情勢の特徴 - 2008年3月前半

経済・財政 行政・公共事業・民営化 労働・福祉 建設産業・経営 まちづくり・住宅・不動産・環境 その他

経済・財政

●「国土交通省が29日発表した1月の新設住宅着工戸数は前年同月比5.7%減の8万6971戸で7ヵ月連続で減少した。耐震偽装の再発を防止するため昨年6月に建築確認を厳しくした改正建築基準法を施行した昨年7月以降、2ケタ台の大幅減が続いていたが1月は1ケタ台に縮まった。建築確認の申請件数も減少幅は縮小傾向で、同省は『法改正の影響は解消に向かいつつある』とみている。…ただ住宅資材の受注などに波及するにはまだ時間がかかるとの指摘もある。」(『日本経済新聞』2008.03.01)
●「政府は10日の事務次官会議で、独占禁止法などの改正案を内定した。課徴金納付・排除措置命令の対象となる違反行為の類型拡大や、談合などの違反行為を公正取引委員会に自主申告した企業の課徴金を減免する課徴金減免制度の拡充などが柱。違反行為に主導的な役割を果たした事業者に対する課徴金に割増算定率を適用する制度も取り入れる。改正案は11日の閣議で正式決定し、今国会に提出する。改正案では、課徴金の適用範囲に排除型私的独占、不当廉売、優越的地位の乱用などを追加する。…課徴金減免制度は、現行では違反行為を自主申告した先着3社までとなっている適用対象を最大5社まで拡充。グループ会社による共同申請も認めることにした。課徴金納付命令の除斥期間(時効)は現行の3年を5年に延ばす。違反行為に主導的な役割を果たした事業者に対する課徴金は5割増とし大企業の課徴金算定率は現行の10%が15%に引き上げられることになる。」(『建設工業新聞』 2008.03.11)

行政・公共事業・民営化

●「国土交通省の8地方整備局が2006年度に発注した(港湾・空港関係除く)1万3137件の工事のうち、1割強に当たる1404件が不落札か不調だったことが同省の調査で分かった。…同省がこのような本格的な実態調査を実施するのは初めて。調査では04年度―07年度上期の工種別、価格帯別の発生状況の経年変化や各地方整備局から寄せられた発生要因などをまとめている。…発生数の経年変化をみると、04年度には334 件だったものの、05年度が645件、06年度は1404件と毎年倍増している。06年度に発生した不落札か不調の工事の97%は予定価格3億円未満の小規模工事が占め、工種別発生率は鋼橋上部、建築、機械設備の順で高い。07年度は上期の時点で前年度に比べ、『その他』以外の全工種で発生率が増加し、建築、電気設備、暖冷房設備衛生設備、機械設備、通信設備の5工種で発生率が50%を超えている。…各整備局からのヒアリングでは、発生原因として▽現場環境が厳しい▽価格が折り合わない▽技術者不足▽工事規模が小さく、工期が短い―などが挙げられ、夜間規制の負担が大きい工事や、工期が短く年間の技術者費用が確保できない工事などは、入札参加を見送る傾向にあるという。」(『建設通信新聞』2008.03.05)
●「国土交通省は、CM(コンストラクション・マネジメント)方式の導入について、地方自治体を対象に実施したアンケート結果をまとめ、6日開かれた『CM方式活用方式協議会』(座長・大森文彦弁護士)に報告した。現時点でCM方式を活用している事例は、団体単位では約1%にとどまったが、将来的な活用については『有効なら活用したい』とする割合が半分を超えており、国交省は『潜在的なニーズは高い』(総合政策局)とみている。この調査では、すべての都道府県、政令指定都市、市区町村を対象に実施した。調査総数は1874団体で、1417団体から回答を得た。回答率は 75.6%。…CM方式の活用実績では、現時点での実施事例は32例だけで、全体に占める割合は0.9%だった。…CM方式導入に当たっての課題は、『情報不足』(50.5%)、『合意形成・意思決定の難しさ』(34.3%)の順で多かった。発注体制に関する将来の課題については、『積算』を挙げた回答が8割を超え、『企画立案(基本構想)』や『工事発注業務全般』などの割合も高かった。このほかの設問でも、技術系職員の不足や専門的能力の不足を挙げる割合が多かった。」(『建設工業新聞』2008.03.07)
●「国土交通省は、最低制限価格の引き上げや予定価格の事後公表への変更など、地方自治体のダンピング(過度な安値受注)対策の取り組み状況をまとめた。秋田県など15自治体が最低制限価格や価格による失格基準の引き上げを実施した(予定含む)ほか、8自治体が予定価格を事前公表から事後公表に変更(同)している。同省と総務省は今月下旬に予定している公共工事入札契約適正化促進法に基づく要請で、従来以上に強く予定価格や最低制限価格の事前公表をやめることを自治体に求める考え。今後、要請を踏まえた自治体のダンピング対策の強化が加速する可能性がある。…予定価格の事前公表については従来、『弊害がある場合は取りやめる』よう要請していたが、今回の要請では、『弊害があることを前提に踏み込んだ表現にする』(同)考えで、自治体に事後公表への見直しを促す。」(『建設通信新聞』2008.03.12)
●「公共工事の入札で導入されている予定価格の公表について、入札前に公表する『事前公表』と入札後に公表する『事後公表』を併用し、両社の選択基準を明確にしていない独立行政法人などがあることが、日刊建設工業新聞社の調べで分かった。省庁などの国の機関は会計法令の規定ですべて事後公表だが、この規定が及ばない独立行政法人や地方自治体は事前公表も可能。…予定価格の事前公表は、入札参加業者が予定価格を不正に探ろうという行為を未然に防止する目的で自治体の多くが採用しているが、下請業者へのしわ寄せや工事の品質低下を招きかねないダンピング受注や不良不適格業者の参入につながるとして、事前公表自体を問題視する意見も強く、自民党の品確議連も、事後公表への統一を図るよう政府に求めている。」(『建設工業新聞』 2008.03.13)

労働・福祉

●国と建材メーカーがアスベスト(石綿)対策を怠り健康被害を受けたとして、首都圏の建設労働者とその家族205人が1人3500万円、総額72億円にのぼる慰謝料などを求める訴訟を起こすことを決め、都内で2日、原告団の結成総会を開いた。石綿製品を扱う建設現場での被害で国と企業を訴える集団訴訟は初めて。原告は東京、千葉、埼玉、神奈川各都県の各土建一般労働組合員らとその家族。原告らによると、1970年代に石綿の発がん性が指摘された後も、アスベストを含む建材が使われ続け、マスクの着用などまともな対策もとられなかった。国が石綿の使用を禁止したのは06年と遅く、「国と建材メーカーは、使用を禁止し、被害を防ぐ義務に違反している」(山下登司夫弁護団幹事長)としている。結成総会では、アスベスト救済法の抜本改正と被害者救済基金の設立、解体に伴う石綿被害防止や専門医の育成などを求めていくことを確認。原告は5月16日に東京地裁に、6月には横浜地裁にそれぞれ提訴する。(『しんぶん赤旗』2008.03.03より抜粋)
●「国土交通省がすべての地方自治体を対象に発注体制・能力をアンケート調査した結果、技術系職員数が10人以下の自治体が全体の約3分の1を占めていることが分かった。特に町村では約6割が10人以下となっており、約2割がゼロと回答した。建築、土木、設備の各担当部署別調査では、工事発注業務全般の課題として『技術系職員の不足』『技術系職員の専門的能力の不足』がともに約9割を占め、何らかの形で発注者を支援する必要性が改めて浮き彫りになった。…技術系職員の技術力の低下が懸念されている中、今回の調査では、半数以上(57.2%)の自治体が研修を実施していないことも分かった。…発注業務別の課題については、総合評価方式の導入などを背景に68.6%の部署が『技術審査』と回答し、『工事内容の評価』が 36.8%、『工事実績評価』『工事監督』がともの34.1%だった。発注業務での外部との連携については、『民間の建設コンサルタントなどの活用』が 52.2%、『都道府県などからの支援、情報交換』が47.6%、『他の自治体(都道府県同士、市町村同士など)の情報交換』が36.9%、『発注者支援機関(都道府県の建設技術センターなど)の活用』が21.0%、『国からの支援、情報交換』が10.6%となっている。」(『建設通信新聞』 2008.03.07)
●「国土交通省は、改正建築基準法の施行に伴う建築確認手続きの遅れや、住宅着工の大幅減少などの影響を把握する目的で、専門工事業者への調査を開始した。毎月中〜下旬に調査を行って最新情報を収集し、施策立案の参考にする考えだ。初回調査となる2月調査では、建築確認の遅れの影響が基礎・躯体、仕上げ系の職種などに見られ、余剰技能労働者は他社への応援で調整していることが分かった。資材需給では、鋼材の需給ひっ迫感が強まっており、今後さらにひっ迫するとみる業者が多かった。同省は建築確認の遅れの影響が落ち着くまで調査を続ける方針だ。2月分の調査では84社にアンケート調査票を配布し、58社から回答を得た(回収率69.0%)。調査結果によると、基礎・躯体系の約4割の業者が技能労働者は余剰と回答。逆に設備系職種では53%の業者が不足と答えた。技能労働者の過剰を改正建築基準法の影響とした回答は基礎・躯体系で50%、仕上げ系では73%を占めた。従業員の一部解雇は基礎・躯体系で13%にとどまっており、余剰労働者は主に他社への応援で調整している実態が明らかになった。…影響が緩和する時期については、基礎・躯体系と設備系では『7〜9月』と予想する回答が多く、仕上げ系では『10〜12月』と予想する回答が多数を占めた。後工程の職種ほど、影響緩和の時期が遅くなりそうだ。資材調達についての質問では…鋼材供給への不安感が高まっている。木材や設備、仕上げ材などは需給が均衡しているという回答が多数を占めた。」(『建設工業新聞』2008.03.11)

建設産業・経営

●「自民党の雇用・生活調査会(長勢甚遠会長)の中小企業労働者問題プロジェクトチームが2月29日に開いた会合で、建設労働者や職人が加盟する労働組合の全国建設労働組合総連合は、自治体で行われている予定価格の事前公表の廃止と、予定価格に反映される公共工事設計労務単価のあり方の見直しを求めた。労働者保護と生活者の視点に立った建設系労働組合からも、入札制度と予定価格のあり方に問題提起された形だ。…全建総連は、『予定価格の事前公表は本当に良くない』と主張、さらに予定価格のあり方と企業の応札価格について、『企業存続のための利益とともに労働者の生活を守る賃金を確保した価格とすべき』とし、建設産業疲弊につながる大きな問題として上がっている低価格受注と、それが一層の積算単価の下落につながる問題の是正を強く求めた。また…全建総連は『統計上の労働者数は減少しているが、統計に表れない一人親方がバブル崩壊以降40万人ほど増加している』としたうえで、『ただ一人親方は、(実態は労働者派遣法違反となる)偽装請負の可能性もある』との見方を示した。…事業主でありながら実態は技能労働者でもある一人親方について全建総連は、統計上の労働者にはカウントされていないこと、問題視されている建設生産システムの重層化拡大に拍車をかけていることを指摘した形となった。…これまで予定価格の事前公表や予定価格に反映される設計労務単価のあり方について元請企業団体から問題を指摘する声は相次いでいたが、労働者組合団体からも、労働者保護の視点で同様の指摘がされた格好となった。」(『建設通信新聞』2008.03.03)
●「総合建設会社(ゼネコン)大手の有利子負債残高が再び増えそうだ。4社合計の2008年3月期末の連結有利子負債残高は、前期末比9%増の1兆6090億円程度になる見通し。連結決算が中心になった00年度3月期以降初めて増える。不動産投資の拡大や建設工事の資金需要増が要因。資材高など収益環境の不透明さが増す中、財務体質の悪化を懸念する声も出ている。…バブル崩壊以降、各社は財務体質の改善を目指して有利子負債の削減を続けてきたが、一転して今期は増える。…市場では有利子負債の増加を懸念する声も出始めた。格付投資情報センター(R&I)は1月、鹿島の発行体格付けの方向性をシングルAマイナスの『安定的』から同『ネガティブ』に変更。『工事収益の見通しが厳しい中で有利子負債の削減ペースが鈍れば財務の柔軟性を損なう』という。受注競争の激化や資材価格・労務費が上昇して建設事業の利益率が低迷しており、金融収支が業績に与える影響が強まっている。今後は各社の財務戦略の重要性が一段と高まりそうだ。」(『日本経済新聞』2008.03.08)

まちづくり・住宅・不動産・環境

●「09年10月1日から施行される『特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律』。その目的は、00.年4月施行の『住宅品質確保法』で定められている‘10年の瑕疵(かし)担保責任’を履行させることにある。…売り主と請負者に瑕疵担保責任履行のための資力確保を義務付けたものだ。…資力確保の方法は、『住宅瑕疵担保責任の保険契約』または『住宅瑕疵担保保証金の供託』の2通りがある。このうち供託は、建設企業自らの費用で瑕疵の無料修理を行うことを前提に、倒産などの場合に供託金を取り崩して消費者に瑕疵担保責任を果たす仕組み。金額は、住宅価格に一定の掛け率を掛けて決まる。…一方、保険加入は、保険金額 2000万円以上で、10年以上有効な契約であることを前提とする。掛け金は、住宅価格に一定の掛け率を乗じて算定する。…資材確保が義務付けられるのは誰なのか。対象は、所有者となる買い主または発注者に新築住宅を引き渡す宅地建物取引業者(宅建業者)または建設業者となっている。…同法が適用される建設業者とは、建設業許可を受けている事業者に規定している。…だが、実際には許可業者以外の保険加入も受け入れられるし、何より同法の適用外となり、基本的には法律の施行後も、‘地域の信頼’という目に見えない瑕疵担保の中で仕事を請け負ってきた中小工務店の経営形態に大きな変化はないと言える。もちろん、消費者保護の観点からすれば、許可を受けて保険加入するほうが望ましいのは間違いないが、義務付けの対象にはなっていないのが事実だ。…同法の周知に関しては、所管する国土交通省はもちろん、保険契約などの締結状況の届け出窓口となる県にも何らかの対応が求められるはずだが、その動きは鈍い。…また、施行後の問題として、公的な住宅保証機構以外に、多くの保険法人の認定が予測される中、社会問題ともなった保険金の『出し渋り』を懸念する向きもある。掛け捨てとなる保険金の工面も、中小工務店には負担が大きいとの指摘があるほか、仮に販売価格に上乗せする場合でも買い主に事情をよく説明する必要がある。保険を掛けるべき当事者が、その費用を買い主に負担させることに疑義を差し挟む意見もある。さらに、設計上の瑕疵が原因と考えられる場合、同法で消費者は保護されるが、施工者と設計者との間で、損害賠償などに発展するケースも想定される。」(『建設通信新聞』2008.03.06)
●「不動産経済研究所(東京・新宿)が13日発表した2月のマンション市場動向によると、首都圏の新規発売戸数は前年同月比28.0%減の3460戸だった。2月では1993年(3271戸)以来の低水準で、売れ行きを示す契約率も好不調の目安である70%を割り込んだ。デベロッパー各社が用地・建築費の上昇分を販売価格に転嫁した結果、買い控えが鮮明になっており、三菱地所や藤和不動産など大手は新規発売を抑え始めた。首都圏でマンションの新規発売戸数が前年を割り込むのは6ヵ月連続。昨年11月(前年同月比43.6%減)以来の大幅な落ち込みとなった。近畿圏も 34.4%減の2226戸と、98年(2143戸)以来10年ぶりの低水準。…不振の理由は『販売価格の高騰に顧客がついてこられない』(デベロッパー大手)ことだ。…販売単価が前年同月を上回るのは首都圏が18ヵ月、近畿圏は6ヵ月の連続となる。市場低迷は各社の販売を直撃している。三菱地所は07年度に当初4300戸を新規発売する予定だったが、昨年6月の改正建築基準法施工で着工に一部遅れが生じたことに加え、需要回復に時間がかかると判断、最終的に1千戸以上抑制する見通し。藤和不動産も当初4300戸だった08年度の発売計画から大幅に下振れするもようだ。業界では『本格回復までに1年以上価格』(不動産経済研究所)との見方が出ている。消費者を呼び戻すには販売価格の引き下げが必要となるが、中小・中堅のデベロッパーやマンション業者には余力のない企業も少なくないため、淘汰が進む可能性がある。」(『日本経済新聞』2008.03.14)

その他