情勢の特徴 - 2008年2月後半
●「財務省は25日、国債や借入金などを合計した『国の借金』が2007年末時点で838兆50億円になったと発表した。昨年9月末に比べ4兆3068億円増え、過去最大となった。借金の大半を占める普通国債の発行額が償還額より多かったことなどが主因。国民一人当たりに換算すると約656万円になり、3ヵ月で約3万円増えた。」(『日本経済新聞』2008.02.26)
●「国土交通省は25日、揮発油(ガソリン)税の暫定税率維持に向け、道路中期計画素案の内訳を公表した。生活幹線道路ネットワークの形成など政策課題に対する事業費は2008年度から10年間で当初65兆円を見込んでいたが、規格の見直しなど工事コストの縮減や民間技術の革新などで約3兆円、他事業・他施策の連携で約3兆円を圧縮し、事業費は59兆円を上回らないようにする。同素案は、08年度から10年間の事業費を 59兆円とし、暫定税率維持の根拠となっているが、野党から積算根拠のあいまいさが指摘されており、政策課題ごとの内訳や削減額を明らかにすることで、国民の理解を得るのが狙い。」(『建設通信新聞』2008.02.26)
●「国土交通省などの工事発注に導入された入札ボンド制度が、多くの建設会社の入札行動に変化をもたらしていることが、同省が21日まとめた入札ボンドに関するアンケート結果で分かった。ボンド発行元の与信枠を考慮して入札参加案件を絞り込んだり、財務状況の悪化を避けるために低価格入札を回避したりなど、制度の導入目的にかなう効果が出ている。ボンドの発行を断られたり、発行機関から申請前に入札参加を見合わせるよう要請されたりしたとの回答もあった。同省は『期待していた以上に導入の効果があった』(総合政策局建設業課)として、他の公共工事発注機関にも導入を働きかける方針だ。調査は日本土木工業協会(土工協、葉山莞児会長)の会員136社と、宮城県建設業協会(宮城建協、奥田和男会長)の会員のうち、宮城県の土木一式Sランクに格付けされた87社を対象に、東北地方整備局と宮城県が06年10月〜08年1月に発注した入札ボンド対象案件について聞いた。回答数は 179社(土工協99社、宮城建協83社、所属不明2社、5社が両協会重複)。」(『建設工業新聞』2008.02.22)
●「国土交通省は、施工体制確認総合評価方式による入札の対象工事を、08年度から拡大する方針を固めた。対象金額を現行の2億円以上から1億円以上に引き下げるとともに、適用工種を一般土木、PC(プレストレス・コンクリート)、鋼橋上部の主要3工種以外にも広げる。 06年12月に緊急公共工事品質確保対策(ダンピング受注防止策)を打ち出した後、収束に向かっていた低価格入札が再び増加傾向にあり、工事の品質低下や下請業者へのしわ寄せといった懸念が出ていることから、対象拡大で安値受注に伴う不安の払しょくを狙う。08年度事業の執行通達に盛り込み、全地方整備局発注工事に適用する。」(『建設工業新聞』2008.02.29
●「全国各地で続発した公共工事を巡る官製談合や汚職事件を受けて始まった入札制度改革が早くも‘揺り戻し’に見舞われている。福島県は28日、談合事件などで廃止した指名競争入札を4月から復活させると発表。ほかの地域でも落札の最低価格を引き上げる動きが出ている。競走激化にさらされた地元建設業者の悲鳴を受けた形だが、『脱談合』の流れへの逆行との指摘もある。…『過当競争になり、経営が立ちゆかない』。福島県が指名競争入札の再導入を決めた最大の要因は建設業者からのこうした悲鳴。…県側は『業者の経営が極端に悪化すれば手抜き工事の増加につながりかねない』として、当面は1千万円未満の工事に限定して指名競争入札の復活に踏み切った。1年間試行し、正式導入するか決めるという。」(『日本経済新聞』 2008.02.29)
●「阪神・淡路大震災を契機に2005年11月に改正され、06年1月に施行された耐震改修促進法。その大きな柱は耐震改修促進計画の策定を都道府県、市区町村などの地方公共団体に定めたことだ。耐震改修促進計画では計画の目的と位置づけ、対象区域、建築物、耐震化の現状と目標、目標実現に向けた施策などを定めることになっている。国土交通省の調べによると、計画策定が義務づけられている47都道府県は計画策定を終え、計画実施に向けて本格的な取り組みが始まっている。一方、努力義務にとどまっている市区町村の対応を見ると、07年9月時点で計画を策定しているのは56自治体(3.1%)となっている。…今後計画を策定する予定がある市区町村は、全体の59%に当たる1070自治体あるものの、38%の701自治体は策定について『未定』としている。一方、耐震診断・改修に対する補助制度の導入状況は、国交省の調査(07円9月1日現在)によると、耐震診断に対する補助制度は戸建てが全体の58%に当たる1062自治体、マンションが16%の285自治体、非住宅建築物は12%の228自治体となっている。…計画的な耐震改修を促進するための『耐震改修促進計画』と、耐震診断・改修に対する補助制度の充実は、それぞれ必要不可欠である。市区町村に早期の計画策定と補助制度の充実が望まれる。」(『建設通信新聞』2008.02.29)
●「建設労働者や職人が加盟する労働組合、全建総連東京都連合会(鈴木正次委員長、加盟15万5000人)は19日、 2008年度の賃金水準要求を、東京都と東京建設業協会に提出した。2001年から継続していた『1日当たり2万5000円』に、他産業の賃上げや物価上昇を理由に1000円上乗せした『2万6000円』に設定した。現実的に賃上げが進まない中で血投げ要望水準を引き上げたことについて都連は、『活動を強化する覚悟の表れ』と説明する。…今回は特に昨年の調査で『ガソリンの値上げと改正建築基準法施行による着工戸数減少という2つが深刻な影響を与えている』(都連)ことから、賃上げ実現へ活動を強化することを決めた。…また公共工事で採用される労務単価の金額がそのまま、現場労働者に支払われること目的にした『工契約条例(法)』の制定を国や自治体に強く求めていく。…都連では、『現場を支える職人の待遇問題の解決には、重層構造の改革しかない。そのためには元請けが手をつけなければ職人が育たない』と元請けの対応に期待を寄せる。」(『建設通信新聞』2008.02.20)
●「上場企業の2008年3月期第3四半期業績が15日、ほぼ出そろった。『個別(単体)』の受注実績を明らかにした建設50社の業績を日刊建設通信新聞社がまとめた結果、受注実績が前年同期を上回ったのは22社にとどまった。公共投資の減少とともに、建築は改正建築基準法による確認手続きの遅延・長期化の影響や、民間工事の受注競争激化により増減が分かれた。大手を始め、16社が2桁の減となっている。通期の受注実績が前期を上回る予想を立てているのは39社中18社だが、ほとんどの企業は中間決算時に公表した受注計画から変更はない。」(『建設通信新聞』 2008.02.18)
●「全国建設業協会(全建、前田靖治会長)傘下の各都道府県建設業協会に加盟する企業のうち、さくねn 1年間で434 社が経営破たんしたことが、全建がまとめた会員企業の倒産集計で分かった。倒産企業の65%余は、『受注減少』が経営破たんの原因になっている。業種別の倒産件数は土木が291件と他を圧倒。企業規模でみると、資本金1000万円〜5000万円未満の階層336件と、全体の8割近くに達する。公共事業の削減に伴う地方の建設市場の縮小が、公共工事への依存度が高い地域の中小・中堅建設会社を直撃し、苦境に追い込んでいる実態があらためて浮き彫りになっている。昨年の経営破たん件数は、過去最高だった02年(449件)に次ぐ高水準で、06年(378件)との比較でも56件増加。これで3年連続の増加となった。…07年の434件の経営破たんについて、理由を分析した結果、『受注減少』が65.4%と最も多く、『赤字累積』が9.2%、『売掛金回収難』が 2.3%などとなっており、いわゆる『不況型倒産』が全体の77.0%を占めた。」(『建設工業新聞』2008.02.20)
●「PFI(民間資金を活用した社会資本整備)方式を導入した公立病院の経営が苦境に陥っている。滋賀県近江八幡市では開業から1年で巨額の赤字が発生、事業者との契約解除の動きが顕在化。全国で始めて導入した高知市の病院も赤字が拡大している。医療サービスの費用削減に向けた‘切り札’として導入された病院PFIの是非が問われている。…旧市民病院の老朽化に伴い、市がPFIでの建て替えを決めたのは01年。03年には大林組が全額出資するSPC(特別目的会社)の『PFI近江八幡』と契約した。同社が医療業務を除く維持管理、リネン、給食などの業務を30年間手掛け、その後、病院は市に無償譲渡される。PFIの採用で市は直接経営に比べ68億円のコスト削減を見込んでいた。だが、『甘い事業計画で目算は大幅に狂った』(同市幹部)。06年12月に就任した冨士谷英正市長が設置した『同センターのあり方検討委員会』によると、赤字額は07年度で約24億円に達する見通しで、13年度末には債務は約70億円にまで膨らむ。原因は豪華な建物に要した建設費などのほか、建て替え前と比べ倍以上に膨らんだ運営費という。08 年度決算から自治体の財政は病院事業なども含めた『連結』でチェックされる。検討委は『このまま放置すれば市財政が破綻し、財政再建団体に転落する恐れがある』と指摘。1月21日にPFIの契約解除を視野に入れた経営改善策を冨士谷市長に提出した。提言を受け、市と同医療センターは15日、SPC側に病院施設を市が一括支払いで買い取った場合と、運営を市が直接業者に委託する方式に変更した場合のそれぞれの金額と手続きを示すよう要請。『提言を着実に具体化していきたい』(冨士谷市長)と抜本的な改革に向け動き始めた。…PFIを推進する内閣府は『(赤字転落は)病院事業自体の問題であり、PFI方式自体が原因ではない』(民間資金等活用事業推進室)とみるが、問題が相次げばPFI事業のイメージ悪化にもつながりかねない。このため内閣府は運営上の課題などを検証。今夏をメドにその成果を反映した契約書の具体的なひな型などを示す予定だ。」(『日本経済新聞』2008.02.25)
●「東京商工リサーチがまとめた2008年1月の建設業倒産(負債額1000万円以上)は、309件で前年同月比 8.4%増となった。1月としては4年ぶりに300件を上回った。ただし、前月比でみると3ヵ月連続で減少している。建築関連中小企業対象のセーフティネット貸付け、保証制度の拡充などの効果が出たとみている。負債総額は668億800万円で36.7%という大幅な増加になった。この結果、平均負債額は2億1600万円で、3ヵ月ぶりに2億円を超した。…業績低迷が続くなか、建築基準法改正に伴う建築確認申請手続の厳格化の影響で、新たな建築着工ができずに資金繰りがショートしたなどの建築基準法改正関連倒産は11件(2008年1月時点累計35件)発生した。…原因別では、受注不振が前年同月比 8.1%増の199件(構成比64.4%)と全体の6割を占めた。次に既往のシワ寄せが同17.0%増の48件(同15.5%)、事業上の失敗が同 72.7%増(同6.1%)の19件、運転資金の欠乏が同10.5%減の17件(同5.5%)と続く。…資本金別では、1000万円以上5000万円未満が前年同月比5.4%増の135件、100万円以上500満円未満が2.7%減の71件、個人企業他などが51件となり、1億円以上はなしだった。」(『建設通信新聞』2008.02.26)
●「国土交通省が元下双方に実施したヒアリング調査で低価格受注の実態が明らかになった。元請企業側には施工実績要件の確保、従業員給与・保有機械の維持、経営事項審査(経審)点数や入札ランクの維持といった赤字でも工事を受注しようというインセンティブ(動機付け)がある。その背景には、地方自治体による予定価格や最低制限価格の事前公表、民間発注者による買いたたき、無理な工期設定といった問題があり、その影響は、下請企業へしわ寄せという形で表れている。元請企業に対する調査結果によると、当初から原価割れ認識して受注した理由については、『低価格受注が常態化しており、直前の類似工事の落札率よりも低い落札率にせざるを得なかった』『最低制限価格でなければ落札できないため最低制限価格を基に算定した』と価格競争の激化を物語る回答があった。また、今後の受注活動を念頭に置いた回答もある。…具体的なコスト縮減方法については、『下請けに対する価格協力』(利益ゼロベースでの契約依頼)との回答があり、振り込み手数料や普通残土の処理費用、安全協力費を『赤伝処理』している事例もあった。この回答を裏付けるように、下請企業に対するヒアリング調査の結果では、『元請けの赤字受注を踏まえて見積もりするよう元請けから指示を受けた』という回答があったほか、『不当な赤伝処理を隠すゼネコンのテクニックは巧妙になっており、行政の検査があっても違法な赤伝処理は発覚しない』との指摘もあった。ただ、原価割れを認識していながらも、『受注を拒否すると今後の工事がもらえない恐れがある』『継続的な取引関係を構築し、受注機会を拡大したかった』などを理由に下請企業は受注せざるを得ない状況にある。低価格受注の要因については、元請企業から予定価格や最低制限価格の事前公表や発注者の技術不足を指摘する回答があった。下請企業は、民間発注者による買いたたき、無理な工期設定などを挙げている。元下共通の回答として、発注者の準備不足で予期せぬ工期の遅れや手戻りが発生し、コスト負担を強いられていることや、設計変更に応じないことなどを指摘している。調査は…一般競争入札の平均落札率が70%を下回り、加えて平均発注金額が高い自治体を抽出した上で、その自治体から提出された落札率70%未満で落札された工事の一覧表の中から、特に落札率が低い工事の元請企業11社を対象に実施した。下請企業は…専門工事業10団体に所属する建設企業を対象に、地域特性を考慮して19社にヒアリングした。」(『建設通信新聞』 2008.02.27)
●「『200年住宅』の枠組を規定する長期優良住宅促進法(仮称)案が2月26日の閣議決定の後、国会に提出されることになった。法律案は、長期優良住宅普及のための基本的な方針と認定制度を中心に22条で構成される予定。数世代にわたって使用でき、大規模地震でも補修ですむ構造躯体を持ち、住まい手のライフスタイルの変化にも対応できる空間を確保する等の長寿命化を図った住宅を、市町村または都道府県が認定した上で、住宅の履歴書を保存し、定期的な点検や補修・交換等を促すこと、さらにその住宅が末長く使われるように、既存住宅として流通する大成を構築するなどの内容を盛り込む。」(『日本住宅新聞』2008.02.25)
●「政府開発援助(ODA)の減少が続く日本。経済協力開発機構(OECD)によると、2006年の供与額は約110億ドルで世界ランキングは3位に後退した。OECD開発援助委員会は10年には日本の順位は6位になると予測しており、00年まで10年連続で首位だった日本の存在感は低下する一方だ。ランキングの低下には、円安によってドル換算した供与額が計算上、少なくなる為替要因も影響した。反対にユーロ高の進行が欧州諸国の順位を押し上げた側面もある。しかし、やはり最近の財政再建路線で予算が減ったのが大きい。日本のODA予算は1997年度をピークに10年間で 38%減った。小泉政権時代にまとめた『骨太の方針2006』は11年度までの5年間にODA予算を毎年2-4%減少させる方針を明記しており、当面は減額が続く公算が大きい。他の主要先進国は軒並み増額傾向にある。…外相の諮問機関『国際協力に関する有識者会議』が今年1月にまとめた中間報告は、このままODA減少が続くと『外交力の発揮は困難』と指摘した。」(『日本経済新聞』2008.02.28)