情勢の特徴 - 2008年2月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省は31日、2007年の建築着工統計調査報告を公表した。同年6月20日に施行された改正建築基準法の影響で、新設住宅着工戸数は前年比17.8%減の106万741戸となり、5年ぶりに減少した。年間の着工戸数100万戸台は、99万1158戸だった 1967年以来の低水準となる。建築確認申請の際に、改正法で創設された構造計算適合性判定が必要となったマンションは特に落ち込みが大きく、全体の減少率を上回る29.2%減の16万8918戸で、99年以来8年ぶりの20万戸割れとなった。…新設住宅着工戸数を利用関係別にみると、持ち家は12.2%減の31万4865戸、貸家は18.7%減の44万1733戸、分譲住宅は22.3%減の29万4777戸といずれも2桁の減少となった。分譲住宅のうち、マンションは4年ぶりに減少に転じた。07年の新設戸数は16万8918戸となり、88年の16万7876戸とほぼ同水準にまで落ち込んでいる。」(『建設通信新聞』2008.02.01)
●「信用収縮を背景に投資マネーが不動産市場から流出している。世界の取引所に上場する不動産投資信託(REIT)の昨年末の時価総額合計はピークだった昨年3月末に比べて2割減った。…投資マネー流出は不動産市況の悪化要因。株価も不安定な動きが続くなか、世界的な金融市場の動揺が実体経済に影響を及ぼすリスクが高まっている。…きっかけは米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発した信用収縮。それまで低コストの資金を調達して不動産市場に投資する動きが活発で、英国をはじめ市場が過熱気味だったこともあり、逆に資金を引き揚げる動きが加速した。」(『日本経済新聞』2008.02.02)
●「国土交通省総合政策局の吉田光市建設業課長は13日、日本空調衛生工事業協会などが主催する講習会で短工期の問題に触れ『工期を経済的価値に換算するなら、明らかに不当な設定、契約と認められる事例は建設業法19条3項に定める不当に低い請負代金の禁止に該当する恐れがある』と不当な工期設定に警鐘を鳴らした。『そういった事例を建設業法令遵守ガイドラインに盛り込みたい』とも述べ、同ガイドラインの拡充・改訂を検討していることを明らかにした。…『そもそも当初から無理のある短工期、(前工程の)遅れによる短工期、いずれも集中的に技能者を投入し、残業や休日出勤などのコスト増を招く。工期とコストは密接不可分な関係にあり、物理的に明らかに不当な場合にはき然とした態度で臨むべき』とした上で、『そのためには工期の変更、着工時期の変更によって発生する費用負担をどのように処理するかの算定方式をはっきり取り決め、契約に盛り込むことが大きな前提になる。行政も知恵を出したいが、業界側も契約約款のひな形をつくるなどの努力が必要』と示唆した。」(『建設通信新聞』2008.02.15)

行政・公共事業・民営化

●政府・与党が、道路整備だけに税金を使う「道路特定財源」を維持し続ける根拠としているのが、「道路の中期計画(素案)」だ。‘総額先にありき’で、今後10年間に59兆円を道路事業に注ぎ込む計画は本当に必要なのか。…中期計画は、2008-17年度までに、どんな道路が必要かを盛り込んだ「青写真」。高速道路から地域の生活道路まで対象にあげています。そのうち4割以上を占めるのが、「国際競争力の確保」(23.8兆円)という大規模事業だ。その大部分を占めるのが、高規格幹線道路(高速自動車国道、一般国道自動車専用道路)を全国に1万4千キロ張りめぐらせる構想の完成。1万4千キロというのは、東京から南極・昭和基地をむすぶ直線距離に匹敵する。この‘壮大な計画’が生まれたのは、20年前の 1987年。中曽根康弘内閣が閣議決定した「第四次全国総合開発計画」がもとだ。地方都市やその周辺地域から1時間で高速道路などが利用できるようにするという‘バブル時代’の発想によるものだった。…公共事業問題に詳しいジャーナリストの堤和馬氏はこう指摘する。「道路建設による経済的波及効果は、87 年当時の計画より違ってきている政府がこれから造ろうとしている高速道路は通行料の増加が望めない、不採算の道路ばかり。道路特定財源という自動的にお金が入ってくる仕組みがあるために、高速道路が際限なく建設されていく。このシステムをやめるというけじめをつけるときにきているのではないか」。(『しんぶん赤旗』2007.02.10より抜粋。)
●「東京・江戸川区は、JV制度の原則廃止を盛り込んだ入札契約制度の見直し計画をまとめた。本来の目的から外れたJVが増え、不正行為の温床にもなりやすいとして、ここ数年、国や都道府県を中心に単体とJVによる混合入札を導入したり、JVへの優遇措置を撤廃したりする動きが出ているが、JV制度の廃止にまで踏み込んだのは全国的にも例がない。同区は、JV廃止と併せ、区外業者に区内業者を1次下請けに入れることを義務付ける地元業者の保護・育成策も導入する。国土交通省も『初めて聞くケースなので、半年くらい運用した後に効果や地元業者への影響を調査し、他の自治体の参考になれば周知していきたい』(入札制度企画指導室)と動向に注目している。」(『建設工業新聞』2008.02.13)
●「国土審議会(会長・岡村正東芝取締役会長)は13日、東京・紀尾井町のグランドプリンスホテル赤坂で総会を開き、国土形成計画全国計画を了承し、冬柴国土交通相に答申文を手渡した。全国計画は、多様な広域ブロックが自立的に発展する国土構造への転換を掲げ、その実現に向けて、東アジアとの円滑な交流・連携、持続可能な地域の形成など5つの戦略的目標を立てている。計画期間は約10年間。全国計画によると、新たな国土像として『多様な広域ブロックが自立的に発展する国土を構築するとともに、美しく、暮らしやすい国土の形成を図る』ことを掲げ、戦略的目標として、@東アジアとの円滑な交流・連携A持続可能な地域の形成B災害に強いしなやかな国土の形成C美しい国土の管理と継承D『新たな公』を基軸とする地域づくりーーの5つを設定した。地域整備、産業、文化・観光、防災など8つの分野別施策の基本的方向も提示し、住宅の長寿命化や集約型都市構造への転換などを求めている。」(『建設通信新聞』2008.02.14)

労働・福祉

建設産業・経営

●「建設経済研究所と建設業情報管理センター(CIIC)が設置している『建設企業におけるCSR(企業の社会的責任)の評価制度および当該評価制度データベースの活用方策に関する調査委員会』(委員長・谷本寛治一橋大大学院商学研究科教授)は、2006年度から2年間にわたって検討してきた成果を報告書案としてまとめた。法令順守は大手、中堅、中小の企業規模を問わず最重要課題であるとし、各企業は48の評価項目に取り組むことを求めた。評価結果をもとに構築するデータベース(DB)は公共、民間の発注者を問わず、評価結果をウエート付け、点数付けして発注に活用することを打ち出した。報告書は3月末までに策定する。CSRの評価項目は、法令順守、ガバナンス(統治)、雇用、人事、環境、顧客、調達先、社会貢献の8つの大項目と、それぞれの分野を合わせた48の小項目としている。4日に開いた委員会では、DBの構築を念頭に、大手(資本金10億円以上)、中堅(1億円以上10億円未満)、中小(1億円未満)いずれの階層も48項目すべてで評価することを確認した。その上で、法令順守はすべての企業に共通した最重要課題であるとし、これ以外の評価項目の取り組みは、企業規模によって優劣をつけている。」(『建設通信新聞』2008.02.06)
●「鹿島、大成建設、大林組、清水建設の上場ゼネコン大手4社の07年4?12月期(第3四半期)の連結業績が12日出そろった。売上高は鹿島、受注高(単体ベース)は清水建設がそれぞれトップ。完成工事の採算を示す単体の完成工事総利益(粗利益)率は、受注競争の激化や資材の高騰などを受け、清水を除いた3社が前年同月比1ポイント超下げた。国内公共工事の落ち込みをカバーしてきた海外事業の勢いにも陰りが見え、海外受注高は全社ともに減少傾向にある。…サブプライムローン問題に端を発した米国経済の混乱を受け、日本経済でも投資意欲の減退、個人消費の落ち込みなど、景気の減速感が強まっている。4社ともに昨年11月発表の通期予想は変更していないが、国内建設需要を下支えしてきた民間投資の先行きにも不透明感が漂い、今後の建設市場の動向は予断を許さない状況だ。」(『建設工業新聞』2008.02.13)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「政府は、大規模建築物などの環境規制を強化するため、今国会に関連法の改正案を提出する。経済産業省と国土交通省は、大規模な住宅や建築物に対し、行政が省エネ措置の実施を命令できるよう、罰則規定を盛り込むことも視野に省エネ法の改正案を検討中。温室効果ガスの排出削減を促進するため、環境省は『地球温暖化対策推進法』(温対法)を改正し、一定規模以上の工場や建築物などに排出抑制措置を義務づける方針だ。08年度に、地球温暖化防止に向けた京都議定書の目標達成計画の第1約束期間がスタートすることなどを踏まえ、近年、温室効果ガスの排出増が目立つ民生部門の対策をてこ入れする狙いがある。」(『建設工業新聞』 2008.02.04)
●「住宅の耐震化助成の拡充が図られる中、各地の自治体でも耐震改修促進を強化する動きが目立って来た。東京都の地区よりも助成額を引き上げたのは渋谷区。昨年11月から『木造住宅耐震改修助成』を開始したところ、耐震診断の申込が急増、例年50件程度だったのが既に 100件に達している。拡充のポイントは次のとおり。@補助の対象となる工事を、構造評点を0.7以上にするか、または1階のみを1.0以上に改修する『簡易改修』と、構造評点1.0以上の建物に改修する『一般改修』の2通りに分類。A補助金の限度額を、簡易改修の場合100万円、一般改修の場合150 万円とした(ただし、居住者に65歳以上か障害のある人等がいることが条件)。一般の住宅の場合はそれぞれ簡易改修が60万円、一般改修は100万円となる。B補助金額を引き上げた上、期限を設けずいつでも受け付けるようにした。…平成13年度から耐震化推進プロジェクトを実施している静岡県では、昨年9月末までの累計で、耐震補強を行った住宅は7058戸に達しているが(18年度のみで1615戸)、今年度も新潟県中越沖地震を受けて申請件数が大幅に伸びた。これを受けて静岡県では、さらに住宅の耐震化を呼びかけるために、静岡県住宅・建築物耐震化推進協議会が『耐震補強工事実施中』と書かれた現場用の PR看板を作成した。」(『日本住宅新聞』2008.02.05)
●「国土交通省は2階建て以下の木造住宅について、2008年末に導入する見込みだった耐震強度の審査義務づけを先送りする方針を決めた。建築確認の厳格化で住宅着工件数が急減。新たな審査を増やせば再び混乱を深めかねないと判断した。建築業界や設計士への周知を徹底したうえで改めて導入時期を判断する。…昨年6月に改正建築基準法が施行。従来は慣例で認めてきた建築確認申請後の設計図の修正禁止も盛り込まれていたことで、耐震強度の審査が省略されている小規模な木造住宅も着工件数が急減した。国交省は特例廃止で審査を強化すれば、再び混乱が避けられないと判断。当初は耐震偽装の再発防止の一環である改正建築士法が施行される12月に合わせて特例を撤廃することを想定していたが、09年以降に先送りすることとした。」(『日本経済新聞』2008.02.13)

その他