情勢の特徴 - 2008年1月後半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

行政・公共事業・民営化

●「米国が日本に対して談合防止を目的とした調達慣行の改善として、地方自治体での総合評価方式の拡大を求めていることが明らかになった。昨年10月、日米両政府が『日米規制改革および競争政策イニシアティブ』に基づいて相手国に提出する米国政府側の改革要望書に盛り込まれた。…米国がまとめた規制改革要望のうち、入札談合への対応としては、▽罰則強化▽調達における利益相反防止▽官製談合防止強化▽行政措置減免制度拡大 ▽調達改善による防止――の5項目を提示した。このうちの調達改善として、@省庁、政府系企業、自治体の総合評価方式の採用拡大A一般競争入札の拡大を含め、公共工事入札契約適正化促進法への対応の調査結果を自治体ごとに、3月までに公表B自治体の内部告発窓口設置C地方企業を入札参加条件として限定しない、地域要件の見直し――の4項目を盛り込んだ。地方企業に限定しない地域要件の見直しは事実上、国土交通省や自治体発注工事で存在する地域要件の撤廃を求めているものとみられ、2006年の米国側の要望でも盛り込まれていた。」(『建設通信新聞』2008.01.18)
●「国土交通省は、新技術の開発と工事の施工を一体化した新たな発注方式『技術開発・工事一体型方式』の導入に向けた検討を開始する。新技術を適用して工事を実施することを前提に、技術開発を含めて工事を発注する手法を想定している。工事の受注という具体的なインセンティブを明確に付与することで、有用な新技術の開発を活発化させ、民間企業の技術開発意欲の向上も図るのが狙い。国交省は、来年度からの5カ年を対象とした『次期国土交通省技術基本計画』に盛り込み、具体的な制度設計や案件形成に向けた検討に取り組む。対象工種などは未定だが、大深度地下での構造物の施工や老朽施設の効率的なリニューアルなど、将来の活用が多く見込める分野を対象に実現の可能性を探っていく。国交省などのまとめによると、大手ゼネコンの研究開発費は10年前の半分程度にまで落ち込んでおり、技術開発の促進は大きな課題になっている。このため、次期技術基本計画では、民間の技術開発を促して実用化につなげるために、財政と制度の両面から支援を行う方針を打ち出す。その際の新たな施策として、技術開発・工事一体型発注方式の導入を検討することにした。…国交省はこのほかにも、総合評価落札方式の入札で、特許技術を活用すると評価点をかさ上げする仕組みの導入を検討する。」(『建設工業新聞』 2008.01.18)
●「滋賀県近江八幡市の総合医療センターのあり方検討委員会は21日、大林組100%出資の特別目的会社(SPC)『PFI近江八幡』が同市土田町に開設した近江八幡市立総合医療センターについて、事業継続の可能性や同社との契約の一部解除などの検討を盛り込んだ抜本見直し策を市長に答申した。国内初の本格的病院整備のPFIモデル事業として、04年10月に着工、06年10月に開院したが経営悪化に直面。今後、市では答申に基づき、契約の条件・金額などの大幅見直しなども検証していく。同事業は、施設・設備の手狭で老朽化が進んでいた旧市民病院をPFI手法で移転・新築するプロジェクトで、BOT方式を採用。同社が施設整備し、開院後30年間に維持管理・運営を行った後、市に施設を無償譲渡することになっている。ところが、本年度末に赤字が24億1000万円となり、借入金残高も約8億円になるなどの事態が予想されている。現状で推移すると、不良債務が11?13年度に50?70億円に膨らむと試算され、市が財政再建団体に転落する恐れもあるという。」(『建設工業新聞』2008.01.22)
●「国土交通省が都道府県のダンピング(過度な安値受注)対策を調べた結果、7県が最低制限価格を引き上げ、3県が予定価格の事前公表を事後公表に変更(試行を含む)することが分かった。…最低制限価格については、自民党の公共工事品質確保に関する議員連盟(古賀誠会長)が昨年12月にまとめた提言の中で、経費項目別に設定するなど適切に定め、ダンピングを防止するよう指摘していたほか、事前公表についても積算能力や施工能力がない業者の参入を防ぐことができないことから見直しを検討することを求めていた。」(『建設通信新聞』2008.01.23)
●「国土交通省は08年度の地方整備局の組織改正として、各事務所に『品質確保課』を新設する。同省元職員が関与した水門設備工事をめぐる官製談合事件が摘発されたことを踏まえ、組織内部のチェック機能を強化するのが目的。現在、公務課が行っている技術審査・検査に関する不正行為防止に向けて監視体制を強化する観点から、全地方整備局に『入札契約監査官』も新設する。」(『建設工業新聞』2008.01.25)
●「国土交通省は、建設業者が受ける経営事項審査(経審)の審査基準を大幅に改正するための建設業法施行規則を31日付で官報告示する。完成工事高に偏重した現行の評価基準を見直し、企業経営の内容や企業の社会的責任の果たし方を重視する仕組みへと改めるのが柱。新基準に従って各企業が総合評定値(P点)を算出するのに必要な新たな評点テーブルや評点幅が初めて公表される。新経審では、完工高の規模が同じでも、社会性の評価などで総合評定値で大きな差がつくのが特徴。雇用保険や社会保険の加入状況などに対する評価ウエートが現行よりも高まっており、小規模業者の複利厚生面の充実を後押しすることにもなりそうだ。新経審は4月1日から適用される。」(『建設工業新聞』2008.01.31)

労働・福祉

●軽油高騰への実効ある対策と公正な取引をーー。建交労のトラック部会と経営側が共同して28日、軽油高騰に対する政府の緊急対策や値上げ分に見合う公正取引の実現、暫定税率の撤廃などを求め、関係省庁と業界団体に要請した。経営環境の改善など、経営者との一致点で共同行動をとる中央運輸労使協議会の主催。要請には東京や大阪など運送会社7社の社長らとともに青森から福岡まで15都府県の組合員約60人が参加した。要請に対して国土交通省は、事業者の自助努力では限界があるとの認識で協議会側と一致し、3月までに荷主との取引の適正化に向けた指針をつくると表明。(『しんぶん赤旗』2008.01.29より抜粋。)

建設産業・経営

●「国土交通省が新潟県中越沖地震で震度5以上を観測した地域を対象に建設企業と建設関連企業の地域貢献状況を調査した結果、支援活動を行った企業の6割が新潟、長野の各県内に本社・本店がある地元企業だったことが判明した。初動対応でも、地震発生後2時間以内と極めて迅速に対応した企業の9割が地元企業で、その役割の大きさが改めて浮き彫りとなった。この結果を踏まえ、国交省は、災害対応協定に対する総合評価方式での適切な加点などを検討する。」(『建設通信新聞』2008.01.16)
●建材の防耐火性能偽装問題を受け国土交通省が実施した建材メーカーなど約1700社に対する一斉調査で、性能試験に申請書とは異なるサンプルを持ち込んだり、認定を受けたものとは違う仕様の建材を販売したりする不適切な例が、新たに21件見つかった。これで不適切な点がある建材は98件、メーカー数は5社増え45社となった。同省は、これまでに認定を取り消した7件に加え、近く9件の認定を取り消す予定。同省の調査に、いずれの企業も偽装の意図を否定しているが、認定を受けた際より明らかに燃えやすい素材を使って販売していた例もある。同省は、実際に使用されている建材が大臣認定の基準を満たしているか調査を急ぎ、これにより建築基準法上、違法となる建物がないか自治体などを通じて調べている。(『しんぶん赤旗』 2008.01.26より抜粋。)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年12月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、310件で前年同月比 7.7%の減少になった。3ヵ月ぶりに前年同月を下回った。このうち、改正建築基準法施行に伴い資金繰りがショートしたことなどによる倒産は9件。負債総額は59億4100万円減の476億4800万円となり、11.0%の減少となっている。平均負債額は1億5300万円で07年としては最少額を示した。…年末の資金繰りに対応した信用保証協会を通じての制度融資や、建築関連中小企業に講じられたセーフティネット貸付、保証制度の拡充など中小企業に対する金融上の支援が少なからず影響したとみられる。…原因別では、受注不信が前年同月比10.3%減の191件(構成比61.6%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同26.3%増の48件(同15.4%)、事業上の失敗が同13.3%増(同5.4%)の17件、他社倒産の余波が同55.5%減の12件(同3.8%)と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年同月比6.0%減の154件、100万円以上500万円未満が同14.2%減の66件、個人企業などが57件となり、1億円以上はなし。」(『建設通信新聞』2008.01.28)
●「建設経済研究所と経済調査会経済調査研究所は29日、2007・08年度の建設投資見通しを発表した。07年度の建設投資(名目ベース)は前年度比7.5%の48兆3400億円で、前回予測(07年10月)の3.1%減、50兆6400億円を下方修正した。改正建築基準法施行の影響が前回予測を大きく上回ったため。民間住宅投資は前回予測した4.6%減の18兆2300億円から、15.8%減の16兆900億円に下方修正となった。07年度の内訳は、政府建設投資が6.5%減の17兆2300億円、民間住宅投資が15.8%減の16兆900億円、民間非住宅投資が 1.8%増の15兆200億円と予測している。」(『建設通信新聞』2008.01.30)
●「日本建設業団体連合会(梅田貞夫会長)は29日、会員企業54社の2007年(1-12月)の会員企業受注実績を公表した。民間受注は00年度以来の10兆円台を確保した一方、官公庁受注は1976年調査開始以来の最低水準に落ち込んだ。好調な民間受注と減少一途の官公庁受注の構図が鮮明になった形だ。07年の受注総額は、前年比0.6%減の13兆3330億円となった。内訳は、民間受注が2.8%増の10兆2190 億円で5年連続の増加を記録した一方、官公庁受注は4.4%減の2兆2200億円にとどまった。海外受注(現地法人受注分を除く)は22.0%減の 8660億円と2桁の減少となったが、『水準自体は低くない』(日建連)という。」(『建設通信新聞』2008.01.30)
●「東京商工リサーチがまとめた2007年の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、4018件で前年比4.2%増となった。3年ぶりの4000件突破となった。産業別構成比は28.5%となっている。昨年6月20日に施行された改正建築基準法の影響を受け、新たな着工ができず資金繰りが苦しくなり倒産したのが24件発生している。負債総額は8123億7600万円で、11.5%の増加になった。5年ぶりに前年を上回った。負債額10億円以上の大型倒産が26.0%増の126件あった。…2007年は公共投資削減傾向が続くなかで、さらに建築基準法改正に伴う建築確認申請手続の厳格化の影響により新たな建築着工ができない事態が加わるなど、建設業を取り巻く経営環境は一層厳しさを増した。今後も小規模企業を中心とした倒産状況が続くとみられるが、地方の中堅企業のなかにも息切れしたケースがあったことから、大型倒産の増加が懸念される。…原因別では、受注不振が前年比 4.5%増の2558件(構成比63.6%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同5.7%増の550件(同13.6%)、運転資金の欠乏同 45.7%増の258件(同6.4%)、他社倒産の余波同6.3%減の237件(同5.8%)、事業上の失敗168件(同4.1%)、金利負担の増加77 件と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年比5.7%増の1936件、100万円以上500万円未満が同5.4%増の964件、個人企業他が同8.7%減の551件となり、1億円以上が21件(前年14件)だった。」(『建設通信新聞』2008.01.30)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「阪神大震災の発生から17日で13年。被災を契機に成立した耐震改修促進法に基づく耐震改修促進計画の策定が市区町村でほとんど進んでいないことが分かった。国土交通省の調査(2007年9月1日現在)によると、1827ある市区町村のうち、計画を策定しているのはわずか3%に当たる56自治体にとどまる。法令上、市区町村による計画の策定は努力義務となっているが、同省は耐震診断や補強工事に対する補助制度を円滑に活用するため、市区町村に早期の計画策定を働きかけている。…国交省によると、すべての都道府県は07年7月までに計画を策定したが、策定が努力義務となっている市区町村の動きは鈍い。…耐震診断・改修に対する補助制度の整備も、市区町村レベルでは遅れが生じている。…耐震改修に対する補助制度の整備率は診断よりも低く、…市区町村の補助制度の整備率が低い背景には、自らの負担分を軽くしようとする自治体の財政事情が浮かび上がる。国交省は08年度予算案で住宅の耐震改修などに対する助成を拡充し、170億円(国費ベース)を計上しているものの、助成金の有効活用に向けては自治体による制度の整備が不可欠だ。同省は、『市区町村レベルでの補助制度の整備率はまだまだ低い』(住宅局建築指導課)とし、一層の制度整備を求めていく考えだ。」(『建設通信新聞』2008.01.17)
●「国土交通省は、数世代にわたって超長期の使用が可能な『200年住宅』の整備、普及を図るため、今通常国会に提出する『長期優良住宅の普及の促進に関する法律案』(仮称)の概要をまとめ、18日に開かれた自民党の住宅土地調査会に提示した。概要では、200年住宅の認定基準として、一定規模以上の住戸面積の確保や構造躯体の耐久性、住宅の耐震性などを示している。認定基準の具体的内容は法案審議と並行して検討し、国交省が策定するガイドラインに盛り込む。法案は2月下旬に閣議決定し、国会に提出される見通し。今秋以降の施行を目指す。…同省は200年住宅の普及に向け、2008年度予算案でモデル事業費として130億円を計上している。」(『建設通信新聞』2008.01.21)
●2階部分も耐震診断の対象に含める新耐震診断への移行にともなって、補強工事を実施する住宅が激減していることが20 日、日本木造住宅耐震補強事業者共同組合(小野秀男理事長)のまとめでわかった。同組合は「補強自体をあきらめる人が増えてきている」と分析。木造住宅の耐震工事を促進するため、部分補強を公的助成の対象にする必要性を指摘している。同組合は、落ち込みの原因について、2階まで含めた補強工事にはコストがかかりすぎ、補強工事をあきらめる結果になっていると分析。補強後の耐震評点について、静岡県や神戸市などでは1階部分だけで助成金を利用できる実例もあり、「助成金の利用条件を緩和することで、補強工事のコスト負担の軽減と、助成金も利用できる。助成金利用の条件緩和も必要だ」と強調している。(『しんぶん赤旗』2008.01.21より抜粋。)

その他