情勢の特徴 - 2007年12月後半
●福田自・公内閣は24日、2008年度予算の政府案を決定した。解散・総選挙をにらんで、多少の化粧直しをおこなっている。しかし、予算を少し長い期間にわたって調べてみるとくっきりと浮かび上がってくることがある。それは、相変わらず国民生活を犠牲にして大企業・財界、アメリカにつくす姿勢だ。軍事費(防衛関係費)は、08年度から内閣官房予算に組み込まれることになった安全保障会議経費(3億円)を加えると、4兆 7799億円。政府は「聖域なき見直し」の一環として、削減額を誇りますが、減額幅は0.5%(217億円減)にすぎない。米国の要求にもとづく米国のための予算は、惜しまないのが特徴だ。…社会保障関係費は、小泉内閣以来の抑制路線を基本的に踏襲するものだ。高齢化などに伴う自然増分を認めず、必要な予算増を毎年2200億円も押さえ込む方針は、08年度も堅持された。これによって社会保障に本来必要な予算は、1.6兆円以上も削られることになる。…公共事業関係費は、07年度比3.1%減の6兆7352億円。「重点化」の名のもとで、大幅な伸びを示したのが、大都市圏の港湾や道路関連の大型事業だ。… 一方で国民生活に密着した事業は削減されてきた。なかでも住宅対策や下水道事業はともに02年度比で、約3割も減らされている。失業対策費は、02年度の 4880億円から08年度には1952億円と、約4割にまで削減されている。…削減の大きな部分は、雇用に対する国の責任として支出されてきた雇用保険への国庫支出金だ。(『しんぶん赤旗』2007.12.25より抜粋。)
●「国土交通省が27日発表した11月の新設住宅着工戸数は前年同月比27.0%減の8万4252戸となった。耐震偽装の再発防止のため、6月20日に建築確認を厳しくした改正建築基準法を施行して以来、5ヵ月連続で2ケタ台の大幅な減少率を記録。とくにマンションが6割超の減少率となるなど、大規模物件は回復が鈍く、先行きにはなお不透明感が強い。…大規模物件の回復が鈍い背景には、建築確認の審査の違いがある。マンションなどは小規模物件と異なり、安全性などについて専門家の二重チェックを受けなければならない。厳しくなった審査に対応できる構造設計士が不足しているうえ、審査の厳しさから申請に慎重になる業者も多く、11月の二重チェックの申請件数は1833件で、正常時の水準とされる月5千件を大きく下回る。二重チェックを巡っては審査を担う専門家の不足が懸念されている。申請件数が回復してきても審査が滞れば、着工回復には至らない。国交省はこれまで2人1組の審査を原則としていたのを、簡単な構造の建築物ならば1人だけで対応することを容認するなど対応に追われている。大規模物件の大幅減少が長引けば景気に悪影響を及ぼすのは必至。受注減で経営が行き詰まるケースも出てきた。札幌市を中心に営業していた早川工務店は4日、札幌地裁に破産手続き開始を申し立て、開始決定を受けた。帝国データバンクは『法改正の影響による倒産は秋以降発生しているが、年明け意向に件数が増える』と指摘する。」(『日本経済新聞』2007.12.28)
●「国土交通、総務、財務の3省は19日、公共発注機関を対象に実施した公共工事入札契約適正化法(入契法)と同法に基づく適正化指針の措置状況調査(07年度分)結果を発表した。入契法と指針に盛り込まれている施策を実施している発注機関は着実に増加し、一般競争入札を導入している地方自治体の割合が過半数に達した。総合評価方式の導入自治体も06年度の4.9%から07年度は26.8%へと急上昇した。ただ、国交省は『一般競争入札と比較すると総合評価方式の導入割合は低い』(総合政策局建設業課)としており、今後、小規模自治体への普及拡大に力を入れる方針だ。」(『建設工業新聞』2007.12.20)
●「福田康夫首相は21日午前、独立行政法人改革で焦点となっていた住宅金融支援機構と都市再生機構の組織形態の見直しについて結論を2-3年後に先送りする裁定を下した。…首相は国会内で冬柴鉄三国土交通相、渡辺喜美行政改革担当相、町村長官とそれぞれ会談した。首相は住宅金融支援機構について政府が出資する特殊会社化も含め、組織形態について2年後に結論を出す案を提示。都市再生機構は高齢者や子育て世代向けの賃貸住宅管理などに事業を絞り込んだうえで、3年後に組織見直しの結論を出す考えを示した。両相とも首相裁定を受け入れた。」(『日本経済新聞』 2007.12.21)
●国土交通省は25日、国土開発幹線自動車道建設会議を東京都港区で開き、住民の反対運動を受けて1970年以降凍結していた東京外郭環状道路(練馬区-世田谷区間、約16キロ)を、地下トンネルで建設する基本計画を決めた。建設主体は、国か高速道路会社とするにとどめ、今後の整備計画で決めるとし、着手時期も未定。費用は総額で1兆6千億円を見込んでいる。同区間は66年、高架で建設する都市計画決定を行ったが、沿線住民の反対で凍結。99年以降、石原新太郎都知事が大深度地下トンネルでの建設を住民の頭越しに国に求め、今年4月に都市計画変更した。福田康夫首相との間で、五輪東京招致のためのインフラ整備として外環同などの建設促進で合意していた。(『しんぶん赤旗』2007.12.26より抜粋。)
●「土木学会が21日開いた公共調達制度を考えるシンポジウムで、予定価格の上限拘束性の問題点を指摘する意見が相次いだ。予定価格は本来、標準的な工法や資材価格を前提とした標準価格であるのに、予定価格を超える価格での落札を認めないのはおかしいとの考え方だ。…予定価格を平均価格として幅を持たせた上限価格の設定を求める意見が聞かれた。国交省は入札不調・不落が頻発する工種を対象に、予定価格の作成に応札者の見積りを活用する方式を試行している。話題提供者の一人として登壇した同省の野田徹技術調査課建設システム管理企画室長は、将来は同方式を拡大したいとの意向を示した。」(『建設工業新聞』2007.12.26)
●独立行政法人「都市再生機構」(本社・横浜市、小野邦久理事長)は26日、現在77万戸ある賃貸住宅ストックのうち、当面10年間で8万戸を削減することなどを内容とした「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を発表した。これは、「すべての賃貸住宅団地を対象に、削減目標や団地ごとに建て替え、リニューアル、規模縮小、売却等の方向性を明確にした再編計画を2007年内に策定」とした24日の閣議決定「独立行政法人整理合理化計画」の内容に沿うもの。「再編方針」では、さらに40年後の2048年には、現在のストックの3割、23万戸程度を削減、50万戸程度にスリム化することを明記している。この流れは、6月に閣議決定された「規制改革推進のための3ヵ年計画」で明らかにされた@削減計画を明確にせよA収支率の悪い(赤字に近い)団地は削減せよB余剰地を民間に売却し、資産圧縮せよ―などの財界・大企業の要求を丸のみするものだ。(『しんぶん赤旗』 2007.12.27)
●「国土交通省は17日、07年度の下請け代金支払い(受け取り)状況等実態調査の結果を発表した。…特定建設業者に対する調査では、適正回答の割合が前年度よりも改善していた。…ただ、下請代金の支払い方法をみると、労務費を現金で支払うとした適正回答の割合が前年度よりも減少。公共工事の労務費を現金で支払っていたのは06年度が95.9%、07年度が94.9%。民間工事の労務費を現金で支払っていたのは06年度が 94.6%、07年度が93.0%といずれも悪化した。労務費の支払い状況を下請業者に聞くと、現金で支払われているのは公共工事で65.4%、民間工事で49.3%と、元請業者の本年度の回答とは大きな食い違いが表れた。同省は元・下請業者間で異なる回答の目立つ業者を中心に、立ち入り調査を行う。…4月の建設業法令順守推進本部の設置を受け、制限を設けず立ち入り調査を行う方針。必要に応じて改善を指導・勧告する。今回の調査では、下請業者に自由回答の記入欄を設けたところ、『請負契約を締結しないまま工事が進行し、出来高請求もできない』『見積書を提出しているにもかかわらず、工事竣工直前または竣工後に一方的に金額を通知』『追加工事や変更工事を行っても一方的に値引して支払われる』といった記述があった。」(『建設工業新聞』 2007.12.18)
●史上最高の利益をあげる大企業(資本金10億円以上)の内部留保(ため込み金)のわずか2.3%を取り崩すだけでも、労働者に月額1万円の賃上げができる―。全労連と労働総研(労働運動総合研究所)がまとめた『08国民春闘白書』で、こんな実態が明らかになった。内部留保は、税制上の優遇措置などを使って、剰余金や積立金などさまざまな名目でため込んでいる利益のこと。全国の雇用者3340万人の賃金を…月1万円引き上げると消費購買力が増え、国内生産を6兆2561億円拡大し、GDP(国内総生産)を1.14%引き上げる効果があると試算している。(『しんぶん赤旗』 2007.12.29より抜粋。)
●「日本建設業団体連合会は27日、会員企業(54社)の11月分と11月累計(4-11月)の受注実績をまとめた。総額の3分の1近くを占める不動産業からの受注が3ヵ月連続で2桁の減少となり、『官公庁の激減を民間が下支え』というこれまでの受注総額増加の構図が崩れ始めた。2007年受注総額が前年比を下回るだけでなく、07年度ベースでも前年度割れの可能性も出てきた。11月の受注総額は、前年同月比5.3%減の 8650億円となった。…日建連は、6月から施行された改正建築基準法の影響について『影響はあると思うが、それだけではない可能性もある』とし、景気の減速を理由にした受注が今後落ち込む可能性にも言及した。」(『建設通信新聞』2007.12.28)
●「東京商工リサーチ調べ…11月の建設業倒産は、前年同月比82件と増え29.6%増の359件となった。11月としては2002年(453件)以来、5年ぶりに350件を超えた。…負債総額は同144億2700万円増、30.3%増の619億7600万円となった。平均負債額は同0.5%増の1億 7200万円で3カ月ぶりに2億円を下回った。このほか業績低迷が続くなか、建築基準法改正に伴う建築確認申請の厳格化の影響で、新たな建築着工ができずに資金繰りがショートしたなどの改正建築基準法関連倒産は9件発生した。…原因別では、受注不振が前年同月比25.0%増の215件(構成比59.8%)と全体の約6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同56.4%増の61件(同16.9%)、運転資金の欠乏が同44.4%増の26件(同7.2%)、他社倒産の余波が同5.0%減の19件(同5.2%)と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年同月比29.4%増の176件、100万円以上500万円未満が同38.9%増の82件、個人企業などが45となり、1億円以上は1件だった。…建築確認申請手続の厳格化に伴う建築着工の遅れに対して、国は相次いで円滑化対策を講じているものの、既に現場の混乱は広がり、影響が表面化するのはこれからとの見方が多い。このため今後の倒産動向からは目が離せない。」(『建設通信新聞』2007.12.28)
●「企業の倒産が増えている。今年は1月から11月までの11ヵ月で1万件を突破。すでに昨年1年間の9351件を上回り、3年ぶりに1万の大台に乗った。特に中小零細企業の倒産が目立つ。原油や素材など原材料高が経営を圧迫。建築基準法や貸金業法など法改正に伴う規制強化が相次いだことも響いている。地方自治体や地域金融機関は中小企業向け融資を相次ぎ拡充して支援に動き出した。…『資本金1千万円未満の小規模企業の倒産が急増し、それが全体の倒産件数を押し上げている』(帝国データ)という。…『建設業を中心に貸し倒れが増えている』(三菱東京UFJ銀行の畔柳信雄頭取)。耐震偽装の再発防止をめざして建築確認を厳しくした改正建築基準法が6月に施行。新設住宅の着工戸数は11月まで5ヵ月連続で2ケタの前年割れとなった。受注の減少で経営が行き詰まる建設業者が増えているという。個人向けローンの規制強化を盛った改正貸金業法の施行に伴って、貸金業者が融資の審査を厳しくし始めた。各社とも上限金利を18%に下げており、貸し倒れリスクが高い顧客への融資を絞っている。つなぎ資金の調達を消費者金融からの借り入れに頼っていた個人事業者の資金繰りが悪化し始めたもようだ。」(『日本経済新聞』2007.12.31)