情勢の特徴 - 2007年11月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省が31日発表した9月の新設住宅着工戸数は6万3018戸で前年同月に比べ44.0%減り、過去最大の減少率となった。耐震偽装の再発防止のため建築確認審査を厳しくした影響で、現場で混乱が続いているのが主因。…着工戸数は6月20日の改正建築基準法の施行後、3ヵ月連続で大幅減少となった。前年同月比の減少率は7月が23.4%、8月に43.3%と拡大傾向をたどっている。9月分を住宅の種類別でみると、持ち家が21.6%、貸家が51.3%、分譲住宅は55.6%それぞれ減少。分譲のうちマンションは74.8%減を記録した。この結果、7-9月期の着工戸数は前年比37%の急減となり、GDPに与える影響も無視できなくなっている。31日までに予測を公表した民間調査機関8社の平均で、7-9月期のGDPベースの住宅投資は前期比9%減の予想。消費税率を引き上げた1997年4-6月期(11.1%減)以来の減少幅だ。これだけでGDPの0.3%、年率1.2%のマイナス要因となる。…今のところ住宅投資の落ち込みは外需がカバーし、7-9月期のマイナス成長は回避できるとの見方が大勢。しかし米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を背景に、景気の先行きに不透明感が広がっているだけに、10-12月以降、住宅投資が勢いを取り戻せるかが焦点となりそうだ。」(『日本経済新聞』2007.11.01)
●「国土交通省は、落札額と予定価格の間で生じている差額についての調査・分析結果をまとめた。調査では、 2003-05年度に竣工した土木工事1764件(港湾・空港関係除く)の粗利益を調査した上で、元請けの損失額などを落札率ごとに集計し、06年度の工事8375件に当てはめて加重平均した。その結果、下請けへのコスト低減要求や元請けの一般管理費の圧縮などによる削減率は7.6%に上り、技術革新や調達の効率化に伴う削減率4%のほぼ2倍に達していることが分かった。調査対象とした06年度の工事の平均落札率は88.3%で、予定価格との差額約12%のうち、下請けへのしわ寄せや経費の圧縮による割合が7割弱を占める。…調査では、03-05年度に竣工した低価格入札工事420件と低価格入札以外の工事1344件を対象に、元請けの損失や元請けと下請け双方の一般管理費の圧縮割合などを落札率ごとに算出して整理した。これらのデータを06年度に竣工した工事に当てはめて加重平均した結果、元請の一般管理費が3.4%、下請けの一般管理費が1.5%それぞれ圧縮され、設計労務単価の減少による建設労働者の賃金下落分の0.3%と元請けの損失分2.4%を加えた計7.6%が縮減されていることが分かった。」(『建設通信新聞』2007.11.05)
●「政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)が8日開かれ、今後の地方分権改革の指針となる中間まとめの素案が示された。国土交通省関係では、指定区間の一般国道について、維持・修繕・管理の権限を国から都道府県に委譲すべきだとした。河川についても、1つの都道府県内で完結する1級河川はすべて都道府県管理とする方向を示した。国交省の峰久幸義事務次官は、会合と同じタイミングで開かれた定例会見で、『具体的な資料はまだ見ていない』としながらも、『地震や豪雨への対応や質の高いサービスのために、重要なところは維持管理と改築を一体的にやるのが望ましい』と述べ、素案とは意見が対立する格好となっている。」(『建設工業新聞』2007.11.09)
●「ダンピング(過度な安値受注)の増加を受けて下落が続く設計労務単価をめぐり、単価設定方法の見直しを求める地方自治体と、見直しは不要とする姿勢を崩さない国土交通省との間で攻防が顕在化している。『都道府県技術管理等主管課長会議』では、労務単価の下落を止めたい自治体から、低価格で落札した工事は調査対象から除外するべきなどの具体的要望が出された。これに対し国交省は、ダンピング対策と一部の自治体で横行している『歩切り』の撤廃など、根本的な対策の実施を強く要請し、安易な見直しには応じない考えを示した。」(『建設通信新聞』2007.11.09)
●「国土交通省は13日、08年度から10年間の道路整備の指針となる『道路の中期計画』の素案を公表した。素案は▽国際競争力の確保▽地域の自立と活力強化▽安全・安心の確保▽環境の保全と豊かな生活環境の創造―を政策課題に掲げ、目標を達成するのに必要な事業費に65 兆円を計上した。これとは別に道路関連施策として3町会厭以上の費用を想定している。同省は意見募集を行った上で、年内にも計画を決定する。…未開通の高規格幹線道路約2900キロのうち、道路関係公団民営化時の評価を行った区間以外について、すべての区間で社会的便益が費用を上回るとして、70%に当たる158区間2038キロは暫定2車線も採用しながら早期に完成。17区間422キロは、構造を2車線相当に変更した上で早期に整備するとした。残る 16%の12区間468キロは構造・規格を見直した上で、当面、既存の道路を活用するとしている。」(『建設工業新聞』2007.11.14)

労働・福祉

建設産業・経営

●「建材大手ニチアスが耐火性能を偽った住宅建材を販売していた問題で、納入先の住宅各社は無償改修や取引見直しに乗り出す。旭化成ホームズは31日、中期的に他社製建材へ切り替えていく検討を始めた。現時点で改修費用は80億円以上になる見通しで、営業活動への影響なども含めた損害金の支払いをニチアスに請求する方針だ。住友林業も同日、今後は対象の建材の購入を中止し、他の製品の取引も縮小する検討に入った。ニチアスは問題の軒裏顕在を9社に供給していた。このうち旭化成ホームズは同製品を4万棟の住宅で採用している。親会社の旭化成の伊藤一郎副社長は31日の 2007年度9月中間決算の記者会見で『中期的に取引の見直しもある』と述べ、松下電工など他の建材メーカーへ切り替える検討を始めた。全4万棟は今後1年半から2年かけ無償で改修する。費用は集計中だが、80億円以上になる公算が大きい。伊藤氏は建築中の住宅引渡しの遅れのほか、顧客が違約金を請求したり購入契約を見送ったりする可能性を指摘。『こうした費用もすべてニチアスに要求する方針』と述べた。1ヵ月程度で業績への影響を調べ、08年3月期の業績予想などに反映する。…ミサワホームは約5万棟にニチアス建材を採用しているが、耐火性能に問題はないため改修は不要という。ただ、建材の性能を再確認するための試験は必要で、『再試験の結果を見て(取引見直しなど)今後の対応を決める』(同社)。」(『日本経済新聞』2007.11.01)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年9月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、前年同月比12.8%減の 284件だった。5ヵ月ぶりに前年同月を下回った。全産業に占める割合も27.1%で、3割を切る結果となっている。これに対して、負債総額は950億 2400万円で41.9%の大幅な増加を示した。みらい建設工業(東京都)の負債額422億円という大型倒産が大きく影響しており、これ1件だけで負債総額の44.4%を占めている。」(『建設通信新聞』2007.11.07)
●「上場ゼネコン各社は今週、07年9月中間決算を相次ぎ発表する。13日には鹿島、大成建設、大林組、清水建設の大手4社が発表し、16日までにほとんどの会社の上半期業績が出そろう。ゼネコン業界では、受注競争の厳しさが一段と強まっていることに加え、資材価格や労務費の高騰などの影響も深刻化。工事採算の悪化で多くの会社が営業減益となるか営業損失を計上する見通しだ。6月の改正建築基準法の施行による建築確認審査の厳格化で新規の建築着工が滞っていることも今後、各社の業績に大きな影を落とすことになりそうだ。各社が9日までに公表した連結ベースの業績予想によると、主要28社中、16社が増収、12社が減収の見込みだ。本業のもうけを示す営業損益は、15社が赤字と予想。黒字の15社の中でも前年同期を上回るのは4社にとどまり、11社が減益となる。営業外収支を加えた経常損益も同様の傾向で、14社が黒字、14社が赤字。黒字の14社中、増益は2社だけで、 12社が減益を見込む。…大手4社のうち、中間決算の発表を前に業績予想を修正したのは清水建設を除く3社。鹿島は材料・労務費の上昇や一部大型工事の採算悪化を理由に単体の営業利益を下方修正したが、金融収支の好転や持分法投資利益の増加、固定資産売却などの効果で連単とも経常利益と中間利益が期初予想を上回るとした。大成建設は、ゴルフ場子会社の株式売却を決定したのに伴い繰延税金資産を計上したことで、連結中間利益の大幅増を見込む。大林組は、不動産事業などの利益増加で、営業利益、経常利益が期初予想を上回った。連結売上高のトップは鹿島の8200億円となる見込み。営業利益と経常利益はともに 200億円台をキープした長谷工コーポレーションが大手各社を抑えた。中間利益は、固定資産の売却で特別利益などを計上した鹿島が230億円と最も多かった。」(『建設工業新聞』2007.11.12)
●「改正建築基準法の施行に伴う混乱も影響し、建設業の倒産は今年最多に―。民間調査会社の帝国データバンクが12日発表した全国企業倒産集計によると、今年10月の建設業者倒産は309件(前年同月比27.7%増)で今年最多を記録、05年4月以降で初めて300件を上回った。同社は、東京パークエンジニアリング(駐車場装置設計・施工、東京都)など5件の倒産について、改正建築基準法による混乱の余波が引き金になったと指摘している。『脱談合や公共投資削減でもともと厳しい上に、改正建築基準法の混乱が(倒産の)1つの要因として上がってきている』(同社)と分析しており、工事受注への悪影響も顕在化しつつあるようだ。」(『建設工業新聞』2007.11.13)
●「鹿島、大成建設、大林組、清水建設の上場ゼネコン大手4社は13日、07年9月期中間決算を発表した。工事の資材・労務費の上昇などを反映し、4社がそろって営業減益となり、金融収支は好転したものの、経常利益も全社が前年同期の実績を下回った。通期も4社とも経常減益を予想する。収益の先行指標となる受注高(単体)も全社が通期で減少と予想している。中間期の売り上げに計上した工事の採算を示す単体の完成工事総利益(粗利益)率は、4社とも前年同期の実績を下回った。この影響で、本業のもうけを示す連結の営業利益、営業外収支を加えた経常利益ともに全社が大幅減益となった。鹿島は、金融収支の好転や持分法投資利益の増加などの影響で、経常利益は減益ながら期初予想値の2倍を超える154億円を計上した。同社はさらに、米国に保有していたホテルニューオータニの売却益や海外子会社による関連会社株式の譲渡益などを特別利益に充て、248億円の中間純利益を確保した。大成はゴルフ場子会社の株式売却を決定し、これに伴う繰延税金資産を計上したことで、大幅に純利益を増やした。大林も、不動産事業の利益が増えたのを背景に、営業利益、経常利益、中間純利益ともに期初予想は上回った。清水は、工事採算の悪化や大型投資開発案件での売り上げ利益の減少が響き経常減益となったが税金費用の減少などの効果で純利益を伸ばした。」(『建設工業新聞』2007.11.14)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●被災者生活再建支援法改正案をめぐって6日、衆院に同改正案を提出していた自民・公明の与党と参院に提出していた民主党が、法案の一本化に向けた協議をおこない、住宅本体への支援や支給対象の世帯主の年齢・年収要件の撤廃などで合意した。焦点だった住宅本体への支援については、対象経費の使途を限定しないとしており、住宅の建設、購入、補修などに使うことができるようになる。対象世帯は、半壊世帯は含まれなかった。支給額の限度額は300万円で現行法と変わらないものの、支給額の算出方法は、積み上げ方式から定額になる。特定4災害(3月・能登半島地震、7月・中越沖地震、9月・台風11号、台風12号による災害)は、改正法交付後に申請する災害者については、特例措置として、改正後の制度の申請をすることができることになっている。(『しんぶん赤旗』2007.11.07より抜粋。)

その他