行為の差し止めを求める排除命令や警告しか出せなかった。課徴金と排除命令をセットにすることで、企業の違法行為を抑制する効果が増す。」(『日本経済新聞』2007.10.16)
●「国内初のインフラ施設に投資する不動産投資信託(REIT)の『産業ファンド投資法人(IIF)』が18日、東京証券取引所に上場した。交通や通信、エネルギー、水道などインフラ施設のほか、物流や工場、研究開発の施設に投資する。物流施設を主体に9物件でスタートしたが、将来的にはインフラ施設の比率を、鑑定評価額ベースで最大5割まで高める。財政がひっ迫する中、公有資産の整理などが加速すると判断し、公的セクターへの投資拡大を目指す。…物流施設分野では、同分野専門の日本ロジスティクスファンド投資法人が05年5月に上場しているが、工場・研究開発やインフラ施設に投資するREITはIIFが初めて。都市近郊や工業集積地を主体に投資する。鑑定評価額ベースでインフラ施設に投資の2−5割、残りを物流と工場・研究開発の両施設に充てる目標を掲げる。膨大な社会資本の蓄積に対して、財政状況は厳しさが増している。民間活力の導入も拡大しており、国や自治体が持つインフラ施設の売却で検討が進んでいる。法令整備などの課題も残るが、将来的な供給拡大をにらみ公的なインフラ施設に投資する体制を整える。」(『建設通信新聞』2007.10.19)
●「耐震偽装の再発防止を狙った6月の改正建築基準法施行の影響で新設住宅着工が落ち込み、その余波が関連産業に広がっている。以前より審査に時間がかかることから一戸建てやマンションの着工が遅れ、建材や住設機器も需要減に直面。生産調整の動きも出てきた。家具など耐久消費財の売れ行きにも影響が及びつつある。住宅市場の混乱は年内には収まるとの見方もあるが、足元の経済成長にはマイナス要因となりそうだ。法改正の影響を大きく受けているのが、マンション会社や戸建て木造住宅メーカーだ。改正建築基準法では高さが20メートルを超える建築物には構造計算の二重チェックが義務付けられ、マンションでは審査期間が長くなった。平均的なマンションの場合、法改正前は、建築確認申請と事前相談に必要な期間はあわせて3ヵ月程度だったが、現在は5−6ヵ月に延びているといわれる。…工場で部材を量産し、共通の認定を取得しているプレハブと違って個別申請書類が多い戸建て木造住宅も審査期間が長引いている。…こうした住宅着工の遅れ・減少が関連メーカーを直撃している。…住宅の新築や買い替え時に購入するケースの多い耐久消費財にも影響が出てきたようだ。…国内の住宅市場は約20兆円、家具やカーペットなど関連市場も合わせると市場規模は約50兆円にも達する。新設住宅着工の減少は住宅投資の減少を通じ、国内総生産(GDP)の下押し要因となる。野村証券金融経済研究所の資産では、7−9月期の住宅投資が前期比10.2%減少すると、7−9月期のGDPを同0.3%(年率換算で1.3%)押し下げる。GDPベースの住宅投資は工事の進展度に応じて計上するため、実際の影響がどう出るのか不透明な部分もあるが、住宅投資が足元の成長率のかく乱要因になるのは避けられそうにない。」(『日本経済新聞』2007.10.19)
●「建設経済研究所と経済調査会経済調査研究所は23日、2007・08年度の建設投資見通しを公表した。07年度の建設投資(名目ベース)は前年度比3.1%減の50兆6400億円で前回予測(7月)を下方修正した。改正建築基準法施行に伴う建築確認制度の見直しの影響を考慮し、民間住宅投資を前回予測した1.3%増の19兆3500億円から4.6%減の18兆2300億円に下方修正したためで、住宅着工戸数も持ち家、貸家、分譲がともに減少し、全体では6.6%減の120万1000戸となる見通し。07年度の内訳は、政府の建設投資が7.5%減の17兆500億円、民間住宅投資が4.6%減の18兆2300億円、民間非住宅建設投資が4.1%増の15兆3600億円と予測している。…08年度の建設投資は0.8%減の 51兆500億円で、内訳をみると政府建設投資が8.2%減の15兆6600億円、民間住宅投資が5.9%増の19兆3000億円、民間非住宅投資は 4.8%増の16兆900億円と予測している。実質民間企業設備投資は、07年度が3.1%増の91兆6554億円と5期連続のプラス、08年度も 4.8%増の96兆584億円を見込んでいる。」(『建設通信新聞』2007.10.24)
●「企業の工場建設が都市から地方へじわりと広がっている。経済産業省の調査によると、工場用地の取得件数は2006年まで4年連続で増え、07年も前年を上回る勢い。さらに三大都市圏以外の『地方圏』が占める比率は06年から増勢に転じ、今年上期(1−6月)は過去5年の平均を上回った。都市と地方の格差が指摘されるなか、地方の雇用改善や中小企業活性化が期待される。」(『日本経済新聞』2007.10.28)
●「国土交通省は、本年度発注工事(港湾空港関係を除く)での低入札価格調査発生状況をまとめた。8月までに契約を終えた1件100万円以上の工事では118件で低入札価格調査基準額を下回る応札があり、契約した工事に占める割合(発生率)は約3.23%と、過去4年の通年発生率を下回っている。昨年度に多発した安値受注に対する同省の相次ぐ防止策が効果を上げているようだ。WTO政府調達協定の適用案件(本年度は予定価格7.2億円以上)に限ってみると、昨年度は同省全体で102件発生したが、本年度は今のところ1件にとどまっている。」(『建設工業新聞』 2007.10.16)
●「総務省は年度内にも第三セクターの経営改革を促す新しいガイドラインを策定する方針だ。自治体が出資する第三セクターに安易な損失補償をして、地方財政が悪化するのに歯止めをかける狙い。自治体の第三セクターに対する損失補償は農林水産や都市開発分野などを中心に、2006年3月末で約2兆3千億円ある。自治体財政は08年度決算から透明性の高い新しい基準を取り入れるため、将来の負担リスクを抑える。自治体の債務免除の導入などを検討する総務省の『債務調整等に関する調査研究会』(座長・宮脇淳北大教授)が17日、『(三セクへの損失補償は)特別の理由がない限り、行わないべき』などと、手続きの厳格化を求める中間報告をとりまとめた。…研究会は『規律の強化を図るため新たな仕組みが必要』と指摘。総務省に新しいガイドラインを作成するよう求めた。具体的には今後新たに自治体が損失補償する場合は、地方議会に合計の補償額やリスクなどの適切な情報開示を求める。三セクの資金調達については、事業収入によって回収の可能性が低い場合は、金融機関の借入金ではなく自治体からの補助や貸し付け、出資などが適当と分析している。破綻時の補償にそなえて自治体が引当金に相当する基金を積み立てることも提言。経営が著しく悪化した三セクについては『存続も含めた改革』を求め、08年度までに外部専門家の委員会で三セクの資産評価をしたり、09年度までに改革プランの策定を自治体に促すこともガイドラインに盛り込むよう主張した。同省は研究会のまとめをもとに新指針を策定し、自治体に通知する見通し。」(『日本経済新聞』2007.10.18)
●「国土交通省は、設計・施工一括など多様な発注方式の本格導入に向けて、工事請負契約約款や共通仕様書の見直しに着手する。従来の設計・施工分離発注方式と比べて、受発注者間のリスク分担や入札時点での提示条件が明確ではない面があるため、これらを最適に設定する必要がある。検討に当たっては、法律の専門家などを交えた組織を立ち上げることも視野に入れている。」(『建設通信新聞』2007.10.19)
●「国土交通省がまとめた2007年度版の直轄工事等契約関係資料(06年度実績)によると、地方整備局と官房官庁営繕部、国土技術政策総合研究所の低入札価格調査対象件数(港湾、空港工事除く)は、前年度比25.5%増の計1146件で、発生率は2.1ポイント増の 10.5%だった。WTO(世界貿易機関)政府調達協定対象の一般競争入札での急増が目立ち、その件数は前年度に比べて2.4倍の71件、発生率も 17.8ポイント増の42.0%となっている。」(『建設通信新聞』2007.10.30)
●「厚生労働省は、ずい道建設工事などでコンクリート吹き付けを行う場所を対象に、換気装置による換気の実施などを義務付ける。労働者に電動ファン付き呼吸用保護具を使用させることも併せて義務化する。同省は、技術の進歩や作業方法の変化でずい道工事の粉じん発生量は増加しているとして、安全対策の強化が必要と判断した。粉じん障害防止規則などを一部改正する方針で、来年3月1日から新規則を施行する。改正案では、ずい道内部での工事のうち、コンクリートなどを吹き付ける場所での作業を、粉じん障害防止規則における『粉じん作業』として規定する。…電動ファン付き呼吸用保護具を労働者にしようさせることを義務付ける対象は、▽動力を用いて鉱物などを掘削する場所での作業▽動力を用いて鉱物などを積み込み・積み卸す場所での作業▽コンクリートなどを吹き付ける場所での作業―とした。加えて、ずい道建設作業で発破を行った際には、発破による粉じんが適当な濃度まで薄まった後でなければ、労働者を近寄らせてはならないことを規定する。」(『建設工業新聞』2007.10.22)
●「厚生労働省は、建設業退職金共済(建退共)制度に加入している建設労働者への退職金の支払いを徹底するため、周知活動の強化など追加方策を検討する。24日の衆院厚生労働委員会で厚労省は、受給資格があるにもかかわらず、共済手帳の更新を過去3年以上行っていない人が約41万人いるとの試算結果を明らかにした。この中には、建設関係の仕事を辞めているのに退職金を請求していない人が相当数含まれていると見られる。…同省によると、06年度の加入事業主数は18万9104社で、加入労働者数は269万5251人。06年度には502億円の掛け金が加入事業主から拠出され、747億円の退職金が労働者に支払われている。期末試算残高は9415億円で、900億円〜1000億円は剰余金という。」(『建設工業新聞』 2007.10.26)
●「総務省が30日発表した9月の完全失業率(季節調整値)は4.0%となり前月比0.2ポイント悪化した。失業率の悪化は2ヵ月連続で、4%台は3月以来6ヵ月ぶり。雇い主側に都合による女性の失業が増えたことなどが要因。一方、厚生労働省が同日発表した9月の有効求人倍率(同)は前月比0.01ポイント低下の1.05倍。厚労省は雇用情勢の判断を2年7ヵ月ぶりに下方修正した。」(『日本経済新聞』 2007.10.30)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年8月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、354件で前年同月比 3.2%の増加になった。これで、4ヵ月連続で350件を上回った。また、負債総額は10.0%増えて582億2600万円となったが、平均の負債額は 6.4%増えたものの1億6400万円で3ヵ月ぶりに2億円を下回る結果になっている。受注・販売不振が232件で3.1%増と全体の倒産件数の 65.5%を占めており、大半は中小企業となっている。」(『建設通信新聞』2007.10.23)
●「国土交通省は、改正建築基準法の円滑な運用に向け、計画変更手続きを明確化するとともに、建築確認申請時に添付が義務付けられている構造方法、材料の大臣認定書の写しの扱いを見直す。計画変更手続きでは、開口部などを変更する際、構造安全性が低下しないことを確認できれば『軽微な変更』として扱い、計画変更の申請を不要とする。認定書の写しについては、審査機関が審査に支障がないと判断した場合、添付を省略できるようにする。同省は11月中に施行規則を改正し、法改正による厳格化で審査が滞りがちだった確認申請手続きを円滑にする。…大臣認定書の写しの取り扱いについては、審査機関が認定内容を記載した構造・材料等便覧で内容を確認できるなど、審査に支障がない場合は確認申請への添付を省略できるようにする。例えば、戸建て住宅を複数建設する際、防火設備などの仕様がすべての住宅で同一の場合は、代表となる一戸に認定書の写しを添付すれば、ほかの住宅の確認申請には写しを添付する必要がなくなり、申請書作成時の作業が簡素化できる。」(『建設通信新聞』2007.10.31)