情勢の特徴 - 2008年1月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「日本経済研究センターは全国7地域の中期的な経済の実力を示す『潜在成長率』の推計値をまとめた。2020年度までの平均で関東、中部の2地域が年率2%と高くなる一方、近畿、四国が1%未満の低成長となる。総人口が減る中、労働者を確保する力や生産性の違いが成長力の差として明確になる。…05-20年度の推計期間中の潜在成長率が最も高かったのは、東京を含む関東、名古屋を含む中部の2地域(いずれも年率2%)。主因は人口流入だ。…半面、関東と中部を除く5地域の潜在成長率はいずれも全国平均(1.6%)を下回る。…低成長の地域は人口が減るだけでなく、高齢化のペースが速く、若年労働力が急ピッチで減少する。」(『日本経済新聞』2008.01.03)
●「建築確認手続きを厳格化した改正建築基準法の施行に伴い、建築着工の低迷が続いている問題で、建築関係主要建材の需要見通しの落ち込みが顕著になっている。国土交通省が11日に発表した2月の主要建材の予測需要量では、前年同月との比較でマイナスが見込まれる結果となった。…国交省は『着工落ち込みの影響があると思われる』(総合政策局)としている。…建築確認の件数は徐々に回復基調へと入りつつあるが、建材需要が元に戻るまでは、もうしばらくかかりそうだ。」(『建設工業新聞』2008.01.15)

行政・公共事業・民営化

●「全国総合計画(全総)に替わる国土計画である『国土形成計画』の全国計画の原案が固まった。…原案では、新しい国土像として、『多様な広域ブロックが自立的に発展する暮らしやすい国土』を掲げた。全国を、首都圏や近畿圏など8ブロックに分け、各広域ブロックが連携しながら、それぞれ特色ある地域戦略を描いていくとの方向性だ。ブロック内部では、成長エンジンとなる都市や産業の強化、住み続けられる生活圏域の形成などに取り組む。ブロックの外に向けては、特に東アジアなどとの交流・連携の促進を重要な取り組みとして挙げている。…新しい国土像への転換へ向けた戦略的な目標としては、▽シームレスアジアの形成▽持続可能な地域の形成▽災害に強いしなやかな国土の形成▽美しい国土の管理と継承▽『新たな公』を基軸とする地域づくり―の5項目を掲げた。…こうした戦略目標に沿って、地域整備や防災など分野ごとの施策の基本的方向性が示されている。…将来的に国土基盤ストックの維持更新投資の増加が見込まれるため、さらに投資の重点化を図ることも明記された。重点化を図る分野を決める際には、▽国家戦略や自立のための地域戦略を実現するための投資▽地域での対応に必要な問題解決型の投資▽安全・安心の国民生活を維持する上で必要な投資―など複数の視点を考慮すべきだとしている。…今回の原案では、都道府県単位ではなく地域ブロック単位で国際競争力を構成していくこと、市町村よりも広域の生活圏で都市的サービスの向上を図っていくことなど、圏域意識の改変が必要だと訴えている。さらに、東アジアの中で地域の個性をとらえ直すことも掲げた。人口減少の中で全国で持続可能性を維持していくには困難を伴う面もあるが、国内でパイを奪い合うのではなく、アジアの繁栄を各地域に取り入れながら、未来を切り開くための地域戦略を共有し取り組んでいくという考え方だ。」(『建設工業新聞』2008.01.01)

労働・福祉

●「建築物に使われているアスベスト(石綿)への対策を強化するための政府内の検討が本格化してきた。厚生労働省は、建築物の解体工事現場で、石綿繊維の濃度に応じた保護具の使用を義務付けることなどを含め、石綿障害予防規則の見直し議論を進めており、改正が必要と判断した場合には、年内にも新規則を施行する方針。国土交通省は、現状では対応が進んでいない延べ床面積1000平方メートル未満の民間建築物について、対策を講じていくための調査に08年度着手する。…厚労省は、建設業労働災害防止協会がまとめているばく露防止マニュアルなどを踏まえ、石綿繊維の濃度に応じて必要な保護具の着用を求めることなどを検討する。…国交省は、小規模の民間建築物でも対策を徹底するための検討を本格化させる。…国交省は08年度予算案に必要経費を計上しており、有識者などの意見も聞きながら実現性のある対策を探っていく。現行制度では、改築などを行う場合以外は、石綿含有建材を使用していても違法状態ではないため、誘導策が課題となる。簡易な調査の方法なども検討する。」(『建設工業新聞』2008.01.11)

建設産業・経営

●「総務省統計局がこのほど公表した『平成18年事業所・企業統計調査』の確報集計によると、木造建築工事業の会社企業は全国で3万6306社で、平成13年調査に比べて7.8%減少していることが明らかになった。一方、建築リフォーム工事業は102.7%増の5243社で、5年間で倍増した。…常用雇用者規模別企業数で木造建築工事業をみると、木造建築工事業の97.2%(19人以下)は零細企業に該当する。建設業(日本標準産業分類では『大分類』)全体では91.8%、総合工事業(中分類)では90.3%が零細企業であるが、木造建築工事業は総合工事業の中では最も零細企業の割合が高い。」(『日本住宅新聞』2008.01.05)
●「完成工事高重視の受注競争から、採算重視の経営への転換が鮮明になってきた。収益基盤の確立が2008年のゼネコンの最大の経営テーマとなる。あらゆる分野から将来を見据え拡大が見込める分野や強みのある分野への特化、競争に勝てる技術のある得意分野への人材の集中、案件ごとの採算の見極めなど、完成工事総利益率(工事粗利率)の改善に向けた受注戦略を立てる。不採算工事の受注回避など利益なき繁忙から脱却し、ものづくりの原点に立ち返る。建設産業にとっての財産である人材の確保・育成、地域や分野の選別と集中、そして海外展開と事業の再構築に向け、ゼネコン各社は中期経営計画の策定、見直しを進める。」(『建設通信新聞』2008.01.07)
●「地方の建設業協会(建協)が悲鳴を上げている。工事量の減少と一般競争入札の拡大に伴う過当競争で、会員企業の経営環境は急速に悪化。倒産や廃業に加え、会費を払えないなどの理由で脱会する企業が相次ぎ、協会運営さえままならない状況にある。災害復旧や除雪などでも地域を支えてきた会員企業のひん死の状況に、各建協とも何とか手を打とうと努力しているが、財政再建や建設業批判の声にかき消されて光明が見いだせない。… 公共事業への依存度が高い東北、四国地方を例に取ると、99年度から07年度にかけ東北6県の建協では会員数が約23%減少して2140社、四国4県では約39%も減少して2051社となった。都道府県建協を束ねる全国建設業協会の会員数も同時期に約25%減少して2万4603社まで落ち込んでおり、会員数減少が全国的傾向であることがうかがえる。会員数減少は建協の会費収入の減少に直結する。四国地方では、会費収入がピーク時に比べ高知建協で46%、徳島建協で32%、香川建協で43%、愛媛建協で46%も減少した。…愛媛建協の鈴村恒常務理事は『協会が崩壊寸前まで追い詰められている』と嘆く。…一連の官製談合問題を踏まえた全国知事会の申し合わせもあり、一般競争入札が急激に拡大。『協会を辞めても一般競争だから仕事ができる』と協会を離れる会員も少なくない。…長野建協の中澤英会長は…一般競争になって誰が来るか分からない状況では仕事が取れず、取れたとしても赤字覚悟では、『かつてのように安全・安心な地域作りに努力する気持ちはなくなってしまう』という指摘だ。…雪の多い会津地域では建協の会員ではないアウトサイダー9社が13件の除雪業務を安値で受注したが、地域の道路を知り尽くしたオペレーターでなければ、作業によって構造物や埋設物に損傷を与えてしまうことも多いという。…除雪の担い手がいなくなって一番困るのは地域住民だ。…地域に必要とされる建設会社が生き残れる環境を早急に整備する必要がある。」(『建設工業新聞』 2008.01.09)
●「東京都中小建設業協会(都中建、渡辺忠司会長)は、同協会に所属する企業が、地方の建設業団体に所属する企業から技術者を受け入れる『人材マッチングシステム』を始めた。民間建築工事や大型土木工事などの発注が多い首都圏では工事量に対して現場技術者が不足気味で、工事発注量が少なく人材に余剰感のある地域から人を融通してもらい、こうした状況の打開を目指す。…都中建は…北海道の網走建設業協会と同システムの有効活用に関する協定を結んだ。1月9日現在、同システムに登録した都中建と網走建協の会員企業は32社(土木会社14社、建築会社18社)。…各企業からは1級建築士や技術士などの資格を保有する技術者が対象として登録されており、現在は企業間で時期や工事、費用などの協議を進めているという。…都中建は…現在、他の地方の建設業協会ともシステム活用で協議を進めている。」(『建設工業新聞』2007.01.10)
●「改正建築基準法の影響による中小建設業の資金繰り悪化が広がり始めている。中小企業庁が建設業向けに設置した貸付と保証の金融支援は2007年12月末時点で約2500社に達する。建築着工の停滞は徐々に回復に向かいつつあるものの、これまで続いた市場の空白期間により、07年11月ごろから資金が底を付く状況が目立っている。一方、改正法による関連倒産は月10件程度となり、『今後もこのペースは続く』(東京商工リサーチ)見通しだ。…倒産は07年9月が2社、10月が4社、11月が9社となり、12月以降も月10社程度で推移する見通しだ。11月末時点の負債合計は15社で107億9200万円。負債10億を超える大型倒産は5社となる。これまで建設会社や工務店が中心だったが、11月に入ってからは建材や照明器具メーカーといった関連業の倒産も出てきた。『法施行前の駆け込み着工で、資金をつないでいた企業もある。ただ、着工停滞が予想以上に続いてしまい、資金が底をつく懸念が広がっている』とみている。」(『建設通信新聞』2007.01.11)
●「歯止めがかからない公共工事の市場縮小によって苦境に陥っている地方建設業界で、所管官庁が異なる団体の統合が始まる。富山県で、今年5月に建建設業協会と土地改良工事業団体、林業関連団体が合併し、富山建協を母体とした統合団体がスタートする。これは市場縮小に伴う会費負担の軽減とともに、今後の活動のあり方を模索しなければならない団体が踏み切った1つの結論で、同様の悩みを抱える他地域の地方建設業界にとっても参考となりそうだ。…今回の統合は、『組織をスリム化することで会費負担を軽減するとともに、業界団体を一本化し行政への要望活動を強化する』(業界団体再編協議会事務局)のが狙い。…地方自治体では、行財政改革の一環で土木部門組織の統合を模索する動きも出ている。こうした行政組織の再編の流れも、統合の具体化を促す要因の1つとなりそうだ。」(『建設通信新聞』2008.01.15)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「国土交通省は、新築住宅の売り主や請負者に瑕疵(かし)担保保証金の供託か保険加入を義務付ける『特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律』の施行規則案をまとめた。施行規則案では、保険契約の内容や保証金に充てることができる有価証券の種類などを規定する。…同法では、住宅品質確保法に基づく販売後10年以内の瑕疵担保責任を確実に履行するため、建設業者は『住宅建設瑕疵担保保証金』、宅地建物取引業者は『住宅販売瑕疵担保保証金』の供託か国交相が指定する住宅瑕疵担保責任保険法人が引き受ける保険への加入が義務付けられた。大臣による保険法人の指定は4月1日から、保証金の供託義務化は2009年10月1日からそれぞれ施行する。」(『建設通信新聞』2008.01.08)
●「国土交通省は8日、耐火性能偽装問題を受けて実施した防耐火関連の構造方法や建築材料の認定に関する実態調査結果をまとめた。大臣認定を取得している1万3965件(1788社)すべてを対象に調査した結果、有効回答1万2771件(1422社)うち、不正の疑いがあったのは延べ40社で77件だった。…不正の疑義内容をみると、認定仕様に比べて表面塗装の質量が多く、防耐火性能が劣っているものも見られる一方、鉄板を鋼板に変更し、認定仕様より性能が上がっているものもあった。国交省は『認定仕様と違ったものと認識しながらも、この程度だったらいいと思っていたのだろう』(住宅局建築指導課)と不正に至った経緯を説明した。」(『建設通信新聞』2008.01.09)
●「国土交通省は、改正建築基準法に対応した大臣認定構造計算プログラムの完成を急ぐため、開発中のプログラムを21日に仮認定し、試行利用を始める。開発の遅れが住宅着工戸数減少の一因になっていることから、国が主体的に関与して早期認定することでマンションなどの着工戸数減少に歯止めをかけるのが狙い。…同省は試行で見つかった不具合などを修正し、2月下旬をめどに正式認定する予定だ。」(『建設通信新聞』 2008.01.09)

その他