情勢の特徴 - 2007年11月後半
●「政府は、建築関連の中小企業が民間金融機関から借り入れた資金の返済保証を拡大する緊急支援に踏み切る。設計、工事など関連15業種の企業が対象で、来年3月まで通常の中小企業の2倍の公的保証が使えるようになる。改正建築基準法施行に伴う建築確認の厳格化で混乱が生じ、住宅着工が急減しているのに対応する。中小企業の年末の資金需要に応え、着工減に伴う景気の冷え込みを最小限に食い止める狙い。甘利経済産業相が27 日に発表する。測量、鉄鋼の卸売業、サッシなど住宅関連の製造業も対象で、最大15万社程度が利用できる。同日から来年3月末までの時限措置になる見通し。」(『日本経済新聞』2007.11.27)
●「国土審議会(国土交通相の諮問機関)の計画部(部会長・森地繁政策研究大学院大教授)は16日、国土形成計画全国計画に位置付けるべき内容を盛り込んだ部会最終報告の素案をまとめた。新たな国土形成計画全国計画に位置付けるべき内容を盛り込んだ部会最終報告の素案をまとめた。新たな国土像を実現するための戦略的目標として、持続可能な地域や災害に強い国土の形成など5項目を設定した。8つの分野別施策の基本的な方向では、地域間の交流、連携を促進する国土幹線交通体系の構築や集約型都市構造への転換などを重点的に進めるべきとしている。全国計画は2007年度内に閣議決定する見通し。…国土幹線交通体系の構築では、地域高規格道路と一体となった自動車交通網が地域ブロックの自主性に大きな役割を果たすと指摘。政府が 07年度内に策定する道路整備の中期計画に基づき、大都市圏環状道路や拠点空港・港湾へのアクセス道路などに重点を置いて、効率的な整備を推進することを求めている。…また、計画部会は16日、国土利用計画の全国計画の基本的な方向を盛り込んだ部会報告素案もまとめた。地域類型別の基本的方向では、国土を都市部、農村漁村、自然維持地域に3分類し、都市部では中心市街地への都市機能の集積、既成市街地では再開発や地下空間利用による土地利用の高度化、低未利用地の活用促進を進めるべきとしている。住宅地の有効利用促進に向けては、既存ストックの活用による中心市街地の街なか居住の推進やニュータウンの再生、住宅の長寿命化などを通じた持続的な利用が必要としている。」(『建設通信新聞』2007.11.19)
●「政府の行政原料・効率化有識者会議(座長・茂木友三郎キッコーマン会長)は26日、合計102ある独立行政法人のうち、住宅金融支援機構や都市再生機構など11独法の廃止・民営化を求める案を固めた。27日に福田康夫首相に報告、渡辺喜美行政改革担当相が関係閣僚と具体的な調整に入る。…有識者会議が廃止や民営化を打ち出すのは、すでに廃止が決まっている緑資源機構のほか、住宅金融支援機構、日本貿易保険、通関情報処理センター、日本万国博覧会記念機構など合計11法人。さらに追加する可能性もある。法人・個人向け融資や賃貸住宅の維持管理など民間企業が類似した事業を手がけており、民営化になじみやすいと判断した。国民生活センターは、類似の事業を持つ組織の統合などを求める。一方、民営化すべきだとの意見があった国立印刷局や造幣局は民間委託の拡大など業務見直しにとどめ、組織の存廃や職員の非公務員かには踏み込まない。」(『日本経済新聞』 2007.11.27)
●「国土審議会(国土交通相の諮問機関)の計画部会が国土形成の全国計画に関する報告を取りまとめたことを受け、地方ブロックごとの広域地方計画の検討が今後、本格化する。政府は、全国計画を本年度内に閣議決定する見通しで、閣議決定から1年程度で広域地方計画がまとめられる予定となっている。…国土形成計画では、国が全体の方向性を示す全国計画をまとめ、これを踏まえて、具体的な取り組みを示した広域地方計画を各地方ごとに策定する。広域地方計画は、東北圏、首都圏、北陸圏、中部圏、近畿圏、中国圏、四国圏、九州圏の計8地域で形成される。各地方ともに、検討のためのプレ協議会が立ち上がっている。プレ協議には、国の各地方支分部局や関係地方自治体のほか、経済団体も参画している。」(『建設工業新聞』 2007.11.29)
●「大手鉄管メーカーの栗本鉄工所が高速道路の橋に使う型枠郷土を偽装した問題で、合否を判定する高速道路3社や前身の旧日本道路公団の担当者が試験に立ち会っていないことが28日、高速道路3社の調査でわかった。旧公団が作成した確認基準に立ち会いの規定はなく、事実上栗本鉄工所が出した書類などの審査で通り、第三者機関のチェックもなかった。試験制度が当初から形骸化していた実態が明らかになり、国土交通省は制度の見直しを3社に求める。高速道路橋などに使う型枠の強度試験の基準は旧公団が1961年に制定。型枠に上、下、横から一定の荷重をかけ、各方向の変形値が 10ミリ以内であれば一定の強度があると判断。旧公団や3社が書類などを審査し、合否を決める仕組みだ。3社によると、強度試験には第三者機関の関与や、旧公団職員らが試験に立ち会う規定はなかった。このため試験制度の発足以来、旧公団職員らが強度試験の現場に出向くケースはほとんどなく、栗本鉄工所の検査員にほぼ任せきりだった。栗本鉄工所は、強度試験で、型枠に本来かけるべき荷重の35-80%しか負荷をかけずに試験をパス。旧公団などは同社から提出された最終的な変形値のデータしかチェックせず、荷重データが改ざんされていることに気づかなかったという。偽装発覚後に実施した試験で、現在使われている型枠の最大変形値は23ミリに達し、7製品中5品が不合格だった。」(『日本経済新聞』2007.11.29)
●「長谷工コーポレーションが15日に発表した2007年9月中間期の連結決算は、純利益が前年同月比60%減の64億円だった。09年3月期に適用が義務付けられる棚卸し不動産の『低価法』を前倒しで採用し、264億円の特別損失を計上した。…中間期の経常利益は9%増の291億円。建設受注を目的にした不動産取引の増加が利益を押上げた。マンションなど完成工事高が増え、売上高は18%増の3664億円だった。08年3月期通期は連結経常利益が従来予想を10億円下回り前期比5%減の600億円となる見通しだ。建設事業の利益率が低下するほか、改正建築基準法施行後のマンション建築の着工遅れが響く。単独ベースの受注高は従来予想を300億円下回り4000億円となる見通し。」(『日本経済新聞』 2007.11.16)
●「記録的な原油高が、道路舗装各社の収益圧迫要因となっている。4半期ごとに見直される道路用アスファルトの卸値は、7、10月と立て続けに引き上げられたのに続き、来年1月も大幅アップとなる見込み。舗装各社は、製造・販売するアスファルト合材への価格転嫁に取り組んでいるが、値上げ分をすべて吸収するまでには至っていない。工事が集中する年度末に向けた再度の値上げで価格交渉の難航は必至だが、『引き続き粘り強く理解を求めていく』(青木淳美NIPPOコーポレーション常務)構えだ。16日までに出そろった大手8社の07年9月中間決算は、NIPPOと前田道路の上位2社が増収増益となった以外は経常赤字。…中間決算を見る限り、売り上げ計上した工事や製品事業の採算を示す売上総利益(粗利益)率は、8社とも前年同期より改善した。特に、製販事業での利益率改善が顕著で、世紀東急工業の10.9%を筆頭に、大成ロテック(10.6%)、前田道路(10.5%)の3社が製品事業の粗利益率を2けたに乗せた。」(『建設工業新聞』2007.11.19)
●「建設会社の倒産が増勢を強めている。東京商工リサーチによると、2007年度の倒産件数(負債額1千万円以上)は2年連続で増加し、4年ぶりに4千件を超す見通しだ。公共工事減少と談合の摘発強化に加え、耐震偽装の再発防止を目的にした建築確認審査の厳格化で民間工事も減少。受注競争の激化で採算悪化に直面しており、地方の有力企業が経営破綻する例も相次いでいる。…今年は6月の改正建築基準法施行に伴い建築確認審査が厳格化され、住宅着工件数が7月以降、大幅に落ち込んでいる。東京商工リサーチは『影響は下期から出てくる』とみており、同社では07年度の倒産件数が前年度の3875件を上回り4千件を超す公算が大きいとしている。市場の縮小と競争激化は経営基盤の弱い中小の建設会社にとどまらず、地方の名門・老舗企業にも打撃となっている。(『日本経済新聞』2007.11.21)
●「主要道路会社10社の今中間期決算が出そろった。受注では建築工事などの比率が高いNIPPOコーポレーションが減少となったが、おおむね受注、売り上げとも好調に推移した。粗利では、現在の原油価格高騰が、工事、製品ともに原価の増大要因となっているものの、利益率は各社とも前年同期比で改善している。受注高、売上高ともにトップとなっているNIPPOコーポレーションでは『主体の舗装土木は依然として苦戦しているが、建築やプラントの施工合理化が利益率の底上げ要因となった』と話す。一方で、中間決算を締めた段階でたまたまこうした数字が出ただけで、今後も予断を許さないと話す担当者もいる。一見、アスファルト値上がり分の価格転嫁が進んだ結果にも見えるが、原油高騰は依然として続いており、転嫁は追いついていない。年明けの1月から3月も原油の価格は値上がり傾向で、工事の多い年度末に原油の値上がり分を処理できなければ、道路会社にとっては大きな赤字要因となる。今後も価格転嫁は各社にとって命題となる。今回の決算で見えるもう1つのポイントは、営業利益面での改善だ。営業利益や経常利益などの利益は、道路専業の企業では中間決算時にはマイナスで上がることが多い。これは第1四半期に公共工事の発注が極端に減り、逆に年度末に集中することが大きな要因だ。年度前半と後半では完成工事高が3対7程度まで偏ることもある。その中間決算の営業利益をみると、多くの社で損失幅が改善されていることが目立つ。公共工事という全体のパイが広がったわけではなく、これまで各社が懸命に進めてきた工事や合材製造の合理化、また販売管理費の節約といった合理化策が、ようやくここに来て結実したと見ることもできる。全体では底を打ったようにも見える今中間決算だが、地方と首都圏の受注環境も変化しており、原油価格の見通しとともに、経営はいまだ予断を許さない状況が続いている。」(『建設通信新聞』2007.11.22)
●「ゼネコンの工事採算が悪化し続けている。大手・準大手クラスでは10%を超えていた土木の完成工事総利益(工事粗利)率が7%台に低下し、6%台にとどまっていた建築工事は5%を切る可能性が出てきた。受注競争の激化に、資材や労務費の高騰が重なり、施工効率化の自助努力が実を結ばない状況に直面している。日刊建設通信新聞社が大手・準大手ゼネコンの上場23社を対象に工事粗利率を調査した結果、平均値は2008年3月期予想が前年比0.8ポイント減の5.7%となり、05年3月期から工事採算の悪化が続いていることが分かった。特に土木工事の苦戦が目立つ。07年3月期を境に10%を下回り、08年3月期は2.0ポイント減の7.6%となる見通しだ。公共事業の削減により、各社の受注ターゲットが重なり、競争がし烈を極めたことが背景にある。通期予想で10%以上を見込むのは東亜建設工業だけで、なかには5%を下回る企業もある。公共事業に総合評価方式が拡大しているものの、大型案件の中には一般競争で獲得した低価格入札の完工時期が『今期の下期から来期にかけてピークを迎える』(準大手)ことも懸念材料となる。戦略的に拡大してきた海外工事での苦戦もあり、『来期以降も厳しい状況が続く』(大手)との見方が広がっている。これまで6%台を続けていた建築工事は、 07年3月期に5%台に突入、08年3月期には0.4ポイント減の4.9%になる見通し。民需回復で工事量はあるものの、関係が深い建築主からも、特命でなく、競争を強いられる苦しい状況に追い込まれている。労務不足もあり、人材確保の課題もある。」(『建設通信新聞』2007.11.26)
●「上場ゼネコン各社の07年9月中間決算が22日までに出そろった。受注競争の激化に、資材・労務費の高騰が加わって工事採算は一段と悪化。非上場の竹中工務店(6月中間決算)を含む売り上げ上位30社のほぼ半数が本業で利益が出ない営業赤字となった。黒字を確保したゼネコンも、多くは前年同期比で2けたの大幅減益を余儀なくされた。業績の先行指標となる受注高も大半が前年同期を下回った。通期では黒字を見込んでいるものの、収益環境が好転する要素はなく、減収減益傾向は避けられそうにない。」(『建設工業新聞』2007.11.26)
●「国土交通省は27日、下請企業に対して適正な代金を支払うよう建設業101団体に通知(盆暮れ通知)した。今回は、下請代金の支払いだけでなく、下請契約そのものの適正化や施工管理の徹底にまで踏み込んだ内容となっている。吉田光市総合政策局建設業課長は『クレーン車による事故や鉄筋不足といった施工ミスが相次いでいる』と指摘した上で、『民間工事は、工期が短く、十分な施工体制を整えていないことが想定される。建設業の基本的責務を再認識してほしい』と話している。…通知では、▽適切な施工計画の作成▽現場での施工体制の十分な確保▽工事全体の工程管理▽工事目的物・工事用資材などの品質管理▽現場での安全管理――といった施工管理の徹底に努めることを求めるとともに、施工管理が適切に行われるよう必要な経費に十分留意することを求めている。一方的な指値発注の禁止にも言及し、明確な経費内訳による見積書の提出、それを踏まえた元下双方による協議など適正な手順で下請代金を設定することを求めている。元下双方の協議・合意がないまま、元請けが一方的に諸費用を下請代金から差し引くといった『赤伝処理』にも触れ、建設業法上問題となるおそれがあることから、赤伝処理を行わないよう明文化した。」(『建設通信新聞』2007.11.28)
●「国土交通省は、改正建築基準法の施行に伴う住宅着工の大幅な減少に対処するため、同法の施行規則を一部改正し、14日に施行した。建物の間仕切りや開口部などを変更する際、構造安全性が低下しないことが確認できれば『軽微な変更』として扱い、計画変更の確認申請を不要とする。構造方法や材料の大臣認定書の写しについては、審査機関が提出を求めた場合には限って添付を義務付けるよう規定を緩和し、申請者の負担を軽減する。計画変更手続きは、構造安全性、防火・非難性能が低下しない場合、計画変更の確認申請手続きを芙蓉とすることを明確化した。大臣認定書の写しの取り扱いは、審査機関が認定内容を記載した構造・材料等便覧で確認でき、審査に支障がない場合は、添付を省略できる。」(『建設通信新聞』2007.11.16)
●「東京都建築士事務所協会(東事協、三栖邦博会長)は、公益事業の一環として、公営住宅の耐震診断を開始する。 1981年以前の旧耐震基準で建設された東京都住宅供給公社の住宅92棟と、杉並、江戸川両区の区営住宅計27棟の合わせて119棟の耐震診断業務を受託した。7人の委員で構成する耐震診断部会(部会長・宮原浩輔事業担当理事)を設置。同部会が実施事務所約30社に作業手順や評価方法などの説明会を行った上で、年内にも業務を始める予定だ。」(『建設工業新聞』2007.11.29)